個性『ロケットパンチ』   作:その股ぐらにロケットパンチ!

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九発目 Pulls Ultra

 

 敵連合の主犯格――死柄木と黒霧は、脳無を置いて去ってしまった。

 

 オールマイトも勿論逃がす気はないが……次の瞬間、快人が顔面の穴と言う穴から出血するのを見れば、思わずそちらに意識が向き、その一瞬のうちに逃げられてしまう。

 

 兎に角オールマイトは、その場に倒れようとする快人を咄嗟に支える……己の不甲斐なさに歯を食いしばる。

 

「陣馬少年……!!すまない!!私が遅れてきたばっかりに……!!」

(己の不甲斐なさに……腹が立つ。陣馬少年が!生徒達が!どれだけの思いでヴィランと対峙してたかを!)

 

 オールマイトは、咄嗟に残った脳無の方を見る……脳無は、まるで糸の切れた操り人形のように静かだった。

 

 その腹には、快人のロケットパンチが未だに青い炎を上げながら突き刺さっていた……快人が気を失っても尚、脳無を抑え込もうとする執念。オールマイトは感服する。

 

 しかし、その脳無の巨体を押し付けるロケットパンチの威力に同時にオールマイトは感服した。オールマイトは知らぬ事だが、ショック吸収の上から抑え込むほどの馬力……ごくごく単純なパワーならば、そこらの増強系個性のプロなんか目じゃないほどだろう。

 

 

 

 次の瞬間には、飯田の呼んだ先生達や警察も現場に到着し次々と残党を各個撃破、逮捕していく。USJで起こった事件は、そのまま流れるように終わっていった…………快人は、大事を取ってオールマイトにより相澤と共に病院へと担ぎ込まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 生徒達は、安否確認のためにゲート前へと集められていた。警察の人間が人数を確認する……順々に快人を除いた十九名を確認し終わると、警察は呟く。

 

「血を噴き出して倒れた彼を除いて全員無事か……」

 

 生徒達の表情は暗いままだ。クラスメイトと担任が病院へと担ぎ込まれたのだから、そりゃ表情も暗くなる。

 

 すると、蛙吹が皆の聞きたいことを刑事の人間に問い掛ける。

 

「刑事さん、相澤先生と陣馬ちゃんは……」

「あぁ、少し待っていてくれ。

 

 すると、刑事の人間はスマホを取り出して病院へと連絡し……医師の人間から詳しい話を聞き出す。

 

『相澤さんは両腕粉砕骨折、顔面骨折……幸い脳系の損傷は見受けられません。ただ、眼窩底骨が粉々になってまして……目に、何かしらの後遺症が残るかも知れません。』

 

 目に後遺症……それはつまり、相澤先生の個性である見たものの個性を消す抹消に、何かしらのインターバルが付与されるということ。視力を失っていないだけマシだが、ヒーローとしては少し痛い。

 

『陣馬さんですが……前腕部を複雑骨折している他に、脳に大きなダメージが入っています。幸い後遺症が残るほどの物では有りませんが……念の為、病院で安静にしていてもらっています。』

 

 快人の方は、脳無を殴りつけた時、()()()()()()()()()()()()()の反動で腕にダメージを受けてしまった。

 

 それでも、ガントレットのお陰で衝撃は大分吸収され、後遺症が残る程ではないそうな。

 

 脳系のダメージは……こちらは個性の全力の連続使用で脳のリミッターを無理やり外した影響で食らってしまったとの事。

 

 まぁ、それだけの全力でなければオールマイトを仕留めるとまで豪語されていた怪人脳無をぶっ飛ばし、押さえつけるなんて芸当はできなかったのだろう。命に別状がないのは幸いという他ない。

 

「ケロ……」

「そんなっ……!」

「っ……!」

 

 相澤を託され、脳無に立ち向かおうとする快人をみた緑谷に蛙吹、峰田はその宣告に悔しさを滲ませる……自分達もなにか出来たのではないかと。

 

 三人は、怒り心頭の快人を見て……ただ託す事しか出来なかった。快人も同級生なのにだ……他のクラスメイトも、同じ気持ちのようで暗い面持ちは晴れない。

 

 だが、人は大きく羽ばたく為には一度沈まなければならない。これは、大いなる飛翔のためのしゃがみ込みだ……少年少女達は、この悔しさをバネにして飛び上がる。

 

 さらに向こうへ……Pulls Ultra。

 

 

 クラスメイト達は、相澤や13号、快人の無事を祈りながら、その精神を胸に秘める………今度は、誰も傷つけさせない為に。

 

■■■

 

 

 

 

 

「……っ!!」

「!!先生、陣馬さんが目覚めました!!」

 

