悠仁くんが千手の族長になるまで   作:ちゅーにびょー

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間違えて一番最初に投稿しちゃってクソ焦った。


禪院一族ってやっぱクソ②

 恵が意識を取り戻したとき既に身体は縛られていた。手も一ミリたりとも動かせない。周りには数人の男。会話をしているようだった。  

 

「こいつを族長様に差し出せば、俺達一家の地位はバク上がりだ!」

「あぁ、よくやった!!」

「いや、逆にこいつを飼い殺しにして、娘との間に強い子供を産んでもらうのもいいかもな」

「たしかにな」

「なるほど、それならば俺達は地位を高いまま保つことができる」

「ハハッ、決定だ」  

 

 気持ち悪い内容だ。俺はこのままこいつらの思い通りになるのか?いや、きっと父さんが…

 

「あ、起きてんじゃん」

 

 ちょうどその時、恵が起きたことに気がついた男が手を伸ばしてきた。それが気持ち悪いを通り越して、気色悪かった。それと同時に幼い恵にとってはとても怖く、思わず目を瞑ってしまった。

 

(父さんッ…!)

 

ドタッバタッ

 

 聞こえる音から、先程の男たちが倒れているのだと察した。

 

「父さ……ッ!?」

 

 目を開けると、目の前にいたのは父扉間ではなく、筋骨隆々のでかい男。

 

「あ〜わりぃな、父親じゃなくて」

 

 しかも、自分にそっくりな顔。怖くないわけがなかった。

 

◇◇

 

「そうか、貴様が…」

 

 両者共不本意ながらも従うしかなかった契約結婚。その相手…己の妻がいつだったか、扉間にこぼした話があった。

 

『心配なのです』

『?少なくとも、ワシの妻である間は何も起きんだろうに』

『違います。その、私ことではなくて。…禪院に置いてきてしまった、弟が心配なのです』

『弟、か』

『えぇ、あの子禪院の中でも特に異端でして。虐待じみたものを受けていたので…』

『それは…確かに心配だな。今度ワシが禪院の集落へ行ったとき、様子を見てやろう』

『いえ、大丈夫です。あなたが見ても意味がありませんでしょうから』

『?』 

 

 契約結婚だったが意外にもちゃんと愛し合っていた。でなければ子供を2人産まなかっただろう。

 

 だからこそ覚えていた、あの会話。そうか、この男がアイツの弟なのか。だとすればきっと、甥である恵のことを助けたのだろう。

 

「恵を救ってくれたこと、感謝する」

「あ?あぁ、それは…」

「恵ィ!」

「無事か!?」

 

 男の言葉をちょうどよく遮ったのは扉間の後を追って遅れてやってきた津美紀とマキ。

 

「おい、お前ェ!」

「おぉ、甚爾か!」

 

 そのすぐ後にやってきたイズナと直毘人。

 

「そうか、貴様、甚爾というのか」

「姉貴に聞いてなかったのか」

 

 その言葉、意外と扉間の心に刺さった。妻のことをちゃんと愛していたので。

 

「金でしか動かんお前が何故…」

「て、てめぇ、猿のくせに!!」

 

 直毘人の言葉をちょうどよく遮ったのは、先ほどまでのびていた男の一人。族長の言葉を遮るなど禪院の中では万死に値するのだが、生憎男には甚爾しか見えていないようだった。

 

「殺さねぇようにって加減しすぎたか」

 

 とか言いながら甚爾はすぐに男に腹パンをキメる。

 

(こやつ、強い!!)

