アルビオンの憂鬱 with アヴァロン・ル・フェ 作:水平対向エンジンアルビオン
基本地の文とアルビオン視点で構成されます。
ここはブリテン島に栄える妖精國、その女王が執務をこなすキャメロットの玉座の間。国を統べる王、モルガンは集まった有力者達を見回してある決議を執る。それは妖精國、挽いてはブリテン島の明日を左右する重要な課題だったからだ。彼女の言葉を固唾をのんで見守る諸侯に緊張が走った。
「先日、相談役のアルビオンが隠居を申し出て来た。知っての通り、彼は妖精國の繁栄の立役者。その叡智に我々は幾度となく助けられてきた。だが、我々にはまだ彼の助けが必要だ。そこで、諸侯に問おう。アルビオンの隠居に反対する者は挙手をせよ。無論、賛成しても咎めはしない」
モルガンの申し出にこの場に居合わせた一匹を除き、全員が手を挙げる。それを見た一匹は遠い目をしている。
「そういう訳だ。まだまだ楽になれると思わぬ事だアルビオン」
『やれやれ。参ったねこのお転婆娘は』
モルガンは、自らの脇に佇む鎧に告げと鎧は肩を竦める動作をする。
会議が終わり、有力者達が治める領地に向けて帰っていくどんどん残されたのは大領主と呼ばれる数名の貴族妖精と妖精騎士、先程の鎧を着込んだ人物だった。その中で鎧の人物は近くの柱に背中を預けるとマスクの目の部分から光が消える。それと同時に、玉座の間の側面の壁が消え、奥に居る巨大な竜種が姿を見せた。白い甲殻を持つ美しい竜種の名は境界竜アルビオン。原初の竜にして、ブリテンを守護する存在の一匹である。
『皆が居る場で態々決議をとる内容じゃ無いでしょう?お陰でまだまだ僕は働かされる羽目になった』
「そうでもしないと直ぐに仕事をサボるのはお父さんでしょ?」
『うぐっ!?それは・・・』
彼の愚痴に反論するのは、青い鎧を着た騎士。名をメリュジーヌ。アルビオンの娘にして妖精騎士の一角を担う彼女に言われては方なしである。
「ともかく、貴方は我々に希望を見せたのです。道半ばでフェードアウトをするなんて許しません」
『はいはい。全く、あのお転婆な娘が立派になったものだよ』
「彼との約束ですから。私はこの命ある限り彼と誓い合った夢の果てに向かって進むだけです」
決意を新たにする彼女にアルビオンは「そうかい」とだけ答えると擡げた頭を下げて眠りにつくように目を閉じた。
さて、何処から語ろうか。
初めにこの世界はとうの昔に終わっていた筈の世界だ。幾度となく繰り返し、並列に運行されている世界の中の一つで、ありふれた悲劇の果てに消える筈だった世界。
そんな世界に水を指したのは誰か。それは僕にも分からない。もしかしたら遠い昔の僕かも知れないし、繰り返しの中で運良く岐路を見つけた者かもしれない。
兎に角、今の僕のいる世界は悲劇にまみれた世界線の中で最も幸福な世界と言えるだろう。その最たる物とは何か。
この世界のブリテンは失われなかった。
遠い昔に星の外から落ちてきた遊星の端末の襲撃を受けて消えていく世界。
汎人類史では製造が間に合った聖剣が作られなかった。
そして世界は端末によって根刮ぎ刈り取られて無と化した。
それが最大の分岐点だったんだが、この世界は端末を除去するのに成功している。無論、被害がなかった訳ではない。代償として世界は遊星、セファールを撃退した聖剣使いに滅ぼされた。
彼女は元来大人しい娘だった。ただ余りにも聖剣に適応し、その力を十全かそれ以上に引き出せてしまった。聖剣を鍛えた妖精達も驚いていた。
彼女は称賛されるべきだったのだ。世界を救った英雄として、その名を永遠に歴史に刻まれるべきだった。だが世界の人々は、その力が自分達に振るわれると彼女を恐れた。
