STEEL HAZE   作:魚の名前はイノシシ

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「かの人物は、子ネズミ、フーテン、ドブネズミ等々揶揄されてきましたが。私が思うに彼女は''グッド・ガール''…【パッチ・ザ・グッドラック】というのが1番ピンと来ています。」
「【パッチに幸あれ】ってこと?アコちゃん、ついに美味しくないコーヒー飲みすぎた?」
「誰のコーヒーが美味しくないですって!?」
「ヒナ委員長が美味しそうに飲んでる所見た事…ぐぇえ!?」
「ギギギグィィいいい!!」
「言葉を話してくださいアコ行政官!」






この匂いは…

 

「けっけっけ…あの女の部屋に明かりがねぇと思ったら、こんな夜中に外出たぁな。しかも秘密の逢引と来たもんだ…やることは分かるな?」

 

時はミシガンが寮を出てラスティと共に先生を追跡するところ。ミシガンの後方にはふたつの人影があり、それらはミシガンを追うことについて話していた。

 

「ふぁ〜ぁ…ったく、【イグアス】テメェそんな事のために起こしたのかよ。そんな背中向けてる獅子のケツ穴なんて……見に行くに決まってんだろ!」

 

「だろ!こんなの絶対面白い!万魔殿の文屋にでも売り込めば小遣い稼ぎにだってなる!俺たちの武器にだってなる!」

 

しかしイグアスに対する彼女は大人ではない。胡散臭い詐欺師から商売について学びつつも、心にある熱は失われておらず、スリルある行動を取りに行く子供であった。

 

「さぁ出発だ!カメラは有るな?財布は置いてきたな?やつの背中は見失ってないな?!」

 

「おうよ!」

 

「しゃあ!行くぞ【ヴォルタ】!久しぶりのタッグだ、気合い入れてけオラァ!」

 

G4とG5。片やリハビリを超え更に鍛えられたことにより強く固くなり、片や新たな武器と昔ながらの相棒の復帰に調子がグンと上がっている。

 

「「弱み握りに行くぞォ!」」

 

深夜テンションで盛り上がる2人は、久しぶりのコンビということもあり調子は今までで最高潮である。

 

 

 

そしてミシガンがカタコンベに入っていく時。

 

そこら中に倒れているアリウス兵たちを気にとめず踏みつけて歩く2人。ここら辺のはあらかた片付けられているらしく、新たに敵が現れることはなかった。

 

「なんでこんなとこ…まさかあの強ぇバカ()を引き戻しに?」

 

「ねぇだろ。バカ()とはいえアイツはアリウスのクソガキ、引き戻してどうすんだよ。」

 

「だったら尚更、ただのデートでこんなところ来るなんてただもんじゃねぇぞ……?ミシガンの奴、どこで拾ってきやがった?」

 

「それはあれだ、アレ。あのバカ()野良犬(首輪付き)をぶん殴って、次いでにアリウスの奴らもぶん殴るバイオレンスデートってやつだ!……雷帝ン時の女だろ。ヨリを戻したんじゃねぇの?バケモノにはバケモノが似合いだぜ。」

 

なおこの会話は見逃されている。色んな意味で。

 

 

 

次に先生と合流したところ。

 

 

「あれはシャーレの?」

 

「…なんかやばくねぇか?コイツはクセェ。」

 

「あぁ、そうだな。コレは匂うな、そこらのゴミに混じって匂いがプンプンするぜ。」

 

ミシガンともう一人の深夜外出、そして先生を含め3人程のグループとの合流。場所は場所だが、あの出来事を超えた今一応は有り得なくは無い。それに加えて深夜テンションも混ざっている2人の行き着く結論は……

 

「「先生とミシガンのダブルデートって…ことか!?」」

 

──あるわけねぇだろ馬鹿共が。先生達(あそこ)の空気見ろよ。

 

レッドガン隊員の誰かしらが見たら、そう言った事だろう。まぁこういうものだ、気を抜いている訳では無いがテンション上がってる時の思考回路というものは。

 

「おいおいおい!マジならこんなの端金どころじゃねぇぞ!?」

 

「く、ははは!おい、写真!写真おい!」

 

「せ、急かすなって!…よし撮った!撮ったぞ!」

 

「よっしゃあ!依然としてミシガンの相方は上手く見えねぇけど、こいつを編集して売り捌けば……ひひっ!笑いが抑えきれんぞ!いひひひひ!」

 

「俺もだぁ…!おほほほ!」

 

