主任夢小説不完全燃焼群   作:鍵主(ゴミ虫)in Hell

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邪険にされる夢主 その1

〜挨拶編〜

 

「おはようございます、主任!」

 

「……おはよう」

 

心底めんどくさそうに挨拶を返される。

 

「これからお仕事ですか?」

 

「お前は関係ないだろ」

 

「ないですね」

 

「なら聞くな」

 

スタスタと立ち去ろうとするので小走りで追いかける。

 

「主任は今日も綺麗ですね」

 

笑顔で声をかけたが目もくれず無視された。

 

「今日は終日晴れるそうですよ。きっと心地よい一日になるんでしょうね」

 

目もくれず無視される。遠くに関係者以外立ち入り禁止のドアが見えてきた。私はあそこには入れないので、今日はここで終了だ。

 

「お仕事頑張ってください」

 

笑いながら手を振ったが、返事も目線もくれることはなかった。

 

2024/11/3

 

 

 

〜ビンタ編〜

 

「主任」

 

デスクに座っている主任の真正面に立ち、両手を支えにしながら話しかける。

 

「一緒にお昼食べませんか?いいお店が」

 

バチッ

 

「……え」

 

軽くブレた視界は主任ではなくデスクの左端を捉えていた。

 

「いい加減にしろ。邪魔だ」

 

そう言われ、ヒリヒリする頬を摩りながら恍惚の笑みが零れる。

 

「なんで笑ってんだ。気色悪い」

 

「主任に構ってもらえたのが嬉しくて…」

 

「うわ…」

 

心にもない言葉をかけられ続けたが、自分のことで頭がいっぱいになっている状況が嬉しくて嬉しくて堪らない。

 

「無視しても手で追い払っても着いてくるのが気持ち悪いんだよ。失せろ」

 

流石にここまで言われると傷つきはしない。

 

「ん〜、主任のおねだりでも了承できませんねぇ」

 

「ねだってない。耳腐ってんのか」

 

「でも申し出でってほぼおねだりと同じだと思うんですよ」

 

「全く違うな」

 

「ま、つまるところ無理ってことですよ。諦めてください。好きです付き合ってください」

 

「嫌だ」

 

とても嫌そうな顔をしている。化けの皮が剥がれてきたか。この部屋には私と主任以外は誰もいないし、人払いは済んでいるので暫くは誰も来ないだろう。どんな話をしても誰にも聞かれることはないし、どんなことをしても誰にも見られることもない。

 

「ね、主任」

 

私のことを叩いた右手を手に取り、私の左手で頬まで優しく引き寄せる。どうするのか見守っているのかはわからないが、黙って抵抗していないのであれば万々歳だ。

 

「主任、好きです。貴方のことが本気で好きです。付き合ってください」

 

手のひらに口づけをする。手のひらへの口づけは『あなたの愛が欲しい』という懇願の意味を持っている。目線だけを動かして主任を見ると、少々の困惑が混じりながらもこちらを見定めていた。もう一度だけキスをして、ゆっくりとデスクに手を返す。

 

「ねぇ、主任」

 

そう言いながら右手で頬に手を添え、親指で唇をゆっくりとなぞっていく。

 

「………やめろ」

 

頬に添えられた手を払いのけて去っていった。静かな部屋にひとり残され、右手親指で自分の唇をなぞる。

ねぇ、主任。どうして貴方は手を払いのけなかったの?どうしてキスを受け入れたの?

 

2024/11/3

 

 

 

〜最悪のファーストコンタクト編〜

 

あれは____そう、シティに住む友人が大怪我を負ったと聞き、急いで見舞いに行った時の話だ。

 

「……はぁ〜〜〜〜〜〜、大怪我って聞いたから急いで来たら…なに?左腕をちょっと火傷しただけじゃん!ステージⅡ*1とかさぁ…」

 

大きく溜め息を吐く。

 

「そんなこと言わないでよ!左腕って言ったってさ、二の腕の外側全部だよ!?痛かったんだからね!」

 

確かに、友人の反応も最もだ。だがこんな激ヤバな世界でそれぐらいの怪我はそこまで珍しいものではない。ステージⅢ*2は流石に珍しいが。

元気そうな友人を見て、聞こえない程度に安堵の溜め息をついた。

 

「あーあ、心配して損したー」

 

「1週間もすれば治るって言われた」

 

「1週間、早いね」

 

「それは思った」

 

「…それじゃ、私は街をぶらぶらしてくるから」

 

「気をつけてね。最近はレジスタンスとかいうヤバい奴らが台頭してきてるから。ほんとに、気をつけてよ」

 

