ハリー・ポッターと騎士の帰還   作:味噌サバ

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5. ハロウィーン騒動

 

 

次の日以降、ハリー、ロン、俺の三人は、三面犬と仕掛け扉の下に何が隠されているのか色々と推測していたが、ろくに手がかりも得られていなかった。

 

 

しかしその内、仕掛け扉の下への興味は薄れ、マルフォイへの仕返しの方法に関心が強くなった。

 

 

そしてその機会は一週間ほど経ってやって来た。

 

 

朝食を摂っていると、細長い包みと一通の手紙がハリーの下に届いた。

 

 

その手紙によると、包みのなかにはマクゴナガル先生が購入してくれたニンバス2000が入っており、大広間では決して開けないようにと記されていた。

 

 

一時間目の前に三人で中身を実際に見てみようと、朝食もそこそこに大広間を出て行った。

 

 

しかし、玄関ホールの途中でクラップとゴイルの通せんぼに合い、その隙にマルフォイが包みをひったくって中身を確認した。

 

 

すると、マルフォイは苦々しい顔をし、「一年生は自身の箒を持ってはならない」と反抗してきたが、通りがかりのフリットウィック先生から事情を察し、怒りをむき出しにした。

 

 

しかし、この件について怒りをあらわにしたのはマルフォイだけではなかった。

 

 

「マルフォイがネビルの『思い出し玉』をかすめとってくれたお陰で、僕はチームに入れたんだ」

 

 

先ほどのマルフォイの顔に満足しながら、ハリーは俺たちにそう言った。

 

 

すると、通りがかったハーマイオニーは「それじゃああなたは、ズルをして箒が手に入ってラッキーだと思ってるのね」と噛みついてきた。

 

 

ハリーとロンは、「もうウンザリだ」と言わんばかりにハーマイオニーを邪険に扱って追い払った。

 

 

なにもそこまでしなくても…。

 

 

 

 

夕食後、俺は談話室の隅で「妖精の呪文」のレポートに取り組んでいた。

 

 

この日はクィディッチの練習が行われており、グリフィンドールチームのビーターであるフレッドとジョージも席を外していた。

 

 

つまり、談話室で勉強するにはうってつけの日だったわけだ。

 

 

「…まあ、こんなところか」

 

 

羊皮紙いっぱいに記述を終え、伸びをして周囲を見回す。

 

 

ハリーたちはすでに練習から戻ってきており、現在は夕食を摂りに大広間へと出ている。

 

 

他の生徒たちも、多くは自室で読書をするなり宿題を片づけるなりしており、談話室にはそれほど多くの人はいなかった。

 

 

俺も自室に戻ろうかと思った際、見知った少女が羊皮紙につらつらと何かを書き連ねている姿を発見した。

 

 

「やあ、ハーマイオニー。君も宿題?」

 

 

そう声をかけると、ハーマイオニーは顔を上げて少し不機嫌そうな表情を浮かべた。

 

 

「ええ、誰かさんが夜に出て行って寮の得点を失ってしまうかもしれないから、私があらかじめ少しでも点数を上げておかないといけないもの」

 

 

ハーマイオニーが皮肉を込めてそう言う。

 

 

苦笑いを浮かべて沈黙するしかないな、これは。

 

 

「…あなたは言い返さないの?」

 

 

「まあ、実際に君の言う通りだからなぁ」

 

 

ハーマイオニーは俺の返事に少し驚いたような表情を見せた。

 

 

「てっきりあなたも文句を言うものだと思っていたわ」

 

 

「ええ!?俺はロンと違って、一回も君を邪険に扱ったつもりはなかったけど」

 

 

ハーマイオニーの返答に驚いてそう返す。

 

 

「…そうだったかしら」

 

 

ハーマイオニーが俺の過去の言動を思い返している。

 

 

俺は少し真面目な表情で語る。

 

 

「多分、ハリーもロンも、君の言ってることが正しいっていうのは理解してると思うよ。ただ、二人ともそれを正直に受け入れられるほど、大人じゃないんだろうな」

 

 

「二人とも子どもなんだよ」と付け足すと、ハーマイオニーは驚いたような表情を見せ、「友達相手でも厳しいこと言うのね」と呟いた。

 

 

