戦闘描写は薄く…あんまり長いと私が蒸発しますからね。
「…おかしいですね。V.IVの生体反応がない。アレに埋め込んだ追跡チップは肉を大きく抉らないと取り出すことなど不可能…その上取り出そうとすればヘイローに干渉するショックが流れるはず。死んだとしても生命反応を利用していないから位置は確実に分かる。つまり──」
「チップごと体に穴をあけられた、と?」
「……手駒にして使い潰す予定でしたがなくても良い駒、困ることは無い。ところでV.I、ネズミどもの様子は?」
「執行部隊により次々に片付けられています。始末していないのは後で見せしめにするつもりか、悪癖かは分かりませんが悪いことにはならないでしょう。牢に繋げばどうとでも。」
「スクワッドは?」
「未だ捜索中です。度々戦闘の報告は上がっておりますが、シャーレの先生とやらが味方をしていて戦闘のいずれも鳥が飛び立った後のように何も残さず、忽然と消えているとの事。」
「…シャーレの先生。やはり不思議な存在ですね。もしや彼は対等なライバルたりうる存在になるか…はたまた、私の脅威となりうる危険因子であるのか。一先ずスクワッド及びシャーレの先生は様子見。捕えられるのならスクワッド諸共捕らえるよう通達を。」
「はっ、ではそのように。」
「下がりなさい。」
「はっ、失礼します。」
「……ええ、分かっています。ふふ……待ち遠しいですね、【パンドラ】。全てを散逸させて焼き溶かし、統合し、取り込み、支配する。それにより私とアナタは必然的に存在が押し上げられ…上位者、王となる……遍く生命がコーラルと統合され、私達が支配する世界は、楽園に違いない。そうでしょう?フフフフフ……」
(きっしょ、何話してんだろ…まぁいいか、コイツが玉座から落ちるのも時間の問題。そうすればアリウスに私のアリーナを作る夢が叶うぞ…!)
「開発しておいて良かった…【ターミナルアーマー】と【ミステリリペア】…さて、連絡は……」
「…ふむ、あの子がIX BALLに近づいた上でやられなかったという事は、それほど弱っているのかレッドガンでそれなりの情は戻ったか。アソコは少し刺激的でアリウスよりかは情がある。可能ならレッドガンに縛り付けておいて欲しかったが…IX BALL 相手にそれは高望みか。」
「シャーレが錠前サオリを保護、レイヴンが連れていたスクワッド2人と何か話してどこかに行った…アリウスだな。スクワッドのことはよく知らないが秤アツコの救出か?」
「しかしシャーレ、多忙だな。つい先日まではミレニアムで、時を経たず今度はアリウスで戦いの指揮か。まぁ恐らくトリニティで用事に出かけた時、散歩か何かでそのままと言ったところか?」
「…同士たちの準備も整っているはずだ。例え執行部隊が来ようと【アレ】が出来ているなら関係ない。再教育センターとファクトリーを諸共、跡形もなく潰してやる。」
「レッドには単身で来てもらうか。元々はレッドガンを連れてトリニティと…って話だったが既に色々崩れてる。レッドなら理解してくれるはずだ。」
「…という事だ。当然、来てくれるだろう?」
「私とお前の2人行脚か?」
「いや、後でもう1人合流する。それに向こうに着けば同士が居る。私含めてトリニティやゲヘナへの悪感情よりも地元の解放だったり外へ出る自由を優先している異端達だから信用はしておいてくれ。」
「時間によって道が変わるとかいう迷路はどうやって突破するつもりだ?」
「私の傭兵仲間に、先生に発信機能とBluetooth機能のある少しだけ重量のある手紙を渡すよう伝えてある。手紙は既に渡してあるからこれを追跡する。後で合流するのがこの仲間、レイヴンだ。」
「秘密兵器とやらの回収はどうする。聞けば執行部隊とかいうグンタイアリが粛清してる可能性もあるんだろう?」
