幼馴染は重いジョークがお好き   作:水漏れ老舗

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オリ主、オリジナル展開、一部オリジナル設定に注意してください。


前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めての出会いは、俺がまだ小学生だった頃。その日は雲ひとつない、晴れ渡る青空だった。

 

 『すげー!広ぇー!!』

 『お、おいマドカ!遠くには行くなよー!』

 『わかってるよー!』

 

 俺の名前は、一条マドカ。女の子みたいな名前だってからかわれることも多いが、歴とした男の子だ。

 

 この日は葡萄農家の親父に連れられ、ある豪邸に来ていた。ウチの葡萄から醸造されたワインは、その手のワイン好きからは好評らしく、豪邸の主もリピーターの一人だとか。

 

 そして、これほど旨いワインを作る人とはどんな人なのか、一目会いたい。と親父は興味を持たれてしまい、なぜか豪邸にお呼ばれされた。行く途中、軽トラの中で親父は震えていた。

 

 『探検だー!ぶーん!』

 

 でも、まだガキの俺はそんな話どうでも良く、興味の対象といえば目の前に広がるこの庭園だった。ぶどう畑をゆうに越える程の広い庭。そんな広大な場所に興奮しっぱなしで、俺は雪の日の犬のように駆け回っていた。

 

 『おっきい木ー。』

 

 傾斜のある芝生を走ってると、その上に大きな木を見つけた。それはとても立派な大樹で、悠然と構えていた。俺はもっと近くで見たいと思い、傾斜を登った。すると登るにつれて、さっきは気が付かなかったが、木の側に人影があることに気付いた。

 

 『ん……?』

 

 人影の正体は、女の子だった。それもかなりかわいい。同じ人間とは思えない、端正な顔立ちをしていた。俺は少しばかり見惚れていると、女の子もこちらの存在に気付いたようだった。

 

 『……あ。』

 

 位置関係が悪かった。坂の下にいた俺は、その女の子を見上げる視点に、そして女の子は真っ白いワンピースを着ていた。つまり、女の子の中身が見えそうな位置に自然と俺は立ってしまっていた。

  

 『…きゃっ!』

 

 突風が吹く。出来すぎなくらいの風は女の子の白ワンピースを勢いよくひるがえした。まだガキな俺でもその中身を見ることはいけないと思って、咄嗟に視線を剃らした。

 

 『…みた?』

 

 女の子に問われる。

 

 『み、みてねーよ!』

 

 俺は少し赤くなりながら、必死で否定する。

 

 『ほんと?』

 『う、うん。』

 『よかったー、今日は履いてなかったのよねー!』

 『なんて?』

 

 とんでもないことを言われた気がするが、風の音で聞こえなかった。でも聞こえなくて良かった気がするのは何故だろう…。

 

 『きみは誰?』

 『私ー?』

 

 女の子は木の側に座ったので、俺も同じように横に座った。そよ風に揺られながら、俺たち二人は話した。真横から見たその娘は、まるでお人形さんみたいだった。

 

 『アリア。七条アリア。』 

 

 『ふーん。アリアちゃんも親父の付き添いで来たの?』

 『え? 私はここに住んでるんだよー。』

 『ええ!? こんな大きなお屋敷に!?』

 『そうよ~。私はこの家の愛娘ってワケね~。』

 『まなむすめ?』

 『わかんない? 男の子で分かりやすく言うなら、マ◯息子だね!』

 『余計わかんない…。』

 

 この時はまだ、彼女の言っていることはほとんど意味が分からなかった。

 

 『それで、君の名前は?』

 

 今度は彼女から問いかけられる。当然の質問だ。

 

 『俺? 俺は一条マドカ。』

 

 『一条…? あ。今日家に来るっていう葡萄農家さんの?』

 『そうだよ。親父に連れられて来たの。』

 『その息子さんね~!』 

 『どこ見てんの?』

 

 なんで、この娘は俺の下半身を見て言うんだろう…。

 

 変な娘だなあ。

 

 『でも、一条と七条って面白いわね~。』

 『そういや、なんか似てる名前だなー。すげー偶然。』

 『そうねぇ。一筆違いだね。』

 『それを言うなら一文字違いじゃないの?』

 『あら、ごめんなさい。男の子に分かりやすく言ったつもりなのだけれど。筆違いだったみたいね。』

 『…うーん。』

 

