ハリー・ポッターと騎士の帰還   作:味噌サバ

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7. 新学期

 

 

新学期の一日前、ハーマイオニーとともにホグワーツへと戻ると、ハリーから休暇中の出来事についての話があった。

 

 

クリスマスの日、ハリーに届いたプレゼントの一つに、(俺は箒の高級手入れセットをプレゼントした)被ることで姿を透明にする「透明マント」があったのだ。

 

 

そしてそれを用いて、夜に図書館の閲覧禁止の棚に向かったこと。

 

 

しかし、ニコラス・フラメルに関する情報を探すどころかフィルチやスネイプに見つかりそうになり、必死に逃げた先に、写したものの願望を表す「みぞの鏡」を発見したこと。

 

 

「みぞの鏡」の虜になりかけ、三晩連続で寮を抜け出して鏡を見に行ったこと。(ハーマイオニーはこのとき、「もしもフィルチに見つかっていたら!」と驚きあきれていたが、俺はなんとなく、ハリーの気持ちが分かったような気がした)

 

 

そこでダンブルドアに会い、「みぞの鏡」に関する話を聞いたこと。

 

 

話が終わると、ニコラス・フラメルの情報が手に入らなかったことにハーマイオニーは落胆していたが、俺は正直安堵していた。

 

 

ホグワーツを離れている最中に、ニコラス・フラメルに関する捜査が進展し、ハリーやロンが巻き込まれていたら大変なことだったからだ。

 

 

しかし、俺の心配をよそに、ハリーたちはニコラス・フラメルについての捜査に全力を注いでいた。

 

 

そんなある日、ハリーがいつも通りクィディッチの練習をしている最中、三人でチェスの対戦をしていた。

 

 

今はロンとハーマイオニーが戦っており、俺はそれをボーっと眺めている。

 

 

そんな中、ハリーがひどい表情をして戻ってきた。

 

 

「ハリー、大丈夫かい?ひどい顔だけど」

 

 

「実は、スネイプがクィディッチの審判をやりたいって言い出したらしいんだ」

 

 

それを聞くと、スネイプを完全に盗人だと思っているロンとハーマイオニーは「試合を辞退すべき」と主張しだした。

 

 

しかし、ハリーは「シーカーの補欠はいないから、グリフィンドールがプレイするため、そんなことはできない」と二人の主張を退けた。

 

 

そのとき、「足縛りの呪い」をかけられ、両足がくっついたままのネビルが談話室に転がり込んできた。

 

 

笑い出す人もいたが、俺はとても笑う気分にはなれなかった。

 

 

眉間にしわを寄せてその様子を眺めていると、ハーマイオニーが呪いを解く呪文を唱えた。

 

 

するとネビルの両足は離れ、わなわなと立ち上がる。

 

 

「誰がやったのか」と尋ねると、案の定マルフォイが犯人であった。

 

 

図書館を出たところで出会い、呪文を試しでかけたと彼はのたまわったそうだ。

 

 

ハーマイオニーがマクゴナガル先生に報告するよう主張するが、ネビルは「これ以上の面倒ごとは嫌だ」と首を横に振る。

 

 

そして、ネビルが「勇気がなくてグリフィンドールにふさわしくない」とマルフォイが言ったことを挙げ、自身もそう思うと賛同した。

 

 

しかし、その様子はマルフォイ、さらには自身に対するくやしさをにじませており、それを感じ取ったハリーは、蛙チョコレートを差し出して元気づけた。

 

 

ネビルはハリーに礼を言うと、蛙チョコレートに同封されていたダンブルドアのカードをハリーに渡して寝室へと向かって行った。

 

 

ネビルの後姿を眺めながらいたたまれない気持ちになっていると、ハリーが驚きの声を上げた。

 

 

「三人とも、フラメルを見つけた!」

 

 

…やば、ついにバレてしまったようだ。

 

 

ダンブルドアはニコラス・フラメルとともに錬金術の共同研究をしたことで知られているため、それを知ってしまったのだろう。

 

