幼馴染は重いジョークがお好き   作:水漏れ老舗

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なんか続きました。暇潰しに読んでください。


中編

 

 

 

 

 

 他の色が見当たらない、あまりにも蒼い空。風は優しく頬を撫で、草木は青々と茂っている。そんな自然の中にある葡萄たちは、太陽の光も加わってか、染み渡るようなみずみずしさを発していた。

 

 「うんうん! 今年もご立派だな!」

 

 俺は葡萄を一房もぎ取り、みずみずしさに酔いしれる。今日は絶好の収穫日和。俺は収穫作業の手伝いを進んで引き受けていた。

 

 毎年、この葡萄畑を眺めるのが楽しみだった。見上げれば葡萄がたわわに実り、それは一面に広がる紫色の星空に見え、幻想的で、神秘的な空間を毎年届けてくれていた。俺は新品の玩具を見つめる子供のような目をしていただろう。

 

 「あー心が洗われる。」

 

 今日、俺は充実した1日を送っている。

 

 「おーいマドカ。」

 

 親父が手袋に付いた土を手で払いのけながら、此方に来る。

 

 「お前はもう上がれ。後は俺と母さんがしておくから。」

 「そっちの作業は?」

 「終わった。お前も手伝ってくれたからな。今日中に収穫作業は終えれそうだ。 いつも悪いなー手伝わせて。」

 「好きでやってるからいいの。」

 「…ありがとうな。」

 

 親父と話してる時、胸ポケットがブブブと振動する。俺の携帯が鳴っていた。携帯を開くと、見知った奴の名前が目に入る。

 

 「げ」

 「どした?」 

 「ごめん、親父、電話。」

 「アリアちゃんか?」

 「うん。 はい、もしもし。」

 

 アリアからの電話だった。俺は着信ボタンを押し、電話に出る。

 

 「あ~マドカくん久しぶりね。」

 「一昨日会ってたけどな。」

 「あら、ごめんなさい。ズッポリだったわ。いや、ヌッポリ?」

 「ウッカリだろ…。最初からトばしてんな。」

 

 電話越しに聞くアリアのジョークは耳に響く…。

 

 「マドカ君、今日はナニをしていたの?」

 

 " 何 "の発音が気になるが…。

 

 「今日は親父の手伝いでな、葡萄狩り。」

 「マドカ君の家で作ったブドウね~。この前ワインと一緒に持ってきてくれたのも、お父様喜んでいたわ。ありがとう~。」

 「おう。」

 「でもマドカ君のブドウを見てると、何か不思議な感じがするのよね……こうドキドキする。」

 「え?」

 「胸がキュンとして、苦しくなるの。マドカ君は分かるかしら?」

 「い、いや……。」

 「たぶん…………………あの連なっている形がア◯ルビーズを連想させちゃうからだよね!」

 「お前、一生葡萄食うな。」

 

 そもそも見えねぇだろ……。いや、アリアの話をまともに聞いても有益なことなんて何もない。流すことを覚えなければ。

 

 「そんで用件は?」

 「あ、そうそう。今度の金曜日、桜才学園で文化祭があるのだけど、マドカ君はどうかしら?」

 「文化祭って桜才の? 行かねぇよ。なんで、あんな女子校の肩身狭ぇ文化祭行かないといけないんだ。」

 「でも、マドカ君は違和感ないよ。」

 「それが嫌なんだよ!!」

 

 俺は電話に向かって叫ぶ。

 

 悔しいが、俺が桜才に行っても遜色はないと思う。むしろ他の女子よりも可愛い自信がある。手前味噌かもしれないが、うちの文化祭で女装カフェを開いたら、俺が一番人気だったんだから、自分で証明しちまっている。男なのに一番似合ってたんだ。女装が。

 

 それからというもの、度々男子から告白されるようになって大変なんだよ。男にモテてもしゃーないのに、一ヶ月に三回は校庭裏に呼び出されるんだ。もっとクールに産まれたかった…。

 

 「だから俺は桜才には」

 「忘れてるようだけど、桜才は今年から共学化になったわよ。」

 「あ。」 

 「うふふ、マドカ君もズッポリね。 それじゃあ、文化祭で待ってるわよ。」

 

 だから、ウッカリだってば…。

 

