STEEL HAZE   作:魚の名前はイノシシ

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コード78Eを承認しました。IX BALLと識別名ラスティを向かわせなさい。…なに?まだ再教育が終わっていないから危ないのでは、と?
人は暗闇の中、たった1人で縛られている状況なら5時間も立たず心が碎けるものです。今は約5時間ほど…十分では無いですか?
それに、もしもの時はIX BALLをぶつければ良い。

さっさとしなさい。私の機嫌を損ねるつもりですか?


───
──



エデン条約締結阻止の裏側

 

「… はぁ。マダムの油断にも困ったものだ。普段ならこんなことにはさせないだろうに。やはり、あの機械から漏れ出た赤い粒子を吸ったのが原因か?」

 

再教育センター内部にて、椅子に縛られたラスティと、ラスティに向かい合うようにして佇む1人の少女。

 

「…確か、ジェネレーターを分解していたら漏れ出たという…?」

 

責問官と、虜囚。その対面でありながら会話が成立する。

 

「そうだ。技術者の作業を近くで見ていたマダムは勢いよく吹きでたそれを顔面に食らったらしく、それからというもの以前とは違うことがわかるほど意識が明らかになっていない…らしい。技術者はしっかり避けたそうだ。」

 

責問官が右手に持った緑色の怪しい液体をラスティに注射する。すると、じわじわと傷が塞がっていく。流れた血や荒れてしまった見た目はそのままのため怪我をしていないことはよく見ないと分からないだろう。

 

「ぐっ…だがその粒子は漏れたあと、近くの技術者が持っていたまだ火がついていたバーナーに焼かれ発火。連鎖するように全て燃えたんだろう?」

 

「…そう伝えているだけのようだがな。あれは残っている。マダムが時折席を外し我々ヴェスパーの部隊まで足を運ぶことがあるだろう?あれは、誰にも怪しまれずにあの赤い粒子を摂取するためだった、というのが判明した。お前が表で仲間を集めている間にな。」

 

「そうか、ありがとう。」

 

「…だが、危険なことであるのも判明した。あれは一種のクスリのような作用があり、自己増殖を続け、物体を侵食する性質を持つ。言わば万能な劇物だ。」

 

「そんなもの、もし増殖が続いてしまったら…!?」

 

「このアリウスは、最低でも吹き飛ぶ。ジェネレーターから漏れた少量だけで、あの巨体を全部消し去った程だ。トリニティもゲヘナも、最悪、キヴォトスすら焼いてしまいかねない。」

 

「くっ…」

 

何も知らずに生きてきたことに悔しさを感じつつも早急に対処しなければならないことが増えたことに歯噛みする。まだ何も出来ていないというのに。

 

もう一本、今度は鎮痛の効果がある液体の入った注射器を刺す。

 

「暫くはこの回復剤を注射する。それまで体を休めるんだ、ラスティ。マダムはお前だけが裏切り者だと決めつけていて、他の仲間は疑われていないからな…」

 

「交代の時間だな。…ラスティ、次はネストだ。アイツはどちらかと言えばマダム寄りだ。気を引き締めていけ。」

 

「ああ、分かった。」

 

再教育センターにて。V.III ドンライが交代の時間となり、こんどはV.II ネストが入ってくる。

 

「久しぶりだなぁ?第4隊長殿。どうだ?再教育センターの空気は。外に出ていた貴様にはさぞ不味いだろうな。」

 

「久しぶりだな、ネスト。今の今までずっと、この空気を吸っていたんだ。別に苦でもないさ。」

 

「はっ、そうかい…さて、無駄話も終わりにしよう。空の注射器を見るにドンライの奴は薬物の投入などという甘い仕事をしていたみたいだが私は違う。せいぜい喉が潰れないよう耐えることだ。」

 

椅子に電流を流し拷問を始める。

 

「ぐっ!!…はぁ、少し刺激的だが、私を叫ばせるには足りないな?それともこれが君の優しさか?」

 

「…その戯言も相変わらずだな、ラスティ。ならばお望みのように刺激を強くしてすぐに心を折るとしようか。」

 

責問室に置いてあるペンチを取り、椅子に縛られているラスティの前に行くと、ラスティの腕をペンチで少しだけはさみ、ちぎる。

 

「ぐぅぅうう!!…ふぅうう!」

 

その痛みに呻き、玉のような汗をかきながら耐える。

 

「さあ、始めようか。お前の仲間を話せ。」

 

ペンチをゆらゆらと揺らしながらカチン、カチンと鳴らしラスティの内にある恐怖を掻き立てる。

 

「…っふ。この程度で、そんな情報を言うはずがないだろう?」

 

「ならばもっと苦痛を与えてやるまでだ─元リーダー。」

 

 

ガチン、と笑う。18度目。

 

「この方法で心をおったのは何人だったか?30人か、40人か…何人だと思う、ラスティ。」

 

「さぁ、なっ!…ッ!!」

 

知らんぷりをするラスティ。ちぎられてできた傷口に、閉じたペンチを突き立てられて弄ぶようにグリグリと傷をえぐる。

 

 

ガチン、と鳴く。22度目。

 

「しかしまぁ、あれだけマダムのそばに居ておいて反逆を企てるとは、相変わらずだな?V.IVラスティ。」

 

「…っ!私は…!私の目指すものを求めて飛ぶだけだ…!」

 

ペンチについている黄色いボタンを押したネスト。すぐ後にペンチのハサミの部分に椅子に流れるものとは違う電流が流れるソレを、喉元に押し当て首を痺れさせる。

 

 

