女将校「モスラのディストピアなんかに絶対屈したりしない!」キリッ 作:よよよーよ・だーだだ
私は、怪獣どもと、そしてこの壊れた世界が嫌いだ。
私の軍用ブーツがコンクリートの床を踏みしめるたび、その音が長い廊下に冷たく響き渡る。地下基地の壁を見れば無数のひびが入っており、かつての地球防衛軍の誇り高き本拠地『エアストリップ・ワン』は今や崩壊寸前。ちらつく薄暗い照明が、私の前に長く続く影を落としている。
このエアストリップ・ワンはかつてオセアニア地域を守る栄光の象徴だったが、今やそのすべてが廃墟と化し、まるで荒んだ私の心そのものを映し出しているかのようでもあった。
そのとき私の副官が、私のすぐ後ろで
「あの、少佐……」
私、ウィンスレット=スミス少佐にとって彼女、ジュリア=ハミルトン大尉は地球防衛軍における戦友であり、幼馴染であり、そして科学者としての明晰な頭脳も持ち合わせた優秀な副官だ。ジュリアはいつだって従順で、私の判断を一度も拒んだことがない。今も常に私の後ろをついてきてくれていて、ジュリアの小さな足音が私の後に続いている。
けれど今かけた声は遠慮がちで、そしてどこか切実さがにじみ出ていた。
「……何か言いたいことがあるのか?」
私はジュリアを見ずに言った。視線は前方、崩れかけた壁を超えた先にある地下の最深部へと向けたまま。
「いえ、ただ……」
ジュリアの声がますます小さくなる。私の歩みを止めさせるほどではない。
「ただ……本当にこれでいいのか、って……」
私は歩みを止めずに、ジュリアの言葉を噛みしめた。彼女の疑念を感じ取ることは簡単だったが、私の中にはその迷いに共鳴する部分は微塵もなかった。
私は厳しい声で問いただした。
「何を言いたいんだ、ジュリア?」
「…………」
ジュリアはしばらく沈黙し、私の歩調に合わせてついてきた。やがて、彼女は決心したように口を開いた。
「私たちがやろうとしていることが……本当に正しいのか、どうか……」
「正しいかどうかだって?」
その言葉を一笑に付した私は、ようやくジュリアの方へと振り返った。
「ジュリア、私たちはもう後には引けないんだ。これが私たちの最後の手段だ。私たち、そして人類の未来を取り戻すためのな」
その言葉に、ジュリアはわずかに肩をすくめた。
「そうですよね、少佐……貴女が決めたことなら、きっと間違いないんだと思います。でも…」
「でも?」
私は、ジュリアの口から出たその言葉を聞き逃さなかった。ジュリアは目を伏せ、足元を見つめながら、消え入りそうな小さな声で続けた。
「怪獣に支配されたディストピア……確かに恐ろしいかもしれないけれど、でも……その中で平和が戻ってきたように見えることが……私、少しだけ……怖いんです」
「怖いだと?」
私はジュリアに向き直り、垣間見せたその弱さを容赦なく問い詰めた。
「ジュリア、君は科学者だろう? 君は事実を見極める能力があるんじゃないのか? あんなものは平和じゃない、ただの支配だ。偽りの平和に過ぎないんだ!」
「……申し訳ありません、少佐」
ジュリアはおずおずと顔を上げ、私に対して心からの謝罪を口にした。
「私は貴女が正しいと信じています。でも、心の中でどうしても……」
「もういい、ジュリア」
何かを言い逃れようとするジュリアを制し、私は私なりの優しさを込めて言った。
「……君が思い悩む気持ちはわかる。だが、私たちがやろうとしていることは、怪獣が支配するこの時代、『怪獣黙示録』から人類を解放するための最後の希望だ。私たちが行動しなければ、何も変わらない」
「……そう、ですよね」
私の言葉にジュリアは小さく頷き、そのまま受け入れた。ジュリアはいつだって私を尊重してくれる、私に逆らうことは決してない。彼女は私を信じてくれている。
