個性『ロケットパンチ』 作:その股ぐらにロケットパンチ!
その黒いモヤの塊……黒霧は、紳士的な口調を崩さずに言葉を綴る。
「本来であれば、ここにオールマイトがいらっしゃるはず…………ですが何か変更があったのでしょうか?まぁ、それは関係なく私の役目はこれ……」
そう言って黒霧は、モヤを展開して生徒達を包み込もうとする……13号は咄嗟に、指の栓を開き、ブラックホールを放とうとする……だが、そこで誤算が生じた。
「オラァ!」
「デリャァッ!!」
爆豪は掌を爆破させながら、切島は体を硬化させながら黒霧へと攻撃を仕掛ける。2人が前に出た性で、13号はブラックホールを使えない。
2人の攻撃で相手が怯んだりやられてくれたのならばよかったが……どうにもそういうわけにもいかないらしい。
「危ない危ない……生徒と言えど優秀な金の卵、油断しては寝首をかかれ――ぐおっ!?」
黒霧がそう言いながら身体を再形成しようとする……すると、銀と
その鉄拳の主は、無論……快人だ。快人は打ち出した拳を戻して声を上げる。
「ウダウダウダウダ言いやがって……その銀色のプロテクター、どう見ても弱点じゃねぇか。待ってろ、もう一回ぶち抜いて――」
「くっ……少し油断していたのでしょうか?しかし、もう遅いです……私の役目は貴方達生徒を散らしてなぶる!」
黒霧は変わらぬ態度でひょうひょうと呟く……すると、足元に既に黒いモヤが行き渡っていた。次の瞬間、その、モヤはドーム状になって生徒達を包む。
激しい風が襲う中、生徒達は思わず身を守り目をつむるのだった。障子と飯田は咄嗟に麗日や尾白、芦戸や瀬呂達を庇う。
快人はもう一度拳を打ち出そうと考えたが間に合わず……快人が次に目を覚ますと、そこは炎燃えたぎる火災ゾーン。
「くっ!?みんなは……!?」
快人は咄嗟に辺りを見渡す……が、誰もいない。どうやら、快人一人の様だ。あの黒霧に一撃入れた腹いせだろうか?
どの道、このままではまずいことは流石に快人も分かる。
(散らして嬲る……って言ってたよな?まさか皆んな1人ずつに分けて確殺しようとしてるのか?だったら少しやべぇかも……)
快人の予想に反して、殆どの人間は数人ずつのグループで分けられている。完全1人で孤立しているのは快人だけだ。
「ちっ、兎に角出るか……」
快人はそう言ってすたすたと悠長に歩き始める……その後ろには、ヴィランがジリジリとにじり寄っていた。
(けけっ……馬鹿な奴だぜ、隙だらけじゃねぇか!)
そのヴィランは油断しきっている快人をみてしたなめずりをする。女じゃないのは残念だが……男でも付いてるもんは付いてる。
そのヴィランは後から快人へと飛びかかった。
「……かーらーのー?」
「ぐぇっ!?」
快人は振り向きざまにそのヴィランの首根っこをつかむ。ヴィランが何か言葉をあげるよりも先に、ガントレットの付けた腕のロケットパンチを放ってヴィランをぶっ飛ばす。
ぶっ飛ばされたヴィランは、ロケットパンチごと瓦礫に体を叩きつけられ、気を失う。すると、続々と新たなヴィランが現れてくる。
「居たぞ!」
「男かよ、どうせなら女が良かったかなぁ!」
「馬鹿野郎だな、ああいう青臭いガキこそ良いんじゃねぇか。」
「そうそう、泣きわめいてママに助けを求める様をみたらきっとお前も目覚めるぜぇ?」
低俗な会話を続けるのは、建物から顔を出してくるヴィラン達だ。快人はそんな言葉には耳を貸さずに、相手の人数を確認する……ざっと数えて10人前後。
やれるか?いや、やらねばならない。
快人は先程のヴィランに打ち込んだ腕を戻すと、目の前に固まる有象無象に向けて再度腕を向け、ロケットパンチを放った。
放たれたロケットを、ヴィランたちはとっさに散開して避ける……すると、ヴィランはしたり顔を向けて声を上げる。
「うおっとアブねぇ!……へへ、残念だったな!」
「そうかな?もう一発!」
そう言って快人はもう片方の腕もロケットパンチとして打ち出した。今度も避けようとするヴィラン。
だが、そのヴィランは目の前のロケットパンチに気を取られるあまり、先程ほど打ち出したロケットパンチが、縦横無尽に動き回りながら他のヴィランを殴り飛ばしながら戻って来るのに気づかなかった。
そのロケットパンチは、ウイングのようなものが展開され、近くにいたヴィランもウイングに巻き込まれてふっとばされる。
「な、なんだこの腕――がはっ!?」
「は、速え!目で追え――ぐぉ!?」
「お、おい!誰かなんとかし――」
「なっ!?ぐぇぇ!?」
そのヴィランは後からロケットパンチが迫るのを気付くのと同時に、背中からのロケットパンチを受けて派手に吹っ飛ぶ。
だが、快人がロケットパンチを放って両腕を失っているのを見計らって、ハイゴから快人へ襲いかかるヴィランも居た。
「ひゃっはぁ!!腕のない今ならどうだぁ!?」
「さっき仲間が奇襲失敗したの見てただろうがよぉ!」
そう言って、快人は見事な回し蹴りを後ろから襲いかかってきたヴィランへと叩きつける。真剣に体を鍛えて居る者の一撃だ、首元に食らったヴィランも大きく後方へ吹っ飛ぶ。
「ふぅ……よっと。」
快人は腕を元に戻して、あたりの警戒を続ける……オールマイトを殺すとか言っているこの組織、敵連合と言ったか?
