幼馴染は重いジョークがお好き   作:水漏れ老舗

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おまけ2

 

 

 

 

 「はぁ…しんど」

 

 ガタガタと揺れ、廃棄音がうるさい。年代物の軽トラは乗り心地が悪く、いつも慣れない。

 

 「なーにがしんどいだ。若者がすぐ弱音吐くなー?」

 

 運転席でハンドルを握る親父はタバコを口にくわえながら、助手席の俺に向かって口を開いた。

 

 「いいのかよ…。タバコなんか吸って…。匂いついても知らねーからな」

 「別にいいだろ。タバコくらい。後でミンティアでも噛むからよ」

 「そういう問題じゃねーだろ」

 「七条さんもそんな気にしないって」

 「エチケットの問題だろ。パーティに御呼ばれしてるんだから!」

 

 今から向かう先はアリアの屋敷。つい先日、七条家のパーティに来ないかとアリアに誘われた。七条家に所縁のある人たちを集めて飯を食べるだけのフラットなディナーパーティーだから、気軽に来てくれということだった。

 

 それでも、そういう大それた会食ってのは正直面倒くさいから、最初は断るつもりだった。がしかし、親父は俺のいない間に勝手に了承しやがって、行かざるを得なくなってしまった。 

 

 「着いたぞ」

 

 親父がそう言うと、目の前に荘厳という言葉が相応しい、大きくて立派な門がそびえていた。七条家の屋敷に到着したみたいだ。

 

 「俺は向こうの駐車場に軽トラ停めてくっから先行ってろ」

 「先行くって…」

 「ここにはよく出入りしてるから、顔パスでも通るだろ。最悪は知り合いのメイドさんにも頼ればいいんだしな。んじゃあ」

 「ちょっ」

 

 俺を軽トラから放り出すと、さっさと駐車場に走り出した。

 

 「…はぁ」

 

 

 

 

 

 

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 「よくお似合いです、一条様」

 

 パチパチと乾いた拍手が送られる。

 

 「ありがとうございます、出島さん」

 

 俺は出島さんと合流した後、更衣室に連れていかれ、フォーマルな格好に着替えた。ドレスコードというやつだろうか、深い黒のタキシードに蝶ネクタイを付けて、きちんとした正装に身を包んだ。

 

 「タキシードとか初めて着ました…」

 「そうですか。よくお似合いですよ。ある一定の場所には求められる服装というものがございますから」

 「ですね」 

 「深夜の公園で裸の露出プレイを楽しむみたいなものですね!」

 「全然違ぇよ」

 

 相変わらずやべぇなこの人は。

 

 「お嬢様は会場でお待ちしておりますので」

 「あ、そうですか…じゃあいってくるかな」

 「はい。それでは心ゆくまでお楽しみください」

 

 出島さんと別れ、俺はパーティー会場へ向かった。更衣室を出て、長い廊下を渡り、大広間へ行く。親父の手伝いで、何回もこの屋敷に来ているのである程度は内部のことを熟知しているのだ。

 

 大広間に着くと、ガヤガヤと人の喧騒が耳に入ってくる。もうパーティは始まっているようだった。

 

 「マドカ君!」

 

 パーティ会場で受付を済ますと、アリアがぴょんぴょんと跳び跳ねながら駆け寄ってくる。

 

 「よっす」 

 「ありがとうね。来てくれて嬉しいわ」

 「まあ暇だったし飯も食えるしな」

 「花より団子だね」

 「どれが花だよ」

 「花は……ふふん!」 

 

 アリアは腰に手をおき、俺の前でポーズをキめる。アリアの服装は純白のドレス。透き通るような白さが一際目立っていた。結婚式でも開くのかよ。

 

 「…いやお前を見に来た訳じゃねぇよ」

 「ううん。私の花ビラ(アソコ)のことだよ!」

 「もっとねぇよ!」

 

 誰が好き好んでそんなもん見に行くんだ。

 

 「えー、ちゃんと手入れはしてるよ」

 「そういう問題じゃなくてだな」

 

 「やあ二人とも!」

 

 すると急に、語気の強い、はっきりとした声で話し掛けられた。

 

 「シノちゃん!」

 「今日は招待ありがとう。とても楽しみだったぞ」

 

 現れたのは天月シノ。アリアの同級生で、同校の生徒会長さんだ。会長さんは黒のドレスを着こなし、スラっとした美しさがより強調されていた。とても似合っている。

 

 「楽しみすぎて…アソコがびちょびちょに濡れかけていた程にな!」

 