 電話を切り、携帯を胸ポケットに入れ直す。さあ、少し一休みするかな…。心で呟いて、身体をグーっと伸ばす。

 

 「マドカ…。」 

 

 背後から親父に話しかけられる。親父は鼻息荒く、どこか興奮気味で、明らかに様子がおかしかった。嫌な予感がして、俺は一目散に家に帰ろうとするが、すぐに親父に捕まってしまう。

 

 「これはチャンス(逆玉)だぞ!」

 「なんかルビがおかしいんだけど…」

 「お前、またアリアちゃんとデートだろう!? しかも電話で誘われるなんてよっぽどじゃないか! 告白か!? 告白……結婚……初夜。」

 「文化祭の話だよ! アリアの通ってる高校の文化祭に誘われただけ!」

 「お父さん達は歓迎だぞ…! 七条さんとこもお前を気に入ってるし……良い流れが来ている。 俺は老後…じゃなかった、お前のタメを想って言っているんだ!」

 「言葉に打算が見え隠れしてんだよ。」

 「老後を楽させてくれ!」

 「直球!」

 

 親父に肩を掴まれ、ガクガクと身体を揺すられる。俺は白い目を向けながら、その揺れに身を任すだけだった。

 

 

 最低だ、この親父は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 そして、文化祭当日。

 

 俺はアリアの書いた(工場の地図記号だけ事細かに記されていた)地図を頼りに、桜才学園前まで来ていた。人の往来が激しく、文化祭はもう既に始まっているようだった。

 

 「確か、あいつ劇に出るんだったよな。 ……でもどこだ?」

 

 アリアは演劇部に頼まれて劇に出るらしい。そんなメールが昨日届いて分かったのだが、もう少し詳細を聞いておくんだった。劇の場所がわからない。取り敢えず、案内所に行けば教えてくれるだろう。そう言い聞かして、歩を進める。

 

 すると雑踏に紛れて、見知った顔があるのを確認する。チョコバナナの屋台に女性が一人。出島さんだった。

 

 「出島さん。」

 「これはこれは、一条様。」

 「どうしてこんなところに?」

 「お嬢様の付き添いです。 しかし、お嬢様は劇に出演するようで、少しだけ間が空いたのでございます。 そして何をしようかと思案していたところ、この屋台でチョコバナナをひとつ食べようと思い……………うっ!」

 

 出島さんは買ったチョコバナナを上下に口で出し入れしながら、涙ぐんだ。口内炎かな。

 

 「大丈夫ですか出島さん!?」

 「いえいえ心配いりません。最近ご無沙汰だったものですから…。」

 

 より速く上下に、グチュグチュと音を立てながら出島さんはチョコバナナを食べる。…心配して損した。

 

 「…あ、そう言えば今日はメイド服じゃないんですね。」

 

 出島さんはいつものメイド服ではなく、無地のtシャツを着ていた。部屋着のように見える、ラフな服装だった。

 

 「はい。お嬢様がメイド役として劇に出演するので、私がメイド服を貸したのでございます。」

 「…へぇ。 でも、予備のメイド服を貸せばよかったのでは?」

 「それではお嬢様の脱ぎたて生メイド服が着れないではないですか。」

 「あんた真顔で何言ってんだ。」

 

 仮にも、仕えている主に劣情を向けるなよ…。

 

 「ってこんなことしてる場合じゃないな。 出島さん、アリアが出る舞台はどこでやってるか知ってますか?」

 「確か、あちらの体育館だと聞いておりますが。」

 「ありがとうございます。 と言うか、出島さんも俺と一緒に観に行きますか? 行きましょうよ、アリアもきっと喜びますよ。」

 「そうですね。あ、でも待ってください、もう少しで……ん、フィニッシュです。」

 「一人で行ってきまーす。」

 

 俺は駆け足で体育館へ向かった。あの人はもう駄目かもしれない。

 

 

 

 

 

 『しかし、旦那様に会わす顔がありません!』

 『何を言っているの、舞踏会はこれからなのよ!!』

 

 

 

 

 体育館に到着する。丁度、劇は始まったばかりで、俺はホッと胸を撫で下ろす。見た限り、内容は『レ・ミゼラブル』のような近世ヨーロッパが舞台のお話であろうか。舞台ではメイド服の女子が数人、言い争いをしていた。中にはアリアもいて、メイド姿がとても似合っていた。