「カタコンベを抜けた先のアリウス自治区に解放戦線の第3拠点がある。まぁ、ただの廃墟だが…そこに秘密兵器が揃っている。」
「……全身の包帯についてもイグアスの事もまだ色々と問い詰めたいことがあるが、まぁいいだろう。私を呼び出したんだ、既に向かう準備は出来ているな?支配自治区アリウス強襲作戦の決行だ!気合いを入れろ、G9!!」
「愉快な遠足の始まりだ!!」
先生達が一時休息を取っている時、ラスティとレッドは姿を現し接触する。
「やあ、先生。アリウススクワッドの方は久しいな、エデン条約以来か?」
「V.IV、ラスティだと…!?」
「死んだはずじゃないんですか…?」
「どうやってか知らないけど、生きてるから目の前にいるんでしょ!」
「我々に交戦の意思はない。信じるかは任せるが、貴様らがここにいる事情を察するに利害は一致しているはずだ。どうする?」
「G1、ミシガン?なぜV.IVと共にいる?」
「質問に質問で返すな、話が進まんだろう。それで?まずはそちらの返答をお聞かせ願えるか?」
''信じるよ。ラスティやレッドが悪いことを考えてコソコソするタチじゃないのは知っているし、なにより私の生徒だからね。''
「……先生が言うなら、私たちはそれに従おう。」
「戦力はあって困らないし、裏切られてもどうすることも出来ない。」
「速攻のV.IVにゴリ押しの歩く地獄…うわぁーん!私たち、このままなにも出番なく終わっちゃうんですか!?」
「安心してくれ、君らが裏切らない限り私達は攻撃しないことを約束する。そして、出番についてだが私たちもやることがあってここに来ている。途中で別れるから基本的な戦闘はお前達にしてもらうつもりだ。いざと言う時、そこの先生との連携が取れなかったら目も当てられないからな。レッドもそれでいいな?」
「お前たちの手に負えない敵、戦闘中のシャーレの護衛くらいは受け持つ。突っ立って見ているだけの役たたずなどこの場には要らん。」
「では行こう。私は長く離れていて変化した道が分からない、先導はスクワッドに任せる。」
「ああ、分かった。」
カタコンベの入口にて。
「ラスティ。」
「来たか、レイ。」
「ん、途中で壁壊して反応を追ってきた。」
「ほう、ソイツが話していた渡鴉だな?そこそこやるようだが……」
「レイの腕については心配するな。私が保証する。レイ、私の隣にいるのは魅友恵レッド。ゲヘナの治安維持組織レッドガンをまとめる総長で、およそ人間があつかえてはいけないような物を獲物に戦う。今回の、今まで受けてきた屈辱をレッドガン式『感謝』によってアリウスの親玉を泣かせる作戦の助っ人だ。
レッド、この子は白烏レイ。私が脱獄する時に拾い上げた子だ。幾度となく共に仕事をこなしては戦場と寝食を共にした戦友だ。見ての通り重ショットガンの二丁持ちで戦う。一度打てばリロードが必要だが、その分威力と衝撃力に事欠かない。強さの指標で言うのなら番外のG13が合うはずだ。今は私と組んでいる。」
「ほう、貴様にそこまで言わせるか。だが実力を示さない限りは信用しきることは出来ない。最後は私の判断によるからな。」
「ああ。…レッドとこうして共に戦場へ向かうのは何時ぶりだろうか?場違いとわかっているが、今更ながらに嬉しく思う。」
「…ミドモ、貴女がいつ知り合って仲良くなったか知らないけれど今のラスティの相棒は私、古い女は離れてて。昔の女なんだからそれ以上近づかないで。ラスティも、私の前でミドモと仲良くしないで。」
「聞いていた奴と同じか?愉快な性格をしているな、私との初対面であだ名を付けてくる奴は初めてだぞ。」
「驚いた…これ程まで感情を取り戻していたとは。さすがレイ、戦闘における強さだけでなく時間と共に育むべき感情までも成長が早いとはね。」