 快人の目覚めは、医師達が想定していたよりもずっと早かった。

 

 ……なにせ、見通しとして数日は目を覚まさないはずだったのに、USJ事件のあったその日の深夜には快人は目覚めたのだ。

 

 快人は、医師ややってきた警察からことのあらましを聞き入れ……クラスメイトや相澤先生の命が助かったことを知る。

 

 警察の人々は、目覚めたての怪我人に対してあまりしつこく事情聴取するのを躊躇ったが、快人の方は特に気にする様子もなく、次々とあった事聞いた事を言葉にした。

 

 警察も医者も、脳にダメージが入っていた割には元気だと驚いていた。快人は……何やら妙にスッキリした気分だ。

 

 まるで狭まっていた視界が一気に晴れたような……視界がクリアに透き通って見えるような、世界が広がって見えるような、そんな清々しい気分だ。

 

 翌日、学校は臨時休校となり快人は病室で一人ぼぉっと過ごしていた……途中、快人の両親がやってきて抱きつくほどに心配してくれていた。

 

 快人はそんな風に心配してくれていた有り難かったが、同時にそれだけ心配をかけたという後ろめたさが快人を覆う。

 

 両親曰く……相澤は復帰してそうそう快人の両親に会いに行き、怪我でボロボロの体で土下座一歩手前まで謝罪したらしい。

 

 両親はそれを快く受け入れ、むしろ愚息が勝手なことをしてすみませんと謝ったくらいだ……快人としては、心配するのか貶すのかどちらかにしてほしい。

 

 雄英高校のヴィラン襲撃はあっという間にニュースとなり、テレビやネットではみんな好き放題言っているらしい。

 

 快人が両親からそんな話を聞いていると、不意に病室の扉がノックされる。快人が入室の許可を出すと……入ってくるのは、私服に身を包んだ発目だった。

 

「あら明ちゃん!」

「久しぶり……!」

「……おっす、発目。」

「こんにちは!」

 

 発目はいつもと変わらぬ様子で声を上げる……いや、声量は病院だから少し抑えめの声だ。

 

 発目がやってくるやいなや、両親は、「後は若い者同士で……」と病室から退出してしまった……どんな気の回し方だと快人は呆れる。

 

 すると、発目は出会い頭に一つ問いかけてくる。

 

「私のベイビーは役に立ちましたか!?」

「いきなりそれかよ!?」

 

 快人は思わず突っ込む……だが、まぁ変に気を使われても、快人としてはむず痒い。これくらいが丁度いいのかも知れない……それに、発目も普段より元気がないのは快人の目にだって分かる。

 

 快人は少し溜息をつくと、静かに笑いながら言葉を綴る。

 

「役にたったよ……」

「本当に?」

「本当だよ。」

「……個性の反動から貴方の腕を守れなかったのに?」

 

 快人は、何処から聞いたんだと思わず思ってしまう……発目の表情は、いつもよりも暗くなっていた。快人は、発目に励ますために声を上げる。

 

「ありゃ土壇場で俺が脳みそのリミッター外して全力でぶちかましたからだ……お前のせいじゃねぇよ。それに、お前のガントレットがなかったら俺の腕はよりひどい事になってた。医者さんもそう言ってさ……」

 

 快人はそう言うが、発目としてはやりやるせない気持ちとなる……快人は個性の都合上、腕への負担が大きい。

 

 快人の腕自体、常人よりも硬く出来ているのだが、それでも負担は軽減しきれない。

 

 発目はその負担を解消させるために快人のシャトルガントレットを作ったのだ……しかし、快人の力は発目の予想を超え、ガントレットをつけていてもその腕を折らせる程になっていた。

 

 発目は、快人のボロボロの腕にそっと手を添える。普段採寸する時の強引さは何処に行ったのやら……発目は、快人の目を見て声を上げる。

 

「快人君。今度は、確実に貴方をサポートできるベイビーを作りますから……無茶はあまりしないでくださいね?」

「……善処する。」

 

 そう言って快人はぷいっとそっぽを向く……あぁ、これはそのうちまたやらかすなど、発目は内心で少し呆れてしまう。それが、快人と言う男だ。一朝一夕では変えられない。故に、発目は自分がサポートせねばと決意を胸に固める。、

 

「しかし、すげぇなお前のベイビー。ガントレット壊れてねぇってよ。」

「……!ふふ、そうでしょうそうでしょう……!しかし、まさかアレだけの衝撃吸収能力を入れたというのに、吸収しきれずに快人君の腕が骨折するとは、やはり改良が必要ですね。」

「頼むぜ、発目!またすげぇベイビー作ってくれ!」

「ふふ!お任せください!!」

 

 二人はそう言って、ガントレットの強化プランについて話し始めるのだった……

 

 

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