第五艦娘駐屯地。かつて彼女が身分を隠し在籍していたその地へと、京香を連れて帰還する前日の事。明石は、直属の上官である上村に呼び出され、一人司令官室の扉の前に佇んでいた。
人気のない廊下を見渡し、誰も居ないことを確認して大きく深呼吸をし、呼吸を整える。誰かに見られて困る、という訳ではないのだが、彼女はこの瞬間が大の苦手であった。呼び出しを受ける、という行為に慣れていないこともあり、緊張からか高鳴る胸を落ち着けて、やがて手の甲を二つ、扉へと打ち付けた。
「工作艦明石、入ります」
おう、と短い返事を受け一呼吸置いてドアノブに手を掛ける。ぐ、と力を込めてそれを捻り足を踏み入れれば、そこには見知った顔の男が一人、退屈そうに背もたれに体を預け書類の山と睨み合っていた。
相変わらずのようだ、と小さく息をつき、扉の直ぐ側で敬礼。直ぐに男も形式張った礼を返し、砕けた口調で明石にソファにでも座るよう促す。
逆らう理由もなかったためそれに従い、柔らかな感触に緊張が解けたところを待っていたのか、ぎしりと音を鳴らし男は居住まいを少々正した。
「先ずは、今回の任務お疲れさん。色々不測の事態もあったが、結果はまあ知っての通りだ。お前さんが集めた資料は船酔いについてもだが、華見中佐の件に関しても有為な情報になることだろうよ」
「有難うございます。それで、私が呼ばれた理由は……」
「……まあそう急ぐなよ。嬢ちゃんが目を覚ました後の事はまだ知らんだろ、今後の処遇も含めて大体纏まったからそっちが先だ」
男の言葉を聞いた明石の片眉が、歪に吊り上がった。
『貧乏くじの引き方-追編之終-』
「提督……いえ、華見中佐の容態は」
「今のところは安定してる、という感じだな。呼吸器系、消化器系、感覚系には異常なし」
ただ、と一言付け加えて男は資料片手に話を続ける。
本人の意向もあったとはいえ、基部の除去を急いだ結果下半身の神経系に損傷が認められた。そのため障害が出ており、治るかは分からないと。それが、彼女が足掻いた結果得られたものだと、上村はため息混じりに呟いた。
「まあリハビリをしつつ様子を見てみんことにはなんとも言えん、ってのがウチの医療班の見解だ。それ以外は健康そのものだとよ」
「そう、ですか。……ですが」
「その割には浮かない顔をしている、か?」
続く科白を先んじられ、明石はう、と言葉を詰まらせる。やがて不機嫌そうに頷いた少女を見、彼は先程よりも明らかに大きなため息を吐いた。
背もたれを軋ませ、なにか信じられないものでも見たかのように天を仰ぐ。一体どんな理由があるのか、と身構えた明石に突き付けられたのは、彼女が想定していた最悪よりも、一回りか二回りは異常な内容であった。
「……心臓がねえんだ」
「……は?」
「口の利き方がなっちゃいないな。ま、そういうリアクションも想定の内、だが」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔でこちらを見つめる明石を意に介することもなく、上村は淡々と続ける。
「MRIを使った検査の結果、心臓があった位置は空洞になってることが判明。その代わり、と言ってはなんだが艦娘を建造する際使用されているコアに酷似した何かが収まってたんだと」
「それって、どういう……」
「俺に聞かれても知らんし、研究チームも見た事ねえ現象なんだから何とも言えんよ。恐らく『艤装側にあったコアをそのまま心臓代わりとして奪い取った』ってとこだ」
「そんな話聞いたこともありませんよ。それにコアを奪ったのが事実だとしたら、あの時回収した艤装はどうなったんですか?」
「あー、それな」
身を乗り出して問いかける明石。上村は乾いた喉にコーヒーを通し、一呼吸の後「解体した」と平然と口走った。そして、少女が一足飛びに執務机に詰め寄ったのも言うまでもない。両手を天板に叩きつけ、彼女は声の限り叫んだ。
