俺たちの視界に映るのは浮遊する一人の女性。白と水色の衣装を着ており、右手には扇子を持っている。
「あらあら、博麗の巫女は不在なのね?」
女性は口に扇子を当て、不気味に微笑みながら言った。彼女の容姿は美しい…けどそれと同時に禍々しさも感じとれた。死神のあいつ程ではないが…。
「ああ、あんたが起こした異変が原因で動けない状態でな。」
「それだけじゃないわ。春度が剥奪された影響で仮死者が出ているわ。」
「へぇ~。それはお生憎様ね…。」
こいつ……俺たちを舐めてるのか…?
『幽々子、何故お前は西行妖を咲かせようとする!?』
「その声は…檀?」
異変の首謀者の名前は幽々子っていうのか。そしてあのでかい桜の木は西行妖…あそこに春度が集まっていくのか…。それにしてもミハエル、幽々子のことをご存じだったんだな。
『今すぐ春度を元の場所に戻せ!西行妖が咲く度にどれだけの生命が吸いとられていると思っているんだ!?』
「いいじゃないの。それに私は、封印されて以来花が咲くことの無い西行妖が再び満開になるのを見てみたいのよ。」
『いくらお前の悲願であったとしても、西行妖を満開にさせることだけは絶対に許さん!!』
幽々子のねじ曲がった願いを聞き、ミハエルは今までにない怒りを露にした。ミハエルも紫と同じ存在だったのか、幻想郷の平和を維持するその熱意にはすごい情熱(パッション)を感じとれた。
『進也、アリス、何としても幽々子の野望を打ち砕くぞ!』
「ああ!」
「分かったわ!」
俺たちはすぐに戦闘態勢をとる。
「檀、ベルトになっても良い仲間を揃えたものね。じゃあ、ここで戦力調整でもしようかしら。」
幽々子は何かを呼ぶように左手で指を鳴らした。妖夢以外にも誰かいるのか?
そして、向こうから幽々子が呼んだ助っ人がやってきた。
「あれは…何だ?」
「……!!」
『なっ…!?』
その助っ人は、蜘蛛を模した頭部に機械じみた茶色い体を持ち、胸には【101】というナンバープレートがついていた。
『ろ…ロイミュード!』
「あいつが、ミハエルの言っていた?」
幽々子はロイミュードを用心棒にしていたのか。俺はロイミュードを見るのは初めてだが、無機質故の威圧感は伝わってくる。
「あ………あ………。」
「?…どうしたアリス?」
「あ…ああ……ああ!」
突然、アリスがロイミュードを見て怯え出した。待てよ?アリスがあのロイミュードを覚えているってことは、襲われた際にロイミュードのナンバープレートを覚えているはず…。
「まさか……。」
「そうだ。俺はファンタジアフリーズの時、その女を襲ったことがあるのさ。」
「喋った!?」
ロイミュードは喋ることもできるのか…。
『幽々子!どうしてなんだ!?ロイミュードを幽閉から解放してまで西行妖を咲かせたいのか!!?』
「そうよ。私は一度でもいいから満開の西行妖を見たいのよ。どんな手を使っても……幻想郷の黒歴史を解放しても…!」
『くっ……… 血迷ったな貴様ぁ!!?』
ミハエルは非道な幽々子についに激しい怒りを爆発させた。
「これ以上、生命を脅かすようなことをさせてたまるか! 変身!」
『ドライブ!タイプスピード!』
俺もミハエル同様、生命を西行妖の養分にしか思わない幽々子に怒りを主張しながらドライブに変身し、ハンドル剣を構える。
「西行妖の満開は阻止してもらうぞ。けどその前に、ひとっ走り付き合え! 炎閃【ヴァンガードアクセル】!」
俺は弾幕を放ちながら幽々子に向けて突撃する。その進路にロイミュードが立ち塞がる。
「どけぇ!!」
「!?」
このスペカ、怒りが強い程威力が増幅するのか。俺はロイミュードを吹き飛ばし、そのまま幽々子に突撃しようとする。
だが幽々子はこれを避けた。首謀者だからか、攻撃を見抜いてやがる。
「抵抗をするなら、貴方も西行妖の糧となりなさい! 亡舞【生者必滅の理 -魔境-】!」
幽々子はスペカを発動させ、莫大な量の弾幕を放ってきた。俺は加速しながらハンドル剣で弾幕を弾いていく。
「無視は困るな。」
シュルッ!!