「以前に任務で向かった先で出来た友人が『大切な人に昔の知り合いが現れたらこう言ってやると場が温まるよ、この発酵させたただの飲み物みたいに』と…不快にさせてしまったなら、ごめんなさい…」
「気にするな。イグアスのようなヤツだったら整形してやったが、分からないなりの努力ならな。だが、そういうジョークは人によって感じ方が違ってくる。気をつけられるように精進しろ、G13!」
「ん、ありがとうミドモ。」
「そうか、レイにもちゃんと友人が出来たんだな…!」
暫く歩き、当初の目的地たる第3拠点のある区域に入ったところで。
「…待て、止まるんだ先生、スクワッド。」
「まさか、アレって……」
「上位執行者たるを表す黒い礼装、目元を覆う包帯、背中に担いだ大きな銃斧、緻密な神秘操作術……間違いない!想煙イズだ!」
「イズ、って…!?」
「なんでそんなのがこんな所にいるんですか?!ま、まさかマダムが本気で私達をこ、殺すため、に…!?」
「か、あの引き摺っている解放戦線の掃討が目的か…だが、どっちにしろ通るなら奴を打ち倒すしかないだろう。ここら一帯はまだ解放戦線の者たちがいるはずだ、しばらく離れないぞ?」
「お前達!私達を忘れて話を進めるんじゃない!奴はなんなのか、全部共有してもらうぞ!」
「全部は無理だから簡単に話すぞ。執行部隊とは、アリウスにおける過激な風紀委員会みたいな物。それに所属するのが彼奴、想煙イズ。奴は射程距離が5〜10m程度しかない散弾銃と鉄の骨組みに硬い木材で造られた外側の車輪を使う、キヴォトスでも珍しい近接系だ。それと、無闇に攻撃する瞬間を見せたらそこで終わりだ。動作に合わせて的確な銃撃で体勢をクズし致命の一撃を叩き込んでくる。大雑把な攻撃は攻撃を誘う罠と心得ておいてくれ。後はあの車輪には変形機構があるらしいが、私とは所属する部隊が違うから詳しくは分からない。…言うべきか分からないが、彼女は私と血の繋がりはないが苦しい幼少を共に乗り越えた家族でもある。」
「スクワッド、シャーレ。奴は私が対処する、良いな?」
「すまない…頼む、レッド。」
''無理はしないで''
「無理などあるものかよ。丁度いい、G13の先取り見学だ、レッドガンの総長ミシガンの戦いを日記に付けておけ!」
「…ハァ──どこもかしこも、アリウスを食いちぎらんとする獣ばかりだ。そうは思わないか?──V.IV。」
「憐れだな。目の前の敵を見えてすらないか。」
「苦しいことしか無い場所だ、死んだ方がマシな日もあった。だがここは我々の故郷で、我々の家、居場所。それを崩すなど、直す力もないのに愚かでしかない。壊すも直すも全て力ある者の特権だ、義務ですらあるが…我々のように力を持たないものにはその権利なぞ無いというのに全く嘆かわしい─────」
「G9。奴の目はよぉく覚えている…クソッタレに狂った目だ。奴を家族と言っていたが今正気に戻すことは時間が許さん、気に食わん支配者気取りのババアをぶちのめしてからだ。良いな?」
耳につけているインカムを通じてラスティに一方的に伝達すると、目の前の敵を見据える。
「───だから我々は我々の手で、我々の居場所を家を故郷を守るために!…マダムの矛となり盾となりアリウスの秩序を守っている。お前も本来その為の組織にいる筈だが……愚かしい女だ。そこの女に唆されたか?獣共に感染されたか?どっちにしろそのままではお前も、どうせそうなる……」
「近接となれば殴り合いと相場は決まっている!」
「【獣狩り】の業を、ご照覧あれいッ!」
レッド対イズの戦いは拮抗している。車輪を大きく振り回し強く叩きつけながら片手の銃を何時でも発砲できるように工夫された姿勢を取り続けているイズの戦い方。それは耐久力やスタミナが飛び抜けている事でもある。
