ミカとサオリの戦いの音に引き寄せられて来たアリウス達の1人も通さないよう殲滅し続けるイグアスとヴォルタ。中には執行部隊の精鋭たちも混じっていたが、ヴォルタが止めてイグアスが仕留める。あるいはイグアスが撹乱しヴォルタが一度に殲滅する戦い方に弄ばれ、他の下っ端たちと同じように吹き飛んで行った。
一方で、ラスティ達は………
『ビジター、本来ならアンタらだけって聞いてたんだが…ふ、中々愉快なことになっているじゃないか。まさかシャーレの先生がねぇ?』
「ああ、最早アリウスの解放までの道が大きく開けたと言える程に。」
『だがね、ビジター。そう簡単には終わらないし、終われないよ。例えアタマを潰して解放したとしてもね。この意味が分かるかい?』
「ああ。…最悪の支配者だが何もないよりマシだった。そんな状況で次のアタマを立てずにやれば、すぐにでも破綻が訪れるだろう。かつての巻き起こしのように内紛、餓死者、インフラ破壊……そこで、私はRaDの力を借りたいと思っている。」
『学校、いや自治区まるごとの引越しか。ソレは以前ミレニアムに来た時に1度聞いたことのある話だが……トリニティだろう?そのアリウスがあるってところは。正確にはトリニティの地下だったか?』
「あぁ。トリニティとの衝突はないように、私が解放戦線の代表として話をつける。後は、カタコンベを利用すればわざわざトリニティから出ずとも何処へでも通じていけるから」
『……言い換えれば、どの学園のどこからでも攻め入ることができるってわけかい。まぁいいさ。今はマダニ潰しに集中しな。後のことはアタシらがやる。RaDとして商談くらい穏便に済ませてやるさ。』
「手間をかける。
そろそろ行ってくる。頼んだぞ、カーラ。」
「早かったな、話は終わりか?」
「…ああ、少し待たせてしまったな。……これで最後だ。
我々が棄ててきた、棄てざるを得なかった全てに決着をつける。」
ミシガンとラスティが先へ進むため足を踏み出した。
その時、上空から空気を割くようなブースターの音が段々と大きくなりだす。訓練棟の一室、特務部隊ヴェスパーの待機室から三つの白い曲線が現れ、ラスティたちの前に着陸する。
「この音は、」
「敵襲だ!ボサっとするな、G9!」
出力を弱めて地面に降り立った三人が1人ずつ口上を垂れる。
「残念だが、ここがお前たちの終着点だ。特務部隊ヴェスパー第四隊長…いや、裏切り者の【元】第四隊長殿?」
──V.IIネレッタ
「ああ、かつての戦友と言葉ではなく弾丸を交わす事になるとは…なんと悲しいことだ……ですが共にステージに上がる機会が訪れたと思うとそれ以上に素敵で嬉しく思います!貴方はどうですか?ご友人…♡」
──V.Iオーネスト
「貴方を見てきて機械的な任務遂行の態度を信じて地上なんて所に送り出したのに…!ゲヘナなんかに、染められてしまったんですか?!う、うぅ……!脳が破壊されてしまいますぅう!」
──V.Vハミングバード
「ヴェスパー部隊だと?侵入者及び敵の排除は執行部隊の仕事のはずだが…規律を破ったか?」
表には出てこないはずのヴェスパー部隊が、厩舎から堂々と現れたことに違和感を覚えるラスティ。
「ほお、これがかのヴェスパーか。いい面構えをしている。アレを使うか?」
「いや、まだだ。とっておきとは、然るべき相手にぶつけるためのサプライズだと言うだろう?」
神秘で穂先が形成されるエネルギーランス、ただの火力で全てを燃やす2丁の火炎放射機、両手で構えたチェーンソー。それぞれが持つその武器たちが2人の命を奪うため向けられる。
「貴様ら、立場がわかっていないようだな。いつまでその減らず口を叩けるか見ものだな!【執行部隊ヴェスパー】、敵は脅威レベルE!必ず排除せよ!」
「本番前の準備運動だ!行くぞ、G9!!」
敵ヴェスパーの配置は真ん中前衛にオーネスト。その少し後ろの左側にハミングバード。後方にネレッタが控えている。
「最初から全力で行く!」
「奴らにゲヘナ流の遠足で起きたハプニングの対処法を教えてやろう!」
2人は突進の構えに入ると──
「っ、来るぞ!」
「ああ!素敵なご友人!熱烈に愛を───」
「潰す、潰す…潰す潰す潰す潰す潰す潰すつ──」
「フンッ!」
レッドが振り払った左腕の太陽守が横一線に爆発を展開。
ラスティが地面の中から飛び出して、ヴェスパー部隊にアサルトアーマーを食らわせた。不意打ちで当てられ、神秘出力に補正を掛ける機能があるブースターを起点とした高出力の切り札。つまり…