だからその信頼に、私は応えなければならない。そんな私の覚悟に、ジュリアもまたついてきてくれるのだった。
やがてジュリアは決意を固めたように言った。
「ウィンス……いやウィンスレット=スミス少佐。私は貴女について行きます。貴女の意志に従う。それが私の役割ですから」
……そうだ、それでいい。私は彼女の肩を軽く叩き、再び前を向いた。
「行こう、私たちの未来はこの先にある」
ジュリアは静かに私の後をついてきた。その小さな足音は、今も私の背後で響いている。私たち地球防衛軍は共に、この地下基地の最深部へと向かって進み続けた。そこで私たちを待ち受けているのは、最後の決断であり、未来への希望。
そして今の私たち地球防衛軍が戦うべき敵は――守護神モスラ。
私が初めてモスラを見たのは幼少期、まだ子供の頃のことだ。
その日は、いつもと変わらない平和な日だった。太陽は高く昇り、澄み切った青空の下で、私はジュリアや友達と無邪気に遊んでいた。笑い声が響き渡る。『怪獣黙示録』が始まる前、この世界は私にとってただ楽しく、美しい場所だった。
しかし、その平和は突如として砕け散った。
地面が突如として激しく揺れ、空が一瞬にして暗くなった。
初めは何が起きているのか理解できなかった私たちだが、次第にそれがただの地震ではないことに気付いた。大地が揺れるたびに、遠くから低く響く咆哮が聞こえてきた。
そして、空を覆うような巨大な影が街に近づいてくるのを見たとき、私の胸は恐怖で凍りついた。
現われたのは、恐怖そのものが形を成した存在。
水爆大怪獣、ゴジラだった。
身長50メートル、体重1万トン。黒い岩肌に三列の背鰭、そしてこれまた長く逞しい大蛇のような尻尾。干拓地から現れたゴジラは工場地帯を踏み潰し、私たちの住む町の中心に向かってゆっくりと進んできた。
ゴジラの巨体が一歩踏み出すたびに、地面が割れ、建物が粉々に崩れ落ちていく。遠くで爆発音が響き渡り、炎と黒煙が空を覆っていく。人々の悲鳴と共に、町全体が恐怖の渦に巻き込まれていた。
ゴジラの巨体が一歩進むごとに、地面は激しく揺れ、建物は次々に倒壊していった。人々の叫び声があたり一帯に響き渡り、私はただその場に立ち尽くすことしかできなかった。恐怖が全身を支配し、動くことすらできなかったのだ。
その時、誰かが私の手を強く握った。
「ウィンス、逃げなきゃ……!」
振り返るとジュリアが私の手を取っていた。小柄なジュリアもまた恐怖に震えていたが、その目には私を信じる決意が宿っていた。ジュリアは震えながらも、私を引っ張り、逃げるよう促した。
私たちは必死に走り出した。ゴジラの咆哮が背後から迫り、瓦礫があたりに飛び散る中、私はただジュリアの手を握り続けた。彼女と共に逃げなければならないという思いが、私を動かしていたのだ。
けれど。
「どこへ行けばいいの……?」
ジュリアに手を引かれながら私の声はかすかに震えていた。幼い私とジュリアは必死に周囲を見回し、避難所を探した。だが、街はすでにゴジラによって破壊され尽くし、逃げ場はどこにもないように思えた。
ゴジラの尾が一振りされるたびに、建物が一瞬で瓦礫と化し、私たちの足元には無数の破片が降り注いだ。大きな岩が空から降ってくるのを見た瞬間、ジュリアが私を引っ張り、二人で近くの廃ビルの裏に飛び込んだ。
私は耳を覆い、歯を食いしばり、目を閉じた。全身が震え、何も考えられなかった。ただジュリアが私の手を強く握ってくれていることだけが、私を現実へとつなぎ止めていた。
「ウィンス、どうしよう……」
ジュリアの声は今にも泣き出しそうだった。私は何も言えず、彼女を強く抱きしめた。私たちは二人とも、死がすぐそこに迫っているのを感じていた。
その時だ。空に輝く光が見えた。
「見て、あれ……!」
街で誰かがそう呟くのにつられ、私たちもまた空を仰ぎ見た。最初は何かわからなかったが、それが次第に形を取り、巨大な蝶のような姿が現れたのだ。