「なっ、なんて事をしたんですか!? あれはペアリングの解除すら出来ていなかったのに!!」
「ああ、そういやお前さん、嬢ちゃん連れて来てからずっと寝込んでたんだっけか」
「そうですが、それが?」
「……あの艤装なんだがな、嬢ちゃんが接触した後調べてみたら、コアを含めたブラックボックス部分がすっからかんになってたんだわ」
ぽかん、と開けられた口をやっとの事で閉じ、恐る恐るといった様子で問いかける。男の放った言葉が、何かの聞き間違いであることを祈って。
「え……あの、それってつまり」
「ただの機械部品の塊になってた、って事だな。念の為調べてはみたが、結局ペアリングもクソもねえってんでウチの連中の装備に回せるもんは回しちまったよ」
「……本当に大丈夫なんですか?」
「多分、な。中身が無い、動作しないときてる以上そのままは使えんし、少なくとも本人と繋がってない事は確認済みなんだ。鋼鉄と電子部品の集合体をバラす以上の意味はないだろ」
そう言って男は再び背もたれに身体を預ける。未だ釈然としない様子の明石を一瞥し、引き出しから一組の書類の束を取り出す。
辞令、と簡潔に書かれた表題と、そこから下に続く文章。その内容を一通り検め、少女に向けてついとそれを突き出す。
「? なんですかこれ」
「お前さんが聞きたがってた『理由』だよ」
なるほど、と腑に落ちたように呟いて紙束の向きを直し、彼女の表情は凍りつく。そこに書かれていた内容を反芻する間もなく、目の前の男が『明石を呼んだ理由』を高らかに読み上げた。
「工作艦明石、貴官は本日付けで第三特殊艦娘部隊を除籍とする。横須賀第五艦娘駐屯地への『正式』な異動命令だな」
「それでは、華見中佐の件は」
「お役御免だ。今後の調査研究はこっちで行う」
「でも、私には責任が……」
「結果はどうあれ、お前さんは任務を遂行したんだ。もう責任は果たしたろ」
「ですが……!」
「決定事項だ。覆らんよ」
男の表情が険しくなる。その鋭い視線に気圧され、続く言葉を聞く。反論らしい反論は全くと言っていいほど出来ず、明石はそのまま上村の口から今後の身の振り方を聞かされるのみであった。彼の確認にも大きな反応を見せず、形だけの敬礼を済ませてふらふらと部屋を後にする明石の背中に掛けられた一言。
その内容を噛み締めていたのか、暫くの間を経て少女は首を小さく横に振り、それまでよりは幾らか落ち着いた足取りで扉の向こうへと姿を消した。
静かになった部屋で一人煙草を取り出し、マッチに火をつける。咥えたそれに手を添え、先端に赤い火が灯った所で、こんこん、と扉を叩く音。
「入れ」
「失礼します」
抑揚のない声とともに扉を開けて入ってきたのは艦娘不知火。扉の閉まる音以外聞こえないことを訝しみ視線を上げると、非常に不機嫌そうな視線が男を、そして彼の持つ書類を射抜くのが見えた。そして少女の腕には一束の書類が抱えられている。
おおかた、明石、華見京香両名の処遇について思うところがあるのだろう。そう考え再び視線を書類に落とすのを見てか、少女はつかつかと男の居る机の傍まで近づいてきた。
「司令。一体どういうおつもりですか」
「藪から棒になんだ一体」
「言わなくては分かりませんか?」
「……嬢ちゃんの事なら『現時点での脅威レベルはゼロ、コアに生命維持以上の機能は認められず、艤装に関しても深海棲艦化の恐れは無い』って事は少なくとも判明した筈だがね」
「……それは、今現在に限った話です」
そう言った少女の眉間の皺が一層深くなる。しかしそれに対してさしたる反応も見せず、ただ決定事項だと断ずる男の耳に、一際大きなため息が聞こえてきた。
「そうは言うがな。今後の安全を保証できないからって、あの二人を此処にいつまでも置いとく気か? そりゃあ三笠の耳には入ってるだろうが、他の連中にどう説明する」
「それは……」