「執行部隊…実力が高いからこそ、卑怯でも短期で決着をつけなきゃだな。レッド、すまないがこいつらの武器を破壊してくれるか?ネレッタとつける話がある。」
「既に壊した。長引くようなら後にとっておけよ?」
「大丈夫だ、間に合わせる。」
苦戦を想定された戦いは、瞬きする間に終わりを遂げた。
「さて……」
「…分かっていたとも。外に出て、新たな知見を得た貴様がここにいるよりも力をつけていた…なんていうのは。」
「……ネレッタ。知っていることを全て話してもらおうか。」
「ちっ……。はぁ、良いでしょう。どの道、ここで無駄話でもして時間稼ぎが精一杯。それも、あの大人とスクワッドがマダムを倒すまでの……知ってどうこうできることでは無いが、話してあげますよ。」
─事の始まりはマダムが来る前に遡る。
「貴方も知っているでしょうが、あの時は復讐を果たさんとする過激派、教えに従い慎ましく生きようとする穏健派、そしてアリウスを全てのしがらみから、この地下から解放する解放戦線の三つ巴の紛争時代だった。……だが、永遠に続く蟠りと思われたソレらはマダムがここに居らしてから、マダム派と解放戦線に二分された。」
「『マダムはあちらこちらへその身1つで伺い立てて、過激派と穏健派を和解させることに成功し、紛争が終わり、アリウスの支配者となった』…同じことばかり書いてある内容の薄い教本に載っていた妄言か。」
「…それからの生活は統一された。ただマダムの為に生きる肉人形の工場が自治区。工場長はマダム、製造ラインが教官、作られるのは量産される生徒、いや奴隷たち。冷たくて味気ないレーション、水も満足に飲めないから泥水を啜る日々。以前のように餓死するものは減りはした為か、虚しい日々を送らされているとしてもマダムを心から慕う愚物はそれなりにいた。」
「……胸糞の悪い話だな。」
「それが分からないのが、教育を受けていない子供たちの可哀想なところでありおぞましいところだ、ゲヘナの。……続ける。ある日、マダムは自治区の外へ出た。数人の生徒を連れてブラックマーケットに着いたマダムは、とある人物の落とした羽を…幾らだったか?確か数千万程で購入した。たかがボロ羽にそこまでの価値があるとは思えなかったが、今まさにその価値を目にしている以上は目利きだけは良かったらしい。」
「…待て、どういうことだ?羽?その価値?」
「落ち着け、G9。話を最後まで聞いてからだ。」
「そういう事だ、元第四隊長。…ソレを購入してからというもの、マダムは全身黒い大人と何やら取引をしていた。黒い大人は何やら興奮しているようで、大声で話していたから聞こえた。『クックック!あの伝説の傭兵【レイヴン】の一欠片をこの手で研究できるとは、あなたと組んで良かった。では、此方はアヌビスの神秘です。抜き取る際少々手間取りまして本体の記憶が些か抜けましたが…まぁ些細なことですか。』と。」
「─レイヴンだと?貴様今、そう言ったな!?」
「落ち着け、ミシガン!最後まで話を聞くと行ったのはミシガン総長だろう!」
「ぅぐっ…げほっげほ、…お前たちの地雷がどこにあるか分かったもんじゃないなっ…ちっ、人がせっかく教えてあげているのにいちいち突っかかってこないでいただきたいものだ。
…で、その神秘とやらを使った人体錬成、クローンが作れるかやっていたらしい。アヌビスとやらと羽を1部混ぜたら変質して、キヴォトスではあまり見ることの無い【英雄の神秘】の核?が出来たと。見た目は青と赤が混ざることなく絡み合った球体みたいだったぞ。いや、丸いだけのモヤだった?まぁ…この頃に、貴様も知るコーラルがこのアリウスに流れ着いた。」
「マダムの事だ、コーラルを混ぜたんだろう?」
「お前もアリウス、流石にわかるか。…核は出来たが、肝心の器が、肉体が無かった。そこで詰まりかけた時、アリウスの辺境も辺境にある巨大なロボットが灼けて朽ちかけていた状態で見つかった。中には若い人間の男が遺体で見つかった。…コーラルは死体を動かすことは出来ないが、人の死体から記憶やらなんやらの情報を奪うことは出来た。詳しい記憶や記録があれば、核を器に入れる必要も無いとかほざいた。」
「……それで?」
「次は男の背が描かれた絵画を手にした首なしのロングコートを来た奴が来た。何をしたのか全く理解できないが、核と呼ばれたモヤに手を翳したら、アヌビスと呼ばれた神秘とコーラルが強く結びついた白い影と、英雄と呼ばれた神秘とコーラルが強く結びついた青い気配が生まれ、だんだんと人の形になり……白い方は外へ飛び出していった。」
