ソードアート・オンライン~悲運なβテスター~   作:鍵の剣

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どうも、第4話を投稿させていただきます。
4話の内容からは以前投稿させて貰っていたときとは違ってきているので、執筆には少々時間が掛かりました。それと同時にいつも書いているよりも文字が多くなってしまいました。
いつもは平均文字数を基準にしているのですが、これだと自分へのハードルを上げてしまっているのですね……。
さて今回はソラの脱獄に関する話をかかせていただいてます。ではどうぞ。


脱獄…失敗…。

 今現在俺が置かれている状況を整理すると3つが上げられる。1つ目は俺は解放隊に協力するという名の下で監獄から出ることの出来るチャンスが与えられたこと。2つ目は解放隊に協力とされているが、その内容はドーピングとでも言わんばかりのレベリングによる多額のコルの回収、及びそれによる死亡のリスクが高いこと。3つ目は解放隊内部は第25層のボス攻略線で壊滅的被害に遭ったことによりギルドメンバーの補充と同時に内部強化のために囚人までもを強くしてギルドメンバーに入隊させるつもりでいる。

 この3つのことをより迅速に行うために普段よりも多数の囚人を各地のレベリングポイントに連行しているため監視もそちらに割かれ1人あたりの人数が限りなく少ない。

 これを考えると脱獄するタイミングはレベリングの際が1番よく思える。そして脱獄するにも無一文では例え脱獄に成功したところでその後を生きることが出来ないので金を献上する前に実行する。しかし、隠蔽だけで軍の監視をよけられるというのは確信が得られない。単純に考えれば監視を行うということは恐らく索敵スキル持っている可能性が高いので、いくら隠蔽スキルがかなり高くなっているとはいっても見つかる可能性もかなり高い。だからこそ危険ではあるが多量のモンスターを目の前で見せ、索敵を発動を回避しなくてはならない。尚且つ階層は最前線のより近くの場所を選択しなくてはいけない。いくら数が多いとはいっても数人の監視だけでどうにかなる程度だったら意味はないからだ。

 以上の条件を満たすことができるようにするために狙いは解放隊が保有する最上層第24層とした。俺の考える条件に当てはまるのが主な理由だが、ポップするモンスターも最前線により近いので大量のモンスターを見せることで驚かせるのにも好条件だったからだった。

 俺はレベリングが第24層に行われるのを待ち続けること3日……その日は訪れた。見張りの人数は7人から3人となっており、かなり少ない。それだけ解放隊が監視に割ける人間が少なくなっているということなのだろう。この階層は俺がレベリングをして知った限りではモンスターの数が多く、リポップも早いのでこの計画を実行するには持って来いという状況であり、あとは、いつこの看守の前までモンスターを引き連れるかだ。

 

「今日はここで狩りを行ってもらう」

 

「ハイハイ。まかせてくださいな」

 

「なんだその口の利き方は?」

 

「すみません。以後気をつけます」

 

 以後なんてのは存在しない──それは俺が今日この場から脱獄するからだ。俺は看守の目を気にしながらもモンスターを狩っていくが、脱獄のタイミングを今かと今かと逸る気持ちを抑えるが、いつもよりも神経が磨り減るような作業だ。

 1時間ほどしてモンスターのリポップが最も高くなりだした。そこで隠蔽を使い監視員のもとに近付きながらも敵を倒しているが近づいていることに監視員は気づく感じは無かった。俺は監視員の目の前まで多量のモンスターを引き連れることで計画は順調に進んだ。それによって、モンスターが怒涛の勢いで俺をめがけ走ってくる。しかし、計画には無かった事態が発生してしまう。奥にいたはずの監視達が急に悲鳴をあげるように叫びだしたのだ。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「な、何だこいつは!? こんな奴がいるなんて聞いてないぞ」

 

 そこに居たのは今まで狩っていたような小さなモンスターなどではなく、体長が俺を含めたどの監視よりも高い2m強はある巨人のようなモンスターだった。俺も何回かこの層でのレベリングはしていたが、こんな化け物みたいな奴は初めて遭遇した。

