個性『ロケットパンチ』 作:その股ぐらにロケットパンチ!
轟の目の前に放たれた鉄拳……しかし、轟達が気がかりなのは、緑谷の騎馬が轟から見て左側に向かって居る事だ……。
轟の個性による凍結は右側から始まる。その為、左側に移動されては飯田が引っかかり最短で凍結できない弱点がある。
よく見ているが……一切止まる気配なく、左側の氷壁に向かっていることが気がつく。
「っ!?やべぇ、八百万!捕縛を!」
しかし、それに気がついたときには既に時遅し……放たれた快人のロケットパンチは、轟の組んだ騎馬の前で急激に旋回して、緑谷の方へ戻っていく。
「止まるんじゃねぇぞ麗日ぁ発目ぇ!」
「
「えっ!?……わ、わかった!」
「陣馬君!?なにを……」
「決まってんだろ!壁は砕く為にあるッッ!!!」
次の瞬間、緑谷の騎馬の前にある氷壁に快人のロケットパンチが突き刺さる。そして……氷壁には大きくヒビが入り……やがてその氷の壁を砕いてしまった。
「進めェェェェ!!」
『おぉっと緑谷チーム!陣馬のロケットパンチが轟の氷壁を砕いたぁ!!』
『向かってくる拳を囮にして怯ませてから旋回して氷壁を砕く。陣馬にしちゃあテクニカルな策だな。』
そんなふうな解説が聞こえてくる中、緑谷達は砕いた氷壁の穴から、轟の氷壁の包囲網を突破する。
「ちぃ!逃がすか……飯田、前進――!!」
しかし、緑谷達を追おうとする轟達であったがその周りを一つの鉄拳が旋回する……1回目に放った快人のロケットパンチだ。轟の氷壁の上を回って轟の足止めに来たのだ。
ロケットパンチ単体での機動性なら馬鹿にならない……それに、轟の周りをスピードをまばらにしながら衛星の様に回転しているから不意もつきにくい。こうなれば下手に避けるよりも、捕獲に突っ切ったほうが得策だた。
「ちぃ……上鳴で痺れさせてから八百万が捕獲してくれ!」
「お、おう……まだ……まだいける……!」
「わかりましたわ!」
しかし、その捕獲でどれだけのロスを食うか……時間も残り少ない。すると、飯田が不意に口を開く。
「……みんな、この後俺はしばらく使い物にならなくなる……取れよ、一千万!」
「……?」
その言葉の意味を理解するのは、轟達がロケットパンチを捕獲した後の話だ………。
それから暫くして、緑谷達は只管に走っていた。最大に緑谷にヘイトを向けてくる爆豪は今はB組の方へ意識が集中している。
他の面々も氷結の足止めやそれぞれのポイントの奪い合いで意識が他方に分散している。しかし、ロケットパンチはまだ少し遠い。
「陣馬君……!ありがとう、助かったよ!」
「快人君にしては考えましたね!」
「うん、あんな芸当できる人やったんや……」
「発目、麗日、後で裏こい……今ロケットパンチは轟達の足止め中だ。残り時間も僅か、逃げ切るぞ!」
「う、うん!」
快人は先ほど氷壁を砕いた方のロケットパンチを回収して腕に装填する………すふと、鋭い痛みが快人の腕にやってきて思わず顔をしかめる。その様子を見て発目はしかし……と間をおいてから発目は呟く。
「ダメージのフィードバッグ、大丈夫なんですか?」
その言葉を聞いて、緑谷は目を見開いて驚く。
「えっ!?フィードバッグって……」
「覚悟してたが痛ぇなぁ!……俺のロケットパンチはぶっ放した後に受けたダメージは拳に蓄積されて、俺の腕に戻ると痛みが襲ってくる仕組みなんだよ。」
「そんなっ……!大丈夫なの!?」
麗日の叫びに快人はニヤリと笑って答える。
「問題ねぇ、切島程じゃねぇが俺の腕は硬いからな……それだけかける価値が緑谷、お前にはあるッ!!」
(惚れ込んでますねぇ快人君……私、少し嫉妬しちゃいますよ。)
「……わかった!……兎に角このまま逃げき――」
ろう――緑谷がそう言葉を放った瞬間、その頭につけられていたハチマキからバシュッと音が響く……次に緑谷達が感じるのは、自分たちを横切る風……
すると、飯田の声が不意に皆の耳に響き渡る。
「トルクオーバー……レシプロバースト!!」
『おぉっと飯田ァ!?なんだあの超加速!?そんなのがあるなら、予選から使えってのよぉ!』
轟達の牙は、緑谷達の少し先で止まる……その超加速からのハチマキの奪取に会場が湧き上がる……その超加速には緑谷達だけでなく轟達も驚いていた。
「な、なんだ……?今の……」
「トルクと回転数を上げて、爆発力を生んだのだ。反動でしばらくエンストするがな……クラスメイトには教えていない、裏技さ!」
そう言って飯田は、緑谷へギラついた視線を向ける。
「言っただろう緑谷君!君に挑戦すると!」
すると、緑谷は咄嗟に叫ぶ。
「突っ込んで!」
「電気の人が居る以上攻めでは不利では!?他の人のポイントを狙いに行ったほうが……」
「駄目!ポイントの散り方を把握できてない!間に合わない!」
残り時間は1分弱、すると不意に快人は麗日と目が合い、二人は頷きい猛りの雄叫びを上げる。
「ッシャァァァァァァァァ!!!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
そして、二人は無理矢理にでも轟の方へと突き進む。
「八百万!」
「はいっ!」
そう言って八百万は懐から何かしらの紐を離した……すると放たれるのは、先程まで轟を妨害していた快人のロケットパンチだった。腕部分には紐が括り付けられており、誘導してきたのだろう。
快人がロケットパンチの制御がてきるのは快人の視界が届く範囲まで、視界から外れるとオートで単調な動きしかできなくなり、簡単な誘導にも引っかかる。
再度視界に入ったお陰でロケットパンチの制御権は手に入れたが、突然放たれたせいで快人や緑谷達の動きが怯んだ。しかし足は止まらない……このまま下手に旋回させて戻すと自分達に当たる可能性もある。
……まさか自分のロケットパンチが壁になるとは快人も思っていなかったが、それに何よりこれはチャンスだ。過去の自分を超えるためのチャンス……快人は咄嗟に拳を握る。
快人は……愚直なまでに目の前の壁を壊して突破したがる。それが、自身の成長につながると信じているからだ……たとえそれが、どんなに不合理的でも……快人はやってしまう。
「止まらねぇぞぉ!」
そう言って快人は片腕を突き出す……すると、無意識のうちに快人の腕は回転を始める……そしてその勢いのまま、目の前の自分自身のロケットパンチに放たれた!
