STEEL HAZE   作:魚の名前はイノシシ

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あらすじ!

ここら辺のやつスカウトしたい!
お、ちょうどいい所に弱くてこの辺のことについて詳しいヤツおるわ!
うわ!落とされた!許さねぇ…!
歩く地獄やで。なんの用で来た?(胸ぐら持ち上げ)
ほーん、スカウトねぇ…ラスティの実力によっては入ってやる!
アリーナで決闘。
よーし、頑張るぞぉ〜!

あらすじ終わり!

戦闘シーンって難しいね


─かねて『火』を恐れたまえ

 

「来い!」

 

「──!」

 

ダンダンダン!

 

仁王立ちして彼女の持ち武器であるガトリングガンを足元に置くだけで構えすらしないレッドに単発モードの貫通威力特化状態のスティールヘイズを向け3度発砲。

それを最小限の動きで躱すレッドは、もっと打ち込んでこいと言うようにラスティに目で語りかける。少しばかり期待の色が込められているその視線に不思議と体が熱くなり1段階ギアが上がる。

レッドの周りを不規則に足音を立てながら円に走る。スティールヘイズの射撃モードを単発とバーストをランダムに切り替えながら発砲し、真後ろにいても見つけられない隙を作り出そうとする。

背中に目でも着いているのかと疑いたくなるほどに弾を避けるレッド。その様子を見て射撃主体から体術を織り交ぜて猛攻を仕掛ける。

鼻柱、人中、鳩尾、脇腹、膝裏に脛。アリウスで染み込ませられた人体のウィークポイントを的確に殴り付け蹴り付けるもその尽くを手のひらで防がれ、威力が乗る前に衝突させられダメージは殆どない。

あの歩く地獄がほんの少しでも期待してくれていたのにそれに応えられないことが不甲斐ない。焦りで脳が熱を持ち始めるのを感じる。

 

「─その程度か貴様は!何を熱くなりかけている!まだやれるだろう!」

 

「っ、ああ、まだまだこれからだ!」

 

失望でもつまらないものを見る視線でもなく、ただこちらを観察するような目。こちらの状態を見抜いて声を飛ばしてくる。その姿は、アリウスに居るやつとは似ても似つかない理想の教官の姿そのもの。

 

「─しぅぅぅ…」

 

一度の深呼吸を挟んで熱くなりかけている脳を冷まし、攻撃を加速させる。先程の熱くなり雑になっていた動きから、敵を排除する狼のような動きへと。姿勢は低くも羽ばたくような動きに、翼の生えた狼を思わせる。

地を蹴り飛びかかるラスティは、つかもうとするレッドの腕をするりと抜け腕に組み付き関節を固めると、レッドが腕を振り抜くと同時にゼロ距離で肘の尺骨神経を撃ち抜き一瞬だけ地面に叩きつける振り抜きを鈍らせる。だがそれもほんの一瞬であり、追撃はせず腕を蹴り飛び上がって離れたところで着地。紙一重でカウンターを躱す。振り下ろされた腕は、

 

ドゴン!

 

凡そ人間が出したとは思えない重低音を辺りに響かせるだけに終わった。

 

「この私にダメージを与え、カウンターを喰らわずに逃げるとは私の知っているバニバニども*1とは大違いだ!もしも万魔殿よりも前に出会っていたら逆にこちらが勧誘していたところだ!」

 

「あの、歩く地獄と呼ばれたあなたにそう言われるのは光栄だ…はぁ、だが、1歩も動いていないあなたを相手にこれだけやってあの程度しか与えられていない自分を見ると複雑だな。」

 

(魅友恵レッドから放たれる圧が強まっていくのを感じる。ここからが本番か…!)

 

荒くなる息を整えながら本番に身構える。

 

「ラスティよ、体は温まったな?ならば準備運動は終わりだ!ここからは私も自由に動く!ここからが本番だぞ!青二才!」

 

(消え─!?)