「嬢ちゃんの件については公に出来ない事情が多すぎる。それに彼処が曲者揃いなのは知ってんだろ? 『深海棲艦化を目の当たりにした司令官から恐れられ異動させられた戦艦』『船酔いで記憶を失った元重巡洋艦』『味方殺しが原因で艤装を使えなくなった駆逐艦』『元深海棲艦かつ、営内での私闘が原因で解体処分を受けた駆逐艦』そんで挙句の果てには『先の伊豆諸島奪還作戦で味方艦隊に少なからず打撃を与えたレ級の中身』だ」
お前、あんな所に普通の人間寄越してまともに指揮官が務まると思うか? そう問いかける男の声は冷たく、感情の色は何も見えない。不知火が何も言い返せないのを確認したか、彼は続けて口を開く。それなりの指揮が出来、諸々の事情を知っていて、尚且つ口が固く、更に言うなれば三特艦や三笠、華見中将ら艦娘配備推進派に近過ぎない者。
華見京香を外すのであれば、以上の条件を全て満たす必要があると。
「そんな訳で、現状一番マシであろう選択肢は『非常連絡手段を持たせて嬢ちゃんと明石を第五艦娘駐屯地へ送り返すこと』だ。代案が無いならその書類見せろ、仕事すんぞ仕事」
「……司令がそれでいいなら、どうぞ。大島の部隊が先の戦闘で回収していた陸棲型及び、漂着した深海棲艦の残骸に関しての経過報告です」
「ほー。で、詳細は?」
受け取った書類に視線を走らせる男と合わせるように、少女はつらつらと詳細を読み上げる。ひとつ、耐衝撃実験の結果、少なくとも小銃程度では貫通させることは出来ず、効果的な打撃を与えるには重量級の火器が必要となること。ひとつ、駆逐級など大多数の深海棲艦と同様に、炭素質の外殻が殆どであること。ひとつ、今回の戦闘跡の調査で新たに、直径およそ四十センチ程度の歪な球形の物を発見したとのこと。
「おいおい……そりゃ卵かなんかじゃねえのか」
「その可能性を警戒し、現在は凍結処理の上、保護ケースに保管し二十四時間体制での監視を継続中との事です」
「なるほどね……で、肝心の中身に関してはいまだ不明、と。警戒はそのまま厳重に行うよう伝えておけ。安全が確認出来次第本土の研究班に回すが、最悪の場合研究は打ち切って破壊も視野に入れろってな」
「了解です」
一際大きなため息を吐き、彼は背もたれを強く鳴らした。
「お疲れ様です、提督」
「ありがと、大淀。それで、私が居ない間はどうだった?」
そして時は移り、第五艦娘駐屯地執務室。執務机を挟んだ京香の向かい側には、天龍らを介して呼び出された事務担当の艦娘『大淀』と、提督代理としてつい先日まで京香の居る場所に座っていた叢雲の二人が佇んでいる。
少しの沈黙の後、京香の問い掛けに答えるように大淀は小さく首を傾げた。
「世は全て事もなし、ですかね。大きな戦闘やトラブルもなく、ここ数日ではごく小規模の遭遇戦があった程度です。報告書はこちらに」
「軽傷者が数名出た程度で艤装、艦娘共に損害は軽微、ね。他は?」
「代行権限で片付くことは大体やってあるわ。京香の承認が必要なのはそこの緑のファイル、赤い方が処理済みの分よ。……あとこれ、今日帰ってくる予定の子達が参加してる輸送作戦の概要書」
アンタが前に言ってた改修関係じゃないの? と言いながら叢雲は一束の書類を差し出す。強襲型艤装輸送作戦、と銘打たれた一枚目を捲り、数十行もの概要に目を通す。端的に言えば、既に前線に投入されつつある改二型の戦闘記録を基に、特に損害が大きくなるとみられる近接戦闘、遭遇戦に対応するための能力を付与しようというものであるらしい。
既に改二化されている金剛型や川内型にも改修案が出ており、試験機が完成している数機を関西以南の主要基地へと移送するのが今作戦の目的であり、その護衛の為に幾つかの駐屯地、鎮守府から護衛艦隊を出した、との事だという。
「近接対応、ねえ。何処も考えることは一緒か」
「……確かに、共有されている戦闘記録を見る限りでも、接近を許した際の対抗手段不足は艦娘の負傷、轟沈などの直接的要因として一定の割合を示しています」