それがモスラだった。
彼女の羽が光り輝き、その美しい姿はまるで希望そのもののようだった。
モスラはゴジラに向かって一直線に飛び立った。二つの巨体が激突し、天地がひっくり返るかのような衝撃が私たちに襲いかかってきた。ゴジラの咆哮とモスラの羽音が空を切り裂き、モスラはゴジラの凶暴な力に立ち向かっていった。その姿は私たちに、絶望の中で希望の光をもたらしてくれた。
今度は私から動き出した。
「逃げよう、ジュリア!」「う、うん……!」
モスラ対ゴジラ。私たちはその戦いの余波に巻き込まれないよう、再び必死に逃げ出した。
ジュリアは何度も転びそうになりながらも、私の手を決して離さなかった。私は彼女を支え、共に走り続けた。やがて、避難所の入り口が見えてきた時、私たちは最後の力を振り絞って駆け込んだ。
扉が閉まる直前、私はジュリアを強く抱きしめた。ジュリアの小さな体はまだ震えていたが、その震えは少しずつ治まり、やがて私の胸へと顔を埋めた。
「ウィンス……モスラが助けてくれたんだね……」
「ああ、そうだな……」
私はジュリアの背中を優しく撫でながら、外で繰り広げられている戦いの音を聞いていた。モスラがゴジラを追い詰め、街を守ってくれることを信じながら、私はただジュリアを抱きしめ続けた。
モスラがゴジラを撃退したあの日、世界は大きく変わった。
人類は、自分たちだけでは怪獣の脅威に対抗できないことを思い知らされた。しかし同時にモスラという守護神の出現は、私たちに一筋の希望をもたらした。かくして世界各国は共同で怪獣への対策に乗り出した。
『地球防衛軍』の設立。
その目的は、モスラの力に頼ることなく、人類自身の力で怪獣の脅威から地球を守ること。そして、いざというときはモスラと共に戦うことだった。
あの日ジュリアと避難所で誓い合った言葉の通り、私たちもまた成長したのち、地球防衛軍に入隊した。ジュリアは持ち前の明晰な頭脳で科学開発部に、私は持ち前の体力と精神力で実働部隊であるGフォースに配属された。
「頑張りましょうね、ウィンス!」
「ああ、やろう! ジュリア!……」
あの日見た光景を胸に刻み、私たちは二人でこの世界を守ることを誓い合ったのだ。
地球防衛軍は、世界中から集められた優秀な科学者や兵士たちによって構成され、最新鋭の兵器や戦略を駆使して、幾度となく怪獣の脅威から人類を守ってきた。メーサー戦車、マーカライトファープ、原子熱線砲、二十四連装砲、そして対ゴジラ用の決戦兵器として開発されたモゲラやメカゴジラ……私たちは、人類の英知と技術の粋を集結させ、再び訪れるかもしれない「その日」に備えていた。
中でも語り継がれているのが、ゴジラ再びの脅威にモスラと共闘した『オペレーション=クレードル』だ。
それは、ゴジラが再び東京湾に姿を現した日のことだった。
上陸したゴジラに対し、地球防衛軍は総力を挙げて迎え撃った。しかし、ゴジラの圧倒的な力の前にメーサー戦車部隊は次々と壊滅、マーカライトファープの攻撃も効果を発揮しない。原子熱線砲の一撃はゴジラに届いたものの、その巨体を吹き飛ばすには至らなかった。
首都圏は壊滅状態となり、政府は最終手段として、国連の許可を得て「対G最終決戦兵器」であるモゲラとメカゴジラを投入することを決断した。起動したモゲラとメカゴジラによる連携攻撃が、ゴジラへと襲い掛かる。
しかしゴジラはひるむことなく放射熱線を吐き散らし、モゲラは撃破、メカゴジラも大ダメージを負ってしまった。
……やはり、ゴジラには勝てないのか。誰もが希望を失いそうになった、その時だった。
東京湾上空に、まばゆい光が降り注いだ。
「あれは……!」
それは、光に満ち溢れた輝きの嵐
聖なる色彩を纏った極彩色の守護神、モスラだった。