 

 しかし……凄いな。舞台のセットはかなり凝った作りをしており、高校の文化祭にしてはレベルが高い気がする。流石は桜才学園だ。

 

 

 『でも、私には(自主規制)! 旦那様の寝所で(自主規制)で、(自主規制)。 (自主規制)(自主規制)。そして(自主規制)。』

 

 

 …でもほとんどピー音で聞こえねぇ。脚本ひっどいな。いや役者がひでぇのか…。

 

 

 「アリア先輩演技上手ですね。」

 「そうね。」

 「アリアはこのためにDVDを見て勉強したそうだぞ。それはいかがわしいDVDだったらしい。 アリアは勉強家だな!」

 「…褒めればいいのか分かんねぇっすよ。」

 

 

 他の生徒がアリアの噂話をしているのを耳にする。そう言えば、メイドのDVDで勉強しているとこの前ファミレスで言ってたな。どんなDVD視てたんだ。いやまあ大体想像つくけど…。

 

 それより、あの生徒たちが目につく。彼らが腕にしている物って…。

 

 

 『(自主規制)! やめてください!!(自主規制)なんて、(自主規制)。 (自主規制)!』

 

 アリアの声が会場に響き渡り、俺の耳に入る。

 

 本当に酷い内容だ……。

  

 

 

 

 

 ─────────────────────────

  

 

 

  

 

 劇の閉幕後、俺と出島さんはアリアのいる楽屋に行った。楽屋に入ると、メイド服から着替えて、アリアが桜才の制服に身を包んでいた。生徒会の腕章がキラリと光る。

 

 「出島さん、メイド服ありがとう~。」

 「いえいえ、これもメイドの仕事ですから。」

 

 この人に服を返していいのか、アリアよ。

 

 「あーお嬢様の香り、ハスハス…。」

 

 出島さんはアリアから手渡されたメイド服に顔を埋めた。匂いを嗅いでいるようだ。こいつ、主の目の前でやりおった…。

 

 「マドカ君もありがとね。わざわざ来てくれて。 どうだった? 私うまく出来ていたかしら?」

 「上手かったと思う。 …ほとんど台詞聞き取れなかったけど。」

 「なら良かったわ~。 ……でも、ふー…久しぶりにドキドキしちゃったわ。」

 「そんなに緊張してたのか?そうは見えんかったぞ。」

 「あんな大人数の中、いつスカートの中身が見られちゃうんだろうって…。」

 「そっちの緊張かよ!」

 

 アリアはスカートの裾を握りながら、もじもじしていた。こいつ…もしかしてまた履いてこなかったのか!?

 

 すると、コンコンとドアからノック音が。アリアは「どうぞ~」といつもの調子で応え、楽屋に招き入れる。

 

 

 「やあアリア。 労いに来たぞ!」

 「七条先輩お疲れ様です。」

 「お客さんたくさんでしたねー流石は七条先輩です。」

 

 

 ゾロゾロと桜才学園の生徒らしき人たちが楽屋に入ってくる。口振りから察するに、アリアの友人だろうか。

 

 「ありがとー。みんなも観てくれてたのね~。」

 「うむ、当然だ! 生徒会メンバーとして、アリアの晴れ舞台は視姦しなければならないからな!!」

 「そこは見届けるにしましょう、会長…。」

 

 アリアを囲んで、和気藹々と喋り始める。しかし、生徒会と言うのはたぶんアリアが所属している桜才生徒会のことだろう。腕章もあるし。なるほど、この人たちがアリアの口からよく聞く、生徒会役員共って訳か…。

 

 「…ん? そこのあんた、見ない顔ね。」

 

 生徒会の女の子が、部屋の隅で棒たちしている俺を指差す。その子は金髪を左右で結っており、ずいぶんと小柄。まるで幼子のような印象を受けた。子供が文化祭に遊びに来てるのかと錯覚する程だった。

 

 「あんた、失礼なこと考えてるわねぇ…?」

 「え。」

 

 その人は凄みのある眼光と、不敵な笑みを浮かべて此方を見た。地雷だったのだろうか。めちゃくちゃこわい…。

 

