千手とうちはは五分五分であったが、最近は千手の方がおしてきていた。千手には柱間というバケモンがいたから。そしてバケモンの子供もまた、バケモンであったから。
◇◇
「どいつもこいつも興が湧かん」
そう言いながらも敵がいる辺りを刻み続けるのは柱間の第一子、宿儺。チャクラを極限まで薄くして放つ斬撃を得意としている、チャクラコントロールがやばいバケモン。たまに、印なしで炎の矢を放つ火遁■開の術を使ったりもする。■開の術に関しては、術の開発のスペシャリスト、叔父の扉間にも、『あれは本当に火遁なのかもわからん』と言わせるような意味わからん術である。宿儺、齢8歳。
「宿儺〜味方まで斬らんといてよ。治すの俺なんだからさ!」
宿儺に近づいてくる、宿儺に似た男の子。柱間の第二子にして宿儺の実弟、悠仁だ。
宿儺が間違えて斬ってしまった味方の人に触れると、傷はたちまち治り始めた。実はこいつもバケモン。宿儺よりも、父である柱間よりもチャクラコントロールが上手く、触れるだけで傷を治すことができるほど医療忍術が得意な7歳児。それでいて素の力がゴリラもびっくりなほどあり十分戦えるので、医療忍者でありながら戦場に駆り出されている。
余談だが、綱手の師匠はこの子。
「うっっっわ、最っ悪!」
バケモン兄弟が出くわしたのは、マダラの一人娘、ノバラである。
「あ、ノバラじゃん」
「敵の前で叫ぶとか、馬鹿なのかお前は?それともどうしようもない阿呆か?」
「だって一族のみんなの悲鳴聞いて駆けつけてみたらアンタたちがいるんだもの。叫ばないとやってられないわよ!」
そう言いながらも金槌と釘を構えるのはさすがというところか。
うちはの族長である父マダラと、うちはと釘崎の混血である母との間に産まれたノバラ。母は混血のため、誇り高く閉鎖的なうちは一族ではあまり良い待遇ではなかったが、非常に強いくノ一であった。また、性格もサバサバしていたためにマダラが気に入り、一族からの批判を全て無視して結婚した。そんな母はうちはの血が濃かったのか火遁を得意としていたが、隔世遺伝なのか、ノバラは釘崎一族の血継限界である芻霊術を得意としている7歳児。しかし、ノバラはバケモン兄弟のようにバケモンではなかった。
(どうするッ!悠仁だけなら見逃してくれたかもしれないけど、宿儺は絶対に逃がしてくれないじゃない!私が勝てる相手でもない…そもそも、運が悪かったら、もうとっくに宿儺に殺されてたわ…)
「ねぇ、すく──」
「退避しろーー!至急退避だ!」
悠仁が何か言おうとしたと同時に、うちは側から退避の命令がくだった。
「やった!」
ノバラがすぐに退避する。
「逃がすかッ!」
「撤退だー!千手一族!撤退しろー!」
ノバラを逃がすまいと攻撃しようとした宿儺だったが、千手にも同じ命令がくだったため、ノバラのことは諦めた。
その戦の約1ヶ月後のことだ。
「はぁ?うちはと協定を結ぶだと?」
「えっ!本当!?」
「本当ぞ!」
「兄者が何度かうちはに協定を結ばないかと手紙を送っていてな。それをマダラがのんだのだ」
千手邸で、宗家一家───柱間が族長のため、扉間は分家になるのだが───が茶菓子を嗜んでいるときの会話だった。
「あれか。父がよく『マダラが無視するんぞ〜』と嘆いていたやつか」
「それだ」
「でもなんでまた急に?この前の戦でなんかあったの?」
「あぁ、いろいろあった。おそらくあれがうちはマダラに決心させたんだろうな」
そう答えるのは扉間の息子である恵、7歳。恵の母は禪院一族だ。
禪院一族はたまに忍として有利な性質をもつ者がいる。例えば驚異的な身体能力だったり、極稀にしか現れない、十種影法術という血継限界だったり。その力は強力なので、ワンチャンを狙って禪院一族の人間を迎える一族は多い。千手もそうだ。今までは遠縁のうずまき一族しか迎えていなかったが、柱間というバケモンが産まれたので、禪院一族のワンチャンもあるんじゃね?ってなった。禪院一族を迎えるのは初めてであり、小賢しいことで有名なので、あまり信用がなかった。何かあったとき族長の妻であったら都合が悪いため、族長になることが決まっていた柱間ではなく、扉間に嫁がせた。その結果、第一子である津美紀は父譲りの水遁が得意なくノ一であったが、第二子の恵はワンチャンの中でも特に珍しい十種影法術を見事に引き当てた。バケモン兄弟と、恵。津美紀も優秀なくノ一なので、千手一族はもうウッキウキだった。
「いろいろとはなんだ?」
話は、この前の戦まで遡る。
・
・・
・・・
「鵺!」
「チッ!」
恵は十種影法術を上手く使い、マキと戦っていた。
うちはマキはうちはイズナの娘だ。マキもまた、禪院一族の母をもつ。