モスラはゴジラと対峙すると鱗粉を散布しながらゴジラを翻弄し、さらに鋭い爪でゴジラの顔面に攻撃を加えていった。
傷ついた体でなおも抵抗するゴジラだったが、モスラの猛攻の前に徐々に追い詰められていく。そしてモスラは最終段階へと移った。
「見て! モスラが、糸を吐いているわ!」
モスラの吐く強靭ながらもしなやかな糸は、即座にゴジラの全身を覆い尽くした。ゴジラの動きを封じるべく、その巨大な体から放たれた強靭な糸でゴジラを拘束し始めたのだ。
ゴジラは、全身を雁字搦めにされながらも放射熱線を乱射。必死に抵抗を試みていたが、モスラの糸はまるで生きているかのようにゴジラの巨体を包み込んでゆき、徐々にゴジラの力を奪ってゆく。
その光景を私たち地球防衛軍は、傍から見つめていた。
「今が最後のチャンスだ……!」
そして私はすかさず動き出した。地球防衛軍旗艦を担う轟天号のブリッジから、残存部隊へ攻撃命令を下す。
「全軍、攻撃! モスラと共闘し、ゴジラを海へ封じ込めろ! 繰り返す! 我々は決して諦めない! 人類の未来のために、今こそ力を合わせるときだッ……!」
その言葉に奮い立った兵士たちは最後の力を振り絞り、攻撃を再開した。
メーサー砲、ミサイル戦車、そして、満身創痍になりながらも立ち上がったメカゴジラのハイパーメーサー砲。ありとあらゆる兵器が、モスラの糸に絡め取られたゴジラ目掛けて火を噴いた。
そして……。
「やったぞ、ゴジラが倒れた!」
ついにゴジラは力尽き、モスラの糸に完全に包まれ、巨大な繭にされててしまった。そしてモスラはその巨体でゴジラの繭を捕まえると、そのまま東京湾の海へと沈めて永遠に封じ込めてしまった。
そんなモスラの雄姿を、私たち人類は歓声をあげて迎え入れた。
「やった!」
「よっしゃあ!」
「よくやってくれた、モスラ!」
「ありがとう、モスラ……!」
……モスラがゴジラを倒したあの日、世界は大きく変わった。
『守るために、戦う』
モスラと地球防衛軍の共闘。それは、人類にとって希望の象徴となり、怪獣と共存していくための新たな道を示してくれたはずだった。
モスラは私たち人類の命を救い、私たち人類を守ってくれた。彼女の存在がある限り、どんな脅威も乗り越えられると信じていた。
そしてモスラは人に仇なす怪獣どもを殲滅したその後も、私たち人類を導いてくれた。荒廃していた世界は大自然の力によって修復がなされ、まるで時間が巻き戻されたかのように緑が街を覆っていった。空気は澄み渡り、かつての工業地帯は再生可能エネルギーで満たされた清浄な場所に変わった。
モスラはただ強いだけではない。限りなく優しく、私たちにとってまさに母のような存在。地球の環境は劇的に改善され、人々の生活は安定し、飢えや病は過去のものとなっていった。彼女がいる限り、私たちは安全で、平和な日々を送ることができると誰もが信じて疑わなかった。
……しかし、モスラは戦うだけではなく、彼女自身が新たな秩序を作り上げていった。
「争いのない、平和な社会を作りましょう」
「平和こそは、永遠につづく繁栄の道なのです」
「私たちモスラは皆さんに調和の道を示します……」
モスラが私たち人類に提案したその理想社会は、当初は私たち人類にとっても魅力的に映った。
……だが、次第にその理想は、私たちの自由を侵食していくものだと気づかされることになる。
「スミス少佐! 見てください、このデータを!」
幼馴染の私を追うように、地球防衛軍に科学者として参加したジュリア=ハミルトン大尉。普段は冷静な副官として私情を殺し使命に殉じているジュリアだが、今その指は震えていた。
ジュリアが私に見せた一枚のスクリーン、そこにはモスラの指示で進められている新たな政策の詳細が映し出されていた。
私は画面を凝視し、声を潜めた。
