綾乃side
「殆どの人間がそいつの才能やら実力ばかりに目移りする傾向が強い部分が多く見られるが、才能を磨かせる事に重きを置きすぎてそいつの事を本当の意味で見られなくなるのって悲しいだろ? だからかな、政近と有希の自由や思いを抑圧し続ける爺さんにムカついたから変に口を出しちまったのは。 でも、あの爺さんの考えも一概に間違ってるとは言えないけど、言われてやるような努力は本当に努力してる人に比べて何の魅力も価値も感じられないのが人間なんだよ」
そういうあの方の瞳は何処か悲しげでありながら、まるで自分自身を見ているかのような視線を政近様と有希様に向けていた。
政近様たちの前では悟られないようにして気付かれずに済んでいるものの、あの方は1人になった途端に有希様たちの前では決して見せない表情を浮かべる時がある。
その表情は--のようで、あの方は政近様と有希様の二人でも知られていない秘密がある様な気がしてならなかった。
故に私は勝手ながら独自にあの方の事を調べ、結果として私は深い後悔をする事となった。
あの方の秘密を知ってしまった私は政近様と有希様にバレないように心掛けながら隠し続けていましたが、あの方は直ぐに気付いた様子を見せると勝手に秘密を知った私に対して怒りを露わにする訳でも無く優しい声で、
「知られた物は仕方ない。だから、あんまり気にする必要は無いよ。 まあ、言いふらしたりしないでくれると助かるかな? あんまり聞いても面白い話じゃないし、変に気を遣われるのって気まずいだろ? そう言う事だから、この話は俺と綾乃、2人だけの秘密って事で頼む」
そう言って私の事を許したあの方は笑顔で言ってのけるのに対し、私の心は後悔と自責の念に駆られながら謝罪を続ける事しか出来なかった。
あの方はもっと怒っても良いのに何故他人に優しくし続けるのか、唯一それだけが分からなかった。
それでも一つだけ確かな事なあった。
あの方の秘密を知ったからには私も共に背負おう事にしよう、あの方の決して癒える事の無い心に負った傷と苦しみを。
そうする事で秘密を知った事への贖罪となり、その上であの方を支えることが出来ると言うのなら。
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有希と政近との話を終えた悠真は1人、図書室へと訪れていた。
「借りた本は返せたし、後は………まだ時間には余裕が有りそうだから屋上にでも行くかな」
借りていた単行本の小説を返した悠真が時計に視線を向けると、時計の針は未だ12時20分を指しており午後の授業まで余裕があると分かると、悠真は屋上へ向かう事にした。
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図書室から出て数分後、屋上へと辿り着いた悠真が辺りを見渡すと人の姿が見当たらず無人だということが分かると、手摺に背を預けて空を見上げながら徐に口を開きはじめる。
「それで、先程から後を付けてたようだけど、俺に何か用事でもあるのか、綾乃」
そう言いながら悠真が扉の方に視線を向けると、扉の陰から1人の少女が姿を現した。
【君嶋綾乃】──悠真のもう1人の友人にして有希に仕える少女であるのだが、従者としての価値観のせいなのか普通とは若干と言うべきなのか考え方が違い、かなり独特な感性を持っている。 政近に連れられる形で周防家の実家へと遊びに行った際に綾乃と偶然にも出会った悠真は気配の隠し方から暗殺者の類かと勘違いした事がある。
「此処(征嶺学園)に入学したってのは知っていたが、こうして会うのは久しぶりだな。 元気にしてたか?」
「お久しぶりです悠真様。 私の方は問題ございません」
「そうか……それで? 2人きりになるまで気配を隠してた理由は人目に付かれるにはマズイ内容なんだろ? もしかして、周防家の爺さんから嫌味な伝言でも預かってきたのか?」
「いえ、今回は私の意思で来ました」
「ほぉ、珍しいな? 政近と有希の二人の前で話せない内容で、尚且つ綾乃の意思ってことは………本当に何の用なんだ?」
「用と言う程の事では無いのですが──悠真様、昼食はパンを一つしか食べていませんね」
「……何故それを知ってる。 あの時、購買にはお前の気配は無かった筈だ。 それなのに何処で知った……と言うかどうやって知ったんだ?」
政近と有希の2人と生徒会について話す前に食事を済ませた悠真だったが、実際には済ませざる無かった。
購買で買えたのはメロンパン一つと、高校男児としては余りにも少ない昼食だった事もあり若干空腹気味でもあった悠真だが、その事を何故か綾乃が知っている事に驚愕を覚えていた。
「だいたい、お前の気配を感じたのは図書室に向かう道中だった。 購買でパンを買った時は確実に居なかったのは分かっている……敢えてもう一度聞くけど、どうやって知った?」
「それは……」
悠真が問い掛けると途端に綾乃は何処か申し訳なさそうな表情を浮かべ始めると、それを見た悠真は小さく息を吐くと仕方ないと言わんばかりの仕草をしながら口を開く。
「どうせ綾乃の事だから有希を探してる時に偶然にも俺の事を見掛けた際に、俺がパン一つしか食べてないのを見てたんだろ?」
「っ!?」
「当たりかよ……もう少しポーカーフェイスくらいは心掛けろよな、全く」
「申し訳ありません」
「別に責めてる訳じゃないから安心しろ……もしかしてだが用件ってのは、背中に回してる手に持った弁当の事でだったりするのか?」
そう言う悠真は手を背中に回した状態の綾乃に視線を向けると、綾乃は少しだけ逡巡してから小さく頷くと背中に回していた手を前に出すと、その手には綺麗に包まれた弁当箱が握られていた。
「その……悠真様には以前に助けて貰う事があったので、恩返しの為に作ってきたのですが……お口に合うか不安ですが、食べてくれませんか……///」
耳元まで赤くした綾乃が恐る恐るといった口調で弁当箱を差し出すと、悠真は普段からは考えられない反応を見せる綾乃に内心ドキッとしながら答える。
「そういう事なら有難く受け取るよ……その、ありがとうな綾乃」
「っ、はい。 それでは私はこの辺で///」
「あっ、おい!?」
悠真が弁当箱を受け取ると、綾乃は早口で告げてから屋上から早歩き+周囲に紛れ込むようにして気配を消して立ち去るのだった。
屋上から早々に立ち去る綾乃に驚きつつも悠真は頭を掻きながら一人だけになると、小さな声で呟いた。
「流石に洗って返さないとマズイよな……なっ!? まさかのキャラ弁だと!!」
一人取り残された悠真が小さく呟いてから包みを解いて弁当箱を開けると、そこには可愛らしい兎を象った白米と豪華な食材が入っていたという。
因みに自分の好きな味付けがされていた事に驚く悠真が戦慄を覚えた場面が目撃されたとか無かったとか。
面白かったり良かった点が御座いましたらコメントの方をお願いします。
この中で主人公との絡みを増やして欲しいキャラを選んで下さい
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乃々亜
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綾乃
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沙也加
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政近
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ここに来て周防厳清登場
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それよりデート回でも書きません
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有希様に決まってるだろ