 なんか、この人とはところどころ会話が噛み合わない気がする。

 

 『それでアリアちゃんは、こんなところで何をしてたの?』

 『ここで本を読んでたの。この場所はね、パパとママとの思い出の場所みたいで、私も好きでよく来るの。』

 『へー、なんか良いなそれ。どんな思い出なの?』 

 『この木の下で種◯けされて、私が産まれたっていう。』

 『…それは日本語?』

 

 彼女の言っている言葉は時々訳が分からなかった。難しい言葉ばかり知っていて、流石はこの大屋敷のお嬢様だ、とこの時は感心していた。俺は勉強が苦手だったから、余計に凄いと感じたのであろう。

 

 『うふふ、マドカ君も大人になったら分かるよ!』

 

 そう言って、彼女はいたずらな笑顔を浮かべた。

 

 『同い年くらいだろ…。』

 

  

 これが彼女との、七条アリアとの初めての出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ひっでー出会い。」 

 

 

 

 

 

 しみったれたラーメン屋で600円のしょうゆラーメンをすすりながら、俺は呟いた。

 

 「もう!マドカ君はまたそんなこと言って!」

 

 横の席ではプンプンとアリアが怒っていた。

 

 アリアとはあの日以来から親交がある。親父はアリアの親父さんとなぜか馬が合ったようで、あの屋敷によく顔を出すようになった。俺もアリアの話し相手として親父に連れられ、何回も通うことに。

 

 「うふふ、でも贅沢も時々は良いものねー。」

 

 アリアは目の前のラーメンをちゅるんとすすった。

 

 「…たまの贅沢が600円のラーメン一杯か。ははは、価値観が違いすぎんな。」

 「玉の贅沢!!? …あ、タマにはのタマね、ビックリしちゃった。」

 「本当に価値観が違いすぎる…!」

 

 正直、庶民と富者ということもあり、噛み合わないところは多々ある。いや、それ以前の問題も多いんだけれど。だけどまあ、こうしてなんとか、放課後に会うくらいは付き合いがあった。

 

 「あの頃のマドカ君もかわいかったわ~。」

 

 ラーメンのスープを掬いながら、アリアは言った。今日の話題はというと、なぜか俺たちの昔話だった。

 

 「そうだったか…覚えてねぇな。」

 「覚えてないの~? 私は昨日のように思い出せるよー。 よく一緒にア◯ル洗浄したよね!」

 「そんな思い出は一欠片も無ぇ。」 

 

 捏造も甚だしい…。

 

 「うふふ、冗談よ。」

 

 冗談に決まってるだろ…。

 

 アリアは口許に手を当てて、お上品に笑う。こいつの冗談はいつも重い…。

 

 「…まあ確かに、昔を懐かしむ気持ちも分からなくはないな。」

 「でしょ~?」

 「通ってる高校は違えど、俺たちももう高校二年生。あと数年経てば立派な大人の仲間入りだもんな。時が過ぎんのすっげー早い。」

 「マドカ君は大人になったらヤりたいこととかあるの?」

 「やりたいこと…うーん。」

 「食べたいこととか飲みたいこととか。」

 「飲みたい…?酒か? まあ、酒を合法的に飲めるのはいいかもな。」

 「なるほど、ワ◯メ酒だね!」

 「くそっ!誘導尋問か!」

 

 

 本当に重い…。

 

 

 そんなこんなで、俺はラーメンを食べ終える。アリアは食べるのが遅いので、まだ半分もいっていなかった。

 

 部活帰りで腹も減っていたので、俺は炒飯を追加でオーダーすることにした。夕飯前だけど、まだまだ俺のお腹に入るのだ。

 

 「でも…昔と違ってることもあるでしょ?」

 「ん?」

 

 そう言うと、アリアはこちらを妖艶な眼で見つめ、急に身体をアピールしてきた。成長ぶりを見せつけたいのだろう。確かに、ルックスもプロポーションも、アリアは芸能人顔負けのモノを兼ね備えている。子供の頃も一際目立っていたが、高校生になるとより磨きがかかっていた。

 

 どことは言えないが、一部も大きく成長しているし…。

 