 

ドゴン!

 

「ごはっ…!」

(何が!?)

 

「立て!ラスティ!貴様はこの程度で沈むような泥船じゃないと証明し、我らを戦力として迎えるために来たんだろう!この程度で沈む泥船と示しすことになっても良いのか!」

 

拳を振り上げ容赦なく追撃をしてくる。

 

「フゥッ!」

 

ドガン!

 

それをブースターに神秘を通して素早く回避行動に移り、あと一秒でも遅れていたら沈んでいただろう威力の拳をギリギリで避ける。拳は、アリーナの地を穿つ。

 

(どんな技量があれば目の前から消えたように動けるんだ!心のどこかで油断していた…!これが─!)

 

「それができるなら最初からやらんか!あまり私を舐めるなよ小娘。貴様の前にいるのは、雷帝が牛耳るゲヘナで暴れるジャンキー共を鎮圧して回った

【歩く地獄】だ!」

 

自分を誇示する物言いは苦手なのだろうか?と顰められたレッドの顔を見ながら場違いな考えを抱きながら油断を捨て去りレッドを見据える。

ブースターに神秘を通す応用で、全身に神秘を流し込み身体強化を施し瞬く間に迫るレッドを迎え撃つ。地を踏みしめ腰をしっかり入れた気絶必至の威力が込められた左右の拳が的確に素早く急所を狙い襲いかかるのを先程レッドがやって見せたような動きの真似で受け流し、弾き、回避していく。しかし長くは続かず拳が脇腹や頬をかすって鋭い切り傷が増えていく。

 

神秘による身体強化とブースターによる補助のおかげでレッドの攻撃の中にある蜘蛛の糸ほどの隙間を縫って反撃していくが彼女の守りを抜くことは叶わずラスティにのみ傷が増えていく。

 

(このままじゃジリ貧!スティールヘイズのチャージは完了しているがこの出力では心もとないか!)

 

「腰が入っていない!拳を放つ時は余計な力を抜いてもっと自分と相手の体を意識しろ!ラスティ!」

 

「指導、か!?余裕だな!魅友恵、レッド!ふっ!」

 

アドバイス通りに体を意識し打ち込む。これまでより良い拳が放つことが出来たことに一瞬気を取られた隙を殴り飛ばされる。

 

「レッドでいい!いちいちフルネームで呼ぶな!いいか、格上との戦いにおいて大事なのは『いかに攻撃を捌いてしぶとく生き延びるか』、そして『いかに相手より闘争心を燃やし立てるか』だ!帰ったら日記をつけておけ!」

 

「はは…っ」

(これが歩く地獄の…いや、レッドの人を惹きつけるカリスマ!こんなものを受けてしまってはますます来て欲しい!)

 

殴り飛ばされた先に、地を揺らすようなあの追撃が来ない。レッドの厳しくも教官としての優しさがあること、言葉の節々に思いやる心があること。

この全てがアリウスで言われるような言葉遣いに近いのに言っていることは全くの正反対というギャップ。

それらを浴びて、万魔殿として過ごすだけでは得られない心の潤っていくことを実感して思わず笑みを浮かべてしまう。野生動物が威嚇するように、歯をむき出しにして愉しげに。レッドも、その顔を見てつられて笑う。

 

 

─環境のせいで自我を得てなお偽物の闘争心しか知ることのなかったラスティに、本物の闘争心に火が点けられる。

本人は知る由もないだろう。

ラスティに浮かぶヘイローは鎖を巻き付けられ口を閉ざされた飼い犬を象るもの。

それが、首から下はなく、立ち上るモヤのような模様がオオカミの首元から伸びるようなっているためカラスの羽を広げたオオカミが遠吠えをしているような、そんなヘイローに変化した。

 

 

「力が漲る…気分もいい!一挙一動が自身を追い詰める逆境と、自分の力を驕ることなく努力を積んだ強者との対峙…沸き立ち身を急かすこの感情が、今までにない本物の心…!」

