ぼくとバカと迷い猫N   作:友狩

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第1話

 桜が咲き乱れる坂道を登っていく。そして桜並木の向こうに大きな建物が見えてきた。今日からぼくが半ば強制的に通うことになる私立桜ヶ丘学園高等部の校舎だ。

 いや、文句があるわけではないけど、あの脅しはやめてほしい。軽くトラウマになってるんだから。

 それはともかく、私立桜ヶ丘学園。

 この学園は昨年、文月学園と梅ノ森学園の統合によってできた中高一貫校だ。統合の理由などは公表されていない。

 そのことをお嬢様に聞いたところ、梅ノ森理事長の気まぐれ、らしい。

 そして今目の前にある建物、高等部の校舎は文月学園の校舎をそのまま利用している。その理由は日本では文月学園にしか存在しないものが関係しているらしい。それはまた今度説明しようと思う。

 それにしてもさっきから見られているような気がする。

 周りを少し見るとこれからぼくと同じように入学式に出る新入生と思われる人たちがちらほらといた。少し遅い時間だからだろうか、みんな少し早足で歩いている。ただ、急いでいるのに時々ぼくの方を見ている人が何人もいる。

 この格好、何か変なのかな? この学園の制服だし着崩したりしないで普通に着ているだけなんだけど。

 お嬢様も、『ダイジョーブ、ダイジョーブ。なにもおかしくない』って言ってたし。口調は大分おかしかったような気がするけど。

 この時周りの新入生が思っていたことは入学式の後にわかることになる。

 

「ちょっと、バカ巧!! なんでこういう日に限って寝坊するのよっ!!」

 

 ふと後ろからそんな女の子の怒鳴り声が聞こえた。

 振り返ると女子生徒に引きずられるように歩く男子生徒が見えた。さっきの怒鳴り声は彼女のものだろう。中等部からのエスカレーター組の人なのだろうか、すごく仲が――いいのかな?

 

「だから、ごめんって言ってるだろ。――って待ってくれ、文乃!」

 

 2人はそのままぼくを追い抜いて行った。

 

「こんなん無視できるかーっ!!」

 

 ああいうのもなんかいいなぁ、とか思っていると再び後ろの方で叫び声が聞こえた。

 気になり後ろに振り向く。

 

「――――」

 

 絶句した。

 確かにこれは叫んでも仕方ない。なぜならそこには、身長165cm位の頭に寝癖を残した男子生徒がいた。そのとなりには180cm以上はありそうな赤髪の男子生徒が立っている。考えるまでもなくさっきの叫び声は彼のものだろう。彼がなぜ叫び声をあげ、ぼくが絶句したのか。それは寝癖の男子生徒がセーラー服を着ていたからだ。

 あれ、でもセーラー服自体は元々海軍の軍服として使われていたし何もおかしくないのかな? いや、そもそもなんでセーラー服? この学校ってブレザーだよね?

 

「え!? なになに!? どうしたの!? 僕の後ろに何かいるの!?」

 

 何故か男子生徒A(仮称)、では味気ないので寝癖君は後ろを確認し始めた。どう考えても赤髪君が言っているのは彼だというのに自分の格好が変だということを自覚してないのだろうか?

 

「お前だ! セーラー服を着て間抜け面ひっさげてるそこのお前!」

 

 指を突き付けられ、彼はようやく自分のことを指しているということを認識したのか慌て始めた。

 

「あ……! ち、違うんだよ! これはその!」

「違う!? 違うって何が違うんだ!?」

「これは中学校の制服で!」

「おい待て! お前は中学校もセーラー服で通っていたのか!?」

 

 中学校の制服なんだ。でもこの間調べてみたけど、この辺りの中学校でセーラー服なのって星蘭女子中だけだったような? まさかとは思うけど――

 

「いや、それも違うんだよ!」

 

 よかった。流石に女子校に通ってたわけじゃ――

 

「この制服は星蘭女子中のもので!」

 

 えっと、どういうことなのかな? 

 …………………。

 考えるのはやめよう。というよりこれ以上彼のことを見るのをやめよう。お嬢様に言われたことが頭をよぎってしまう。彼のことはそう言う趣味だということにしてしまおう。

 前に向き直して体育館へ向けて歩き出すと、さっきの赤髪君が叫び声をあげながらぼくの横を駆け抜けって言った。その後ろを寝癖君が誤解だーとか言いながら追いかけていく。ぼくが聞くのをやめてから何があったんだろう?

 2人が見えなくなってふと腕時計に目を向ける。

 

「げっ……!」

 

 ただでさえギリギリの時間だったというのに立ち止まってあの2人のやり取りを見てしまったのがいけなかった。それに周りには誰もいない。

 

「とにかく急がないと」

 

 ぼくはそう呟きながら走り出した。

 

 




切りが良いので今回はここまでです。
もしかしたらこの後に追加するかもしれません。
それでは次回。
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