 「あ、紹介するわねみんな。 こちら、私の友人の一条マドカ君。今日は文化祭に誘ってね、来て貰ったのよ。」

 

 アリアが俺の前に立ち、わざわざ紹介してくれた。他人に紹介させず、自分から挨拶するべきだったな…。

 

 「マドカ……?」

 「七条先輩がよく話題にする人ですよね。 確か男性の方だと。」

 「なぬっ!」

 「…かわいらしい顔をしていらっしゃいますね。 男性には見えません。私、なぜだか負けた気がします…。」

 「ふん! でも胸は私の方が上だぞ!」

 「男の人と比べないでください、会長……。」

 

 生徒会の人たちは俺の顔をまじまじと見つめながら、話し出した。どうやら、アリアは俺のことを事前に話していたそうだ。かわいいと言われると少し複雑だなあ…。

  

 

 「えっと……一条マドカです。 アリアとは幼い時からの友人で、よく振り回……よく仲良くして貰っています。」

 「うむ、私は生徒会長の天草シノ。 アリアの友人なら私たちの友人だ。 催しはまだまだあるので、心行くまで文化祭を楽しんでくれたまえ。」

 

 

 朗らかに言って、シノさんは俺の前に手を差し出した。その手を握り、俺も相好を崩す。シノさんは整った顔立ちに、凛とした佇まい。とても格好の良い女性だと思った。俺の周りにはいないタイプだ。 

 

 「君のことはアリアからよく聞いているぞ。」

 「あ、そうなんですか。なんだか照れますね。」

 「君はツいてないのにツいているのだろう! はぁはぁ…ふたなりとは素晴らしいモノだな!」

 「俺のどんな話を聞いてんだ!」

 「おれ、今の会長になら説教できそうです。」

 

 生徒会ってこんなんばっかりか…!

 

 「それでこちらはスズちゃん。」

 「あ…萩村スズと申します。 先程はすいません、先輩だとは露知らず失礼なことを…。」

 「あ、いや、大丈夫…俺も…………。」

 「俺も?」

 

 子供かと思ってたとか。高校生には見えなかったとか。背伸びして制服着てるんだとか…思ってただなんて口が裂けても言えません…。

 

 「?」

 

 萩村さんは小首をかしげる。

 

 「そ、それでそっちの男の子は?」 

 「おれっすか?」

 

 俺は話を剃らすため、会長さんの横にいる男の子を手のひらで示す。男の子は自分を指差し、不思議そうな表情をした。

 

 「…この子は津田タカトシ君。」

 「津田……あ、アリアからよく聞く生徒会の…」

 「そう。 生徒会の種馬よ!」

 「おいコラ。」

  

 津田くんはアリアの紹介にキレる。まあ、考え得る限り最悪の紹介だもんな…。

 

 「しかし、津田くんか。噂通りの人だ。」

 「どんな噂なんすかね…。」

 

 まあ、気苦労が絶えないだろうな…っていう。

 

 「君とは他人のような気がしないよ。 これからも宜しく。」

 

 俺は握手をしようと、津田くんに手をさしのべた。

 

 「いえいえ、こちらこそ。 改めて、生徒会副会長の津田タカトシです。今後とも宜しくお願いします。」 

 

 固く握手を交わす。津田くんの手はゴツゴツとしていて、男子高校生らしい手のひらだ。男らしくて羨ましいと思った。

 

 「でも確かに、二人ともどこか似ていますね。 見た目は全く違いますのに。」

 「そうね~。二人とも、ツッコミ係だからかしら?」

 「なるほど。 二人とも、女に突っ込む♂男という訳か。」

 「そうよ! 女に突っ込む♂男の子よ!!」

 「うむ! 女に突っ込む♂男だな!!」

 

 

 

 

 「「もうやめなさいっ!!!」」

 

 

 

 俺と津田くんは、体育館中に響き渡るような大声で、二人の会話に突っ込みを入れた。

 

 

 「(息ピッタリ…。)」

 

 横で、萩村スズはそう思った。

 

 

 

 

 

 






拙い文ですが、読んでくださりありがとうございました。

あと高評価もありがとうございます。力になります。

生徒会役員共大好きです。
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