「「うはははは…!!」」

 

先生たちには気づかれていないが、この笑い声に引き寄せられてアリウス兵がわらわらと現れ、現れた所から溶けるように潰されていった。

 

 

想煙イズ戦にて

 

ミシガンが割とマジバトルをしている様子にようやくデートなんてシャレたものじゃないと気づいた2人。硬さゆえに割れない地面に叩きつけられる敵を憐れんでいる。

 

「なんか違うな。絶対。」

 

「イグアス、カチコミじゃねぇか?コレ。」

 

「クソ、やけに楽しくなさそうだと思ってたら!俺たちはなんで気づかなかった!?ヴォルタ!何でだ!?」

 

「お前がこんな夜中に起こすからだろ!まともに頭回んねぇっての!」

 

「クソ!ここまで来て帰りたくねぇが謹慎破ったのバレたら…!」

 

「ちっ……!名案浮かんできた!」

 

「何だ?ここまで来たんだ。帰らずに、謹慎がバレても怒られない上に俺達も楽しくなる案だろうな?」

 

「その上アイツらに恩を売れる目論見だ…!」

 

「マジか!」

 

「よし!いい感じのところで余裕を持って助太刀に入り、さり気なくシャーレに俺たちの事を庇うよう進言!そこからはあのパーティに参加して最後まで戦う!どうだ!?」

 

「良いなそれ!戦える上にメリットしかない!商売学んでるだけはあるな!」

 

「よし、機を見てカッコよく行くぞ!」

 

ミシガンが一瞬だけ2人に視線を遣ったのに気づかないまま場面は進行する。

 

 

そしてミシガン達が別れてから。

 

 

スニーキングは上手くいっているが、それでも哨戒しているアリウス兵は多い。20人と少しばかりを弾き飛ばしながら更に深部へ追跡するといつの間にかミシガンともう一人の生徒が居ないことに気づく。

 

「別行動、ここでか?ならアイツらの目的はなんだ…ミシガンの隣にいるのは内通者、或いはアリウスの裏切り者か?」

 

「ならミシガンの奴はアリウスに前から話がついてた、か?条約が一旦休止になって見掛け落ち着いた今、トリニティとゲヘナは前みたくごたごたを起こしたくない…てかそんな暇もない時期を狙ってて、それが偶然この瞬間に連れられてたって事か?まぁいい、ここまでにアリウスの奴と敵対してるのはわかってる。コッチ側に対する裏切りの心配はねぇはずだ。」

 

「あぁ、用心だけはしとくがな。野良犬に信用出来るやつはいねぇし、裏切り者ならこっちを裏切らない保証もない。まぁミシガンならなんとでもなるだろ。シャーレのセンコーを追うぞ。」

 

「確かにアッチについて行っても意味なんざねぇからな。ミシガンの奴を連れてる顔面を拝んでおきたかったが、目的はシャーレに恩を売ること。アッチの方は後回しだな。」

 

「おう。」

 

ミシガン達が別れたことにより、ここからが本番というように真面目に陰ながらの護衛を務める。

 

 

 

「戦闘は短く、静かに。レッドガンらしくない戦い方は不完全燃焼気味だ(スカッとしない)から好きじゃねぇんだよな。それはそれとして目撃者は速やかに始末する。たまに強ぇの(執行部隊)混じってんの、味の濃いのが偶にあるワケあり品の袋入りバラバラせんべいかよ。なぁヴォルタ?」

 

「イグアスよ、せんべいよりただの骨っこだろこんな付け合せ何も合わねぇようなヤツらはよ。味も噛みごたえもねぇくせにただ数が多くて地味に硬い。まぁでもたった1発2発でオチるんじゃ(まと)ですらねぇ、ただの案山子だ。それより早く行くぞ、⑨が健在ならあのガキ共じゃあシャーレが居ようともババアまでたどり着けん。もっとも、出張ってくる可能性は小さいが*1……」

 

そんな話をしながら、影から奇襲をしかけてくる統率がある様で無い規模だけの一個中隊を数分で片付け後を追う。指揮官もどきをそこらの倒れたやつから奪ったグレネードやダイナマイトで爆破すれば動揺が伝播し、新しい頭が出てくる前に引き潰す脳筋戦法はなまじ高度な戦闘訓練を受けていただけに効いていた。ゲヘナであれば指揮官などあってないようなものである為に、2人にとっても烏合の衆でしか無かった。

 