 俺はモンスターを監視員への攻撃範囲に入るあたりまで急接近させていたが、監視の背後には巨大なモンスターが監視達に狙いを定めていた。監視の3人は巨大モンスターの攻撃に備えるために後ろに下がり武器を構えるがここで俺が引き連れていた大量のモンスターの存在に気づき前後から挟まれた状況となってしまう。この状況で監視の1人がこの場を脱出しようとメニューウインドウを右手で開きアイテムストレージに入っている転移結晶を手に取り出そうとするが、その行為を巨人は許さないと言わんが如く右手で薙ぎ払う。巨人から薙ぎ払われた監視は「ドゴッ!!」という鈍い音と共に弾き飛ばされ大量のモンスターの居る中に飛ばされる。その後は大量のモンスターに八つ裂きにされるかのように攻撃され、HPゲージがあっという間に0になってしまい、ポリゴンとなり爆散した。プレイヤーが死んだという話は聞くが、目の前でポリゴンとなって消えるのを見たのは初めて見たが、その光景は俺の思考を止めるのには十分だった。俺の思考が真っ白になっていく中で監視の1人が俺の肩を引っ張るように掴み俺の耳元で叫ぶ。

 

「思考を止めるな! 今はこの場を脱出することだけを考えろ!!」

 

「お、おう」

 

「今この場にいるのは3人だけだからな。不測の事態だが、致し方ないが3人で連携を図るしかない」

 

「こういう状況あんた達ならどうするんだ?」

 

「まずはその辺で群がる雑魚共の除去からだ。その間の巨人の気を引かせなくてはいかん」

 

「つまりはタンクをする人間が必要なわけね……。雑魚処理を早く終わらせるには俺よりもあんた達がしたほうが早い。俺がタンクをする」

 

「自ら危険なことをするとは良い心がけだな。ならば我らは貴様の雄姿を讃え一刻も早く駆逐しよう」

 

 随分と調子のいいことを言っている気もするが、今はこれが最善の手段だ。巨人の一つ一つの動きは単調で動きもそこまで速くもないので良く見て回避すれば攻撃も可能だった。

 巨人は大きな腕をゆっくり力をこめるように引き上げ、俺に向かって拳を振り下ろす。俺の装備を考慮しなくてもこの一撃を受けたら致命傷は間違いない。しかし動きは鈍いからこそ地面に地響きこそ鳴り響くがよく見れば回避も容易で獄中で大事に素振りしていたアニールブレードで情け程度のダメージしか与えられないが、ターゲットを取る分には十分だ。同時に監視の2人も雑魚敵の数もかなり減らしていた。

 

「おぉー。やるじゃないか」

 

「褒めるくらいならさっさとそいつら片付けて加勢してくださいよ。ダメージなんてまるで入らない」

 

「生意気なことを言うな。言われなくてもこんな雑魚は片付く。貴様も気をつけないと足を……っておい!」

 

「ん? ってうぉっ?!」

 

 監視に一言を言われついさっきまで後ろを向いて巨人から背を向けていたが、巨人が再び大きく腕を振り上げていたらしく親切に教えてくれたのだった。回避のタイミング自体は少し遅れてはいるが、振り下ろされる動きに合わせて剣を横に薙ぎ払うように振り、その遠心力で体勢をしゃがめながら体を捻り目の前に大きな拳が振り下ろされるが最小限の動きで回避し左足に力を込める。剣をモーションによって輝かせ、勢いよく飛び出し巨人の胸部をソードスキルで攻撃する──ソニックリープ──勢いのある攻撃をカウンターで受けることとなった巨人は仰向けで倒れる。この攻撃には俺も決まったと思った。見ていた監視も横で口笛を鳴らしている。同時に監視の方も雑魚を狩り終えたらしく俺の後ろに付く。

 

「これで脱出出来る。今のうちに転移結晶を準備してくれ」

 

 監視の2人もメニューを開きアイテムストレージから転移結晶を取り出し、あとは転移結晶ではじまりの街まで転移すればこの場を脱出できるはずだった。しかし、驚くことに監視の手に握られた転移結晶は2つしか無かった。

 

「お、俺の分は? てか何で……グハッ」

 

 突如後ろを振り向く俺に後ろから剣を刺され、刺された体からは鮮血の代わりに小さな赤いエフェクトが漏れるように出て行き、俺のHPも刺された直後の大きな減りからゆっくりと継続するように減っていく。刺した監視の頭上のグリーンのアイコンはオレンジに変化している。俺は刺されながらも声を振りしぼるように出して監視に聞く。

 

「な、何で……!?」

 

「見ての通り転移結晶は2つしかない。その場合選択肢は2つになる。1つはこの巨人を倒し3人で帰還する、2つ目は1人を犠牲に2人だけでも脱出することだ。もう意味が分かるだろう?」

 