ガチン、と哀れむ。39度目。

 

「…理想に囚われ現実を見れない愚かさほど虚しいものは無い。そうは思わないか?早いところ仲間の数と名前を吐いたらどうだ?」

 

「ぐぅぅぅ…!はぁ、はぁ…吐いたところで、楽になる訳では無いだろう?私は…私の目指すものは…!」

 

30回目のちぎりで止まった電流、それの代わりとしてか今度は水色のボタンを押す。見ていると次第に冷気が漏れだしペンチは凶悪な冷たさを宿す。硬く冷えたペンチを振り上げ、ラスティの側頭部を思い切り殴りつける。

 

 

ガチリ!と怒る。…126度目。

 

「いい加減に!折れたらどうだ!この!頑固者が!…はぁ、はぁ。

貴様は昔からそうだ。優柔不断な見た目をしておいて、1度決めたら突き通そうとする…目障りだ。貴様も、貴様を前に立たせようとする巾着共も!」

 

「がぁあ、ぁ…!…!─折れるわけが無い。君が巾着と呼ぶものたちは、私にとって…かけがえのない、同志だ。ぶぉ、ぇ…!!…プッ!はぁ、はぁ…何をされ、何を言われようと、私が挫けることはない…!」

 

長いこと何も喋らないラスティにとうとう苛立ちが溢れてペンチと拳で何度もラスティを殴りつける。腫れた頬、そのうち左頬は一筋の切り傷ができ、右頬は殴られた跡が残る。こめかみの部分には青アザができ、鼻からは血が流れる。腹を蹴られて内蔵の傷が開いたか吐血する。

 

 

 

ガチ、と呆れる。…216度目。

 

「…本当に話さないつもりか。そんなだらけになり醜い獣のような見た目になってなお意識を手放すことすらしないとは。感心よりも呆れが来るぞ?」

 

「…はぁ─はぁ─言った、だろう…?私は…挫けないと。君の方こそ、ずっと同じ、やり方だな…私こそ、呆れてしまうな。単一的な思考、そうしろと、マダムでも言われたか?」

 

「─はっ。私から情報を得ようとするとはな。だがここまで耐えたんだ答えてやろう、正解だ。マダムはどうやらこれが一番効率がいいと思っているようで、このやり方を続けるように言ってくる。」

 

(やはりマダムの脳が硬くなっている…いや、溶けていると言うべきか。それにはあの赤い粒子が原因と考えられるな。…仕方ない。その役回りも、黒い鳥として相応しいか。)

 

「続きを『ぴぴぴ、ぴぴぴ』…時間か。まぁいい。これ以上は時間の無駄だからな。せいぜいその精神力で耐えることだ。10時間の暗闇の中を独りでな。」

 

アラームがなり、少し疲れたように息を吐き立ち上がるV.IIネスト。

ゆっくりと扉に歩いていき、唯一着いていた一つだけの電球を消し、錆び付いた扉の金属のこすれる思い音が響く中、1度だけ傷だらけで血まみれで、己が見るに堪えない姿にしたラスティの方に振り向きこう伝える。

 

「最後に忠告しよう。─これ以上、大人に逆らうのは、辞めておけ。」

 

それを最後に開かれた扉を潜り、また金属の音を響かせながら扉が閉まる。自身の手元も見えない暗闇が、ラスティを包み込む。

 

 

 

 

 

しばらく時間が経ち、神秘もある程度回復した頃。空腹で喉も乾いて、暗闇の中にいすぎて自分を留めることに必死になっていた頃に急に扉が開く。

 

「識別名ラスティ。大人を裏切ろうなどと思い上がっていた貴様は、自分の身の程を弁えたか?」

 

アリウスに虐待まがいの訓練を施していた教官の1人が、カツカツと踵を鳴らして血まみれで項垂れるラスティの前に立つ。

 

「……申し訳、ございません……申し訳ございません……」

 

何やら扉から聞こえてくる音がいつもより騒がしいことに気づき、もしかしたら外に駆り出されるかもしれないと思いちょっとした演技をする。

 

「拘束具を外すが妙な真似をしたら今度は手足が無くなると覚悟しておけ。……ではまずは頭を地に付け大人に対する反逆を企てたことを謝罪しろ。」

 

「……愚か、にも……使われるだけの分際で……歯向かおうなどと考えたこと……お許しください…と…申(もう)しません……」

 

「よし、もう良いだろう。他のチェックの項目ぅ…は、すっ飛ばしてもいいか、緊急事態だし。では貴様のマスクと、我々に向けたらセーフティがかかる銃と貴様の銃を支給する。受け取り装備したら直ちに戦線に向かえ!」

「……コード5。ラスティの心が折れているのを確認。IX BALLをスクワッドの援護に、ラスティを空崎ヒナの撃破に向かわせる。……確認はした。全て問題なし。」

 

(なるほどな。スクワッドはやはり追い詰められたか。過去の亡霊をどう呼び出していたかはざっくりとしか知らないが、それが何かしらで使えなくなった……もしくは奪われたと言うことか?もしできる人物がいるのなら……それは先生だけだ。)

 

「目標はシャーレの''先生''。のこのこと戦場に出てきて、頭の悪いヤツに従う子供も大概愚かだな!」

 

愚か者の笑い声が地下に響く。

 

 

To Be Continued……

 





(2024/11/26)拷問シーンに少し文を追加しました。

次回─「エデン条約締結阻止(2)」

行く末をどうするか

  • 『ヴェスパーの災禍』
  • 『アリウスの解放者』
  • 『壊滅』
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