「そういやヴォルタ、あのアリウスの奴らにゃ懸賞が掛かってるって知ってたか?俺らも参戦し、全部終わって油断してるところを……」

 

「『騙して悪いが』、ってワケだな?」

 

「あぁ。不穏分子を排せばレッドガンの名も上がり、俺達には恩賞としてそこそこの金が入る。」

 

「金が入ったらオデュッセウスで豪遊してぇな…最近ミレニアムのガキと知り合ったんだ、ソイツが中々の豪運でな。」

 

他愛もない話しをしながら先生たちの後方から護衛を続ける。

 

 

 

 

 

「や、サオリ。久しぶりだね!」

 

 

 

 

「ん?誰だアイツは?」

 

「聖園ミカだ。私がトリニティにいた頃にもゲヘナ嫌いでそこそこ話題になったりならなかったりしてたやつ。一時期はゲヘナの不良を一人でぶちのめし回ってた蛮族だ、見た目通りのお嬢様なんかじゃねぇ。」

 

「あ、アイツサオリ?とか言うやつとタイマン張る気だぜ?」

 

「シャーレとやらねぇなら無視でいいだろ。協力してるっぽいが、聖園ミカが潰してくれんなら後の仕事が減るだけよ。潰れなくても、」

 

「俺らで叩き潰して正実に突き出せばちょっとした小遣い稼ぎになるな。なんせレッドガンを、ゲヘナを舐め腐った連中だ。」

 

 

 

「──奴らにゃ、青空の下で過ごせる平和な未来なんざ必要ねぇのさ。」

 

──パチッ

 

「ッ──!?!!?」

 

『ベイラムの番号付きだ!単騎で砲台を落とそうなどと!』

『随分舐められたものだ!』

『企業の犬め、この壁は越えさせんぞ!』

 

『コード15。レッドガンの番号付き…G4ヴォルタだ。』

『生きて返すなよ。…む、増援要請か。V.IV、私が向こうに行く。ここはお前がやれ。』

『ああ。…さて。私には、アリウスで成すべきことがある。その為に君にここで死んでもらうぞ、ヴォルタ。』

 

『『コーラルよ、ルビコンとともにあれ!』』

 

「どうしたヴォルタ!置いてくぞー!」

 

「あ、ああ…ああ、すぐ行く!」

 

背を向けて先に進む親友のヘイローが一瞬紅いスパークが閃いたように見えた。その閃からまるで襲撃事件の時のような、雪原の戦場に一人取り残されたような寒気がしたが……

気のせいだと、そんな幻想はありえないと自分に言い聞かせて追いかける。過ぎった戦場がエデン条約襲撃事件と重複したのも、きっと。

 

 

「あ、おい待て!センコーの奴聖園ミカんとこ戻ってったぞ?」

 

「はぁ?何考えてんだセンコーは……まあいっか。行くぞヴォルタ!理由なく差別してくるクソ手羽先を殴りに行くぞ!」

 

 

そうして2人は姿を見られないようにしながら先生を追って行く。しかし先生は陰ながら護衛をする2人の存在に気づいていた。

 

(''…あれ?この匂いはあの2人の……?姿は見えないし襲ってきてるわけじゃないから先に急ごう。'')

 

 

 

 

 

 

 

先生たちがアリウスに乗り込む前の夕方、空崎ヒナは万魔殿がアリウスと手を組み会場を襲撃させた事について万魔殿の執務室をひっくり返すように他に何か無いか探していた。明らかな風紀委員として越権行為、政治的過干渉、不法侵入であるがゲヘナクオリティ。侵入される側が悪いのだ。部屋の外の死屍累々はただの幻覚。彼女たちが起きた時、寝ていたことだけが記憶に残っていることだろう。

 

 

「これはイブキアルバム、これは高級プリンの残骸…?うわ、汚い…そしてこれは…アリウスと接触した時の記録ね。……プリンの匂いがする。」

 

付着したプリンが乾いて生臭くネトネトした報告書を人差し指と親指の先でつまんでできるだけ息をしないようにしながら資料を読む。

 


 

─エデン条約破壊計画.アリウスとの会話記録No.6

日付:〇月〇日

記録者 万魔殿直属秘密兵器開発技術研究部 赤坪エア

 

「高々ミサイルだけであの悪魔とトリニティ共が死滅するか?」

「人間ならな。そこらにあるただのミサイルではなく我々子供に特攻がある大陸間巡航ミサイルだ。どんな化け物でも子供であれば表面はともかく、内面的な重症は避けられないとマダムは仰っている。」