うちはは基本、体術が弱い。それをどうにかするために、身体能力が高い禪院一族の血を混ぜることにした。だが、うちはは血継限界をもつ、誇り高く閉鎖的な一族。跡継ぎが純血でないのはまずい。なのでマダラではなくイズナに嫁がせた。…マダラが釘崎との混血の女を選ぶとは、誰も考えていなかったので。
また、禪院一族が千手にもうちはにも嫁がせているのが判明したときは、両一族とも子供が産まれた後だったのでめっちゃ揉めたが大事にはならなかった。まぁ、禪院一族の悪名はさらにひろまったが。
てなわけで、一族の期待通り高い身体能力をもって産まれたマキだが、問題が1つ。術が使えないのである。チャクラが少ないわけではない。なのに何故か、術が使えない。一族から時々罵倒されたりしたが、驚異的な身体能力を活かし武器を巧みに扱う強いくノ一になって黙らせた。齢8歳。色んな意味で強い女に育っている。
長時間の攻防の末、ついに恵が終止符を打とうとした。
「万象」
「ッ!!」
十種影法術は影絵で10体の口寄せ獣を口寄せできる術。そのなかでも万象は水遁を使う口寄せ獣。しかも、大きさに比例して水遁の規模も半端ない。それ故に火遁を主に扱ううちはは万象が天敵なのだが、マキには別の問題が。
マキは先述のとおり、術が使えない。故に万象の質量攻撃を防ぎようがないのだ。木をつたって上に逃げても、鵺に攻撃されるか落されて、水に飲み込まれる。どうしようもなかった。
マキは死を覚悟した──
「…は?」
「大丈夫?マキ」
「親父!」
その時、マキの父、イズナが助けにはいった。
「チッ、クソっ!まずい」
ただのうちはであれば大人相手でも負ける気はない。だが、流石にイズナ相手では恵でも簡単に殺される。恵は父譲りのよく回る頭のおかげですぐに逃走を決断できた。が、
「なんで親父が!」
「自分の子供が殺されるところを黙って見てる親なんていないだろ?」
そう言いながら簡単に追いついた恵に刀をふるって───
「そうだな。自分の子供が殺されるところを黙って見てる親なんぞおらんわ」
刀を、恵に刺さるギリギリで扉間が防いだ。
それから、扉間対イズナの戦いが近くで始まり、恵対マキの戦いも再開した。
扉間対イズナの戦いは五分五分だったが、恵対マキの戦いはマキがおしていた。
鵺や万象を呼び出すのには大量のチャクラが必要だ。しかし、その二匹はマキを助けると同時にイズナにやられそうになったために咄嗟に戻してしまった。なので、恵は今、玉犬を呼び出せるか呼び出せないか程度のチャクラしか残っていない。それに比べてマキラは基本チャクラを使わずに戦う。つまり、チャクラ切れすることなく、体力がなくなるまで戦い続けることができるのだ。
圧倒的に不利。それ故に恵がとった行動は……
「水遁、水断波」
十種影法術ではなく、遁術で戦うことだった。
マキは薙刀で防いだが、柄の部分が真っ二つに折れてしまった。その程度で済んだのは、恵があまり遁術の修行をしていなかったからだろう。
その時、マキは嫌な予感がした。マキの勘は、外れることが少ない。それを自覚しているので、マキはすぐに動いた。折れた薙刀の棒の方を恵に向かって投げて追撃を妨害し、刃のついている方を父イズナのいるであろう方向に投げた。近くではあったが、向こうの方は霧がたちこめており、中の様子が見えなかった。だが、流石マキ。投げたところは最適解ともいえる場所だった。
イズナが横から何か投げられたのに気づき、それを避けた瞬間、扉間の飛雷神斬りが炸裂。しかし、マキの薙刀を避けたからか、扉間の攻撃が少し反れ、重傷ではあるが致命傷はさけられた。
霧が、はれる。
「イズナッ!」
そこにちょうどマダラがやってきた。柱間を連れて。
「にい、さん。これくらいなら、大、丈夫」
「だが!」
「親父!」
「父さん!」
子供達も集まってきて…
「マダラ──」
・・・
・・
・
「ってことがあった」
「なんか一番大事なとこ抜かしてない!?」
「ほぅ、あのうちはマダラが情にながされたか」
「うちはは愛情深い一族だからな」
「まぁ、そういうわけで2週間後にうちはと宴会をする。お前たちも来るんぞ!」
「えっ」
「は?」
「まじか…」
「仕方がない。こればっかりはお前たちにも来てもらわないと困るのだ。向こうが子供を連れてくるらしいからな。少し大人になれ」
「父さん…」
「ん?みんななんでそんなに落ち込んでるんぞ?」
ついこの前まで殺し合いしてた相手と仲良く宴会できる方がおかしいだろう。だからといって、揉め事を起こせば協定の話はなくなる。子供たち───というより宴会に参加する人全員に言えることだが───は扉間の言う通り、少し大人にならないといけない。