 

 扉間は今の一連の流れだけで甚爾の強さを理解した。たしかに男達は甚爾の足元でのびていたが、その中でも起き上がった男は一番遠いところにいた為、それなりに距離があった。だが、扉間が瞬きした瞬間にはもう甚爾は男を殴り終え、元の位置に戻ってきていた。わずかに聞こえた腹パンの音も、それだけで重いと分かる音だった。

 

「これでしばらくは起きねぇだろうぜ。んで…」

「お前、猿って呼ばれてたよな?」

 

 またも甚爾の言葉が遮られた。その原因はイズナ。

「ぁ゙?あぁ〜そうだが、それが?」

「お前らのいう猿って?」

 

 娘だけでなく、この男も禪院から猿と呼ばれている。ということは、禪院一族には猿と呼ぶ基準や理由があるのだろう。そう考えたイズナはそれを聞かずにはいられなかった。娘が猿呼ばわりされているのが本当に許せないのだ。

 

「あぁ、猿ってのは俺みたいな術が使えない奴のことだ」

「ッ!」

 

 その言葉に電撃が奔ったのはイズナではなくマキ。

 

「もういいだろ。じゃ俺は…」

「待ってくれ!」 

 

 マキは咄嗟に甚爾を呼び止めた。

 

「なんでアンタは術が使えねぇんだ?」

「はぁ?んなの決まってんだろ。天与呪縛だ」

「天与呪縛…?」

「ぁ゙〜これ漏らしちゃだめなやつだったか?まぁいいや」 

「おい、甚爾!…まぁ、いつかはばれることだ。いいだろう」

 

 そうして語られる、天与呪縛の事実。

 

「禪院一族には天与呪縛ってモンをもって産まれるやつがいてな。詳しくいうと、何かを犠牲にする代わりに強大な力をもって産まれるやつがいるってこった」

「…具体的には?」

 

 おそるおそる聞いたのは、イズナ。マキと、目の前の男。ほぼほぼ確信していたが、一応聞いてみた。

 

「例えば、術が使えない代わりに高い身体能力をもって産まれる…とかだな」

 

 やはりそうだ。マキは決して才能がないわけではなかったのだ。そもそも、使えるはずがなかった。それを聞いて安堵したマキとイズナ。

 

「そろそろ…」

「ちょっと待て、それを隠しているのは大問題ではないか!」 

「あぁ、そんなことは分かっておる」

 

 扉間に呼び止められたのかと思ったが、違うみたいだ。今度こそ帰ろう。そう決意した甚爾だったが…

 

「だが、それが知られてしまえば嫁にもらってくれる人数が少なくなるだろう。なぁ、甚爾?」

 

 なんで俺に話を振るんだよクソジジィ!!!

 

「あーそうだな」  

 

 そうして適当に返事をし、すぐにこの場を離れようとしたが、それに気づいたのかそれとも偶然か、甚爾を呼び止める存在がいた。

 

「お兄さん、恵にそっくりだね!」

 

 そう、津美紀である。

 

「まぁ俺はお前ら叔父…あー、なんだ、わかりやすくいえば、お前らの母親の弟だからな」

 

 話の内容が最初に戻ったではないか。

 

(ぁ゙〜クソッ、ついてねぇ〜)

「叔父さん、恵を助けてくれて、ありがとう!」

「……」

 

 『甚爾、私を助けてくれて、ありがとう!』

 

 津美紀と、姉の姿が重なった。

 

 身体が弱かった姉は忍として有利な性質をもっていたわけではなかったので、禪院一族から役立たずの判を押されていた。弟が猿だったもんだから余計に風当たりは強かったのだろうと思う。それでも、大人のサンドバッグになって帰ってきた俺を毎回手当てしてくれた。そのために、医療忍術だって盗み見て覚えようとしてくれた。姉がいじめられているときに助けたらすぐにああやってお礼を言ってくれた。

 

 姉だけが、自分を認めてくれていた。

 

『私、千手に嫁に入ることになったんだ』

 

 それを聞いたとき、どれだけ絶望したことか。それを察した姉は慌てて言った。

 

『実は一度お見合いをしたのだけれど、すごくいい人そうだったから、大丈夫だよ!』

 

 顔を赤く染めながら言うもんだから、そういうのに鈍感な自分でも分かってしまった。

 

 姉は、恋をしたのだ。

 

 姉には、幸せになってほしいのだ。ならば、自分がわがままをいうわけにはいけない。

 