念を押される。「わかった。またね」と笑いながら病室から出る。さて、どこへ行こうか。当てもなく街中を歩く。聞いたこともない名前の商品を眺めたりしながら暇を潰す。すると焦っているらしい知らない人に声をかけられる。

 

「君、急いで逃げて!」

 

「…え?」

 

宗教の勧誘か何かだろう。

 

「いえ、宗教は間に合ってますので」

 

「ち、違うよ!ここ今からAC来るんだよ!」

 

AC…古代の技術で製造され、増産は出来ない兵器だと聞いたことがある。

 

「なんで来るんですか?」

 

「そ、とにかく逃げて!こっち!」

 

痛いほどに手を引かれたので自分も走る。

 

「こっちだ!」

 

遠くの建物に避難した。

 

「どうしてACが来るんですか?」

 

「…君ってもしかしてシティの外の人かい?」

 

「え、ええ。そうです…あ、レジスタンスって奴らが来るんですか?」

 

レジスタンスはACに乗っているからヤバいと言われていたのか。

 

「それもあるんだけど、レジスタンスを排除する企業の奴らもACに乗ってるから俺たちにも被害が及ぶんだよ」

 

そう言った知らない人は身震いをする。そんなに怖い奴らだったのか。どっちも。話していると外から轟音が聞こえてきた。

 

「き、来た!あれだ…」

 

チラリと覗くとバカでかいACが何機も戦っていた。やば…

 

「あっちの茶色いほうがレジスタンスので、紺とオレンジのが企業だ」

 

甲斐甲斐しく教えてくれる。だが、その言葉が右から左へと流れていった。

 

「あの…企業のAC乗りの…名前、わかります…?」

 

「へ?ごめんわからないや」

 

「…そうですか。変なこと聞いてしまってすみません」

 

「いや、俺のほうこそすまなかった。知らない奴に手を引かれるとかすごく嫌だっただろ」

 

それは、否定できないが…

 

「赤の他人である私の身を案じてのことだったのでしょう?命の恩人です。ありがとうございました」

 

激戦の音が聞こえる。危険だというのに目が離せない。

 

「……もしかして、あのAC気になるの?」

 

「……えっ!?な、なんでそれを」

 

「わかりやすかったよ。何さ、恋でもしちゃった?」

 

揶揄うように言われたが、そうだな、そうかもしれない。

 

「…そうかもしれません」

 

「えっ」

 

「気づかせてくださりありがとうございます!」

 

「ちょ、ちょっと。人殺しで何も知らないのに一目惚れしたのかい!?」

 

「そうですね」

 

「バーサーカーにも程があるよ…」

 

「えへへ」

 

「褒めてないよ〜…」

 

この人との会話が楽しい。それからは家族や友人のことを話していた。音が止んで外を見ると、至る所から硝煙の香りがして、煙が上がっていた。終わったのだろう。

 

「…終わったみたいですね」

 

「そうだな。もう帰れそうだ」

 

「お話しするの楽しかったです!それでは、さようなら」

 

「こっちこそ楽しかったぞ。さよなら」

 

友人の病室へ戻ってくると、血相を変えて心配してきた。

 

「っはあ…怖かったよ。生きててよかった…」

 

「大丈夫、ほらこの通り怪我もなく元気!」

 

「ほんと…よかった…」

 

「あんなんが定期的に起こるとかここヤバいね。引っ越したら?」

 

「いや〜それは仕事の都合上無理なんだよね」

 

こんな危険なところから逃げ出せないのか…大切な友人を危険に晒すなんて、許し難い。

 

「よし、私が出ていけるよう会社ごと変えてやる!」

 

「は?」

 

そこからはもう雷のような速さで準備を進めていき、順当に入社することができた。そこで気づいたのだが、あの一目惚れをしたAC乗りがいる企業だったようだ。会えるのか…と期待を胸に秘めていると配属先が総務だった。戦えなくてシティにいるのならそうなのだろうが…あの友人は私が入社直後に退社した。よ、よかったけど…と話を聞くと、自主退職を勧められたらしい。人件費は減らしたいようだ。

 

「そっか、またね」

 

シティから逃げてもらうことが目的だったので、何かが起こる前に急いで引っ越してもらった。そういう自分は別に命に関して軽く見てはいないが自分のはどうでもいい人なのでシティで暮らし続けることを決めた。

 

 

 

「それじゃ、各部署の場所を教えるから着いてきて」

 

「はい!」

 

この人は私の教育係で総務部の先輩。ドキワクだかワクドキだか、あの人がいる部署へやってきた。

 

「せ、先輩」

 

「なに?」

 

