World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第8話「護身用アイテムの入手」

 居合の道場通いの稽古。

 作法の基本を忠実に、気を引き締めて安全な操刀をする。

 慣れた頃が一番危なく慢心は禁物だ。

 微塵の油断もせず、緊張感を保ち、精神が鍛えられていく。

 

「世界ちゃんお疲れ様です。以前より姿勢が良く、振りも自然な流れができて綺麗でした」

「ことちゃんお疲れ。ことちゃんは相変わらず、凄まじい踏み込みと抜刀の振り抜きだね。以前より更に迫力が増してるじゃん。カッコイイお姉ちゃんに、こころちゃんが大喜びするよきっと」

「そんなことはありません。心は私よりも世界ちゃんを気に入っていますから」

「一応言っておくけど、私がこころちゃんを取ったりなんてしないから安心してね。なんか七海が変なこと言ってたみたいだけど」

「わかっています。七海さんの楽しい冗談ですね」

「楽しいかどうかは人それぞれじゃない? 刹那は機嫌悪かったし。ま、一緒に出掛けて刹那の中にある悪魔なんて吹っ飛ばすけどね」

 

 ここで世界は改まってお礼を述べる。

 いい病院を紹介してくれたおかげで健康管理がしやすくなったから。

 処方された薬の効果もあり日常生活に支障がない。

 

「貧血になりやすいから。眩暈とか眠気とか、気を付けないといけないけどね」

「体の時期は安定していますか?」

「うん。大体のタイミングが掴めてきたから備えやすくなった」

「お力になれて良かったです。また何かあったら相談に乗ります」

「ありがとう。それはそうと、ことちゃんは人目を引くほど美人になって、それで男子に注目されて怖く感じてない?」

「そんな美人だなんて……でも世界ちゃんにはお見通しなんですね」

「長年の幼馴染を甘くみないように。男が怖いって気配がバレバレだよ」

 

 居合をやっていることで余計にわかりやすい。

 恐い相手には明らかに間合いが遠い。

 攻撃を受けないための距離感で隙がない。

 

「近くならスタンガン、遠くなら催涙スプレーで護身でもするの?」

「実はお父さんが心配をして、実際に持たされています」

 

 すぐに取り出すため、鞄の中またはポケットに忍ばせている。

 可愛いアクセサリーのようなデザインで大げさな外観ではない。

 他にも防犯ブザーや目くらましライト等もあって豊富だ。

 

「世界ちゃんもどうですか? 言ってくだされば、こちらで用意します」

「うーん、あんまり数が多いとね。どれ使うかで迷っちゃう」

「確かにそうですね」

「普段使っているもので身を守れたらいいよね。ペンとか」

「タクティカルペンですね。それならこちらです」

 

 胸ポケットにも差し込める耐久性の高いシンプルなペン。

 普段は筆記具として使えるが、ペン先で刺せば相手を怯ませる威力を持つ。

 さらにフラッシュライトも備わり遠距離の目くらましにも有効だ。

 オーダーメイドの特注品である。

 

「私がもらっていいの?」

「はい。少しでも世界ちゃんの安全に役に立ってくれたら幸いです」

「ありがとうことちゃん。大切にするね」

 

 用心をするに越したことはない。

 世界の自衛はこれでいいが、刹那の自衛に不安がある。

 一日中ずっといる訳ではないので、その時に狙われたら助けられない。

 それを心配して刹那に会い、護身に関して意見を述べる。

 

「刹那が独学で護身術を会得――ってよく考えるとそれって異常だよね? 小学の時は特に気にしなかったけどさ」

「そう? でも世界を守るために覚えた」

「まあそれはいいよ。でもね刹那、居合をやっている立場から言わせてもらうけど、リーチ差のハンデはとてつもなく大きいんだよ。武器を持った相手に素手では危険すぎるからね」

「うん」

「だから刹那もことちゃんに相談をして、護身用のアイテム貰っておきなよ」

「わかった」

 

 後日、世界に言われるまま言葉から受け取る。

 刹那が選んだのは、スタンガンと催涙スプレーだ。

 近距離用と遠距離用の両方を手にして万全とする。

 

「これで世界を守る」

「そこは自分の身を守ってよ」

 

 言葉が微笑みを浮かべて二人を見る。

 とても仲が良く互いを大切にしている。

 

 まるで姉妹のようだ。

 そのキーワードを言葉が口にした途端。

 

 世界と刹那の表情が固まった。

 

「世界ちゃん、せっちゃん? どうかしましたか?」

 

 事情を知らない言葉に何と言えばいいのか?

 

 二人は目を合わせる。

 

 信頼ができる言葉になら話してもいいのではないか?

 

 先にこくんと頷いたのは世界。

 それならばと刹那の口から切り出す。

 

「ことぴー、私たちの秘密、特別に教えてあげる」

「え?」

「ただし誰にも言わないって約束して」

「あ、はい。誰にも言いません」

 

 淡々とした口調で刹那が説明を始める。

 世界とは腹違いの姉妹で半分だけ血が繋がっている。

 父の浮気で母子家庭になっていることも伝えた。

 そんな重い家庭の事情に言葉の顔色が変わる。

 

「ご、ごめんなさい。そんな事情とは知らず、軽はずみに姉妹なんて言ってしまって」

「ううん、ことぴーだから話したの。世界もそれでいいって」

「私と刹那で話し合い、これからも親友でいるつもり。秘密にする理由は、周りに知られると浮気の子どもとして嫌な思いをするからだよ」

「わかりました。決して誰にも言いません」

 

 辛い事を思い出させてしまって申し訳ない。

 同時に信頼を寄せてくれていることが嬉しい。

 それを裏切ることを言葉は断じてしない。

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