 台無しだった。

 

 「奇遇ね、私もよ~!」

 「同調するな」

 

 この人たち、ドレスコードとかよりも大切なことを頭に叩き込んだ方がいいかもしれない。

 

 「もー…会長、場所をわきまえてください」

 

 会長さんのお腹のあたりから声がするかと思えば、小さな女の子がそこにいた。彼女は萩村スズさん。アリアの後輩で、同じ生徒会の仲間だ。スズさんは明るい黄色いのドレスを着ていて、正直言うと子供が着ているようにしか見えなかった。

 

 「あ、一条先輩。お久し振りです」

 「口がさけても言えねぇ」

 「え」

 「あ、なんでもないです」

 

 スズさんは頭にクエスチョンマークを浮かべた。

 

 「アリアちゃーん」

 「はーい! …ごめんねみんな、ちょっと呼ばれちゃったから行くわね」

 

 小綺麗なブルジョアの集団がアリアを呼ぶ。名前を呼ばれるやいなや、アリアは声のする方へ向かった。

 

 

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 「へぇ、君の高校は元々は男子校だったのか」

 「そうなんですよ。ちょっと前から共学になったんですけど」

 「なるほど、桜才とは逆ということですね」

 

 俺たちは丸テーブルを囲み、ビュッフェで取ってきた料理をつまみながら駄弁っていた。

 

 「そういや今日はいないんですか?」

 「ん? 誰がだ?」

 

 会長さんは聞き返す。

 

 「津田くんですよ。生徒会メンバーみんな来てるのに。女子しか呼んでないんですか?」

 「ああ…津田なら」

 

 「すいませーん遅れちゃいました! ハイヒールなんて履きなれてなくて」

 

 知らない女の子がよろけながら此方にやって来た。赤黒い髪をツインテールにして、幼い様子を残している、かわいらしい女の子だった。

 

 「遅いわよー!ぷんぷん」

 「うむ、時間にだらしないのは感心しないな」

 「すいません…でも、アソコの締まりだけはちゃんとしてます!」

 「うむ、なら大丈夫だな」

 「大丈夫じゃねぇよ」

 

 話している感じでいうと、会長さんたちの知り合いのようだな。

 

 「えっと…そちらは?」

 「ああ、紹介が遅れたな…」

 「津田コトミです!」 

 

 津田?

 

 「…ということは」

 「はい! 津田タカトシとは、穴◯弟です!」

 「妹! 津田の妹よ!」

 

 スズさんが冷や汗をかきながら、横から声をあげた。

 

 この娘もアリアと同類か…。

 

 「タカ兄は昨日から風邪引いちゃいまして、代わりに私が来たんです!」

 「そうか。それは残念だな」

 「いえ、でも兄を生け贄に私がパーティーに来れたので結果オーライですよ!」

 「生け贄て」

 

 言い方。

 

 「…それであなたは誰ですか?」 

 「ああ、彼はマドカ君。アリアの古くからの友人でな」

 「…おぉ、なんか因縁の宿敵みたいでかっこいいですね!」

 

 ちょっと意味が分からない…。

 

 「それで七条先輩とはどういう関係なんですか?」

 「だから幼馴染だって…」

 「あ、コトミの聞きたいことは分かるわよ。一条先輩が七条先輩を個人的にどう思ってるか…ってことでしょ?」

 

 個人的に…て。

 

 「おお、恋ばなだな! そうだぞ、君はアリアのことをどう思っているんだ?」

 「私も気になります」

 「おうおう、白状せんかい!」

 

 女子三人に詰められる。端から見れば羨ましい状況なのだろうか。正直面倒くさい。いやかなり面倒くさい。

 

 「あら、みんなどうしたの?」

 

 するとタイミング良くアリアが戻ってきた。

 

 「すまん、面倒なことになってて」

 「アリア! 君はマドカ君のことをどう思っているのだ! アリアの友人として私は聞く義務があるぞ!」

 「そうねぇ…」

 

 会長さんの質問にアリアはその場でじっくりと考えた。そんなに考え込む必要があるのだろうか。そして数秒後、考えがまとまったのか、アリアは口を開いた。

 

 「セ◯レとかかしら…」 

 「ちょっともう黙っててくれる?」

 

 

  

 ────────────────────────

 

 

 

 

 

 あれから数時間経った。みんな食事も食べ終わり、パーティーもそろそろ終わりという雰囲気だった。

 

 「そこで津田君がね、そう言ったのよ」

 「お前ホント…いい加減にしとけよ。津田くんに同情するわ」

 「なんでよ~」

 