「ACとやらは出さないのか?アリウスよ。断言するが、これだけでは幾ら混沌を生み出せようともヒナもレッドもかすり傷しか付かない。いや、アレらのことだから周りのヤツも守った上で無傷もありうる。」

「ACは出さないと言っているだろう、しつこいぞ。それに第2波の手立てはある。例えどんな手段を用いようとも防ぐことは出来ないと聞いている。無傷は無い。たった一瞬のミサイルカーニバルだよ。」

「…ふん。なら我々万魔殿に相応しい雄大な飛行船を用意するのだ!巻き込まれては堪らんからな、文字通り高みの見物とさせてもらおう!」

 

アリウス分校、と所属を明かすガスマスク達は全部で6人。議長と、議長と話しているリーダーと思われる者は【AC】と呼ばれるものについて知っているらしい。エデン条約を壊す為に用いられる対生徒特攻のある巡航ミサイルを撃ち込み、運が良ければそのまま全て片付き、そうならずとも内面的な者は大きく傷つくらしい。内面的、ということについて追求しようとしたが話した本人もよく分かっていないようだった。

ふとアリウス分校の者たちを見ると、ヘイローに赤いスパークのようなものが煌めきを放っていたように見え、どこか意識が集中してなくて、目の焦点が定まっていないような…薬物中毒者のよくある症状にも似ている。

アリウスには得体の知れない恐ろしいナニカがある。警戒は解かず注意を向けていつでも滅ぼせるように備える必要あり。…この場に居るのが私とマコト議長だけで良かったと心から思う。議長には奴らを信用するべきでは無く、いずれ滅ぼす必要が出ると進言する。

 

これまでの5回と今回を合わせ、1研究員である私だけが呼ばれた理由も今なら分かります。

 


 

 

「きな臭いとはこの事ね。AC、という物の正体にミサイルの生徒特攻というワード、薬物使用時に見られる症状、マコトが警戒している分校……面倒臭い事になるのが目に見えて今から憂鬱ね……それに、赤坪エア。生徒帳簿には無所属とあったはずだけど、直接『話を聞く』必要がある。」

 

 

「ティーパーティーと正義実現委員会、万魔殿と風紀委員会で会議を開き情報を共有、整理する必要がある。こうなった以上はゲヘナだのトリニティだの関係無しに、アリウスの真核を砕かないとキヴォトスが戦火に包まれるのも……これはもう、子供だけでカタがつく話なんかじゃない。」

 

「──おぞましいモノが悪意の糸を引いてる。マコトにも話をつけないと。」

 

プリンで臭くなった棚の奥にある報告書No.1〜5に気づかないままヒナはマコトが居る場所を破壊しに行った。

 

To Be Continued…

 

 

 

 

 

*1
ナインボールは本来イレギュラー専用の対戦力




W学園の絵描きE.Sの手稿

(物陰に隠れる大きな帽子をかぶり、片手にスマホを持ち、反対の手で口元を押えている、青ざめた少女が手前に描かれ、その奥では複数の不良生徒が銃を片手に談笑しているのが描かれている。空には小さな鳥のような何かが不良生徒達に突撃しようとしている。)

─まだ見ぬ魔法書を求め、アルカナの占いに出た通りゲヘナまでパンフレットを携えてやってきた私はその途中で不良たちに絡まれてしまった。詰められてカツアゲされそうになったから必死に逃げ回って、何とか隠れたけど近くにまだ不良生徒達がいました。大きい声を出さないように、パンフレットに書いてあった治安維持部隊に通報して息を潜めていました。そしたら、風紀委員会ではなくレッドガンという人が空からやってきてあっという間に制圧してしまいました。薄く火と鉄の香りを纏う彼女は瞬く間もなく弱きを助け悪を裁く、翼の魔法使いのようでした!物陰から出てなんとかお礼を伝えると付き合って頂けるとの話を頂き、是非にとお願いして古書店や大図書館を巡りました。目当ての物はありませんでしたが、色々とお話をしたり、ご飯を食べて楽しかったです!夢のことを話したら、彼女はそれを笑ったり否定しないで、逆に応援してくれました!後は連絡先を交換してお別れの後学園に帰りました!にゅふふ、新しい出会いと素敵なご友人!これも、アルカナの導きなんでしょうか?素敵だと思いませんか?

行く末をどうするか

  • 『ヴェスパーの災禍』
  • 『アリウスの解放者』
  • 『壊滅』
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