「お、俺は監獄に居たとは言えグリーンプレイヤーだ……オレンジになってしまって……いいの……かよ」

 

「オレンジがグリーンに戻る手段はカルマクエストとして存在している。それにオレンジで転移結晶を使って街に行けなくても圏外の村に転移すればあとはどうとでもなるものさ」

 

「ふ、ふざけやがって……最初からそのつもりで……」

 

 怒りと出血で声が震えながらも俺はその場で倒れ込み、監視の2人が転移の呪文を唱えはじまりの街を指定すると俺を見下すように笑いかけながら消え、俺はその光に左手を伸ばしているだけだった。

 巨人もいつまでも仰向けになっているわけではなく、起き上がるとその場をキョロキョロと見回すと剣が刺さって倒れている俺を確認し、大声を上げている。俺はもう死ぬのか……こんな無様に死ぬのかと悔しくもありながら瞑り死を覚悟した。死ぬときも唯一救いなのは殴られた時に襲われる強烈な痛覚が無いことだろうか? それならゆっくりと眠ったまま死ねそうだとゆっくり目を閉じた。目を閉じると巨人の大声が辺りに耳障りに響く。

 

「耳障りなんだよ……さっさと殺してくれ」

 

 巨人は腕を振りかぶり大きく振り下ろされる……。

 

 

 

 第21層─商店通り

 

 タナトさんから逃げるようにただガムシャラに走っても街の中はかなり広く商店も並んでいる。ただしこの通りにあるのは私がさっきまでいた趣味の世界のような商店ではなく、一般的な攻略などにも必要な必需品の揃っている商店が並ぶ。先ほどまでとは変わって通りを通るプレイヤーもダンジョンから戻って来てなのか装備が装着したままのプレイヤーが見える。

 

「はぁ~。何であんな事言ったんだろ」

 

 流石に走り続けていたからなのか冷静に考えるようになり、自分がとった態度に少々恥ずかしさも感じていた。買ってもらえるからと興奮し過ぎていたけど、考えてもみれば今の自分に買えないようなアイテムが今まで一緒にパーティーを組んでいたタナトさんがそれ以上のお金を持っているのか? と言われれば微妙なラインだっただろう。仮に少し余裕があったから彼は提案したのだろうが、10万という大金を言うというのは予想にしてなかったのだ。全面的には私にも責任がある。

 

「あとで、ちゃんと謝らないとなぁ。何て言おう」

 

 自分が興奮しすぎて無理な物をせがんだから謝る。というので合っているのではあるが、その言い方ではタナトさんの人としての尊厳を傷つけかねない。だからといって興奮して罵声を浴びせたことを謝るのは個人的に嫌でもある。元はと言えば買ってあげるといって期待させておいてやっぱり無理なんていうドタキャンは私自身許せないところでもある。こんな無駄なことを考えてはいるが、結果として自分が謝ることには変わりないという答えには行き着くのだが……。

 通りを歩くと一際目立つ装備をしたプレイヤーが数人いた。その装備は白い鎧のような防具を装備し、背中には白いマントが垂れる。見た感じその中心に誰かがいるみたいで、その人と何やら相談しているように見えた。怪しまれないようにさり気無く近づいていき、白いマントを着けたプレイヤーとプレイヤーの間から除くように中心にいる人物を視認するとそこには栗色の長髪に他の人たちのように全体的に白い装備に赤いミニスカートを履いていた。相談の相手が女性だということに驚きだったが、周囲のプレイヤーから呼ばれたその女性の名前が私を一番驚かせてくれた。

 

「副団長。こんなイベントなんて開いて人が集まりますかね?」

 

「副団長なんていうのはやめてください。このイベントに関しては私も疑問ではありますけど」

 

「副団ちょ……いや、アスナさん。でもこれで自分たちのことを知る人が増えるというのであればそれだけ知名度も上がって人も集まれば攻略も早くなるっていう団長の狙いなんですよね?」

 

「確かにそう聞いてますけど、だからってこんなやり方は好きじゃないのですがね」

 

 間違いない。周囲のプレイヤーは彼女のことを副団長と言っているがその後にアスナさんと言っていた。アスナさんと言えば2ヶ月前にソラ君とお弁当を食べていたあの日に私が憧れる女性というだけで名前までは知らなかったけど、そこで初めて名前を教えてもらって以来私の目標とも呼べる人で今は最前線で攻略を進める血盟騎士団に所属していると聞いていたが、まさか副団長という立場にあるのには驚きだ。恐らくその周りにいるプレイヤーは血盟騎士団のギルドメンバーでバリバリの攻略組ということだ。