 俺とアリアは中庭に出ていた。会長さんたちとひとしきり話した後、中庭にある大樹の前で二人座り込んでいた。ここはアリアと最初に出会った思い出の場所で、とてもノスタルジックな気持ちに駆られた。

 

 「どうだったかしら、今日のパーティー? 急に誘っちゃったけど」

 「んあぁ…? 楽しかったよ。なかなかパーティーなんて行かないし新鮮だった」

 「え、マドカ君のはじめてだったのかしら!?」

 「はじめてじゃねぇよ…。親戚の結婚式に出席したことあるし」

 「なーんだ。卒業済みということね」

 「何言ってんだこいつ…」

  

 瓶のオレンジジュースをぐいっと飲み干し、俺は大樹の側から中庭を見下ろした。中庭では出島さんがうろちょろと世話しなく動いていた。何をやってるんだあの人は。

 

 「卒業というと、もうそろそろ高校生活も終わりだな」

 「あ、そうね~。あっという間だったわ」

 「だな」

 「マドカ君は卒業後どうするつもりなの?」

 「進路か……とりあえず進学だな」

 「え」

 

 アリアはすっとんきょうな声を上げた。

 

 「マドカ君、実家の農家はどうするの?」

 「継ぐよ。もちろん継ぐ。でも、大学で技術系も学びたいんだ」

 「技術?」

 「俺ん家はなんだかんだ零細農家だしな。AIとか最先端になってくる技術を取り入れてさ、もっと進化していった方がいいと思う訳……スマート農業ってヤツだ。だから、それを学びに大学に行くつもり」

 「そうなのね」

 「まあ、と言っても、受験がネックなんだけどな。俺はアリアほど賢くねぇし」

 「そうね」

 「フォローとか無ぇのか…」 

 

 飲み干した空の瓶を草むらの上に置き、俺は続けた。

 

 「アリアの方は?」

 「私も進学よ。マドカ君みたいに目標は無いけどね」

 「一つくらいは」

 「まあ…一つくらいはあるけど。どうせ、私はもう全て決まっているから、七条家の娘に生まれたからにはね──」

 

 アリアは視線を外すと、くぐもった声でそう言った。

 

 アリアも将来について色々と悩みがあるんだな。まあ、そりゃあ誰しもあるんだろうが、特にアリアは重い悩みを抱えてるんだろうな。背負ってる物が大きすぎて、たぶん俺なんかじゃ想像もつかない。

 

 俺が少しでも軽くさせて上げられるならいいんだが──

 

 「ねえ、マドカ君」

 「おぉ?」

 「卒業しても、またいつものように私と会ってくれる?」

 

 上目遣いで俺を見るアリア。

 

 「もちろん! この前も言ったと思うがな」

 

 俺は真っ直ぐアリアを見返した。

 

 「うん。ありがとうね」

 

 「みなさーん!」

 

 すると、出島さんの声が中庭に響く。

 

 「パーティーも終わりに近づいてきましたので、ここは最後に花火でもどーんと打ち上げたいと思います」

 

 出島さんがそう言うと、「おぉー」「いいぞー!」「ぶっとい!」と周りから歓声が上がった。出島さんは他のメイド数人と、大きな筒のようなものを運んできた。さっき、ごちゃごちゃしてたのはこの準備だったのか。

 

 「出島さん、あんなの用意してたのね」 

 「ああ、そうだな」

 

 出島さん達は周りの人に離れるよう指示し、花火を点火し始めた。

 

 「ね…」

 「あ?」

 

 どーん!

 

 花火が打ち上がる。暗闇に満開の花が咲いたようで、とても鮮やかだった。

 

 

 

 「………………マ…ドカ……ん……………だよ!」

 

 

 

 その時、アリアが何か俺に喋った気がした。でも、花火の音が耳を支配していて、他の音など入ってこなかった。

 

 「すまん。花火の音で全っ然聞こえなかったんだが…」

 「さっき喋っていた私の目標を言ったのよ」 

 「あん? …何て言ったんだ?」

 「一度くらいワ◯メ酒をしてみたいわ…って!」

 「聞こえなくて良かったよ!」

 

 

 なんだその糞みてぇな目標。言わない方がいいよ、そんな目標。

 

 

 「うふふ……ええ、本当に聞こえなくて良かったわ」

 「んだそれっ」

 

 

 

 花火がまた打ち上げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 読んでくださりありがとうございました。

 また思い付いたので書きました。

 内容は粗いです。
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