彼女は世界から裏切られたのだ。嘆きと悲しみはやがて憎悪となり向かってくる相手を圧倒的な力で押し潰した。気付けば、世界の大陸の殆どが沈み、文明は等しく姿を消した。ブリテンに到達した彼女だったが、その力を振るう事は無かった。
荒れ狂い、憎しみに染まっても尚、かすかに残っていた最後の感情。
聖剣を鍛えてくれた妖精達に向けた感謝を既の所で思い出したのだ。楽園の外に出ていた妖精達。ブリテンの地で彼等と再会した彼女は、自責の念から謝罪を繰り返し、最後にブリテンの最奥で一人果てた。聖剣に染み付いた闇を取り払うかの如く、最後の一撃を天に向かって解き放った。それは極大の大穴となり、現在もブリテンの中央に残り続けている。
その姿を私は、楽園の妖精、島に残った僅かな人間達と見ていた。彼等も知っていたのだ。聖剣使いに非が無い事を・・・。だが彼女の魂は、ブリテンの奥底に残り続けている。全ての力を出し尽くして抜け殻となった剣と共に、何時までも赦しを請い続けている。楽園から戻ってきたケルヌンノスやその巫女でもその赦しを止められなかった。
それどころかその気に触れて、ブリテンを危機に陥れる妖精や人間達が現れた事もあった。そこでケルヌンノスは己の肉体を蓋として彼女の気を抑えるといいブリテンに残った。
楽園からも彼女を連れて行ける可能性を秘めた者がやってきたが成功しなかった。それどころか年が過ぎる毎に魂だけの彼女の力が増大している。ケルヌンノスも時折、ケツが痒いとか言っていた。
ふざけるなと言ってやったが、それで問題が解決する訳ではない。
色々考えた末に、私はある決断をした。
私の肉体から新しい器を作り、彼女に新生してもらおう。序に妖精達にも力を借りた。彼女の魂が馴染む様に調整をお願いしたら彼等も快く快諾してくれた。
そうして決まった決行の日。
ケルヌンノスと巫女、妖精達と私が見守る中で行われた転生。生まれたのは白い髪を持つ小さな生命だった。
早速名付けをしようと各々が意見を出し合った。
結果、採択されたのは楽園からやって来た妖精、トネリコが出した「メリュジーヌ」と言う名前。竜である私の肉体と妖精による調整が入った事から、竜の妖精としての名を与えられた。メリュジーヌはすくすくと育ち、私を父と呼んでくれる様になった。前の彼女が持っていた聖剣は妖精達に町政を依頼し、今ではメリュジーヌの持ち物となっている。
トネリコはその後、人間の青年でウーサーとかいう小僧と結婚。アーサーとモルガンの双子を設けた。共に半人半妖精でモルガンは現在まで続く妖精國の女王として君臨している。
アーサーはブリテンの何処かで遊んでいるだろう。ある時、一匹の黒竜を連れてきて相棒であると紹介していた。
名前は確か、「ヴォーティガーン」と言っていたな。
最近の悩みは、このブリテンの地に何時までも残り続けたせいで、当てのない旅に出ようとすると皆が止めてくる事だろう。
あのモルガンまで私に相談役と言う半分名誉職の様なポジションで残そうとしてくる。何時までも皆で笑いながら過ごせれば言い、そう思って居たんだが・・・
『えっと、モルガン。この縛られている哀れな青年の名は?』
「知りません。突然私の部屋に現れた変態です」
『そうかい。ダメだよ、いくら彼女のファンだからってそんな事をしちゃ・・・』
青年、ベリル・ガット(後に自己紹介をされた)が現れた事で、僕達は否応がなしに大きなうねりに巻き込まれる事になる。
完全無欠の妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェの誕生でございます。
始まりの六人 味方です。
アルビオン なんか生きてます
ヴォーティガーン アーサーとマブダチ
ケルヌンノスと巫女 縁側で茶を啜るくらいに元気。巫女の寿命?それはホレ不思議なパワーですよ。