個性『ロケットパンチ』 作:その股ぐらにロケットパンチ!
雄英体育祭までの二週間はあっという間だった……快人が、A組が、雄英の人間全てがその日のために色々な下積みをしてきた。
本番当日、控室にて皆様々な方法で緊張を紛らわせる……快人も一人目を釣り上げてかなり怖い顔で待っていた。
結局、青い炎も、回転しながらのロケットパンチも放つ事は
腕につけたままの状態の回転ならば、ある程度操れるようにはなったのだが……射出すると、あらぬ方向に飛んでいってしまう。
なんとか訓練を続けたが、どうにもうまくいかず……気づけば体育祭当日になっていた。
しかし、自分のものに出来ないのなら出来ないでしょうがない。自分の手札で何とかするしかないのだ。
すると、扉が開き飯田が声を上げながら入ってくる。
「みんな!準備はいいか!もうすぐ入場だ!」
その言葉に皆は緊張しだす……因みに、コスチュームの着用は不可。
サポートアイテムは申請すれば通るが、快人のシャトルガントレットは発目の手により強化改造中で持ち込めなかった。どの道申請を出しても個性使用に必須ではないから許可がもらえるかは怪しいが。
すると、普段あまり人と話さない推薦組の一人……轟が、緑谷へと言葉をかける。
「緑谷。」
「!……轟君……何?」
「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う。」
「えぇっ!?う、うん……」
「けどお前、オールマイトに目をかけられてるよな?……別にそこ詮索するつもりはねぇが、お前には勝つぞ。」
突然のクラス最強候補の宣戦布告。その様子にクラス一同は大いにざわついてくる……すると、次に轟は快人の方を見つめる。
「陣馬、お前もだ……お前も『オールマイトを殺せる』って明言されたあの脳みそヴィランを抑え込んだ……お前との差も埋めさせてもらう。」
「おいおい、いきなり喧嘩腰でどうした?直前にやめろって。」
「仲良しごっこじゃねぇんだ。なんだっていいだろ。」
そう言って轟は止めに入った切島の手を払い除けて、また席へと戻ろうとする。すると、緑谷が不意に言葉を紡ぐ。
「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってるのかはわからないけど……そりゃあ実力は君のほうが上だよ、実力なんて大抵の人には敵わない。」
「緑谷もあんまそーいうネガティブな事言わないほうが……!」
「でも……他の科の人達も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって……遅れをとるわけにはいかないんだ……! 僕も本気で獲りにいく!」
緑谷のその決意の籠もった瞳を見ると、轟は「おう」と一声かける。すると、快人も立ち上がり轟へ声を掛ける。
「んじゃ、俺からも……轟、テメェが売った喧嘩、俺も買った。だから俺も本気でやり合わせてもらう……徹底的にだ。」
「……あぁ。」
「陣馬、目ぇ怖えよ……」
瞳を吊り上げて轟に顔を近づける快人……はっきり言って表情だけならヴィラン側だ。裏では爆豪と合わせてヒーロー科2大目つき悪い奴とか言われているくらいだ。
……そして、遂に入場の合図が始まった。
『HEY!白熱しろオーディエンス!群がれマスメディア!今年もお前ら大好きな高校生たちの青春暴れ馬、雄英体育祭がはじまりエビバディ?アーユーレディ!?』
プレゼントマイクの引きの元、会場はさらに白熱していく……猛るオーディエンス達、そのテンション上々として、プレゼントマイクは早速1年の選手入場を宣言する。
『雄英体育祭ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!どうせオマエらアレだろ!?こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!ヒーロー科1年A組だるぉぉぉ!?』
盛大に持ち上げられて入場させられるのは、無論1-A組だ。A組の反応は緊張する緑谷や切島、むしろ燃え滾る飯田や爆豪等様々だ。
ちなみに快人も、ここまで持ち上げられれば爆豪と同じく……ただただアガると言った感じだ。
やがて、全クラスが集結し主審の18禁ヒーロー、ミッドナイト……因みに18禁なのに高校にいてもいいのかどうかは、峰田曰く「いい!!!」らしい。
「選手宣誓!1-A爆豪勝己!!」
「えぇっ!?かっちゃんなの!?」
「あいつ一応入試一位通過だからな!」
すると、ヒーロー科のな!と他の科の人間が鋭い目つきを向けてくる。……どうやら、相当睨まれているらしい。
そんな事は一切気にせずに、爆豪は気だるげな様子で壇上へと立ち上がり……宣誓する。
『せんせー、俺が1位になる。』
(((絶対やると思った!)))