「自分の言動も含めて、物事を客観的に見るように心がけてるからね」

 

 

俺がそう言い「日々是反省、日々是勉強だよ」と付け加えると、ハーマイオニーは少し感心したようだった。

 

 

「じゃ、俺は部屋に戻るよ。頑張るのも良いけど、ほどほどにね」

 

 

 

 

10月31日、今日はハロウィーンの日だが、俺はそれよりも「妖精の呪文」の授業を楽しみにしていた。

 

 

その日の授業では、浮遊呪文をペアで取り組むことになった。

 

 

ペアは先生が適当に組ませていき、ハリーはシェーマスと、俺はパーバティと、ロンはなんと、犬猿の仲であるハーマイオニーと組むことになってしまった。

 

 

先生が杖の動かし方と呪文の発音の注意をすると、生徒たちは実際に羽に浮遊呪文をかけだした。

 

 

しかしなかなか難しいようで、ほとんどの羽はピクリとも動かず、シェーマスに至っては羽を爆発させていた。

 

 

俺は自身の練習をすぐに終え、パーバティに熱心に教育を施していた。

 

 

最近、自分でやるより他の生徒に教える方が楽しくなってきたなぁ。

 

 

意外と教師とか、やっても良いかもなぁ。

 

 

ウィンガーディアム レヴィオーサ!

 

 

そして、練習が開始してからおよそ二十分後、パーバティはやっと羽を浮遊させることに成功した。

 

 

「オーッ!パーバティ、よくやった!」

 

 

「やった!あなたのお陰よ!!」

 

 

パーバティは成功したテンションのまま俺に抱き着き、クラス中から黄色い声が上がった。

 

 

うわ、ちょ、これは、役得だなぁ。

 

ウヘヘヘヘ

 

 

 

 

「まったく、最悪だったよ」

 

 

ハーマイオニーに相当しごかれたのだろうか。

 

 

授業終了後、ロンは不愉快な表情を隠そうともせず、吐き捨てるようにそう言った。

 

 

さらに「あんなのだから、友達の一人も出来ないんだ。悪夢みたいなヤツさ」と苦々しく口にした。

 

 

なにもそこまで言わなくても…。

 

 

すると、急に肩に衝撃が加わり、そのまま誰かが追い越していった。

 

 

ハーマイオニーだ。その顔は涙でぬれており、先ほどのロンの発言を聞いていたのだろう。

 

 

「今の、聞こえたみたい」

 

 

ハリーがそう言うが、ロンは「それがどうした?」と突っぱねた。

 

 

…………。

 

 

「…ごめん、腹痛くなってきた。医務室に行ってくるから、次の時間は休むって先生に伝えといて」

 

 

それだけ言って、ハーマイオニーの後を追った。

 

 

 

 

「ハーマイオニー、待って!」

 

 

俺がハーマイオニーの肩をつかんで動きを止めさせたのは、妖精の呪文の教室から遠く離れた地下室だった。

 

 

「……何よ」

 

 

ハーマイオニーは振り返ることなく、鼻声でそう呟いた。

 

 

「その…なんというか……ただ、放って……おけなくて」

 

 

そう口にする俺は手を下ろし、顔もまた、少しずつ下げていった。

 

 

―――自分がとてもふがいない。

 

 

ハーマイオニーは教科書をもった手をグッと握り、「……本当は……私」と少しずつ話し始めた。

 

 

「……もっと、人に…優しくなろうと…思ったの」

 

 

思わず顔を上げた。

 

 

目をはらしたハーマイオニーがこちらを見ていた。

 

 

「…あなたが前、言っていたみたいに。…私も私自身を振り返ってみようって思って」

 

「だけど…授業中にあなたが……パチルに抱きしめられているのを見て……」

 

「なんでかは分からないのだけれど……とっても…むかむかして…」

 

「それで思わず…ロンにきつく当たって……」

 

 

「…」

 

 

ハーマイオニーの独白に、俺は何も発せられなかった。

 

 

「……ごめんなさい、しばらく…一人にさせて…」

 

 

ハーマイオニーは女子トイレへと駆けて行った。

 

 

俺はその後ろ姿に、ただ手を伸ばす事しかできなかった。

 

 

…なにをやってるんだ、俺は。

 

 

 

 