 

「くくっ、どうやら厄介な首輪を外せたようだな!ならここからが貴様の本領というわけだ。魅せてみろ!黒狼ラスティッ!!」

 

火種は生まれた。他ならぬ魅友恵レッドという格上にして、指導者にして、アリウスでは得ることなど永遠にないはずの成長の実感と心を教えてくれた『友人』によって。

 

「行くぞ、レッド!」

 

「来い!」

 

溢れんばかりの神秘を制御しブースターに注ぎ込み、先程見せられたレッドの消失を思わせる歩法を速さによって無理やり再現。距離を詰め、レッドの腹を殴りつける。

それを読まれていたようで左手で拳を掴まれ引き寄せられながら顔に拳を食らう。当たりはしたが、直前に自ら後ろに飛んだことでダメージの軽減に成功。神秘による身体強化の倍率が上がったためか受けるダメージのカット率を上げていて更にダメージを喰らわない。

されども強力なものは強力で視界が揺らされる。それでも退きたくないと生まれて初めて意地を張りレッドを見据え、神秘の強化に瞬間的なブースターの使用により引き上げられた渾身の蹴りがギリギリで差し込まれたレッドの右腕ごと腹を打ち抜き、ざりざりざり!と靴底と地面が削れる音をさせて後退させる。その時に巻きあがった砂煙が2人を分かつこの一瞬でホルダーにあるスティールヘイズを抜き取り、緊急弁を全閉鎖して戻す。スティールヘイズのチャージ限界が200%へ。ラスティから神秘の供給を受け、オーバーチャージを開始する。

 

スティールヘイズのエネルギー充填開始。充填完了まで、1分。

 

「っ中々に良い蹴りを食らわせてくれるな!だが私を沈めるには、まだまだ足りないな!」

 

目で追える速さでは無いはずだが、積み上げてきた経験と磨かれた勘で防御どころかカウンターすらしてくる。かわしきれなかった拳が、ラスティの体に傷を増やしていく。

 

─傍から見れば有利なのは魅友恵レッドに間違いは無い戦況。だが、それでも粘り強く、笑いながら勝ちに向かうラスティの気迫は魅友恵レッドの放つ圧力に対抗している。

 

レッドが動く。肘を曲げ、ものを掴むように指先を強ばらせ避ける間もなくラスティをかちあげる。それを追いかけ自身も飛び上がりラスティを地に叩きつけようとするが、ラスティは追いつかれる前にすんでのところでクイックブーストで避ける。

 

一度着地した2人。一瞬の間の後に同時に駆け出し衝突。邪魔な横槍や鬱陶しい大人の影の一切がないただ純粋な殴り合い。

顔面を狙った拳を弾かれ腹に叩き込まれそうな拳を身を翻すことで躱しその勢いのまま姿勢を低くし足払い。飛び上がり避けるついでに放たれるソルトキックを仰け反ることで回避。一旦下がり、正面から突撃。と思わせて足のブースターのみを使用しレッドの背中側に回り込むことでカウンターをかけようと構えたレッドに死角からの一撃を食らわせるもギリギリ反応したレッドの後ろ蹴りを交わしきれず耳を打つ。

痛みと衝撃により、耳鳴りが起きて片耳からの音が聞こえなくなる。

一度クイックブーストをして下がる。レッドはラスティを見据えつつも何かを感じたのか追いかけない。

 

充填完了まで、45秒

 

(まだチャージが完了しないか。このままの調子で腕を使っていたらスティールヘイズを撃てない…キツいが、ここからは足をメインに使うしかない)

そこでふと、レッドの様子がおかしいことに気づく。一見何も無いように見えるその立ち姿に違和感を覚える。変わっていないはずなのに直感では劇的な変化を遂げていることを感じ脳の奥から警戒心が引き出される。1秒が何十秒にも感じる。

 

「…?この違和感は…!」

 

レッドの存在感が厚くなる。

神秘の流れは最高に効率的なままで変わっていない。

ただ雰囲気だけが変わって──まさか!?