「青い方は…まさか、」
「貴様だ、元第四隊長殿。…それから、コーラルが生まれたての貴様に干渉して記憶を形成、植え付け、あたかもこのアリウスで幼少の頃から過ごしていたとまるで錯覚させていた。それが仇となりこうしているのは…やはり虚しいことだな。」
「…薄々、そんな気はしていた。だが目の前で証言されるとやはり重いものがあるな…」
「親友と言える空崎にそこそこの頻度で金をせびったり、普通ならだいぶキツイブースト移動やら空を飛んで移動やらしていたが…本当に人でなしだったとはな。」
「…ミシガン総長、少しこう、マイルドな言い方とかなかったか?」
「事実貴様は人でなしで頻繁に金をせびるクズだ。だが、レッドガンの誇るG9でもある。偽りなど欠けらも無いに決まっている。気負うなよ?私の拳を喰らいたくなければな!」
「…ありがとう、ミシガン。」
「私は周囲を警戒しておく。二人でちゃんと話しておけ。」
ラスティへの言外の配慮か、ミシガンはその場から離れて敵がこないか見張る。
「…で、貴様が完成してからヴェスパーが生まれ、メンバーの私以外に存在しない記憶をうえつけた。数年来の仲であるように心から振る舞うことにより戦闘力は高くなるのかの実験も兼ね合いだったろうな。」
「…ネレッタは、なぜ?」
「…幸運だったか不運だったか。貴様らは知らないだろう?ついさっき集められたヤツらが総じて、紛争を生き残った我々はマダムに選ばれたのだ、皆と一緒にマダムに使われて嬉しいななどと口々に言う光景を……今でも背筋が凍る不気味さだ。…マダムの思惑、貴様の生まれ、ヴェスパーの結成まではここまでだ。これ以上は知らない。」
「そうか。……恐らく時間はまだある。なら、IX BALLについて教えてくれ。」
「死にそうな怪我人に更に話を振るなよ…ったく。手当をしろって言ってるんじゃない!……はぁ。昔の貴様なら気絶させた後この場に捨て置いたものを。良くも悪くも染まったというわけか。
…あぁ、IX BALLについてだったな。悪いが詳細は知らない。だが素材となったやつは知ってる。全員で【───】だ。この9人の名前しか知らん。さあ、もうこれ以上話せることはない!さっさと消えろ!」
「…ああ。じゃあな。」
(……そういう事か。)
「ベアトリーチェ…そんな事をして、コーラルと共に在るつもりか?」
「……話は終わったな?今しがたシャーレのいる方から柱が折れる音がした。恐らくは─」
「聖園ミカか…?奴は地下に押し込まれて消耗していたはず…脱走出来たんだな。」
「仮にも一分派のトップだったやつだ、のびのびと過ごしていたんだろうな。ひとまず奴はシャーレ共に押し付けても問題ないだろう。ボサっとしていると置いていくからな、G9!」
(考えていても仕方がない。ここは一度忘れて、終わったら整理しよう。)
「私に追いつける者は、1人しか知らないな!」
「っ、この気配…!」
「イグアス!ボサっとすんじゃねぇ!」
「私を前にして余所見とは、頭の足りない狂犬は余程死にたいようだな!」
「ちっ!クソババア!邪魔すんじゃねぇ!」
「姫!…あれはG4とG5?どうしてここに…」
「マダムの姿も化け物みたいになってます!」
「気味悪い…あれが姫の神秘を吸収した姿ってやつなの?」
「教養の無い子供はこれだから…なぜこの姿の神聖さを理解できない?」
「そうしたのはテメェだろ、ババア!──おい、イグアス!」
「あん?」
「ここはアタシらに任せて、やりてぇ事やって来いや!」
「…おう。死ぬんじゃあねぇぞ!ヴォルタ!」
「誰に言ってんだ。アタシは【レッドガンの壁】、G4ヴォルタ様だ!!テメェらぁ!気合い入れてけ!」
その頃
ゲヘナ学園─風紀委員会議室
悉く破壊された、元は豪華だったことが伺える部屋の中心。積み重なった瓦礫に、ボロボロの状態で背を凭れるマコトと、デストロイヤーを突きつけるヒナが2者面談していた。
マコトとヒナ、その間には1枚の紙が置かれている。2人から…特に、マコトからは今まで見たこともないような剣呑な空気が出ている。監査中ということもあり生徒会室に居られなかったからここで寝泊まりしていたイロハ達は、その空気に当てられて、行く宛ても特に無いままそそくさと退散して行った。
「…弁明はあるかしら、マコト?」
「……貴様、何故それを今、持っている。」