ズズズ
「ふぅ〜うちはの人たちと争うことがなくなって良かった〜」
忘れてはいけない。優雅に茶を啜る、津美紀の存在を。
◇◇
「マダラ〜!」
「やめろ柱間ァ!オレに抱きつくんじゃねェ!」
あっという間にやってきた宴会当日。族長同士がとても仲良く───マダラはそんなつもりはないが───していたので、両一族はみんなポカンとしていた。
「兄者!いい加減に──」
「やぁ、扉間」
扉間のところに来た、イズナ。扉間は兄への注意を遮られたのと、それがよりにもよって宿敵(だった)のイズナだったため、すごく不機嫌になった。故に、煽ってしまった。
「何だ貴様。もう治ったのか」
「お前なんかにつけられた傷でそんな長期間へばるわけがないだろ」
「そうかそうか。あぁ、そういえば貴様は協定に反対していたな。床にふせている間にマダラに勝手に話を進められていたのか。哀れだな」
「はぁ?そんなわけがないだろ!兄さんはそんなひどいことしない!僕が仕方なく了承したんだよ!仕方なくな!」
「フッ、どうやら図星のようだな」
「〜ッ!だから───」
扉間までイズナと言い合いを始めてしまった。
そんな情けない大人たちを呆れた目で見ている子供たち。
「…なんかすまねぇな。うちの親父が」
「いや、こっちもだ。まったく、父さんまで何やってんだよ…」
「ハハ…むこうは完全に父ちゃんが悪いけどね…」
「はぁ、呆れて何も言えんわ」
「ほんとよ…でも、あのクソ親父だってもっとガツンと言わなきゃ!カッコ悪いわね」
親のことで苦労しているという共通点があるからか、ついこの間まで殺し合っていたとは思えないほどにスムーズな会話だった。
「お父さん、伯父さん。マダラさんに、イズナさんも。何をやっているんですか?この宴会の意味、わかっていますでしょう?私情を挟むのは、全部終わったあとにしてください!」
忘れてはいけない。津美紀の存在を。(2回目)
イズナが苦笑いしながらポツリとこぼした一言。
「さすが扉間の子だ」
◇◇
順調に事が進み、全部終わったので、津美紀に許してもらいじゃれ合い始める両一族の宗家と、その側近数名。他の人たちはもう帰った。一族のトップたちが戯れるところを見に来たわけじゃなかったので。
子どもたちは仲良くなっていた。
「えっ!てことはマキさん双子なんですか!?」
「あぁ、けど妹の方は禪院一族の方にいるから会ったことは少ねぇけどな」
「あいつ、ザ・禪院って感じの性格してるのよね。私、マキさんのことは大好きだけど、あいつはムカつくし嫌いだわ!」
「へぇ~ノバラがそんなに言うってことは、よっぽどなんだな〜」
「そうか?まだあんまり分かんないけど、ノバラは多分好き嫌い激しい奴だと思うぞ」
「はぁ?私は心が広いって有名な美少女なんですけど!恵の中の私のイメージどうなってんのよ?怒らないから正直に言いなさい!」
「もう怒ってんじゃねぇか!」
「仲良くなれて良かったわね〜」
「…さっきから思ってはいたが津美紀の肝の座り具合半端ねぇな」
「千手の中であいつに逆らえる奴はおらん」
「扉間叔父さんでさえ津美紀姉ちゃんには弱いもんね〜」
その話を聞いていた、父親達。
「へぇ〜あの扉間がw」
「娘程度に尻に敷かれるとはな」
「…津美紀に関してはワシは何も言えん。だが、それはお前たちもそうではないのか?見ている限り、お前たちの娘は性格がきつそうだがな」
「「……」」
「は、柱間ァ!てめぇはどうなんだ!?」
「オレか?俺のところはどっちも男だからな!」
「クソッ!そうだった!」
「何を言っておる。たしかに兄者はどちらも息子だが二人に世話を焼かれているではないか」
「む、そうか?」
「宿儺など兄者を見て毎日ため息をついているではないか」
「ブハッ!そうなの!?さすがは千手の族長、滑稽だねぇ!!」
「──やじ」
「マジか柱間ァ!ハハハハッ」
「───ぇってば」
「二人とも笑うなんて酷いぞぉ…」
「─おい」
「言わなかったらよかった!!酒が入っているせいか頭がうまく回らん!!!お前らいい加減に───」
「ねぇ、お父さん?」
「「「「……」」」」
騒がしかった大人組が急に静かになる。さすが津美紀。
「酒クセェオッサンたちよぉ」
「誰かさんたちのせいでだいぶ遅くなったからさぁ」
津美紀のあとは般若の顔をしたうちはの娘たちの追い討ち。そしてトドメは、
「さっさと帰るぞ─────
─痴れ者が」
千手の泣く子も黙ると有名な宿儺の睨み。そこにはプラスして軽蔑の意も感じ取れる。それには壮絶な戦を生き延びてきた4人も──親の柱間は特にだが──本気でチビリそうになった。
自分が頭悪いせいで扉間の動かし方が分からんのだけど、分かる人いますか?