World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第2話「良くも悪くも可憐らしく」

 入学式が終わって帰る時間。

 世界は可憐と会う約束をしている。

 ここで刹那が一緒について来てはダメかと言ってきた。

 

「珍しいね。私の先約に刹那が一緒に来たいなんて」

「ダメ?」

「ちょっと可憐に確認とってみるから待ってて」

「うん」

 

 可憐に電話をして了解を得た。

 刹那と一緒に待ち合わせの東原己駅で可憐と合流。

 海水浴場の砂浜まで歩き、そこで海を眺めながらの報告だ。

 

「伊藤は3組で乙女は4組。4組になったことちゃんを乙女が守り、その見返りとして同じ3組になった私が伊藤の情報を乙女に流す。これで交渉は成立ってね」

「マジで助かります世界さん。改めてお姉をよろしくお願いします」

「ドーンとこの世界さんに任せなさい」

 

 丁寧に頭を下げる可憐に堂々と胸を張る世界。

 その二人を眺める刹那の表情は相変わらずクールだ。

 やはりそうかと確信を得たようである。

 

「世界。今回の件、その子に頼まれたの?」

「まあね。可憐は学校が別々になってどうしようって困ってたの。姉思いの優しい妹の悩み、助けてやりたくなるのが人情ってものでしょ?」

「ふーん。そうやって同情を誘い、まんまと世界を利用したのか」

「いやいや、そりゃあんまりです刹那さん!! 私はそんな腹黒い女じゃありません!!」

「そうだよね。可憐が恋敵を不幸のどん底に落として、陰険なイジメをする人じゃない。逆に仲良くなって仲人したり、支援したりで立派なことをしてる。これはもう師匠と呼びたくなるぐらい尊敬しちゃうって」

「だから師匠って呼ばないでください!! さすがに褒め過ぎです!!」

 

 可憐の顔が真っ赤に染まって照れる。

 それに対して刹那は眉を潜めて不機嫌だ。

 付き合いの長い世界がそれを見落とすはずもない。

 

「刹那、可憐はあらゆる方法を使ってお手上げ状態なんだよ。先日の電話で、可憐が伊藤に告白をしたみたいだけど、冗談だと思われてしまったんだって。それって可哀想だと思わない?」

「伝え方が悪い。どうせ真面目に告白してない」

「……可憐、そこん所はどうなの?」

 

 刹那の勘が当たっているのだろう。

 世界の問いかけに可憐の目が泳いだ。

 

「あー、ちょっと照れちゃって、冗談っぽい言い方だったかもしれません」

「ダメでしょそれ」

「で、でも私はセンパイの腕に抱きついたりして精一杯のアプローチしたんですよ!! ほら男の子って、女の子に触れられたら嬉しいものですよね!?」

「妹のいたるちゃんと同じ感覚に思われてるんじゃない? なんか逆効果に思えるのは私の気のせい?」

「気のせいじゃない。きっと女の子として見られてない」

「ぐあっ……ひ、ひどいです刹那さん。かなり気にしてるんですよ私」

 

 伊藤を振り向かせるのに些か問題があったようだ。

 でも時間は巻き戻せない。

 次に向かって気持ちを切り替えていくしかない。

 

「世界、ひとつ確認したい」

「なに?」

「もし伊藤に好きな人ができたら邪魔をするの?」

「それは時と場合によるよ。例えばさ、伊藤の好きな人が刹那だった場合」

「ええぇ!? センパイの好きな人って刹那さんですか!?」

「例えばの話よ!! で、刹那が嫌がってるのに伊藤が無理やり迫って困らせるようなら、私は全力で刹那を守るよ。でもそうじゃないのなら、見守ったり応援したりはするけど、邪魔は絶対にしない」

「うん。それがわかってるならいい。でもその子が伊藤の恋路を邪魔したらどうするの?」

「流石にそんな最低なことなんてしないでしょ。だよね可憐?」

「それはまあ……えっと……」

 

 世界の目は騙せても刹那の目は騙せない。

 これは相手が悪い。

 可憐の動揺を前に刹那はさらに問い詰める。

 

「中学時代、そうやって伊藤の恋愛を邪魔したんじゃないの?」

「それはないです。センパイに好きな人なんていませんよ。そうなりそうな女の子は一切近付けていないので」

「出会いを妨害してるじゃん。世界、こんなのマネしたらダメだよ」

 

 刹那の意見には一理ある。

 可憐の行動において全てが良いという訳ではない。

 だからといって全否定をするつもりもない。

 ひとまず原点に立ち戻って確かめてみる。

 

「刹那、私が乙女の幸せを願って協力をする。これは間違ってると思う?」

「世界がそうしたいのならいい。でも協力するなら私に相談して」

「もしかして、それを伝えたくてついて来たの?」

「そう思っていい。本当はその子に文句を言いたかったけどもういい。過ぎた事だからとやかく言わない」

「あのー刹那さん、その子って呼び方が地味に傷つくんですけど?」

「世界、用が済んだなら帰ろう」

「う、うん。じゃあ可憐、また何かあったら連絡してね」

 

 電車の乗り換えをして帰り道を歩く。

 幼い頃から刹那のことはよく知っている。

 だから可憐を名前で呼ばない心境も読めた。

 

「私と可憐が仲良くしているのが気に入らない?」

「仲良くするのは悪い事じゃない。でも世界を都合よく利用する、あの子のやり方は気に入らない」

「可憐だって良い所はあるよ」

「逆も然り」

「うんまあ、刹那に言われて気付けたよ。ありがとうね」

 

 元を正すなら、伊藤に想いを告白すればいいだけの事。

 そうすれば、中学時代に出会いの妨害という可憐の苦労もなかった。

 それが出来るなら最初からそうしている。

 乙女は相当な怖がりのようだ。

 

「刹那の言う通り、過去のあれこれを言っても時間は戻らない。今どうするかで集中あるのみだよ」

「うん」

「乙女の恋が成功したら、皆でお祝いして楽しもうね」

「世界、それは今じゃなくて未来の話」

「もう細かいな刹那は。ま、今どうするかは決まってて、乙女の恋愛をサポートすることだよ」

 

 勝利のVサインを刹那の前に突き出す。

 絶対に成功させようという世界の意思表示。

 刹那が仕方ないと思いながらもピースで返した。

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