「それはそうなんだけど、私としては諸手を上げて賛成、という訳にも行かないのが難儀なところね」
「というと?」
そう問いかけはするものの、理由を察しているのか大淀の言葉に疑問の色はなく、むしろ話の続きを促すような声色すらある。それに気付いているのか、コホンと一つ咳払いをして京香は続けた。
「確かに、不意の接近を許してしまった際の対策は必要だと思う。空母系の艤装適応の子達は特に自衛もままならない事が多いしね」
「まあ、確かに……」
「かと言って、そこそこの切れ味と強度を持ってる刀や槍なんかをぽんと渡して『もしもの時はコレで身を守ってね』っていうのもちょっと難しいんじゃないかな、って」
何故? という顔をする叢雲に視線をちらと向け、大淀がその疑問に答える。誰も彼もが貴方のように武道、武術の心得があるわけではない、と。要するに、元々戦闘適正の高いオリジナルや、初期艤装として近接武器を拵えている一部の艦娘を除けば、自衛用の格闘武器を渡した所で大半の艦娘は持て余すのではないか、ということだ。
現にこの叢雲は、薙刀に変わるまでの間、艤装として用意されていた槍をただの一度も使おうとしなかったのだから。
「刀は特に扱いが難しいし、金剛型みたいに近接対応能力を艤装に直接組み込むなら賛成なんだけど」
「アンタ自分の軍刀もまともに使えないもんねえ」
「……提督?」
「悪かったわね」
前線に出ない指揮官に武術が要るか、と膨れっ面を晒す京香を見、叢雲と大淀は揃って顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。変わらず不機嫌そうな表情のまま、少女は大袈裟に息を吐き、天井を仰いで口を開いた。
「……それに、私が剣を抜く状況なんて本来あっちゃいけないのよ」
「……それもそうね」
「そう、ですね」
「さて、それじゃあ溜まってるお仕事でも片付けようかしら」
そう言って大きく伸びをする。その後京香の口から出た、司令官代行を務め上げた事への謝辞を受け、二人は敬礼をして踵を返す。そして、叢雲が前に立ちドアノブに手を掛けた所で、二つノックの音が響き、硬く緊張した様子の声がその向こうから聞こえてきた。
「提督。少し、よろしいでしょうか」
叢雲と大淀の二人を下がらせ、彼女は少女と机を挟み対面する。どこか申し訳無さそうな表情をしている京香と、険しい顔をしている明石。今この室内には二人以外誰の姿もなかった。
「それで、提督は何処まで……」
「……ほぼ全部、かしらね。自分の心臓が無くなってることも、艤装側にあったコアがその代わりをしてることも」
そこまで言って、ふと口を噤む。やがて気持ちを落ち着けるように深呼吸をした後、京香は続けた。
「何時炸裂するかも分からない爆弾を抱えてることも」
「……」
「まあ、三特艦の連中が言うには深海棲艦化は認められていないらしいから、単にいつ死ぬか分からない、ってだけかもしれないけどね」
「それは……」
何を言おうとしたのだろうか。思わず口をついて出た言葉が形をとれず宙に消え、その続きを紡ぐことが出来ないまま少女の瞳が揺れる。いつ死ぬか分からない、という点では戦場に出ている艦娘たちも同じことだと、そのような意図の叱責なのか。それとも、深海棲艦化などもう起こりえない、という根拠に欠ける気休めなのか。
掛けるべき言葉も思い浮かばず、きゅっと結んだ口を開くこともできないまま、ただ拳を握りしめる。そうしている内、やっとのことで吐き出そうとした言葉を、京香の手が遮った。
「多分、貴方を上村大佐が此処へ戻した理由もなんとなく分かってる。貴方がどんな気持ちでそれを飲んだのかも」
「提督……?」
「……仮に最悪の事態になったとしても、自分一人で背負おうなんて考えないで」
「どうして」
「あの男は明石をそういうつもりで此処に残した訳じゃないわよ、多分ね」