 

だ、だけど、あの石についてはまだ気づいていないからセーフ!…かな

 

 

そう脳内で言い訳をしていると、カードの裏の解説を読んだハーマイオニーが「あっ!」と言って寝室へと向かって行った。

 

 

嫌な予感がする。

 

 

…絶対、ニコラス・フラメルについての本でも持ってくるんだろ。

 

 

「この本のここ見て!」

 

 

予想通り、ハーマイオニーが持ってきた(ものすごく分厚い)本を見ると、ニコラス・フラメルが『賢者の石』を創造したこと。

 

 

そして賢者の石は、金属を黄金に変える力や不老不死になる『命の水』の源であることが記されていた。

 

 

それを受け、ハリーたちは喜びの声を上げる。

 

 

しかし、「見つかって本当に良かった!」と言う俺の声は若干震えていた。

 

 

 

 

およそ二週間後、俺らはクィディッチ競技場へと赴いていた。

 

 

今日はグリフィンドール対ハッフルパフの試合の日だ。

 

 

ハリーは既に更衣室へと向かっており、ロンとハーマイオニーはひそかに練習した「足縛りの呪文」で、スネイプがハリーに妨害をしないか警戒しており、隣に座るネビルは二人の鬼気迫る様子に少し慄いていた。

 

 

かくいう俺も、スネイプが怪しいのは事実であるため警戒はしていたが、二人の気の入りように若干気後れをしている。

 

 

呪文や杖の振り方を繰り返し確認する二人をしり目に、ネビルやシェーマスと試合についての話をしていると、リー・ジョーダンの実況により、試合の開始が知らされる。

 

 

試合中、マルフォイがネビルに喧嘩を売ったり、ネビルがそれに言い返したり、ロンがマルフォイとなにか言い争っていたが、俺はそんな様子を気に留めず、ただひたすらハリーとスネイプの二人に細心の注意を払っていた。

 

 

ダンブルドアが観戦に来ているため、万が一にもスネイプが妨害をするとは思えないが、念には念を入れた方が良いだろう。

 

 

ロンとマルフォイの言い争いが発展し、ついには殴り合いの大ゲンカとなる一方、俺とハーマイオニーは試合に熱中しており、ハリーが急降下していく様子を見ていた。

 

 

「行けっ!ハリー!」

 

「ハリー!取れえぇぇ!」

 

 

椅子の上に跳び上がって声を張り上げた。

 

 

ハリーは地面まで数メートルというところで急降下をやめ、手を挙げた。

 

 

その手には金のスニッチが握られていた。

 

 

俺は大声で歓声を上げ、ハーマイオニーは椅子の上で跳びはね、横の俺に抱き着いてくる。

 

 

ロンも殴り合いを止め、鼻血を出しながら歓声を送っていた。

 

 

 

 

試合終了後、ハリーを迎えに控室へと向かうが、ハリーは既に出たとキャプテンのオリバー・ウッドに伝えられ、グリフィンドール寮へと向かう。

 

 

しかし、ハリーの姿はなく、再びクィディッチ競技場の控室へと戻る。

 

 

すると、その道中、ホグワーツ城から庭へと抜ける出入り口付近で、切羽詰まった表情のハリーに出会った。

 

 

そんな表情をしてどうしたのか尋ねると、スネイプがクィレルに対し、『賢者の石』とクィレルの『怪しげなまやかし』について問い詰めているのを見たというのだ。

 

 

そして、クィレルの『怪しげなまやかし』については、賢者の石を守るためにクィレルがかけた闇の魔術に対抗する呪文だと推測した。

 

 

ハリーの主張、推測する通り、もしスネイプが賢者の石を狙っているとすると、クィレルがスネイプに抵抗するのを止めたら、そのときこそタイムアップということになる。

 

 

しかし、一年生の小坊主が四人集まったところで、大人の魔法使いに太刀打ちできるとは思えず、俺はただ難しい顔をしてうなることしかできなかった。

 