「……これが現実だ、ジュリア。地球防衛軍は、もう不要だとされている。あいつは、モスラは我々を……地球防衛軍を解体するつもりだ」
私が読み解くと、ジュリアは驚愕の表情を隠せないようだった。
「そんな……でも、モスラは私たち人類の味方でしょう? なのに、なぜ?」
「モスラにとって、私たちはただの障害だからだ」
私は上辺では平静を保っていたが、その言葉の奥には自分でも信じたくない響きが含まれていた。揺らぎそうな自信を必死に保ちつつ、私は続ける。
「モスラが守る世界に軍隊は必要ない。怪獣だってモスラが戦えばそれで済む。平和が保たれるなら、武力は要らない……ヤツはきっとそう考えているんだろう」
「で、でも!」
それでもジュリアは抗弁しようとする。私たちのことを無用な長物だと突き付けてくる、この世界に。
「でも、それが本当に平和なんでしょうか? それじゃあ私たちはただ守られているだけ、自分で自分の身を守ることも許されないなんて……」
「そうだ、ジュリア。私たちは戦士として、この地球を守ってきた。それが今や、完膚なきまでに無力化されようとしている」
唇をかみしめるジュリアに私はうなずき、そして彼女の目を見つめた。
「モスラは、私たち人類を見限ったんだ」
しばしの沈黙を経て、ジュリアは私の手を取り、強く握りしめた。
「……スミス少佐、私は貴女と一緒に戦います。たとえ相手がモスラでも、私たちにはまだ守るべきものがあると思うんです」
……ああ、そうだな。
その言葉に、私はわずかな希望を見出した。ジュリアの決意は、私が失いかけていた戦士としての誇りを取り戻させてくれたのだ。
しかし、事態は急速に進展していった。
守護神モスラの影響下で人間世界は速やかに再編され、私たち地球防衛軍の立場は日に日に弱まっていった。私たち軍事部門に割り当てられていたリソースは削減され、軍事力は「過去の遺物」として扱われ始めた。
そして、ついには上層部から「解散命令」が下されたのだ。モスラの意向を受け入れた地球連合政府は、軍隊の存在がモスラの掲げる『平和』の理念に反するとして、その解体を決定した。
かつて世界中から賞賛され、人々の希望の象徴として英雄視された地球防衛軍。しかし、わずか数年でその立場を完全に失墜させてしまったのだ。
「そんな……っ!」
……私たちは無力だった。
かつて世界を救うために戦った地球防衛軍の戦士たちは、今や淘汰されるべき歴史の一部として消え去ろうとしていた。私はその現実を前に、激しい怒りと無力感を感じずにはいられなかった。
「こんな形で終わるなんて……」
解散式の資料を手にしながら呟くジュリア。その眼には大粒の悔し涙が浮かんでいる。
だからこそ私は、強く言い聞かせるようにジュリアに告げた。
「……でも、まだ終わりじゃない。私たちはまだここにいる。モスラが、あいつが何をしようとも、私たちには自分たちの意志がある」
「……!」
ジュリアはその言葉に微笑んだが、その目には深い悲しみが宿っていた。
「ウィンスレット=スミス少佐、貴女がいる限り、私は希望を持てると思います。でも……それでも、怖いの」
……私もだよ、ジュリア。
私は怯える自分の心を奮い立たせながら、ジュリアの小さな肩を抱きしめた。
「だけど、私たちは戦う。最後の瞬間まで」
モスラのユートピアが、戦士として、いやヒトとしての誇りを奪っていく。モスラが築き上げた世界で、私たち人間は何の意味もない存在に過ぎなくなりつある。
しかし、私はその運命に抗う決意を固めた。ジュリアや仲間たち、地球防衛軍と共に私たち人類の未来を取り戻すために戦うのだ。私たちはこれからもずっと戦い続けるだろう。
……たとえ、それがどれだけ困難な道のりであったとしても。
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