しかしどうにもおかしい、あんな大層な物言いをしたからには何か切り札があるのだろうが……ここにいるヴィランは皆チンピラの寄せ集め。有象無象の集まりだ。
口先だけ、個性の扱いも快人以下のトーシローばかり、何人いた所でオールマイトなら片手間でぶっ飛ばすだろう。
では、オールマイトを殺せるほどの根拠ってなんだ?……真にヤバそうなのは、あの黒霧と中心人物らしい腕を大量に体につけた男……そして、黒い脳剥き出しの巨漢。
快人らしくなく思考する合間にも、次のヴィランが片手で数えられる程度に現れる……そのヴィラン達は、後方で倒れている奴らを見て驚く。
「なっ!?あいつらやられてる!?」
「くそっ、本陣のアイツらに任せて奇襲する作戦が!」
「つまりお前らで最後ってこったぁなぁ!!」
快人はそう言って片腕を支えて力を溜め込む……快人の個性、ロケットパンチは『溜め』が効く……いや、効く様に訓練した、と言ったほうが正しい。
次の瞬間に放たれたロケットパンチは、先程のものより数段速く、次の瞬間にはヴィランがひとり殴り飛ばされる。
「なっ!?」
「はい余所見しない!」
そう言って快人は地面を蹴って近づき、もう一人のヴィランの一人を殴り飛ばす……残ったヴィランも片腕のロケットを放って殴り飛ばす。
「ふぅ……しかし、みんなもそうだし、相澤先生も心配だ。早くいかねぇとな……」
快人が少し振り返ると、そこからは先程放ったロケットパンチが旋回して戻ってきていた……兎も角いかねば、このまま助けが来るまで逃げ続けるなんて真似は快人にはできない。
倒れるとしても前のめり……とにかく前に進んでから倒れたい。
「……兎に角行くか。」
すると、快人は片腕を戻すと、もう片方の加速するロケットパンチが、快人の足元にきたタイミングで、ガントレットの上にスケボーのように乗り込む。
すると、シャトルガントレットは拳を防護する様にせり出して、小型のスペースシャトルの様な形に変形する。それと同時に、靴はガントレットにロックされ安定性も確保される。
快人はそのままロケットパンチをホバースケボーの様にして火災エリアの中を突き進む……当然走るよりも全然早い。
「しかし、俺の個性にこんなアプローチの仕方があったなんてな……発目にゃ頭上がらねぇな。」
この変形機構を付けたのは、当然シャトルガントレットの制作者である発目だ。快人は、発目からシャトルガントレットを受け取った時の会話を思い出す。
『……このシャトルガントレット!なんとロケットパンチのとして放った時に上に乗れるように設計しました!』
快人はそんな発想をした発目に驚くのと同時に、そんなの意味あるのか?と思ってもしまった。すると、そんな快人の心を読んでか読まずか、発目は言葉を紡ぐ。
『迷った機能はつけておけ!私の好きなの一つ言葉です!それに……貴方は脳筋なだけで、こういった小細工も使いこなしてくれると思います。』
さらりと発目に脳筋扱いされていたのも衝撃を受けたが、使い熟してくれると信じてくれたことが嬉しかった。俄然やる気になってくる……使いこなしてやると意地になってくる。
(発目……助かったぜ!)
快人は心のなかでこのガントレットを作ってくれた発目への感謝の言葉を述べると、どんどんと火災エリアの出口へと向かっていくのだった。