 しかし、私はまた何も考えずに周囲のプレイヤーを掻き分けてその中心にいるアスナさんを目掛けて行き、中心に行くと彼女の手を掴んでは今まで溜まりに溜まった気持ちをぶつける。

 

「ずっと……ずっとファンでした!!」

 

「え? えぇ!?」

 

 突然のことにアスナはかなり戸惑い、周囲の人間も突然現れた女性プレイヤーに驚き半分の怒り半分といった感情だろうか。アスナ自身こういう強引な事をしてくるプレイヤーは今まで自分が女性プレイヤーであったということからかなり寄ってくる人もいたが、そのほとんどは男性で下心が丸出しであることが分かったために即座に腰のレイピアを抜いて顔に近づけて威圧していた。しかし今回は自分と同じ女性プレイヤーであったために腰のレイピアを抜くことに躊躇ってしまった。そんなアスナを見たからか1人のプレイヤーが私に声をかける。

 

「つかぬことをお聞きしますが、副団長とお知り合いか何かですか?」

 

「あ……えっと……えへへへ」

 

 笑うという対応しか出来なかったが、血盟騎士団の人たちの表情は硬いままだった。いきなり自分達の上司にいきなり突撃なんてされればいい思いはしないだろう。私はただ笑ってやり過そうにもどうやらそれでは無理のようだった。そんな私に気を使ったのかアスナさんが私に話しかけて団員の人達にも聞こえるように言う。

 

「あぁー。あなたがリズが言ってた人ね?」

 

「リ、リズ?」

 

 リズという名前に誰かよく分からず聞き返すとそっと耳元に小さな声で呟いてくれる。

 

「この場はやり過せるようにするから後で話しましょ?」

 

「あ、はい……」

 

 アスナの一言に団員の1人がアスナに尋ねる。

 

「アスナさん。こちらの方はお知り合いだったのですか?」

 

「はい、とは言っても私もフレンドから仲介して聞いてた人ですので、実質今日が初対面ではありますがいつか会いましょうとは話していました」

 

「は、はぁ」

 

「ただこうして会ったのは偶然で私もつい驚きましたけど」

 

「そ、そうですか……なら良いのですが」

 

「ごめんなさいけど、今はまだ手を離せないから、あとでここに来て?」

 

 そういうとアスナは小さなメモを渡し、そこにはこの層にある小さな店の名前がそこにはあった。何て人の良い人なんだろうと感激してしまい、涙が零れそうな心境ではあるが、それにちゃっかりではあるが、一緒に話しましょ? と向こうからのお誘いまで頂けたのだ。これには恐悦至極だった。この時すでにタナトさんの存在は頭から消えていた。

 

 

 第24層──迷宮区前──

 

「ねぇ? さっき妙な人達がいたの」

 

 両手に槍を持った黒髪の少女が1人呟き、近くにいた黒いコートに身を包んだ少年に声をかける。

 

「妙な人? 一体どんな?」

 

「えっと……あれは解放隊……いや今は解放軍だっけ? その人達に連れられている人なんだけど装備がすっごく初期に着けているような防具で洞窟の方に入っていったの」

 

「初期の装備? 縛りプレイか何かか?」

 

「えー? そんな人がいるのかな?」

 

 少女の言葉に少年は首を傾げる。少年が知っている範囲でだが、少女の言う洞窟というのはモンスターの数もそれなりに数が多くレべリングを行うにおいては最適のポイントだったが、アインクラッド解放隊を改めアインクラッド解放軍が自分達で独占するためにと勝手に居座っていた場所だった。あそこでレべリングを行うつもりでいた少年からしてみれば勝手で邪魔な存在ではあったが彼女の言う初期の装備で行っている人がいた。とは行ったがレベリングのためとはいえ、初期の装備なんかで行ってしまえばあっけなく死んでしまうことがあるということだ。そんな常識分かって行くというのは何を考えているのだろうか?

