個性『ロケットパンチ』   作:その股ぐらにロケットパンチ!

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十五発目 つかの間

 

 暫くして……時間は昼時、1時間の昼休み休憩だ。

 

『1時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!…………オイイレイザーヘッド、飯行こうぜ。』

『寝る。』

『ヒュー!』

 

 ……そんなやりとりを解説席で行いつつ、始まる昼休憩。発目は快人君呼びの件で芦戸や葉隠といった女子面子に捕まっている。

 

 主に発目が「快人君の身体の事なら快人君以上に知っている自信があります(採寸的な意味で。)」なんて事を口走ったのが何よりもの理由だが。

 

 反対に快人はどうなのかといえば……

 

「……。」

「……。」

「……。」

 

 緑谷と共に、轟に関係者専用の入口へと呼び出されていた。尋常ではないほど真剣な目つきの轟……そして、素で尋常ないほど目つきの悪い快人。

 

 二人に囲われる緑谷や、猛獣に囲まれる兎にも見えた。方や緑谷の知る爆豪とは違う冷たい威圧感……方や、シンプルな目付きの悪さから来る威圧感。

 

 ……すると、沈黙に耐えきれなくなった快人が不意に言葉を紡いだ。

 

「……轟ィ、言いてぇ事、あんだろう?なんだ、言ってみろ……受け止めてやっから。」

「気圧された……」

「あん?」

 

 すると、轟はポツポツと話し始める。

 

「テメェの誓約を破っちまう程に……あの場、あの瞬間、俺だけが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 一度目は緑谷が超パワーを使用した時、二度目は快人が回転させたロケットパンチを轟へ向けた時……計2回、それだけの数、轟に左側を使わせようとしたのは……彼にとって異常という他にないのだ。

 

「俺の制約を破っちまわせるほどの何か……オールマイトに目をかけられてる緑谷と、対オールマイト用ヴィランとやり合うパワーを持つ陣馬……つまり、お前はNO1に通ずる何かを持ってるって事だ。……なら、俺はお前らに勝たなくちゃならねぇ。」

 

 轟はそう言い放った。続いて、轟は自身の成り立ちについて……静かに語り始めた。曰く……自分はNO2ヒーロー、エンデヴァーが、オールマイトを超えるために作らせた子供だと。

 

 個性婚という個性を強化し、後世に残そうとする為だけに配偶者を選ぶと言う前時代的な発想で……金で親権者を丸め込ませ、自身にふさわしい個性の女を見繕った事。

 

 合わせて生まれた子供……つまり轟焦凍を後継者としてオールマイトを超えさせようとした事。だが、轟はそんなエンデヴァー側の個性を、炎を使わずにトップヒーローになることで否定しようとしていること……陣馬や緑谷に突っかかるのもそれが理由だと……全てを快人と緑谷は轟本人の口から聞く事になる。

 

 

 ……誰も言葉を、口を開けなかった……そう思っていた。しかし、快人は口を開いてしまう。

 

「……そうかい。んじゃ俺帰るわ。」

 

 それだけ言ってその場から去ろうとする。そのあまりにも無駄のない戻る為の動きに思わず緑谷が声を上げる。

 

「えぇっ!?そ、そんなあっさり!?」

「あっさりもこってりもねぇ。轟の事情は分かった……()()()()()()()()

 

 バッサリと快人は言い放つ。

 

「轟は俺と緑谷に喧嘩を売った、俺と緑谷が買った、だから轟と争う徹底的に……それだけだ。俺、悪ぃけど人に偉そうにあれこれ言える様な奴じゃねぇし、人の心を救えるようなやつじゃねぇのよ。」

 

 そう言って手を振りながらその場をさり……去り際に言葉をつぶやく。

 

「俺ができんのは精々……ムカつくヴィランをぶっ飛ばして……泣いてる子供の手握って安心させて……家族の元まで無事に送る。それだけだ。」

 

 それは、快人のヒーロー像……快人は自分が人の心にあれこれ言えるような人間じゃないのはわかっている。だから、ヴィランをぶっ飛ばして迷って泣いてる子供の手を引く…………それが自分のできることだと割り切っている。

 

 そこに、緑谷はかつて聞いた飯田の兄、インゲニウムのヒーロー理念と似たものを感じる。緑谷も、それに背を押されたのか轟へ何かを訴えるが……それを、快人は聞くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして迎える午後の部……プレゼントマイクは音頭を取って行く。

 

『さぁ!予選落ちの選手に朗報だ!これはあくまでも体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーションも用意してるぜ!本場アメリカからチアガールも呼び寄せ……一掃盛り上げ―――ありゃ?』

『あぁ……?何やってんだあいつら。』

 

 そこにいるのは、すごく辛気臭い顔でチアガールの格好をしていているA組+なんかよくわかってない表情でチアガールの格好をしている発目が居た。

 

「峰田さん上鳴さん騙しましたねぇーーーッ!?」

 

 そこに、たまたま居合わせた快人は目を細めながら指摘する。

 

「いや事の顛末は今の八百万の叫びで大体わかった…………問題なのはなんで……なんで発目までチアガールの格好してんだァァァァァァ!!!!