「フィン、大丈夫?」

 

 

午後の授業を終え、ハリーとロンが寮の寝室に戻ってきたようだ。

 

 

そこには俺が亡骸のように、ベッドで横たわっているだけだった。

 

 

俺はハリーの問いに答えることなく、ロンの目を見て「ハーマイオニーに謝っとけよ」とだけ言った。

 

 

―――なにが、謝っとけよ、だ。元はといえば、俺にも責任はあるだろうに。

 

 

内心で自分自身を嘲笑っていたが、その雰囲気はあまりにも神妙なもので、ロンはうなずくことしかできなかった。

 

 

微妙な雰囲気が部屋のなかを支配していたとき、双子のウィーズリー兄弟が寝室にやってきて、大広間に行って夕食を摂ろうと提案してきた。

 

 

「そうだね!フィン、行こうよ」

 

 

鶴の一声に感謝したハリーは呼びかける。

 

 

「…そう、だな」

 

 

いつまでもうなだれていても仕方がないか。

 

 

そう思い、夕食を摂るために大広間へと向かうことにした。

 

 

大広間はハロウィーンの飾り付けが盛大にされており、巨大なパンプキンパイなど、夕食もいつもより豪華だった。

 

 

ハリーやロンたちはそれを見て胸をときめかせているようだったが、俺はハーマイオニーがまだ戻ってきていないのを見て、再び気が沈んでしまった。

 

 

また、食事の際にパーバティから聞いた内容で、ハーマイオニーが地下の女子トイレで今も泣いていると知り、さらにうなだれてしまった。

 

 

ネビルが俺の心配をして声をかけたそのとき、クィレルが全速力で大広間に入ってきた。

 

 

クィレルは大広間の中心までたどり着き、「トロールが…城の地下に…現れた!」と叫ぶと、気を失ったのか倒れ込んでしまった。

 

 

すると大広間中は大混乱に見舞われ、ダンブルドア校長が増幅呪文で自身の声量を拡大させ、やっと静かになった。

 

 

そしてダンブルドア校長の指示により、生徒は監督生に従って寮に戻るよう命令された。

 

 

寮に向かってみんながあちらこちらに入り乱れていたとき、ハリーが大きく声を上げた。

 

 

「ハーマイオニーだ!地下にいるけど、トロールのことを知らないよ!!」

 

 

そうだ!!

 

 

ハーマイオニーのことでうなだれるだけうなだれて、俺は何を考えていたんだ。

 

 

ハリーの声を聞き、すぐさま地下へと向かった。

 

 

その道中、地下ではなく逆方向へと向かうスネイプを見かけ、四階に向かっていると、ハリーは言ったが、正直、俺はそれどころではなかった。

 

 

そして地下にたどり着くと、遠くの方に、薄灰色の肌に四メートルの背丈、巨大な棍棒を手に持つ、異臭を放つ存在―――トロールがいた。

 

 

「早く、ハーマイオニーを助けに行かないと!」

 

 

女子トイレまで向かおうとするが、そこにトロールがやってきて、なんと女子トイレの中に入って行ってしまった。

 

 

そして甲高い悲鳴がこだました。

 

 

「まずい!!」

 

 

俺たちは同時に叫ぶと、扉を開けて女子トイレへと侵入した。

 

 

すると中には、トロールがトイレを破壊しながら棍棒を振り回しており、ハーマイオニーは奥の壁際へと追い込まれていた。

 

 

クソ、あの野郎!

 

 

「俺が引き付ける、二人はハーマイオニーを!」

 

 

そう言ってトロールに向けて杖を構えた。

 

 

コンフリンゴ!

 

 

トロールの近くの瓦礫をいくつか爆発させるが、トロールはぴんぴんしており、むしろハーマイオニーが悲鳴を上げていた。

 

 

トロールの動きを止めようにも、ハーマイオニーを巻き込んだらいけないし、どうしよう…。

 

 

しかし幸いなことに、トロールはハーマイオニーを追い詰めるのを止め、俺の方に狙いを定めた。

 

 

「今のうちに!ラカーナム インフラマリ!