「しまった!?……うあああああ!!?」
しかし、ロイミュードの存在を忘れていた俺は、奴の放った蜘蛛の糸に拘束されて行動が出来ず、そのまま被弾して下に落ちる。
『進也、早く糸を解くんだ!』
「簡単に言うなよ!」
俺は必死に糸を解こうとするが、強靭に出来ているためか、なかなか解けない。
「はっ!」
「ぐっ、がはっ!?」
その間に俺はロイミュードの攻撃を喰らい続ける。畜生、身動きが取れない!
『シフトカーズ、集合!』
「!?」
ミハエルの号令と共にキャブ、ベガス、ハンター、ミキサーが援護攻撃を行い、その間にモンスターが糸を解いてくれた。
「よし、行くぜモンスター!」
『タイヤコウカーン!マッシブモンスター!』
俺はモンスタータイヤにタイヤ交換すると、モンスターでロイミュードを攻撃する。
「幽曲【リポジトリ・オブ・ヒロカワ -神霊-】!」
だが、幽々子は容赦なく執拗にスペカを撃ち込んできた。
「ああ、くそ…!!」
俺は突然の弾幕にモンスターが手元から離れてしまった。
「こうなったら…! 変速【トランスミッションギア】!」
俺も変速する弾幕を放って幽々子を撹乱させ、ロイミュードを攻撃する。
「無駄だ!」
「ぐあっ…!!」
だが、ロイミュードの反撃を受けて、怯んでしまう。それと同時にモンスターがブレスから弾かれてスピードタイヤに戻されてしまう。くっ…1対2だと力の差があり過ぎる。
「これで終わりよ。桜符【完全なる墨染の桜 -開花-】!」
ここで幽々子が畳み掛けるようにスペカを放った。だが、俺に直接放ったのではなく、未だ怯えているアリスに向けて放った。
「まずい!」
『何て非道なことを…!』
“あの事件”みたいにアリスを失う訳にはいかない!俺は加速し、アリスに向かって全力疾走する。
頼む、間に合え!間に合えぇえええええ!!!!!
ババババババババババン!!!!!!!!
「がはっ……!」
俺は気がつくと、幽々子の放った弾幕をまともに受けていた。間に合った……。
「進……也…?」
「はは……大丈夫か?……アリ…ス…。」
俺はアリスに呼び掛けながらその場に跪く。強力な弾幕を受けて意識が途切れ途切れになる中、俺は力を振り絞って意識を保つ。
「何て…何て非道なことを…!!」
「これも西行妖を満開にさせるためよ。見なさい。」
アリスが訴える中、幽々子が西行妖の方を見ろと言った。俺も西行妖のある方向を見た。
そこには大量の墨染の桜を咲かせた西行妖がそこにあった。その桜の花は一つ一つが凛とし、美しさを出していた。だが、その花にはただならぬ瘴気を漂わせていた。全ての生命を吸い尽くす呪いの桜だ。
「ついにこの時が、私の悲願が成就する時が来たわ!……ふふふふふふ………はははははははは!!!」
幽々子は勝利と悲願の達成を目前と判断し、高笑いし始める。
「くそったれ……。」
「………。」
『何てことだ…………。』
俺たちはすっかり落胆した。西行妖を止められなかったことを……。幽々子
の非道な作戦にひれ伏してしまったことを………落胆していたその時、
バサッ!!
「「「『!!?』」」」
突然、西行妖の花が一気に散り、全て地面に落ちた。一体何があったんだ…?
「嘘…?何で?何で花が散ったの!!?」
「くくくくくく……。」
幽々子が突然の出来事に慌てふためく中、ロイミュードだけは笑っていた。しかもよく見たら、落ちた花びらが春度になってロイミュードに吸収されていく。
「貴方…何をしたの!?……きゃっ!?」
迫る幽々子にロイミュードは平手打ちで幽々子を怯ませる。
「ははっ、馬鹿め。ファンタジアフリーズでロイミュードのことを知っているなら、俺が進化態を目指していたのは知ってただろう?」
「貴方…まさか…!?」
「そうだ。始めから春度を奪うことを企ててたんだよ。ははっ……ピースは揃った。これで俺も……完全な進化を!!」
ロイミュードはそう言うと、赤いオーラと共に肉体変化が起こった。肉体変化が終わると、そこにはさっきのような素体みたいな姿とは異なり、桜をモチーフとした姿の上級ロイミュード・チェリーロイミュードに進化した。
次回 東方加速戦士
案の定、幽々子を裏切ったチェリーロイミュードは重加速を起こし、アリスの命を吸い取ろうとする。進也は戦いの中、ついにタイプワイルドにチェンジする。
次回[熱い情熱[パッション]は何を守るのか?]
スタート・ユア・エンジン!