STEEL HAZE   作:魚の名前はイノシシ

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『届かなかったか…!戦友…』

最期に見た光景は、意志を貫く黒い鳥。


CHAPTER 1 ゲヘナ潜入
ヴェスパー


 

 

 

いつからだろう。自分の周りから笑顔が無くなったのは。名前の他に、識別コードが割り振られるようになったのは。

 

「─次。Ar.50 識別名 ヴェスパーV、ハミングバード」

 

「はっ。」

 

「次。Ar.51 識別名 ヴェスパーIII、ネスト」

 

「はっ。」

 

いつからだろう。みんなの目から光が消えて苦しみ続けて、支配者の手下たちの目の届くところで雑談が許されない環境になったのは。

 

「次。Ar.52 識別名 ヴェスパーII、ネレッタ」

 

「はっ。」

 

いつからだろう。いつから、空に憧れたんだろう。ここでは憧れも希望も願望も処罰対象だと言うのに。

 

「次。Ar.53 識別名 ヴェスパーI、オーネスト」

 

「はっ。」

 

どうしてだろう…なぜ私はこんなに馴染めているのだろう。心は願いを持っていると言うのに、体はみんなと同じく絶望しているような…

 

「次。Ar.54 識別名…」

 

─ヴェスパーIV、ラスティ

 

「はっ。」

 

「ラスティ。貴様の最近の働きぶりがマダムに評価され、直接話があるそうだ。点呼が終わったら直ちにマダムの元へ向かうように。」

 

「了解。」

 

─それはきっと、窮屈な世界を飛び出して、空を自由にどこまでも高く飛んでいく黒い鳥を見た時からだ。

 

 

………

……

 

言われた通りあの後マダムのいる生徒会室に来た。3回扉をノックして名を名乗る。

 

「マダム。Ar.54 ラスティ、到着しました。」

 

『入りなさい』

 

「失礼します。」

 

中に入るとこの自治区の支配者、ベアトリーチェが椅子に座り待っていた。上位者気取りの赤ババア

…大人がその席に座っていることに違和感を持つ。ベアトリーチェが話しを始める。

 

「さて、早速ですが用件を伝えます。まず私があなたを呼び出したのは貴方に行ってもらう任務があるからです。単独でも協働でも、任務の成功率が限りなく高く、冷静で状況判断能力のある貴方に…

内容はゲヘナ学園への潜入調査。貴方の来歴を適当に作りゲヘナ学園へ編入してもらいます。戦力調査、戦術把握、内部事情を私に流すのが今回の任務です。カタコンベを通りゲヘナへ向かいなさい。案内人は私から言っておきます。…今回の任務は重要なものです。上手く隠しているようですが、その内に秘めているゲヘナとトリニティへの憎悪、くれぐれもゲヘナの者たちにバレないように。アリウスの存在をバレてしまうことは絶対に許さない。くれぐれも、バレないよう気をつけなさい。」

 

「はっ。光栄です、マダム。」

 

「出発は3日後。この期間内で準備を整え万全の状態で迎えるようにしておきなさい。以上、戻りなさい。」

 

「はっ!」

 

一礼し退室する。特に怒らせることも喜ばせて余計な話をされることも無く終わったことに心の中で安心する。後はこのまま戻り、仲間たちにしばしの別れを告げて3日後を待つとしよう。

 

 

 

…どうやら、バレては居ないようだ。

 

 

 

 

 

 

「では行ってくる。」

 

「うぅ…ラスティ〜…気をつけてね…」

 

「そう泣くな、ハチドリ。私は必ず戻ってくる。()()()()()()()()()()()()を持ってな。それに泣きすぎると士気を下げただのと難癖を付けられて処罰されるぞ?君の方こそ気をつけてくれよ。」

 

「ラスティ。…行ってらっしゃい。気をつけてね。」

 

「ああ。行ってくる。クダリも気をつけて過ごすんだ。ハチドリのサポート、頼んだぞ。」

 

「環境の変化にもだが、()()の思惑に注意を。奴らは血気旺盛と聞くからな。」

 

「そのつもりだ。ま、たとえ()()が襲ってこようとも返り討ちにしてやるさ。」

 

「ああ、今まで時間を共にしてきたご友人が遠く離れた敵地へ行ってしまうとは…悲劇だ…!私達は貴方の帰りと()()()()()()()()を期待していますよ…」

 

「ああ、オーネストも五体満足でより強くなるんだぞ。私が戻った時、()()()()()()からな。」

 

「時間だ。カタコンベを抜ける。…くれぐれも裏切ろうなどと思うなよ。ラスティ。Vanitas vanitatum et omnia vanitas…この警句を忘れるな。」

 

「案内を頼む。…裏切りなどするはずがないだろう、忘れるなんてもってのほかだ。戦火の灰に生きてきた同志を、この世を表す警句を。」

 

私の仲間たち、アリウス特殊任務作戦行動部隊ヴェスパーの皆と挨拶を交わして案内人の後をつけて外へ行く道に足を進める。

 


 

アリウス特殊任務作戦行動部隊ヴェスパー

 

通称【特務部隊、ヴェスパー】。スクワッドと並ぶ実力を持った作戦行動部隊。違いはロイヤルブラッドの護衛をしているスクワッドよりも難易度が高い任務を遂行することぐらいだ。

 


 

会話なくゲヘナに続く道を任務内容とやるべき事を思い返しながら歩いているといつの間にか到着していたようだ。

 

「着いたぞ。せいぜい頑張ることだ。」

 

そう告げた案内人は足早にカタコンベに戻っていく。

 

「行こうか、【スティールヘイズ】」

 

愛銃のハンドガンに声をかけ、ゲヘナを歩くがアリウスには無いものが多く存在し、つい辺りを見渡しながら歩いてしまう。あ、食事処が爆発して煙の中から4人の生徒が悠然と歩いて出ていった…あそこでは大規模な工事をしているのだろうか?それにしては楽しげで、かなりの爆発音が響いている。

 

「ふむ。ゲヘナの工事現場か…一見しておくのも悪くは無い。現場の様子を見ておくだけで建物の強度や突ける隙を見つけられるかもしれないからな。」

 

爆発音が轟く方へ足を進める。早速ゲヘナの情報を入手するために…*1

 

 

そういえば、ヴェスパーに3ヶ月だけいた''あの子''は今どうしているんだろうか。

 

To Be Continued… 

 

*1
ただアリウスにない状況すぎてワクワクしてるだけ。





このラスティは背中と脚部に特殊なブースターが着いてます。肉体に直接くっつけてないから整備は手軽にできるし肌に近づければ勝手に吸着して、装着者の意思無き場合は外れないトンデモ装備。


次回─「来るんじゃなかった、こんな場所…!」

行く末をどうするか

  • 『ヴェスパーの災禍』
  • 『アリウスの解放者』
  • 『壊滅』
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