 

 

 

数週間後、いまだにクィレルはオドオドと神経質な様子で、スネイプはさらに不機嫌そうな様相を呈していた。

 

 

ハリーの推測に基づくと、これは石が無事である証拠でもあるが、決してハリーの推測が完全に当たっているという客観的な根拠はない。

 

 

そのため、既に石が盗まれている可能性もあり、不安を払拭するため、ダンブルドアやマクゴナガルに相談したいところだが、そうすると、石についての情報を嗅ぎまわっていたことがバレ、俺達だけでなく、情報を漏らしたハグリットが何らかの処分を下される可能性も出てきてしまう。

 

 

そのようなジレンマにさいなまれた俺は、その事実から逃げるように試験勉強に精を出すようになった。

 

 

ハーマイオニーもなぜか、試験までまだ十週間というこのタイミングで試験勉強に集中するようになり、ロンは俺ら二人を「信じられない」とでも言いたげな目で見ていた。

 

 

正直、俺はあくまでも現実逃避のために勉強しているだけであって、十週間前から大真面目に試験勉強をするハーマイオニーとは一緒にしてほしくないのだが。

 

 

結局、復活祭(イースター)の休みは、ほとんど図書館で勉強するだけの退屈なものだった。

 

 

そんなある日、俺がフリットウィック先生に質問をしに席を外している最中に、ハグリットが図書室に出没したらしく、その際に賢者の石について話そうとしたら、小屋に来るよう言われたそうだ。

 

 

そして小屋に行き、賢者の石を守るために手を貸した人物を訪ねたらしい。

 

 

ハグリットによると、ハグリットの三面犬以外には、マクゴナガル・フリットウィック・スプラウト・スネイプ・クィレル・ダンブルドアが関わっているらしい。

 

 

そんなこと、生徒にあっさりと言っていいのだろうか。

 

 

そう考えていると、信じられないことが耳に入ってきた。

 

 

ハグリットは小屋の中でドラゴンの卵をかえそうとしているというのだ。

 

 

馬鹿じゃねぇの?というのが一番の感想であった。

 

 

ハグリットの小屋は木製で決して大きくもなく、ドラゴンの成長は著しく早いことで知られている。

 

 

ふ化させても、あの小屋の中では一カ月ももたないだろうことは容易に想像できた。

 

 

一週間後には、ハリーの元に「いよいよ孵るぞ」と、ハグリットからの走り書きの手紙が届いたが、俺はその件には触れずに、スネイプを監視することにした。

 

 

正直、この件については関わらないが吉と見た。触らぬドラゴンに祟りなし、だ。

 

 

ハリーたちはその日以降、ハグリットの小屋に通い詰め、ドラゴンを放すよう説得していた。

 

 

というのも、ハグリットがドラゴンの卵をかえしたのを、マルフォイに見られてしまったそうだ。

 

 

マルフォイがいつ言いつけるか分からないため、ハグリットを説得しており、俺も説得に向かったがその甲斐むなしく、ハグリットは一歩も譲らなかった。(むしろ、ドラゴンにノーバートという名前を付けて可愛がっている様子を、これでもかというほど見せられた)

 

 

結局ハグリットも、頭ではドラゴンの成長スピードについては理解しており、ハリーたちの繰り返しの説得に、とうとうロンの兄で、ルーマニアでドラゴンの研究をしているチャーリーに預けることとなった。

 

 

その翌週の土曜の夜、ハリーとハーマイオニー(ロンはドラゴンに手をかまれ、化膿してしまったため医務室に入っている)は透明マントを使ってドラゴンを運ぶため、グリフィンドール寮を抜け出していた。

 

 

そして俺は、談話室の隅で本を読みながら、二人を待っていた。

 

 

しかし、二人はなかなか帰ってこない。

 

 

それどころか、消灯時間前に外に出て行ったネビルもまだ帰ってきていない。

 

 

「大丈夫かなぁ」

 

 