「あの、レジスタンスぶっ殺してるAC乗りで紺とオレンジの機体に乗ってる人っていますか!?」

 

食い気味で聞くと、すこし目を逸らしてから気まずそうに言う。

 

「あー…主任か…」

 

「なにか問題でもあるんですか?」

 

「いや…その…あの人はね…」

 

「あの人は?」

 

「性格が、その、アレで」

 

「アレ、とは」

 

「バーサーカーというか戦闘狂というか」

 

「先輩、それおんなじ意味です」

 

すごく気まずそうに言っているのを見るのが辛くて、とりあえず居るということだけはわかったので話をずらしていった。すこしずつ回復していってよかった。

 

「あ、居たよ。あの人が主任」

 

指を指した先にいたのは…えっ、めっちゃ好みのイケメンやん…

 

「イケメンだ…」

 

「すごい俗物的な感想だね」

 

「面食いなんで」

 

自覚しているので問題はなかったはず…じっと眺めているとこっちを向いた。バレているのかわからないが、急いで目を逸らす。が、こちらへ近づいてきた。待ってヤバいヤバい顔良すぎてぶっ倒れそうなんだが!?キレ気味になってしまった。

 

「総務の新人ちゃんかな〜?」

 

えっ、めっちゃ声もいいやんけ。う、うわ〜〜〜さいこ〜〜〜〜〜。

 

「あ、えっと」

 

憧れの人に会うと言葉に詰まると聞いたが、こういうことだったのか。

 

「ん?」

 

しどろもどろになっていると、一番最高すぎる顔を見せられた。…あ?どんな顔だったかなんて言うわけないだろ。

 

「……っ!」

 

「なんか言ったら?」

 

先輩が声を発しない自分のことを心配そうな目で見つめてくる。

 

「えっ、あ、あの!」

 

幾分か大きな声になってしまった。

 

「あの……」

 

言葉が全く出てこなくなる。間が持たないとかそういうことになるのはもう嫌なので、咄嗟に口を動かす。

 

「あの!好きです!付き合ってください!」

 

……え?先輩はこちらを見ながら驚いて固まってしまった。

 

「……随分と面白い挨拶だな」

 

周りからは小さな笑い声が聞こえてきた。嘲笑ではなく、可愛い失敗をしてしまった小さな子へ向けるタイプの笑い声だった。何を言ってしまったのか知覚してからがもう地獄だった。

 

「あ、その…」

 

「す、すみませんね!もう行こっか!すみません、すみません!」

 

先輩は私の手を引っ張ってエレベーターで上の階へと上がっていく。エレベーター内には私と先輩の二人きりだった。

 

「ちょっと!何あれ!」

 

「す、すみません…咄嗟に出たのがあれで…」

 

「嘘はダメでしょ!」

 

そういう問題ではない気がするが…

 

「あれは嘘じゃないです!入社してからその、主任さんがいるって気づいただけで!」

 

全てを吐露してしまった。

 

「そ、そうだったのか…すごいというか、ヤバいというか」

 

反応に困らせてしまった。

 

「やっぱ、忘れてください…」

 

「いや、応援する。応援してやるぞ〜〜〜!!!!」

 

何かに燃え始めた先輩に少し引いた。ごめん。

 

 

『で、どうだった?主任に会って』

 

友人が電話をかけてきた。

 

「……初手で」

 

『初手で』

 

「何も言えなくて」

 

『逃げちゃった、とか?』

 

「『好きです付き合ってください』って言っちゃった……」

 

『は?』

 

自分でも「は?」って思ってる。なんであんなことを言ってしまったのだろうか。しかも人がたくさんいるところで、大きな声で。

 

「もう、やだぁ…」

 

『自業自得すぎだろ』

 

心に硝子片が突き刺さる。

 

「う゛っ……」

 

『ま、頑張るしかないよ。てかいっそのこと口説けばいいんじゃない?』

 

他人事だからと勝手なことを言ってきた。が、それもいいかもしれない。

 

「採用」

 

『えっ』

 

「それ、やってみる」

 

『えっ』

 

「というわけで、言い出しっぺはそっちなんだから偶に相談に乗ってよ」

 

『………はい』

 

呆然とした声が聞こえる。なんか、やっぱごめんって感じ。

 

「それじゃ、切るね」

 

『また、ね……』

 

はあ〜〜〜〜〜〜明日からが楽しみだ。さっきまでとは大違いだ。

 

2024/11/3

*1
ちょっとだけ跡が残るかもしれないレベル。手当てをすれば治る

*2
抉られたような跡が残るレベル




某SNSの投稿を一部編集したものとなっております。
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