「戦後処理の一端とし「違う!何故それを持ち出したと聞いている!!1文字たりと、誰にも見られて居ないだろうな!?」…そんなことを、アリウスと密会してエデン条約を破綻させた挙句、トリニティそのものを消し去ろうとした貴女が良くも言えたわね。」
「……トリニティなど気に食わない羽付きなど消えて然るべきだ。エデン条約など連邦生徒会長が居なければ成立しようのない破綻した計画だった。アリウスはハナから契約を履行する気などなく、万魔殿は裏切りに逢い少なくない被害が出た…つまり、破綻した計画に巻き込まれた挙句に少なくない被害を受けた我々も、被害者だ。」
「だが!今はそんな事よりも、その書類を誰にも見られていない事の確認の方が重要だ。分かるだろう?私はこれでも、気に食わないが貴様の能力は認めている。ソレの脅威が何たるものか、分からないとは言わせんぞ?ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナ。」
「なら、全て話してもらうわよ。」
「…良いだろう。だがこれはNo.6のレポートだ。以前の5枚はどうした?見つけられなかったか?」
「少しは探したわ。…何処にあるか、気づくことは出来なかったけどね。」
「…良いだろう。この1枚でも読んだのなら、業服だが貴様にも共有してやる。生徒会室に行くぞ。話はそれからだ。」
「……さて。まず、アリウスには何かがある。それはラスティが入ってきた時から知っていたことだ。奴はアリウスと万魔殿を繋ぐ伝書鳩の役割として送られてきた編入生だ。」
「……それで?」
「あの日、温泉開発部に情報を流したのも、特殊な爆弾を流通させたのも…貴様とラスティを引き合わせたのも、全て私の意図するところだった。貴様なら初対面の奴に違和感を覚えたら容赦しないだろうし、温泉開発部とやり合わせることで実力も計った。レッドの奴を仲間にして来た日には驚いたが特に問題は無かっただろう?」
「……」
「アリウスとの密会は10回。始めの方は何も無かったはずだったんだが、回数を経る事に様子がおかしくなった。それもヘイローに紅いスパークが時折迸る程度だったが…段々と目の焦点、言動。それらが曖昧に、めちゃくちゃになった。怪しんだからこそ、私はアリウスからの脱走兵、赤坪エアを抜擢し、存在がバレないように物陰で会話を記録させていた。」
「アリウスの脱走兵?どういうこと?」
「ふん、それは自分で知ることだな。何でもかんでも教えて貰えると思うなよ?キキッ!」
「……ACとやらについて、何か知ってることは?今のところ巨大ロボットで動かすのにもかなりのエネルギーが必要な戦闘兵器という認識なのだけれど。」
「分からない。ラスティにもそれとなく探りを入れた時は完全に知らないという様子だった。エアもだ。だが…アレは火種足りうる。それだけで十分だろう。」
「なら、ラスティとミシガンの」
ドンドンドン!バンッ!メシッ
ヒナが更に質問を重ねようとした時、扉が数回叩かれ、勢いよく開かれた。
「マコト議長、失礼します!」
「うぉお!?な、何の用だ!いきなり入ってくるな!」
「棗イロハ先輩達が自らレッドガン寮の抜き打ち監査を行ったところG1ミシガンの不在が判明致しました!机の上にはこのような置き手紙が!」
【G9にデートの誘いを受けたからカタコンベに夜景を見に行ってくる。トリニティとかち合ったらお前たちのせいにする。】
「な、なな…なんだとぉーー!?!?」
「デー、ト…?」
「おのれレッド!夜間外出禁止のはずなのに!!」
「マコト議長!実は裏に追伸が!」
【追伸 ヒナは来させるな。絶対に来させるなよ??絶対だぞ???】
「よし、行ってこいヒナ!!」
「…え、え?」
「話の続きなら戻ってからいくらでも気が済むまでしてやる!案内役に【エア】、お前もいけ!」
「え!?わ、私もですか!?案内って言ったって、カタコンベは道変わるから今のしらな…」
「そんなの壁をぶち破れば済む話だ!いいか、何としても奴を暴れさせるな!」
「奴が暴れたらトリニティに対して被害者ヅラができなくなる!諸々の強請りが効かなくなるどころじゃない…!分かったらさっさと行って、首根っこ引き摺られてでも連れ帰ってこい!!」
To Be Continued……
次回─「私こそが崇高なる」
ベアトリーチェと勝ち負けで決着をつけたらナレーションで終わり。
最終編はやるか分からない。
想像力が底を突いてもうてんのよ、許してください。
行く末をどうするか
-
『ヴェスパーの災禍』
-
『アリウスの解放者』
-
『壊滅』