悠仁くんが千手の族長になるまで   作:ちゅーにびょー

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禪院一族ってやっぱクソ①

「恵、大丈夫?」

 

 千手津美紀は弟の恵に問う。というのも、恵がすごく不安そうな顔をしているように見えたからだ。

 

「大丈夫だ」

 

 だから心配しなくて良い。そう答える恵。

 

「ワシがいるのだ。少なくともお前の不都合になることはない」

 

 恵が強がっていることに気づいている父扉間が、安心させるために声をかけた。

 

 津美紀と恵は禪院の血をひいている。津美紀は幼く、しかも女であるにもかかわらず大人相手でも勝てるほどの強さを持ち、恵は禪院一族の血継限界の中でも特に希少性の高い十種影法術の使い手。禪院一族が見逃すわけがなかった。二人が生まれてばかりの時は年に一度禪院の集落に来ても来なくてもいいよ程度だったのが、いつの間にか戦が終われば必ず来いになっていた。そして来るたびに津美紀と恵を禪院に引き入れようとするのだから二人にはたまったものではない。特に十種影法術を持つ恵だけでも引き入れようと必死なようで、一瞬警戒を解いてしまったときに攫われたこともある。

 

 だが、扉間──というより千手一族──は禪院一族にあまり強く言うことができない。なぜなら千手側が禪院側に娘を要求し嫁に迎い入れた。つまり、千手は禪院に貸しがあるのだ。しかも、娘を引き渡す条件として禪院が提示したのは子供を連れて定期的に集落に来ること。それを受け入れたのは千手側の為、行かないわけにもいかなかった。当時扉間は禪院一族と繋がりをもつこと自体大反対したが頭の硬い年寄りたちが勝手に色々進めてしまった。

 

 そして今、この状況。

 

 あのときもっと言っておけばよかったなと、後悔しているが、そうしていたら子供たちが生まれていなかったため、複雑な気持ちの扉間であった。 

 

「あ、ついたよ」

 

 その津美紀の言葉にふと顔を上げると、

 

「「「「お待ちしておりました」」」」

 

 頭を下げて並んでいる女中らしき人たち。初めは驚いたが、今はもう慣れたものだ。

 

「族長はいるか」

「はい、ご案内いたします」 

 

 そうして案内された家の前には、一人の女の子がいた。先日宴会で見た、女の子が。

 

「─へ、マキちゃん?」

「は、津美紀!?恵も千手扉間もいるじゃねぇか!?」

「なんで─」

 

 恵がマキに問おうとしたとき家の扉が開き、そこから禪院一族の族長直毘人とブチギレたイズナが出てきた。

 

「おいジジイ!!さっきの言葉もう一回言ってみろ!!僕が骨の髄まで焼き尽くして灰も残さないからなァ!!!」

「はぁ〜もう分かったからさっさと出ていってくれ。次の予定が──」

「この僕とマキがわざわざ来てやってるっていうのにすぐ後に予定なんかつくるなァァ!!!」

「おい直毘人、貴様こいつらのすぐ後に俺達が来るように時間を伝えたな?」

 

 なんかカオスな状況に、ずっと黙っていた扉間が声を上げた。

 

「…なッんでお前がいるんだよ扉間ァ!!」

「それはこのジジ、族長に聞けェ!」

「ハッハッハ、なんでもなにも、めんどくさいことは一度に済ませたほうが楽だからに決まっているだろう?」

 

 扉間とイズナが固まった。

 

((こいつ、今めんどくさいって言ったか?))

((…ふざけるなよこのジジイ!!来いって言うから嫌嫌来てんだよこっちは!!!))

 

 この数秒間、イズナと扉間の頭の中は完全に一致していた。子供たちはというと…

 

(あら〜)

(また始まった…)

(めんど、早く帰りたいんだけど)

 

 親の心境を察し、各々別のことを考えていた。

そんな状況に、またしても直毘人が爆弾を投下した。

「そうだな、たまには3人で話さんか」

「「却下だ!!」」

「強制だ。お前らはワシに貸しがあるだろう?」

 

 千手と同じ理由でうちは側にも禪院に貸しがある為、それを言われたら2人は何も反論できない。しぶしぶ2人は家に入ることになった。

 

 置いていかれた子供たち。困っていたとき、恵たちを案内してくれた女中が声をかけてくれた。

 

「よかったら、私の家に上がりますか?茶菓子などは特にないのですが…」

「あぁ、お願い」

「ちょっと、マキちゃん、その…」

「あぁ、大丈夫だよ」

 

 マキも噂で恵たちが禪院一族からどういう扱いを受けているか知っていた。女中にのこのこついていくのは二人にとっては危険なことなのだろうが…だからこそ、だ。

 

「この人、私の母親なんだよ」

「「えっ!?」」

 

 微笑んでいる女中をよく見ると……うん、たしかに似ている。

 

「禪院の中じゃ一番信頼できる」

「ふふ、そう言ってもらえて嬉しいですね」

「そういうことなら…」

「…お願いします」

 

◇◇

 