レッドはイズの攻撃の最中を狙い拳を叩き込んで居るが一向に勢いは沈まない。隙を狙った銃撃を受ける時があるものの、レッドの強靭な体幹は崩れることがなく、また車輪の攻撃もカウンターを合わせられるか避けられるかして決め手にかける。
「お前か!お前がV.IVを誑かしたんだな!?許さん…断じて許さんぞ!!」
「激昂してなお判断は鈍らないか!ナンバーに空きがあれば勧誘していた所だ!」
突如激昂し、地面を強く叩き土埃を立ち上げる。待たずして突進を仕掛けるイズの手に握る車輪は変形し回転が加わっていた。変形前では埒が明かないと、土埃に隠れて変形し奇襲。
それをレッドは半身翻しカウンターを狙うも、回転する車輪を突進の勢いのまま地面に押し付けイズは車輪を握る腕を支点に体を浮かせて方向転換。レッドはサーカスでも滅多に見ないような行動を戦いにおいて実践するとは思わず一瞬呆けてしまい避けられない。咄嗟に腕を交差させ受け止めることが出来たが、呆けてしまった分回転は止められずダメージを受ける。
「出ていけ!このアリウスから出ていけ!」
「ぐっ……!」
決定的な隙をさらしたレッドに勝機を見出し勢いづいて更に猛攻を仕掛けるイズ。得物を無駄に大きく振り回したりなどはせず、ただ車輪で敵を殴ることを意識する。一歩踏み込み胴を削らんと横に振り、ステップを踏み低姿勢で下から上へ斜めに袈裟に振る。正面から殴り掛かりもする。レッドはその全てを躱すことなく、拳をうちつけることで相殺し続けた。目論見は、相殺を続けた後に回避し、偽りの勝利の確信を抱かせるもの。
「捉えたぞ侵略者!」
「こちらのセリフだ!」
レッドの目論見は叶い、回避を見て弱ったと勘違いさせられたイズは回転を止めた車輪を両手で持ち、飛び上がり叩きつけを繰り出した。レッドは神秘を込めて車輪を迎え撃つと車輪はあっさりと砕け散り、衝撃が空中のイズを弾き飛ばす。
「しまっ、しゃ、車輪が!?」
いきなり衝撃が体を打ち抜き弾き飛ばされたイズは受け身を取れず地面を転がる。手元にあるはずの車輪は、残った持ち手のみ。いや、その持ち手もヒビが入りボロボロと砕けた。
「ま、たっ」
「レッドガンの流儀を覚えていけ!泣きを入れたら、」
尻もちを着き、片手を伸ばして静止を願いながらじりじりと下がるイズをレッドは気にもとめず振り上げられた拳は涙目で震える腕を伸ばすイズに向けられる。
「ボブッ!?」
「もう1発だ!」
勝者 G1ミシガン!
「ちょっとした戦いは合ったがレイ、先生、スクワッド。ここら辺でお別れだ。最初に言った通り私達の目当てはこの付近にある。手に入れたら別ルートからマダムのいる所に合流しよう。」
''やっぱり危険じゃないかな。いくら2人が強くても、さっきの子みたいな強さをしてる子だったり、──「先生」
「心配してくれてありがとう。嬉しいよ…だが、私達にとってそれは不要だ。ここは私のテリトリーでもある上、レッドに物量は効かない。」
「そういうこった!…スクワッド、ここから先はお前達の選択が道となる。このアリウスが濁流に呑まれるか自由を掴むかは解放戦線だけでなく、お前達にもかかっていると思え!分かったなら先生を連れて、サイズの合わない椅子にふんぞり返って贅肉をこれでもかと蓄えている厚化粧年増をぶちのめしてこい!!」
「いいか、泣きを入れたらもう1発だ!忘れるなよ!」
To Be Continued……
次回─「偶然の【5】」
行く末をどうするか
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『ヴェスパーの災禍』
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『アリウスの解放者』
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『壊滅』