「ごめん!私達も百ちゃんから聞いて……全員って事はサポート科も含むのかなって発目ちゃんに教えちゃったの!」

 

 そう言って手を合わせて謝罪するのは、発目と仲良さげに食事に行った芦戸だ。しかし、当人の発目は特になんでもないように自身の身体を見る。

 

「間違いでしたか……しかし私は構いませんよ?ふむ、しかしなかなか動きやすいですね……この服色々参考になりそうです。」

「「参考!?」」

「上鳴ィ、峰田ァ……ロケットパンチ喰らいてぇならそう言えよな。」

「「すいません」」

 

 峰田と上鳴は頭を快人に鷲掴みにされてそう脅されると、顔を真っ青にして謝罪する。すると、快人の後から突然声が聞こえる。

 

「「そうだそうだぁ……陣馬君に聞きたいことがあったんだったぁ〜。」」

「はっ!?」

 

 すると、快人は背筋にゾクリと嫌な予感がする。たとえるなら……発目との関係を異様に疑ってくる父さん母さんの様な感覚……!!そっと後ろを振り返ると……そこにいたのは芦戸と葉隠の二人だった。

 

「陣馬君、明ちゃんと幼馴染なんだってぇ〜?」

「しかも何やら過去に色々あったそうじゃないか〜?」

「やっべ……面倒くせぇのに目ぇ付けられた。」

「なんだぁ!?何かしらあるってことだなぁ!?」

「洗いざらい全部はけぇ!」

「良いだろ別に!?野郎の惚気なんざ誰も興味ねぇって!!」

 

 完全に惚気好きの女子軍に捕まった快人……すると、発目がなんでもないことのように言葉を紡ぐ。

 

「あぁ、快人君が同級生に雑魚個性って泣かされて、泣きながら俺は明の作るサポートアイテムに似合うヒーローになるっ!て私に約束してくれた話ですか。」

「ちょっ……!?発目ェ!?」

 

 全部バラされてしまった……今はもう昔。快人が小学1年の頃の話だ。ちょうどその頃、とある高校生に手を引かれてヴィランから助けてもらった過去のある快人は、必死にヒーローを目指すと宣言していた。

 

 しかし、その頃の快人は全く持ってロケットパンチの威力が出ずに腕が飛び出すだけの雑魚個性扱いされていた。当時はまだ弱くいじめられっこ気質だった快人は……幼かった発目にこう励まされた。

 

『快人君はヒーローに成れます!ヒーローになったら、私のドッかわいいベイビー使ってくださいね!』

 

 それはつまり、ヒーローになったら自分の発明品を使用しろと言う発目からのお達しであるのだが……それが、快人の心を救った。そして、快人は発明の前で誓ったのだ。

 

『俺は明の作るサポートアイテムに似合うヒーローになるっ!』

 

 と同じ言葉を何度も叫んだというつまらない話だ。その頃からだろうか、快人が今のような性格になったのは……

 

「くっそ……隠したい秘密全部バラされた。」

「なんでぇ?いいじゃん!」

「と言うかなんで子供の頃は明呼びで今は発目呼びなの?」

「それは私も気になってました。何故です?」

「それは……その……」

 

 快人はもどかしそうにしていると、壇上にミッドナイトが近づいてるのを見て叫ぶ。

 

「あぁ!ミッドナイト先生きてらぁ!静かにしろお前ら!なっ!?飯田ぁ!?なっ!?」

「むっ!そうだな陣馬君!みんな整列するんだ!」

(((誤魔化した……)))

 

 その場にいた飯田以外の全員からそう思われたのは言うまでもない。

 

『さぁさぁ競い合っていこうレクリエーション!!それが終われば、最終種目!総勢16人によるトーナメント形式のガチバトル!』

 

「因みに最終種目進出の選手達はレクレーションの参加は自由になります。温存や息抜きは各々の自由よ!っと言う訳で早速、公平なるくじ引きによる組み合わせを決めちゃうわよぉ――――!!」

 

 そこから始まるくじ引き……その前に、尾白とB組の圧田が辞退を申し出てきた。

 

 曰く……騎馬戦の記憶がぼんやりとしかなく、何もしていないのに出るのはプライドが許さないとのこと、実力が伴う伴わない以前に何もしていないものが出るのは体育祭の趣旨に相反するのではないかということ……皆が止めるが、二人の思いは変わらない。

 

 ……そんなこんながありつつも、トーナメントの割り振りが決められた。上から一試合目二試合目……と続いていく。

 

【Aブロック】

緑谷VS心操

轟VS瀬呂

陣馬VS塩崎

飯田VS発目

 

【Bブロック】 

芦戸VS青山

上鳴VS八百万

切島VS鉄哲

麗日VS爆豪

 

 快人は映し出されるトーナメント表を見ながら呟く。

 

「塩崎……B組の人か。」

 

 快人は不意にぐるっと辺りを見回す……発目が目をキラッキラさせながら飯田に話しかけていた。もう嫌な予感しかしないがもう知らん……勝手にしてもらおう。飯田……ゴメン。そんな感情が快人の中で湧き上がってくる。

 

 すると、不意に声をかけられる。

 

「あの……陣馬と言う方は貴方でしょうか?」

「あぁ、俺が陣馬快人だ……このタイミングで俺に話しかけてくるってこったぁ……貴方が塩崎サン?」

「えぇ、今回はよろしくお願いいたします。」

 

 塩崎はそう言って深々と頭を下げる……快人はやりづらそうに頭を掻くが、茨の髪の個性……中々に厄介そうだ。

 

「……舐めたりなんかしねぇ、全力で行く。」

「はい!楽しみにしております……!」

 

 そう言って二人は軽く握手と会釈すると、その場を離れるのだった…………続いて行われるのは、つかの間……レクリエーションタイムだが、快人はレクリエーションタイムを背にして、一人でゆっくりと、控室に向けて歩き出すのだった。

 




Q:なんで快人は発目を名前呼びしなくなったの?
A:なんか恥ずかしくなったからです。快人はいろんな意味で発目にベタ惚れなのです。
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