「どうぞ、あがってください」

「「「お邪魔します」」」

「お茶をお入れするので少々お待ち下さい」

 

 案内された家は他の家よりも随分と大きかった。なかなかの広さがあるというのに家の中は片付いており、隅々まで掃除されているようでホコリ一つ見当たらない。

 

「このまままっすぐ進めば客間だから」

「マキちゃん来たことあるんだ!」

「…まぁ、別居とはいえ家族の家だからな。前にも数回来たことがある」

「あっ、そっか…ごめんね、」

「別に気にしてねぇよ。こうやって何か機会があれば会えるし。むしろ、津美紀たちのほうが寂しくねえか?恵が生まれてすぐに亡くなったんだろ?」

「うーんどうだろう?お母さんのことあんまり覚えてないからなぁ。それにミトさんが私たちも一緒に面倒見てくれてるからあまり寂しいとかはないかも。恵は?」

 

 うおっ。女ってどうしてそんなに話が続くのだろうと呑気に考えていた恵は急に話を振られて驚いた。

 

「俺も特には」

「へぇ~そんなもんなんだな」

「あっ、ここ?」

「あ、そうそう。襖開けていいよ」

 

 話をしていたらいつの間にか客間についたみたいだ。

 

「し、失礼しまーす」

 

 よその家なので一応ゆっくり襖を開けるとそこには大きすぎるちゃぶ台があった。

 

「これはちゃぶ台って言うの?」

「ちゃぶ台はちゃぶ台だろ」

 

 そんな会話をしながら二人が座ったので、恵も適当な場所に座った。その時、机の上に置いてあるものに気がついた。

 

(何だ、この簪?)

 

 大人がつけるには小さすぎるし、デザイン的にも完全に子供用。元気でありながらも凛としているマキの雰囲気にも合わなそうなので、おそらくマキのものでもない。誰の物だろうと考えていると──

 

「──ねぇあんた、そこ私の場所だけど」

 

 後ろから声が聞こえ振り向いてみると、マキにそっくりな女の子がいた。そこでやっと恵は先日の宴会でマキが話していたことを思い出した。

 

(そういえば、マキさんには妹がいるって言ってたな)

「この簪、お前のか?」

「…まぁ、そうね。いらないけど。っていうか分かってんなら早くどきなさいよ」

(あー、うん、ノバラが言ってたとおりだな。ザ・禪院のタイプだ)

 

 と思いながらしぶしぶ庭側に移動する恵。

 

「おい、お前なんで客間に私物置いてんだよ」

「いらないから誰かもらってくれないかなって」

「にしても、自分の席って…ったく、お前は変わってねぇな」

「そういうあんたは前とは随分と変わってるわね。ゴリラに近づいたのがひしひしと伝わってくるわ」

「へいへい」

「仲いいんだね!」

「どこをどう見たらそうなるのよ!!」 

 

 また女子たちで話しだしたがためにぼっちになった恵は庭から当たる日が気持ちよかったのでぼーっとしながら日向ぼっこをしていた。

 

 扉間が今一緒にいないということを、誰も頭に入れていなかった。友達の親という少しは信頼できる人の家にいたためか、無意識のうちに警戒をゆるめてしまっていた。それが、いけなかった。

 

 服が後ろに引っ張られる感覚。それに気がついたときにはもう遅く、抵抗する前に抱えられた。影絵をつくれないようにするためか手もしっかり固定されていたため恵自身はもう何もできない。

 

「ッ津美紀!!」

 

 姉を危険にさらしてしまうかもしれない。姉も一緒に攫われてしまうかもしれない。普段ならよく回る頭で考えられることも気が動転しているため考えることもできずに、必死に姉の名前を呼んだ。

 

「ッ!恵!」

「おいまじかよ!」

 

 その声に気づいた津美紀とマキがすぐに追いかけてくれたが撒かれてしまったようで、姿が見えなくなってしまった。

 

 戦場慣れしている恵にとっては殺されそうになるよりも攫われることのほうが恐ろしい。生き地獄というものがあることを幼いながらにも知っていたからだ。死んだらクソほど悔しいが、それで終わり。だが攫われ、生かされたら何をされるか分からない。

 

(…怖い)

 

 体をもぞもぞと動かしたり足で蹴ったりできる限りの抵抗をしていたがびくともしない。それが効いてきたのかそれともただうざくなっただけなのかは分からないが、首に手刀を下ろされ恵は意識を失った。

 

◇◇

 

 直毘人に無理矢理あがらされた不仲の二人。特にイズナは先程話したため、扉間以上に不機嫌だった。そんな険悪な雰囲気が流れているなか、最初に声を上げたのはまたしても扉間だった。

 

「直毘人殿。どのような話が?」

 

 何か話がある。子供たちには聞かせたくない話が。イズナにも扉間にも関わる話が。

 

「おぬしら、火の国に忍びの里を創ろうとしているのだろう?」

「ッな!」

「…貴様、それをどこで知った?」

「どこでも何も、おぬしらが火の国の商人らに声をかけているのはちょっとした噂になっていたのだ。その中に密かに儂らが御用達にしていた商人もいてな、少し話を聞いた。ただ、一商人の話は信じるに足らんからお前らにカマをかけてみたんだが、本当だったようだな!ハッハッハ」