ボソッとつぶやくが、その声は誰に反応されることもなく、虚空へと帰って行った。

 

 

午前二時、談話室の扉が開き、ハリーたちが入ってくる。

 

 

「お、ドラゴンはどうなった…って、え?大丈夫?」

 

 

三人の表情は絶望に打ちひしがれており、ハーマイオニーとネビルに至っては泣きそうになっていた。

 

 

なんでも、ドラゴンを無事に届けたまでは良かったが、透明マントを被るのを忘れてしまい、ハリーとハーマイオニーはフィルチに見つかってしまい、ネビルはハリーに「マルフォイがハリーをつかまえると言っていた」と注意しに行ったらマクゴナガルに見つかってしまったようだ。

 

 

そして、グリフィンドールから五十点減点されてしまったようだ。

 

 

「なんだ、そんなことだったのか。五十点減点で済んで良かったよ。それだったら一人あたりは十六、七点くらいじゃないか」

 

 

ハーマイオニーとネビルの肩をたたいて、泣くほどのことじゃない、となだめる。

 

 

しかし、ハーマイオニーは「…違うの。三人で五十点じゃなくて、一人五十点なの」と口にした。

 

 

「……えぇ?」

 

 

不意に素っ頓狂な声が出てしまう。

 

 

一人五十点、ということはわずか一晩にして、グリフィンドールは百五十点も失ってしまったのか?

 

 

…ヤバ。

 

 

思わずそう呟いて、ハーマイオニーとネビルの肩をたたく手を止める。

 

 

するとハリーたちは、俺の雰囲気を察知したのか、うつむいてしまった。

 

 

と、とりあえず、三人を元気づけなくては。

 

 

「…ま、まあ、俺が一人で百五十点くらい貰ってるはずだから。…大量リードが接戦になった程度でしょ…多分」

 

 

結局、俺は三人を元気づけることはできなかった。

 

 

そして翌日以降、ハリーたち三人は、多くの生徒から目の敵にされていた。

 

 

 

 

しかし、人の心はすぐに移ろっていく。

 

 

期末試験が近づくと、ハリーたちの減点はだんだん記憶から薄れていき、皆試験のことばかり話すようになっていった。

 

 

そして試験一週間前のある日、ハリーたち三人の処罰が夜の十一時に行われることとなった。

 

 

俺とロンは三人を激励し送り出すと、談話室でチェスをして過ごした。

 

 

およそ五戦ほど行い、一勝四敗と俺が負け越しているところで、ロンは眠りについてしまった。

 

 

時刻はおよそ五時、俺も机に突っ伏して寝ていると、身体をユサユサとゆすられる。

 

 

身体を起こすと、三人の顔が目に入ってきた。

 

 

どうやら無事に帰ってこれたようだ。良かった良かった。

 

 

三人は禁じられた森で、ユニコーンの死骸を探しに行ったらしい。

 

 

そしてその最中、ハリーはユニコーンを殺した犯人と出くわし、危うく襲われるところで、森のケンタウロスのフィレンツェに救われたようだ。

 

 

その際に額の傷が痛んだ、とハリーは言った。

 

 

「中二病みたいなこと言うね」と茶化しそうになったが、彼の鬼気迫る表情を見て慌てて抑えた。

 

 

ハリーは暖炉の前を行ったり来たりしながら、スネイプとケンタウロスの星占いについての考察を続けた。

 

 

彼の考察によると、スネイプは「例のあの人」のために石を欲しがり、「あの人」は森の中でユニコーンの血を吸って生き長らえながら待っている。

 

 

そして、ケンタウロスの星占いでは「あの人」が戻ってきて、ハリーを殺すと考えた。

 

 

ハリーの考察を聞き、沈んでしまった空気を元に戻すよう、俺は「とりあえず、今日はもう寝よう。ほら、日が昇ってきてるよ」と窓の外を指さして言った。

 

 

外では既に陽が頭を出しており、雲は麦酒のような黄金色に染められていた。

 

 

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