 自尊心は捨てなければ。

 

 そう思って、姉を喜んだふりをして送り出したのに。3年が経った頃に、姉が死んだという知らせが入った。

 

 世界が、色褪せた。

 

 2人目を産んだ後に容態が急変したそうだ。身体の弱い姉が2人も子供を産んだらそうなるに決まっているだろうと思ったが、2人目を産んだということは、相手も姉を愛していたのだろう。そう考えに行き着くと、姉は恋し、愛した人に看取られて死んだのだから、幸せだっただろう。丈夫な自分より姉が先に死ぬのは分かっていたことだ。どうして自分に看取らせてくれなかったのだ?連絡くらいよこしてくれてもよかったじゃないか。

 

 いや、自尊心はもう捨てただろう。

 

 これでいいのだ。これで良かったのだ。

 

「ハハッ、」

 

 そんな昔のことを思い出していると思わず自嘲するような笑みがこぼれた。

 

「じゃあな、ガキンチョ……」

「甚爾、今回誰に金を積まれた?」 

 

 今、めっちゃ帰る流れやったやろがい。もう何も言わずに帰ろう。そう決めた甚爾は帰れない雰囲気になっていることに気がついた。

 

「…金、だと?」

 

  扉間の眉間のシワが多く深くなっていく。

 

「あぁ、それ私です」

 

 やってきたのはマキの母親。

 

 なんかもうカオスな状況になってきた。

 

「何故お前が?」

「千手とうちはが協定を結んだと聞いたとき、マキのことだから絶対に千手の子と仲良くなると思ったのです。しかし、そこの恵君や津美紀ちゃんは禪院に狙われている身。2人に何かあったらマキが悲しむと思いましてね。そこで、大金を積めばいくらでも動くと有名な甚爾さんに2人に何かあればすぐに助けるように依頼したのですよ。禪院最強の甚爾さんなら、実力的にも全く問題ないので」

 

 産まれてからうちはに嫁いでいる間以外はずっと禪院一族の集落で生きてきたにも関わらず、禪院に染まっていない考え。千手やうちはの確執などを全く考えずにただ娘のことだけを想う強い愛情。一族がずっと猿呼ばわりしている術が使えない甚爾を禪院最強の実力をもっていると理解している賢い頭と鋭い観察眼。

 

(こいつ、おっかないな)  

 

 敵に回さないと決めた直毘人だった。

  

「まぁ、そういうこった。何勘違いしてるか知らねぇが、少なくとも情なんかで俺は動いてねぇぞ」

「なッ!」

「やっぱ賭けには金が必要だらな。金だ、金」

「……」

 

 妻が心配していたのは弟の身体ではなく精神だった。扉間はそのことをようやく理解した。

 

(此奴もちゃんとクズだったか…)

 

「扉間、禪院のクズさを舐めすぎだったみたいだね」

「あぁ…」

「ったくひでぇ評価だな」

 

 そう、最初は金目的だった。だが、あまりにも恵が自分に似ていて。後からやってきた津美紀は姉に似ていて。2人を自分たち姉弟に重ねてしまったのだ。まぁ、そんなことはどうでもいい。

 

「じゃ、今度こそ帰らせてもらうぞ」

 

 とか言いつつ、2人を見つめる。

 

 お互い手を固く握りしめている。あれだけしっかり握っていたら、離れ離れになることなどないのだろう。 

 

 そこで、ふとうちはの双子を思い出した。

 

 うちはの双子みたいに、この2人も双子として産まれてきていたならどちらかが禪院に来ていただろう。そうなればもうその時点で離れ離れだった。

 

「ハッ」 

「?」

 

 なんで笑ったか理解できていなさそうな、弟の方に言ってやることにした。

 

「禪院じゃなくて…よかったな」

 

 その言葉を理解できたのは、おそらくマキの母親だけだろう。

 

 

 

 

 




姉=原作奥さんみたいに思ってくれれば分かりやすいかと。
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