 

 

杖先からトロールの顔面に向けて火を噴射した。

 

 

トロールはうろたえ、わずかに後ずさりをしたが、怒りを爆発させたらしく、棍棒を大きく振りかぶりこちらに向けて振り下ろした。

 

 

「よけて!!」

 

 

それを見ていたハーマイオニーがそう叫び、俺は咄嗟に横に跳び込むが、棍棒の衝撃を地面伝いで感じ、バランスを崩して座り込んでしまった。

 

 

「危ない!!」

 

 

トロールはその隙を逃さず、再び棍棒を振りかぶった。

 

 

ステューピファイ!

 

 

振り下ろす瞬間、トロールの腕に向かって麻痺呪文をかけ、よける隙を生んだ。

 

 

トロールが棍棒を振り下ろしたのは、既に俺が立ち上がって十分な距離を取ってからだった。

 

 

チラッと後ろを見ると、既にハリーとロンはハーマイオニーを退避させており、これ以上は時間を稼ぐ必要もないようだった。

 

 

「これで最後だ、エクスパルソ!

 

 

その瞬間、女子トイレで大爆発が起き、トロールは棍棒を手放して壁へと叩きのめされた。

 

 

杖を構えたままトロールに近づくが、トロールは気絶しているようだ。

 

 

誰も怪我なくて、良かった。

 

 

「フィン!!」

 

 

俺が杖を降ろしたのを見ると、三人はこちらに駆け寄り、焼け焦げたトロールを見て顔をしかめた。

 

 

「これ…死んだの?」

 

 

「いや」

 

 

ハーマイオニーの問いを否定し、「この程度の攻撃じゃあトロールは殺せないはずだ」と付け加えた。

 

 

急にバタンという音がし、マクゴナガル先生、スネイプ先生、クィレル先生が順番に入り込んできた。

 

 

クィレルはトロールを見ると悲鳴を上げて座り込んでしまい、スネイプはトロールの様子を覗き込んだ。

 

 

マクゴナガルは四人を見つめ、どういうことなのか説明するよう求めた。

 

 

三人が答えあぐねていると、ハーマイオニーが口を開いた。

 

 

「私がトロールを探しに来たんです。本で読んだことがあるので、一人でやっつけられると思って。もし三人が助けてくれなかったら、私、今頃死んでました。フィンがトロールと対峙しているうちに、ハリーとロンが私を入り口まで連れてきてくれたんです。三人とも誰かを呼びに行く時間がなかったんです。三人が来た時には、私はもう殺される寸前で…」

 

 

ハーマイオニーが先生に嘘をつくなんて!

 

 

ハーマイオニーの咄嗟の嘘を無駄にしないため、俺たちも、そうなんです、という表情をした。

 

 

「ミス・グレンジャー、なんと愚かしいことを。グリフィンドールから十点減点です。あなたには失望しました。怪我がないのであれば、グリフィンドール塔に帰りなさい」

 

 

マクゴナガルの言葉を受け、ハーマイオニーは帰っていった。

 

 

そして今度は、マクゴナガルは俺たちの方を向いた。

 

 

「あなたたちは殺されなくて運が良かった。一年生どころか学生でトロールと対決できる人物はざらにはいません。そこで、一人五点ずつ上げましょう。校長には私から伝えておきます。帰ってよろしい」

 

 

三人は急いで部屋を後にし、グリフィンドール寮近くの廊下まで一言も話さなかった。

 

 

「トロールやっつけて十五点って少ないよな」

 

 

「五点だろう。ハーマイオニーの分を引くと」

 

 

ロンとハリーはぶつくさとそう言った。

 

 

「まあ、何にせよ彼女には助かったよ。危うく、罰則でも受けるところだった」

 

 

俺たちは太ったレディに「豚の鼻」と合言葉を言うと、グリフィンドール塔へと入っていった。

 

 

談話室は多くの生徒でごった返しており、みんな食べ物を食べて騒いでいた。

 

 

そんな中、ハーマイオニーがただ一人、入り口の近くで三人を待っていた。

 

 

一瞬、ハリー、ロンとハーマイオニーの間に気まずい雰囲気が流れたが、俺がいの一番にハーマイオニーに礼を伝えると、三人は互いの顔は見ることなく「ありがとう」と言って食べ物を取りに行った。

 

 

それ以降、ハリー、ロンとハーマイオニーが喧嘩をすることはめっきり減った。

 

 

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