幼馴染は重いジョークがお好き   作:水漏れ老舗

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おまけ5

 

 

 

 「お」

 「あ」

 

 放課後。家に帰る途中で、見知った男の子に出会った。

 

 「あなたは七条先輩の…」

 

 彼は、津田タカトシ君。

 

 アリアが所属する生徒会の副会長さんだ。面白い子が生徒会に来たと、アリアが度々話題にしていたから、俺もよくご存知だ。

 

 「あの…どうしました?」

 

 彼をじっと見る。

 

 俺と違って背丈があり、体格もあり、男らしい子だった。正直めちゃめちゃうらやましい。

 

 「なんでもないよ。そういえば、文化祭で会って以来かな」

 「はい。確か、七条先輩のセフ…お友達でしたよね」

 

 今、セ◯レって言いかけた?

 

 あいつのジョークが悪い影響を及ぼし続けている。

 

 「学校の帰りですか?」

 

 津田君に話し掛けられる。

 

 「うん。そうだよ」

 「部活とかは?」

 「してないんだよねー。最近は家の手伝いも忙しいからね」

 「へぇ、偉いですねえ。俺なんか家に帰ったら、いっつも何もしてませんよ~。寝てばっかり」

 「津田くん、生徒会で頑張ってるじゃん。それで十分だよ」

 「…ですかね?」

 「…そうだよ」

 「…」

 「…」

 

 

 「「……………」」

 

 

 ああ、駄目だあ。

 

 話すことが無くなった。

 

 少しばかり沈黙。お互いの顔を眺める時間が続いていた。

 

 他校の、しかも後輩の男の子となんて何を喋ったらいいか全然分からん。しかも、文化祭で一度会った程度の関係だ。正直言うと、俺もそこまで社交的じゃないしな。

 

 葡萄関連の話題なら、日を跨いでいても喋り続けられる自信はあるけども、日常の会話となると話は別だ。上手く喋れるビジョンが見えない。

 

 何か話題が。話題が欲しい。

 

 津田君との共通の話題が。

 

 

 

 あ。

 

 

 

 「──アリア」

 

 

 唐突にそう言うと、津田くんは頭にクエスチョンマークを浮かべた。

 

 「あっ…そうだ。学校でアリアはどうだった?」

 「七条先輩はいつも通りでしたけど」

 「いつも通りか……嫌だな。あいつのいつも通り。迷惑とかかけてた?」

 「そんなことは。いつも俺の方が迷惑をかけてしまってるくらいで…」

 「いや、あいつが繰り出す冗談のことなんだけど」

 「あー。…まあそれはそうですね」

 

 それはそうだよな…。

 

 「あいつのジョークは胃に悪いからな…」

 「そうですね…」

 「例えばこの前なんか」

 

 

 

 俺はこの前のことを回想する。

 

 

 『あ、見て。猫がいるわ』

 

 休日に、アリアに誘われて、ショッピングモールまで買い物に付き合わされていた帰り道。

 

 アリアの視線の先には猫が一匹、ふてぶてしく此方を見ていた。

 

 『かわいいわね~』

 『まあそうだな』

 『私、猫って好きだわ。とても癒される』

 『まあそうだな』

 『もー、愛想の無い返事だなあ』

 『うー。まあ可愛いと思うが、どう返事すればいいか分からん』

 

 もちろん猫はかわいいと思うが、飼いたいとまではいかないし、生き物に対してそこまで好意を向ける人間ではない。

 

 『マドカ君は、犬派なの? 猫派なの?』

 

 猫を撫でながら、アリアが俺に聞いてきた。

 

 『うーん。まあどっちかっていうと、猫だな』

  

 『え!?』

 

 あっと驚くアリア。

 

 『そこまで驚くか? 猫の方が俺は好きだって』

 

 『え!?』

 

 また大きな声を上げる。

 

 『めちゃくちゃ驚くじゃん。なんでそんなに?』

 『いや驚くわよ。マドカ君は、どっちかっていうと、タ◯だからね』

 『お前、読解力消滅したの?』

 

 ネ◯とかタ◯の話を今はしていない。

 

 『犬派か猫派の話をしていたよな?』

 『大丈夫よ! 私がリードしてあげるわ!』

 『ちょっ、間違った流れで会話を進行するなよ!』

 『ネ◯でも安心よ!』

 『おまっ、しつこい!』

 

 

 ──そして回想は終わる。

 

 

 「みたいな」

 「た、大変ですね…」

 

 津田くんが理解してくれる。

 

 それだけで俺は嬉しかった。

 

 「俺なんかは…」

 

 今度は津田くんの回想が始まる。

 

  

 津田くんとアリアが二人きりで、生徒会室を掃除していた時の話みたいだった。

 

 

 『もー! 津田くん、この床、ホコリでいっぱいだよ!』

 『あ、すいません…』

 

 頭をポリポリとかきながら、津田はペコリと頭を下げた。

 

 『ちゃんと掃いてるの? これだとシノちゃんに怒られるよ』

 『う。で、ですよね…。俺、あまり箒とか使ったことなくて』

 『掃除とかあまりしないんだね』

 『はい。七条先輩は綺麗好きですよね。すごく良いことだと思います』

 『そうよね』

 

 アリアは津田の方をクルリと向いて、頬に人差し指を当てて言った。

 

 『ア◯ル洗浄は大事だよね!』

 

 津田はつい絶句してしまった。

 

 

 

 ──そして回想は終わる。

 

 

 

 「みたいな」

 「それはひどい」

 

 あいつは何を言っているんだ。

 

 というかア◯ル洗浄ってなんだ。

 

 「じゃあこの前なんかさ──」

 「あ、生徒会で前に海に行った時のことなんですけど──」

 

 

 こうして、俺と津田くんは楽しく語らいあった。日が沈むまで夢中になっていた。

 

 そして

 

 

 「あ、もう暗くなってきましたね」

 

 津田くんが空を仰ぎ見て言った。

 

 「早っ。じゃあ帰ろうか」

 「はい。あ、そうだ、メアド交換してくださいよ。また七条先輩と話したいです」

 

 後輩からの嬉しい言葉だった。

 

 「そうだね。…ありがとう」

 

 俺は携帯を出し、メアドを津田くんと交換した。

 

 

 「じゃあな」

 「はい! それじゃあまた」

 

 

 ──こうして、俺たちは被害者の会を設立したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございました。

久しぶりに更新しました。
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