 「…あ、また胸ばかり見て!エッチだなあ!」

 「あ、いやっ! …ごめん。」

 「うふふ、大丈夫だよ。 私もよくマドカ君の股間を凝視してるから!! おあいこだね!」

 「…本ッ当にごめんなさい。」

 

 これが無ければ完璧美人なんだけど…。

 

 「私が言っているのは、背丈のことだよー。ほうら、マドカ君より背丈が大きくなったんだぞー。」

 「背丈…だと?」

 

 その言葉にピクリと反応する。俺にとってはセンシティブな言葉。

 

 「へいお待ち、炒飯ね。お嬢ちゃん!」

 

 すると、俺の前にさっき頼んだ炒飯が置かれる。

 

 不名誉な言葉と共に…。

 

 「マドカ君、また女の子に間違えられたわね~。」

 「くっ…!」

 

 成長といえばアリアもだが、俺も成長していた。思いもしない方向に。俺は成長につれ、カワイイとよく言われるようになった。顔は女性的に、背丈は小さく、声も高かった。女っぽい名前だったのだが、見た目までも女っぽくなってしまったのだ。

 

 「男の娘ってやつだね!」

 「うるせー。」

 「学校では男の子に告白されることの方が多いんでしょ?」

 「うるせー…。」

 「たぎるね!」

 「うるせー!」

 

 鼻息荒くしないでくれ…。

 

 悔しいが、まあ親から頂いた物だから、あまり文句も言えない。

 

 「…そっちは学校でどうなんだよ? 桜才は今年から共学化だろ? 男子も結構入ってきたから、告白とか結構されてんじゃねーの?」

 「うーん。これといってまだないわねー。」

 

 桜才の男子も意外に奥手なんだな…。アリアは見た目だけなら超優良物件だろうに。中身は事故物件だけど。

 

 「あ! でも、生徒会に男の子が一人入ったわ。津田くんっていうの。とても良い子よ。」

 「へー。そりゃ良かった。これで男手も増えるな。」

 「うん。生徒会にはなくてはならない子よ。」

 「役職は?」

 「ツッコミ係よ!」

 「…。」

 

 それは必要不可欠だな…。

 

 会ってもないのに津田くんの気苦労が知れるよ…。

 

 「ごちそうさま。」

 

 ようやくアリアもラーメンを食べ終えた。スープも飲み干し完食だ。意外にアリアもラーメンのようなジャンクフードを食うんだよな。次はハンバーガーでも食いにいくかな。

 

 「そろそろ出るか。」

 「そろそろ出すか!? …あ、聞き間違えたわ。 じゃあ、出ましょうか。」

 「聞き間違いってレベルじゃねーぞ。」

 

 俺たちは会計を済ませると、ラーメン屋を後にした。

 

 最後までアリアはブレなかった。

 

 

 

 

 

 ───────────────────────────

 

 

 

 

 ラーメン屋を出て、俺たちは住宅街を歩いていた。もう日も落ちかけていて、辺りは暗くなっていた。

 

 「ふー、もうお腹がパ◯パンだよー。」

 「ちょっ! その間違いは今日一ひどいぞ…。」

 「あ!ほんとだわ、ごめんなさい。間違えちゃったわ~。もう一回やり直すわね。」

 「お、おう…。」

 「ふー、もうお股がパ◯パンだよー。」

 「そっちじゃねえよ!」

 

 いつも通り低俗な会話を繰り広げていると、前に一台の車が停まった。その車は住宅街に不釣り合いな、お高いリムジンカーだった。

 

 「お迎えにあがりました、お嬢様。」

  

 中から出てきたのは漫画やドラマの世界でしか見ないようなメイドさんだった。この人は出島サヤカさん。七条家の専属メイドさんだ。メイドを見ると、流石はお嬢様って感じがするな。

 

 「ありがとう出島さん。わざわざ迎えに来てくれて。」

 「いえいえお嬢様。夜道は暴漢に襲われる危険もございますから、メイドとして当然の責務でございます。 まあ私としてはむしろ襲われたいし、襲いたいですが。」 

 「何言ってんだこの人…。」

 

 もちろんこの人もアリアに負けず劣らずの変態だ。否、アリア以上の変態だ。変態メイドだ。

 