 

「少し……気になるな。様子だけでも見に行くか」

 

「う、うん」

 

 少女は少々弱気な声ではあるが、少年の言葉に頷き付いて行く。朝早くからレベリングのために狩りを行っていた2人だったが、元々は数人で一緒に行動していたが少女の一言で少年は他のメンバーに声をかけて洞窟に向かう。少年は一緒に行動するメンバーの中では随一の剣の使い手で少女にもその技を習わせようとメンバーは少年と少女が一緒に行動していることに関しては口出しはしない。

 足早に2人は洞窟に向かうと近くに解放軍のプレイヤーが居ないだろうかと確認しながらそーっと洞窟に入る。洞窟を少年が少女の手を引きながら進んでいくと洞窟の中を叫ぶような大声が聞こえてきた。咄嗟に耳を塞ぐが、何かいるのだろうかと怯える少女を慰めながらゆっくり歩くと少々開けた場所に出た。恐らくここがレベリングに使われる場所何だろうと辺りを見回すが、少女が何かを

見つけたように指を指して言う。

 

「あ、あれ! あの人だよ。さっき話してた人」

 

 少年が少女の指を指す方向を見ると確かに初期装備のプレイヤーがそこにはいるが、何だか様子がおかしい。近くには恐らく先ほどの大声の原因と思われる大きな巨人のようなモンスターがいた。

 巨人は再び大声で叫ぶとゆっくりとした動作でプレイヤーに近づいているが、初期装備をしたプレイヤーが動く気配が無い。不安に思った少年は近くまで行くと初期装備をしたプレイヤーには剣が胴体を貫くように刺さっており、赤いエフェクトがダラダラと出ている。そこに巨人が近づいていき拳を振り上げようとしていた。

 

「危ない!!」

 

 少年は反射的に体を乗り出し、倒れているプレイヤーの元まで駆け寄っていく。巨人が拳を振り上げて降ろす前にプレイヤーの腕を肩に回して担ぐような姿勢でその拳を回避する。後から来るように少女も近くまで来て少年はその少女がいることを確認して叫ぶようにして呼びかける。

 

「サチ! このプレイヤーを連れて安全な場所まで運んでポーションを飲ませてくれ!! まだ間に合う。早く!!」

 

 少年の急かすような声に慌てながらもサチという少女はプレイヤーの腕を少年がしていたように肩から回して入り口の方角に向かって歩いていく。巨人から離れ、周囲に敵もいない安全な場所に辿り着くと少女はポーチに入っているポーションを手に取り、胸に刺さった剣を抜くと直ぐにポーションを口の中に突っ込む。

 

「キリトはどうするの!?」

 

 キリトというその少年は背中に挿していた片手用直剣を手に取り、巨人の攻撃に応戦していたが、少女の言葉に手早く返事をする。

 

「俺はこいつを引き連れている間にそのプレイヤーを安全エリアまで運んでくれ。俺も直ぐに切り上げてそっちに向かう」

 

 少年の言葉に少女は頷き、ポーションによって回復したことを確認すると再び肩に腕を回してプレイヤーの足を引きづりながらも連れ出し、無事安全エリアまで辿り着く。辿り着くと少女は張り詰めていた緊張を解くように深く息を吐くき出すとその息が眠っているプレイヤーにかかり髪が揺れるとプレイヤーはゆっくりと目を覚ます。

 

「あれ? 俺死んだのか? 目の前に巨人じゃなくて女の子が見える」

 

「あ、気がついたんだね。よかったー」

 

「気が付いたって……俺……」

 

「君さっきまであそこの洞窟の中でおっきなモンスターに襲われてて死にそうになってたんだよ? それを私と……キリトが助けたの」

 

「キリト……助けた? ……俺は生きてるのか?」

 

「生きてなかったらなんでここで喋るんだよ」

 

 憎たらしそうな少年キリトの声が洞窟の方角から聞こえてくる。

 

「サチが言ってくれなかったらこうして助けることなんて出来なかったよ。礼ならサチに言ってくれ」

 

「やっぱり、俺本当に生きてるのか……ありがとう助けてくれて俺の名前はソラ。2人とも本当に……ありがとう」

 

「どういたしまして。でも私はただソラをここまで連れてきただけだから実際助けたのはキリトなんだけどね」

 

 そういってサチはキリトの方に向かって笑いかけるとキリトは少々照れくさそうにしているが、そこから詮索されないようにするためなのかキリトはサチに1つ提案する。

 

「ここに居てもあれだから俺たちのギルドホームに来ないか? そんな装備のプレイヤーをそのままには出来ないからな」

 

「そうだね。ここよりは落ち着くし、ケイタ達もホームで待たせてるからね」

 

 キリトとサチは何故か初期装備のソラというプレイヤーを連れてギルドホームのある第11層の街タフトまで転移結晶を使って3人で転移する。

 