すると、A組内外問わず直ぐ様ブーイングの嵐だ。
「図に乗るなよA組ィ!」
「ヘドロヤロー!」
「なぜ品位を貶めるような真似をするんだ!?」
「どんだけ自信満々だよ……この俺が潰したるわぁ!」
「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」
爆豪はバッサリそう言い切ると、壇上から降りる……快人はそんな爆豪をみてにやりと笑みを浮かべる。
(踏み台ね……他の奴の事を歯牙にも掛けてなかった
快人はそんな事を考えながら拳を握りしめる……すると、早速ミッドナイトが第一種目の音頭を取る。
「さて!それじゃあ早速第1種目に行きましょうか!……第1種目は所謂予選よ!毎年ここで多くの者がティアドリンク!運命の種目内容は……これ!」
そう言ってミッドナイトの背後のモニターに映し出される種目内容は……『障害物競走』
「計11クラス全クラス出場の総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!我が校は自由さが売り文句……コースを守れば何をしたって構わないわ!さぁ!位置に着きまくりなさい!」
何をしても構わない……それはつまり妨害もアリと言う事。文字通りティアドリンクする者も多いことだろう。
ミッドナイトの指示の元、各員がスタートラインに着く……先頭の方は当然ぎゅうぎゅう詰めだ。快人はあえて後方で体を伸ばしている。
快人は片腕の前腕部を掴み画角高めに構える……クラスメイトからは何をしようとしているのかはバレバレだ。だが、他のクラスの面々はアイツ何やってんだと好奇の目で見てくる。
……皆がスタートの合図をまだかまだかと待ち望む中、雄英体育祭の火蓋が切って落とされる。
『スタァァァァト!!!』
次の瞬間、一斉に走利出す1年生組……快人は腕を掴んだままロケットパンチを放って、ゲートの天井スレスレを聞きながらロケットパンチにぶら下がって突き進む。
「ッシャァァァァァァァァ!!!!」
快人は猛り声を上げながら突き進んでいると、突然下の方が氷結され、地面にいた生徒達は何名か動きを封じられる。
こんな大規模が氷結をできるのは、この場には轟ただ一人だ。
「あぶっねぇ……やっぱそう来るよなぁ。」
そう言いながら快人はロケットパンチに必死にしがみつく……腕はしびれてくるが、個性把握テストの時の様にスピードに振り落とされることはない。
シャトルガントレットをもらった際にロケットパンチの乗り方は訓練した……これであれば、地面に対する障害はある程度は無視することが可能だ。
しかし、そう入ってもそれなりのスピードで動く自分の腕に永遠捕まり続けるのはリスクがある。
何よりも片腕が塞がるから移動の為にロケットパンチを使うと本体の快人がほぼ無防備になるという弱点も存在する。
何が来るかはわからない快人は万全をきすために、轟に追いついたタイミングでロケットパンチから腕を離して、地面へと落ちて轟と並走する。
「ふぅ、よぉ轟ィ……!喧嘩売ってきたんだからわかってるよなぁ!?」
「陣馬……お前……!」
「陣馬だけじゃねぇぞぉ!」
切島の叫び声と共に後からは多くの後続が続いてきている。
「甘いですわ轟さん!」
「待ちやがれ半分野郎ォにパンチ野郎ォ!」
『おぉっと!早速上位争いかぁ!?競い合うのは1-A轟焦凍と陣馬快人だァッ!!しかし後続にもさらに生徒達は続い行くぅ!誰がいつどう抜かされてもおかしくねぇぞぉ!』
『しかし、轟と陣馬が若干リード気味だな。陣馬は入試成績だけなら六位だが、それは連射力の低さと病的なまでに目の前の障害を
解説席ではプレゼントマイクと何故かイレイザーヘッド……相澤も解説に加わっている。
轟と陣馬を先頭に続く障害物競走……すると、最初の関門が露わになってくる。
そこに立ちはだかるのは、一般入試様の仮想ヴィラン達……なんと、あの0ポイントヴィランも大量に設置されている。
『まずは手始めに第一関門!ロボインフェルノだァァァァァァ!!』
「一般入試用の仮想ヴィランって奴か。」
「そんな前じゃねぇのに懐かしいって感覚がするぜ。」
快人はそう言って両腕を引き絞り溜めを開始する……すると、轟は地面に触れ、静かに呟きながら目の前の0ポイントヴィランを地面ごと凍結させた。
その呟きを聞くことが出来たのは、彼の近くにいた快人のみだ。
「どうせならもっとすげぇの用意してもらいてぇもんだ……クソ親父が見てんだからな。」
「クソ親……って、俺もいかなきゃな!」
轟は0ポイントヴィランを凍結させてその足の隙間を行く……後続や快人もそれに続こうとするが、轟は呟く。
「やめておけ……不安定な体勢で凍らせたからな……倒れるぞ。」
その宣言通り、その0ポイントヴィランは段々と前のめりに倒れていく……快人もその倒壊に巻き込まれそうになるが……
(ロケットパンチィィィ………二連発ッ!!)
快人は咄嗟に溜めたロケットパンチを発射して、凍結された0ポイントヴィランをぶち抜いて砕いていく。
快人は瓦礫が落ちるですな煙が上がる中を突破するが、ロケットパンチ発射時に立ち止まった影響で既に轟とはある程度の差ができてしまっていた。
「くっそ……!負けるかよぉぉッ!!」
快人はそう自身に気合を入れるように叫ぶと、轟を追いかけるように走っていく。……障害物競走はまだまだ始まったばかり、真の闘いが始まるのはここからだ。