 「変態メイドはやめてください…。私、興奮して濡れてしまいます。」

 「ビチョビチョだね!」

 「もうやだこの人たち…」

 

 道のど真ん中でなんて会話してんだよ…。俺まで変態に間違われるじゃないか…。七条家どうなってんだよ…。

 

 「お二人とも、今日は何をなされていたのですか?」

 「今日はね~。マドカ君がラーメン屋に連れていってくれてたのよ~。すごく美味しかったわ。タマタマの贅沢ね~。」

 「ラーメンですか。それは良かったですね。」

 「近くにいるなら出島さんも来れば良かったのに。」

 「それもそうだな。飯時じゃなかったから店内もガラガラだったし。」

 「いえいえ、お二人の邪魔をする訳には…。そもそもあのラーメン屋は家系ラーメンでしょう? 雌豚が豚骨ラーメンを食べるなど、共食いになってしまいます。」

 「ならねぇよ。」

 

 どういう理屈でそうなるんだ…。

 

 「ささ、お嬢様。もう日も暮れて参りますので、早くお乗りください。 あ、ちなみに今の『お乗りください。』は車に乗車するの意であって、決して騎◯位という意味を孕んでおりませんのでご容赦ください。」

 「止まんねぇなオイ。」

 「は~い!」

 

 アリアはリムジンに乗り込んだ。それを受けて、出島さんも運転席に乗り込み発車の準備をする。

 

 「そんじゃあまた…」

 「待ってマドカ君。」

 「…ん?」 

 

 アリアに呼び止められる。急な言葉に驚きつつも、俺はその場で立ち止まった。

 

 「…マドカ君は楽しい?」

 「ん?」

 「私といてマドカ君は楽しいかしら?」

 「妙なことを聞く…。」

 

 「ほら、私って少し世間知らずなところもあるじゃない? シノちゃん…あ、クラスメイトの子からは天然だってよく言われるし。 だからマドカ君には迷惑かけることもあって…。マドカ君は私といて楽しくないんじゃ…。私に付き合わしてるだけなんじゃないかって…少しだけ思っちゃったの…。」

 

 アリアは後部座席の窓から顔だけ出して、こちらを見た。いつものホワホワとした雰囲気は取っ払って、暗い面持ちをしていた。その珍しい姿を見て俺は驚いた。

 

 友人間で起こるような一般的な悩み事をアリアも持っているとは。こいつも意外にまともなことを言うとは。そう思った。俺はアリアに応えるため、真剣な表情になる。

 

 

 「俺は迷惑だなんて一度も……まあ何回かはあるけど…。 付き合うのだって……まあ重い冗談に付き合うのは時々疲れるけど…。そ、それを踏まえても! …一緒にいて楽しいと思う。うん。俺はアリアといて楽しい。」

 

 「…ホント?」

 

 「本当だって。そもそも楽しくなきゃ一緒にいねーよ。 あの木の下で出会ってから今日までずっと、一緒にいるんだかんな。」 

 「マドカ君…。」

 「だろ?」

 「…………うん!」

 

 アリアは俺の言葉に相槌をうつ。語気は嬉々とした調子を帯びていて、いつものアリアに戻ったようだ。それを見て、少しだけ俺も相好を崩した。

 

 「じゃあ、また明日は駅前のハンバーガー屋でも行くか。」

 「あ、あそこね! あの、ハンバーガー屋さんってお肉を挟んでるメニューが多いエッチなお店のことだよね!」

 「ワザといかがわしく言うなよ…!」

 

 いつもの調子に戻りすぎた…。

 

 「うふふ、冗談よ。」

 

 アリアは顔をほころばせて言った。

 

 「…ったく。」

 

 

 そうして、アリアの乗るリムジンは俺の視界から遠退いていった。

 

 

 「…そんじゃあ俺も帰るか。」

 

 

 踵を返し、俺も帰り道へと歩を進めた。

 

 

 また明日も、同じ日常が始まる。

 

 

 

 

 幼馴染は重いジョークがお好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








読んでくださり、ありがとうございました。

生徒会役員共大好き!

続きはあるかもしれないし…ないかもしれない。

生徒会メンバーと絡むような話を作れたらいいなーとは思ってるんですけど。。。


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