本来ありえない自分自身の拳と拳のぶつかり合い……しかし、明らかに過去の自分のロケットパンチよりも先程放ったロケットパンチの方が威力を増している。
「過去の俺の拳より、
その叫びと共に、過去に放ったロケットパンチは今放った回転するロケットパンチによって弾かれる……弾かれた拍子に二つの拳は快人の腕へと戻る……激しい痛みが快人を襲うが、苦悶の声を上げる場合ではない。
「ッッッ!!!緑谷ァァァァァァ!!!」
「うん!!――ありがとう……陣馬君!!」
「チィ!!」
轟としては快人のロケットパンチで怯ませて足止めするつもりだったが、足止め所か逆に弾かれている……緑谷の腕には赤い光が灯っている。
轟は咄嗟に左側で庇おうとし……左側から炎がほんの僅かに湧き出る……轟が決して使わないと誓った炎が……。
(裏返して点数をわかんないようにしてるけど、取ったのは一番最後の……コレだァァァァァァ!!!)
緑谷は空を切る様に超パワーを発揮……轟の防御を崩して、その首元に掛かったハチマキを1本奪い取る。超パワーを発揮した緑谷の腕は……痛むが壊れてはいない!
………だが。
「緑谷さん!それ違いませんか!?」
「……ッ!?」
とったハチマキに書かれたポイントは……70。コレでは到底上位にはいけない……だが、まだだ。まだ時間は僅かにある。
「諦めるかァァァァァァ!!!!」
そう叫び、快人は再度両腕を向ける……すると、両腕の前腕部は激しい回転を始め、今までのの数割増しの勢いでロケットパンチが放たれた!
「八百万!上鳴」」
「はい!」
「うぇ……っしゃぁぁぁ!!」
放たれたロケットパンチを見て、轟達は咄嗟に上鳴による放電でロケットパンチを足止めする。
……しかし、ロケットパンチは一瞬放電により動きを止めるが……回転数を上げていき、その回転の勢いで放電を弾く。
「っ!?なんだ……こいつ!?」
上鳴の放電を弾いた両腕が見せたのは……風。風の渦を轟は幻視した。そしてロケットパンチは轟へと向かう……轟は、咄嗟にまたもや炎を使おうとしてしまう。
緑谷達は放電が終わった瞬間に突き進む。
「行くぞォォォォォォ!!」
「うん!!!」
「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「仕方が有りませんねぇぇぇぇぇ!!!」
次の瞬間、爆豪も爆速ターボさせながら飛びかかってくる。
「半分野郎ォォォォォォ!!!
轟も八百万から鉄パイプを作って凍結させて次の一手に備える。
もはや何が起こってもおかしくない一瞬……しかし、次の瞬間!
次の瞬間。
『タイムアウトォォォォォォ!!!』
……戦いの終わりの合図が響き渡った。
『第二種目!騎馬戦終了ォォォォォォ!!!』
「っっっっ!!くっ……そぉ………!」
緑谷は握りこぶしを作って悔しがる……ただ勝てなかったのが悔しいんじゃない。みんなの思いを背負ってない負けたのが悔しいのだ。
しかし、感傷に浸っている時間はない。
プレゼントマイクが続いて言葉を投げかける。
『そんじゃあ早速上位四チーム見ていこうか!?一位!轟チーム!!』
緑谷は、騎馬から降りた後、悔しそうな顔を滲ませて快人に駆け寄る。
「陣馬君……僕は……!」
『二位!爆豪チーム!』
快人はうつむいたまま言葉を漏らす。
「緑谷……悪ぃ……」
『三位鉄哲……心操チーム!?いつの間に逆転してたんだよ!』
緑谷は咄嗟に声を上げてしまう。
「っ!何で君が謝るのさ!読み間違えたのは僕で……」
「……本当は一千万取る気だったんだけどよぉ……どれが一千万かわかんなくてな。」
『四位!緑谷チーム!』
「……代わりに……警戒の薄かった頭の方を貰ってきた。」
そう言って快人は、轟のチームのポイント数の書かれたハチマキを見せる……これと七十ポイント合わせれば……四位に食い込めるわけだ。
「うぇ……あ……う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
緑谷は瞳からロケットパンチのジェット噴射の勢いさながらの涙を噴き上げながら泣きわめいていく。
『以上の四組が!最終種目へ!進出だァァァァァァ!!!』
プレゼントマイクは、ハッキリと、そう宣言するのだった。