 

第11層──タフト──月夜の黒猫団ホーム

 

 共闘していたはずの解放隊──今では解放軍となっているが──に裏切られる形で死を覚悟した俺は巨人の前で目を閉じ死を待っていた。そこに偶然かけつけてくれたキリトとサチの2人によって命を助けられ、今は彼らが月夜の黒猫団のギルドホームとしている宿屋に向かう。

 どうやらギルドとは言っても身内同士で仲良しが集まって出来たギルドらしく、ギルドホームなんていう大層なものは無いらしい。俺が知る攻略特化の大型ギルドのようなものよりも人数の多いパーティーのようにも思える。彼らのような小さなギルドは今では中層フィールドに位置するプレイヤーなどが主なメンバーで、小さなギルドを組んで一緒に狩りをしている比較的ゆったりとしたプレイヤーが多いようだ。出来ることならこんな殺伐とした世界で攻略を急ぐのではなく、彼らのようにゆっくりとした攻略がしたいとこの世界に入ったばかりの頃は思っていた。

 キリトとサチの後ろを付いて行きながらも初めて歩く11層の街並みをキョロキョロと見回しては監獄エリアの壁に囲まれるかレベリングポイントにしか行くことのなかった俺にとっては街に入るというのは実に数ヶ月振りのことだった。街を妙にキョロキョロする俺を変に思ってかキリトが質問する。

 

「どうしたんだ? そんなにキョロキョロ辺りを見回して」

 

「あ、あ……いやー。この街ってこんなとこだったんだなーって思ってさ……感慨に浸っちゃって」

 

「ふーん、まだ低い層だったからこの層の攻略中は攻略組の連中も街を攻略という目的以外で散策なんていうのはしてなかっただろうしな。案外今の攻略組の1人と捕まえて街を歩かせたらソラと同じ反応をするかもな」

 

「ゆっくりと街を歩くと結構いい街だもんね」

 

「……。そうだな」

 

 最前線が26層だというのにこの第11層の街が初めて来たなんていうのを知られたら今の装備でも十分怪しいのに変な疑いを受けてしまう。それだけは避けたい。ギルドホームとする宿に到着すると、中には4人のサチやキリトと同じくらいの年と思われるプレイヤーが出迎えてくれた。4人のプレイヤーの中から1人のプレイヤーが一歩前に出てきて話す。

 

「おかえり、サチにキリト。勝手にはぐれて心配かけないでくれよ」

 

「ちゃんと一言くらいは言って行ったよ?」

 

「許可をした覚えはないよ。……まぁ、キリトが居たなら問題は無いか。そちらの人は?」

 

「あぁ、紹介するよ。彼はソラ。サチが気づいて2人で助けに入ったんだ」

 

「そうだったんだね。ならこんなとこで立ち話しもあれだから人数も多いで窮屈かもしれないけど奥の部屋で休んでていいよ」

 

「ありがとう。じゃあ遠慮なく休ませてもらうよ」

 

 部屋に行くと感激のあまり俺は涙を流しそうに涙腺がゆるんだ。目の前にあるのは立派なベッドにしわのない純白のシーツが清潔感を感じる。

 

「俺……生きてるんだな、生きてあそこを出たんだな」

 

 ベッドに座ると適度な僅かに沈んでまた俺を僅かに持ち上げている。その弾力が俺に生きているという感覚が実感出来た。それもそうだろう。以前いた監獄にはベッドなんていう豪華な物は存在せず、薄いボロボロの毛布に身をくるませて寝ていた。部屋に快適な温度調整なんかが存在しているわけがなく、むしろ存在しているのは冷たい空気とそれに合ったヒヤリとした温度だけだ。あれ以下の部屋が存在するわけないのだが、一般のプレイヤーに与えられたはずのものだったが、これほどの感動を覚えられるというのは俺はよほど疲れていたということなのであろうか。

 それからベッドで眠っていていつまでも起きない俺をサチが心配して様子を見に来たりしていたらしいが、いくら呼びかけても反応が無かったらしく、周りのみんなも見に来ては笑っていたらしい。




いかがでしたか? タイトルには脱獄失敗と書いてますが、ちゃんと脱獄ではないにしろ監獄エリアからは脱出しています。ここで初めて原作キャラとのストーリーを書かせて頂きました。第1話ではアスナをチラッと登場させただけでしたが、今回はがっつり登場させてみました。

感想や、アドバイスがあればよろしくお願いします。
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