立場上、艦娘やらを残して自殺しますってわけにもいかないから。そう苦笑いを浮かべ、京香は申し訳ないと頭を下げる。やはり、見透かされているんだ。三特艦を抜ける際に言われた言葉も、明石が長門に対して伝えた意志も、全部。
あの時明石が口にしたのは、そして全うしようとしたそれは『責任』ではない。『人間』であり『深海棲艦』となろうとしていた華見京香が『最悪の事態を引き起こす前に止める』という任務は、あの時既に終わっていた。その後目を覚ました『それ』は『華見京香』であっても既に『ひと』ではなく、事態の進行とともに彼女の手を離れた以上、既に明石が彼女の生死に責任を保つ必要は無くなっていたのだ。
『最期の時には、京香の命を今度こそ自身の手で断つ』それは少女の心に残った意地であり、今となっては、ただの我侭に過ぎなかった。
「上村大佐の考えは分かっているつもりです。……ですが、すみません」
「……随分損な役回りね」
「……私も、貧乏くじは引き慣れている方ですから」
ため息混じりの明石の言葉に、京香は小さく肩を揺らす。
そして、ぎしり、と車椅子を揺らしその身を乗り出した。
「じゃあ、いい事教えてあげる」
「……なんですか?」
「上手な貧乏くじの引き方。……知ってる?」
そして『命の残り時間』を知らない彼女は、悪戯っぽい笑みを浮かべてそう呟いた。
「……身に沁みて知っているので結構です」
「……なんでそんな露骨に嫌そうな顔する訳?」
「だって提督の振る舞いから考えたら『上手に自分の負担を減らしつつ貧乏くじを引いて評価を勝ち取ろう』っていうのじゃなくて『最小の手数で大量の貧乏くじを引いて心身ともに酷使しよう』じゃないですか明らかに! 絶対嫌ですお断りします上官命令と言われようとその講釈を聞くわけにはいきません!」
「そこまで言うならその『最小の手数で大量に貧乏くじを引く方法』とやらを教えてやるわ、其処に直りなさい明石!」
迂闊な一言を口にした少女の額に紅茶のブリキ缶が命中し、すこん、と軽やかな音を立てた。
あとがき
長らくお付き合いいただきありがとうございました、秋月紘です。
初めてブログの方に一話を投稿してからおおよそ一年七ヶ月、ハーメルンに投稿を始めてからは一年四ヶ月と、軽く考えていたより長い期間ちまちまと書いていた『貧乏くじの引き方』もこれで完結と相成りました。
曙可愛いとか最上メインでとかそんな軽いノリが始めるきっかけだったのですが、三話の『船酔い』というワードが浮かんだ辺りから大凡の路線が決まっていった気がします。
プロトタイプでは提督もあくまで狂言回し位のもので、此処までガッツリ主軸に入るとは思ってませんでした。最初に艦娘になった時を含めて二回程生死を彷徨う予定もありませんでした。
実はの話をすると元々は球磨(提督)と叢雲のコンビだったんですよね、しかも適正ナシで弾かれたせいで艦娘になれた叢雲と悪態を付き合う感じのノリを考えていたり。
「その歳で指ぬきグローブとか銀髪赤目とか中二病拗らせてんじゃないわよダッサ!!」
「アンタこそ艦娘になれなくてよかったわね適正あったら今頃真顔で『クマー』とか語尾に付けるアレな感じだったわよ全ッ然似合わないけどね!!」
みたいなアレでしたね。ならなくて良かったのかもしれない。
叢雲の鈴や伊勢日向の過去、深雪と紫子などネタはまだ残っていますが、本編はひとまずここで決着、としたいと思います。書いている内にキャラクター造形を気に入ってしまった京香達のその後とか過去話(日常もの)なんかも書きたいとは思っておりますが、当面はアルペジオ編を進めることになるのではないでしょうか。
そんなこんなで色々揉めたり拗れたり戦ったりしつつな話ではありましたが、気に入った登場人物やシーンなどありましたら幸いです。
それでは、これにて『貧乏くじの引き方』追編、終幕となります。お付き合いいただきありがとうございました。