悔しい
来た理由は手紙を渡すだけ、本当にこれ一つだけだった。
が、一つだけ話したいことがあるのを思い出して主任を呼び止めた。
「主任、私言いたいことが一つあって」
「な〜に? もしかして戦闘したい♡、とか?」
私がACに乗れないことを知ってて言うとは・・・・あと♡を付けるな。私はそういうタイプではない。
「いやいやいや、違いますよ。あの、私、主任の演技好きです」
「え? いつ演技したかな?」
「いや、今もしてるじゃないですか。おちゃらけた感じでさ、話してるじゃないですか」
「ん〜〜〜〜? だから、演技ってなにかな?」
「意固地だなー! 言ってるじゃないですか! あなたの今の言動が演技だって言ってるじゃないですか!」
「・・・・・・・どうしてわかったの?」
先ほどまでのおちゃらけた口調とは打って変わり、真面目な口調で喋りだす。カメラ越しに目があるわけではないのでそう感じている、としか言えない。だが主任は自分を見定めている。じっとこちらを見つめて。
「あっ!認めてくれたんですね!よかったー!」
背中に冷や汗が伝う。いまだにこちらを見定めている視線は相変わらずだ。
いつもの笑顔で平素を装う。無駄な呼吸も、意味のない目配せもせず。
「なんでわかったの?」
「いやいや、めちゃめちゃわかりやすく演技してたじゃないですか〜! あんなんで気づかない方が不思議ですよ」
今の自分の動き、どう見てもオオサカのオバチャンだ。オオサカもオバチャンもよく知らないが。
「ふーん・・・・知ってどうするの?」
「どうもしませんよ? だって私、主任の演技が好きって言いたかっただけなんで」
少し驚いた顔、というか雰囲気を感じた。
「えぇ・・・そういうのは大抵弱みを握って脅すとかそういうのなんだけどな〜」
「まあ、いいじゃないですか。主任にとって都合の悪いことにはならないんですから。それじゃ、また今度」
「ん、じゃあね〜」
最後はいつものおちゃらけた口調に戻ってくれた。きっと許されたか興味が湧いてくれたかのどちらかだろう。主任は興味を無くした時の反応がとてもわかりやすい。少なくとも興味が失われたわけでは無いことの安堵で肩を下ろした。
これ以上なにかを言われないために急いで退散したのだが、それは知られていたのだろうか。
2024/8/25