「ぁ゙ークソッ!扉間!頭がいいのがお前の取り柄じゃないのかよ!こんな簡単なのに引っかかりやがって!」

「なんだと貴様!お前が先に反応したからワシは認めるほかなかったのだぞ!」

「なんだお前ら、協定を結んでもまだ仲が悪いのか」

「当たり前だろ!!」

「……………で、用件は?」

 

 扉間も叫びたくなったが、またイズナとハモる予感がしたためグッと堪え、残されていた理性がさっさと話を終わらせて帰ろうとした。この流れだと、用件なんて一つしかない。

 

「儂らもその忍びの里とやらに入れてもらえんか?」

 

 やっぱり。

 

「…それって、僕達に何が利益があると思ってるの?」

 

 さすが忍。直毘人の話を聞いたイズナはすぐに冷静になった。

 

「もちろんだ。まず1つ。これでお前らの貸しをなしにする。また、定期的に集落に来る必要も無くそう。次に2つ。次世代に強い忍が産まれやすい。他族間との交流が増えればいくら悪名が広まっている禪院でも結ばれるうちはや千手もいるだろう。そうすれば恵や津美紀のように強い忍も多く産まれるだろうな」

「マキも十分強いだろうが!!」

「悪いが猿には興味ない」

「誰が猿だぁ!!!今度こそ骨の髄まで焼き尽くしてやるゥゥ!!!」

「イズナ!一旦落ち着かんか!!」

(先程キレていたのはこれが原因か…)

 

 扉間だって、イズナの気持ちは分かる。そりゃあ自分の子供を猿呼ばわりされたらキレるのも当然だろう。だが、今は未来のことに関わる重大な話の途中。落ち着かせるしかないのだ。

 

バンッ!

 

 そんなとき、扉が勢いよく開かれた。

 

「誰だッ!今大事な話の…」

 

 扉間が言葉を途中で止めたのは、扉を開けたのがマキだったから。

 

 マキは扉間の気迫に少したじろいでしまったが、追いついた津美紀によって少し落ち着いた気迫に安心しながらも今はそんなことを考えている場合じゃないと、マキの頭に警鐘がなる。

 

「どうした、津美紀!」

「恵が、攫われちゃったッ!!」

 

 その言葉を聞き、扉間は即座に感知に意識を割く。数秒もしないうちに恵のチャクラを見つけると、すぐにそっちにかけていった。

 

(クソッ!恵にマーキングをしておくべきだったッ!)

 

「津美紀!私達も追うぞ!」

「うんッ…!」

 

 涙目になっている津美紀にとって、マキのその言葉はとても頼もしいものだった。前に恵が攫われたときは無事を祈って待っているしかなかったが、今は力がある。そのことを実感できたのだ。

 

「おい、マキ!お前は別に…」

「あいつ、友達なんだよ!」

「ッ!」

 

 友達。千手と。自分が知らない間に千手が娘に取り入っているなど、許せなかった。

 

(……いや、違うんだろうな)

 

 頭に浮かぶのは、兄マダラと千手柱間。兄は自分の知らないところで柱間との絆を深めた。それは、十数年敵対していても決して消えることはなかった。なるべくして友となったのだ。イズナにしては信じられないことだが、それは事実。そして、娘であるマキもそうなのだろう。

 

(ぁ゙〜クソッ!)

 

 娘の為に動かない父親がどこにいるだろうか。いや、いるにはいるだろうが、自分はそんなクズではない。

 

 イズナは直毘人の首元を掴み、押し倒した。

 

「おい、お前場合によっては……」

「悪いが、今回の件に関して儂は何も知らん。おそらく、一族の数人の独断だろう」

 

 数秒の葛藤を返してほしかった。

 

◇◇

 

「恵!!」

「父さんッ!」

 

 扉間が駆けつけるとき、恵は筋骨隆々の男に小脇に抱えられていた。地面には、のびている禪院一族。扉間がクナイを構えたとき、男が話しかけた。

 

「なぁ、お前、このガキの父親か?」

「なっ…そうだが?」

 

 扉間はたいそう驚いた。禪院一族の中で…いや、忍界の中で自分と恵が親子だということを知らない者はいないほど有名なことだったからだ。

 

「そうか…ほらよ」

「ッ!?」

 

 男は扉間に恵を投げ渡してきた。慌てて恵を受け止めた扉間は、宿儺にも劣らない形相で男を睨む。そのとき、ふと気がついた。

 

(此奴、恵に…アイツに似ている)

 

 同じ一族なのだから、似ているのは当然。だが、それだけでは考えられないほどに似ていた。

 

「ん?あぁ、気づいたか。俺、弟なんだわ」

 

 その言葉だけで扉間は全てを理解した──と思われた。扉間は禪院一族のクズさを舐めていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




呪術の原作、真希の母親と真希がちゃんと話できてたらもうちょっと関係良かったんだろうなって思った。
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