 

「貴様のブースターはどうして燃料も無しに動いているのかと思っていたが─これは良い!ここまで燃えるのは2年前の戦争以来だ!」

 

レッドの闘争心に火が付けられる。

触れたものを焼き付くさんとする業火が。

 

「掴んだのか!?この短時間で─神秘の操作を!」

 

─レッドに抱いた違和感の正体は、無意識に行われていた神秘の操作を意識して行うようになった事だった。レッドの元の状態から身体の強化は無いと考えて良いだろうが…

 

「まさか私のような神秘を意図して使えるものと少し闘っただけで掴むとは思いもしなかったが…それでこそより燃えるというものだ…!」

 

呼応するようにラスティの心に点る火が勢いを増す。

 

スティールヘイズ、エネルギー充填完了

 

オーバーチャージを完了したスティールヘイズをぶち込むために隙を作り出さねばならないが、その難易度が上昇した。

 

合図は無く、両者共に動き出す。

 

何度目かの拳の応酬。ラスティの蹴りを主体に使用という心は神秘操作を獲得したレッド相手に消し去られたようで、抉るように放たれる拳を受け流すとその勢いを乗せた打撃を腹に繰り出す。あえて受けたレッドはラスティの腰に腕を回すとそのまま飛び上がり、地面に投げつける。 盛大に砂を巻き上げ地に落ちるラスティ。

降り立ったレッドに向かって砂煙から飛び出し、今までとは威力が違う蹴りを放つ。頭から血を流し、後のことを考えて抑えられていた心のリミッターを溢れた闘争心でぶっ壊されたその一撃はレッドの体幹を崩し隙を生み出す。

 

しかし冷静な狼は、敵に生まれた一瞬の隙も逃がさない。

 

貯めに貯めたエネルギーを解放するのを今か今かと待つオレンジ色の光を放つスティールヘイズを抜き取り照準を合わせる。

 

「スティールヘイズ、出力最大──これで決める!

 

ズッ─!

ドゴォン!

 

一条の光線が、音を追い越す速さでレッドに向かう。発射の際の強烈なフラッシュと、衝撃により巻き上げられた砂が視界を遮り状況が見えない。だが動けないほどのダメージは与えただろうと思い、息をつく。

 

バッ!

 

「ふんっっ!!」

 

「ごぉっ!?」

 

砂の奥から飛び出した腹に血が滲んだレッドは息をついてしまったラスティの頭に拳を叩きつける。

 

「─大技を決めたからと安心するな、馬鹿者!」

 

不意に与えられた衝撃に意識が揺らぎ消えかかる。

 

「油断しがちな貴様には、1つ教訓を贈ってやる─

 

泣きを入れたらもう一発』だ!

 

その上から更に叩き込まれる一撃により完全に意識が無くなりダウン。

 

降りてこい、医療班!マヌケな油断をしたこいつをベッドに繋いでおけ!

 

慌てて動き出す医療班。すぐさまラスティを担架に乗せると医務室へ運び込んだ。レッドはキレイなタオルを受け取ると傷口から流れた血を拭いてから歩いて医務室に向かった。

 

 

 

勝者、魅友恵レッド

 

 

 

To Be Continued…

 

 

*1
一般通過アリウス生徒





次回─「栄誉ある勲章」


キヴォトス人の肘部分の尺骨神経を撃つってことは、すんごい痺れて力が全く入らなくなるのと同等です。ただのやつにやったらそれだけで戦闘終了だと考えてくれたら…

レッドの強化必要だったか悩んでるけどまぁ総長だし良いかなって。人をよく見る人だから、不自然さもあまり無いかなって。

行く末をどうするか

  • 『ヴェスパーの災禍』
  • 『アリウスの解放者』
  • 『壊滅』
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