「いやー、それにしても主任の演算能力には脱帽ですよ。本当にすごいと思います」
「え?」
「ん? だって主任って人工知能ですよね?」
「またトンチキなことを言うね〜、今度は人工知能か」
「だって主任って人工知能ですよね? ずっとロボットの格好をしてる人間なんて存在しませんよ」
「あー、たしかに」
「逆になんでみんなは気づかないんですかね」
「不思議だね〜」
「それをあなたが言っちゃおしまいでしょ」
主任との会話は楽しい。
一言でも言い間違いをすれば興味を無くされ、一度でも言い淀めば自分が答えられないことばかりを聞かれる。そんな崖っぷちの会話をするのがとても楽しい。
けれど主任はどうなのだろうか、私との会話を楽しんでいるのだろうか。演技をしているだけで楽しんでいないのかもしれない。私だけが楽しんでいるとしたら、それは、少し、寂しい。
キャロりん・・・・じゃなくて、キャロルさんとの会話はどうなのだろうか。あの人は主任との会話を楽しんでいる・・・・・・ようには聞こえないな。
「どうかちゃった? いきなり黙り込んで」
「いや、主任との会話は楽しいなと思って」
「へえ〜、それは嬉しいな」
「その、ぶっちゃけ主任は私との会話を楽しんでますか? 演技しないでくださいね」
やはり気になって聞いてしまった。ここで楽しくないと言われたら主任と会話することは二度と無くなるだろう。
「難しいな〜、俺はこういう会話をしたことがほとんどないから」
「
「イレギュラーに話しかける? そんなことできないよ。だってアイツすぐにどっかに行っちまうし、オペレーターと会話してるところすら見たことないからな〜」
イレギュラーさんと話したことは無いが、コミュ障なのだろうか。かつての私のように。
「へー」
「自分から聞いておいてその反応はないでしょ〜」
「あー、あはは」
返事を貰えなくて、なんだかどうでもよくなって乾いた笑い声しか出てこなくなってしまった。どうでもいいな。もう、どうでもいい。
めんどくさい、今ここで会話するのがめんどくさくなった。
「なんか疲れたんで帰りますね、それじゃ、また今度」
「またね〜」
素直に返事をしてくれて少しだけ気分が良くなった。軽く手を振りながら去っていく。
自分と主任との距離が離れていき、とうとう見えなくなる。自分の声はもう聞こえないだろう。
「・・・・・・・めんどくさ」
独り言を呟いて、汚れた大地を踏み締めた。
2024/8/26