World Days(新版) 作:完結の陽炎
世界は生まれつき体が弱い。
精神的なストレス耐性も低い。
そのため急激な環境の変化で体調を崩しやすい。
新入生として早く慣れていきたい。
そんな焦りがあったのだろう。
ちょっと眠いだけ。
ちょっとダルイだけ。
ちょっと食欲がないだけ。
我慢できるからと自己判断をして学校へ行く。
刹那が心配をしても世界は大丈夫の一点張り。
言葉の家まで迎えに行って一緒に登校をしよう。
そんな世界の思いつきに刹那がついていく。
一軒家にあるインターフォンを鳴らす。
しばらくして言葉が出て来た瞬間。
「世界ちゃん、失礼します」
世界のおでこに手を当てる。
居合の抜刀のごとく迅速な動き。
何も反応ができない。
言葉の手が心地よく目を細めるしかなかった。
「少し熱を感じます。世界ちゃん、無理をしていますね」
「ことぴー、やっぱり世界の具合悪い?」
一目で見抜く言葉の洞察力。
それによって刹那は確信を得る。
世界が何と言っても休ませたほうがいい。
そんな緊急事態に家の中にいる心が慌てふためく。
「あわわ!! 世界さん病気なの!?」
「心、世界ちゃんを私の部屋に連れていくから手伝って」
「うん!!」
「ことぴー、私も手伝う」
「お願いします」
両親は早朝に仕事へ出たので今は不在。
ふと世界が眩暈を起こして倒れそうになる。
すぐに言葉が抱きかかえて寝室のベッドへ寝かせた。
心が看病を名乗り出る。
だが言葉は認めない。
ちゃんと学校へ行くように指示を出す。
「お姉ちゃんズルい!! こころも世界さんが心配なのに!!」
「心ちゃん、私たちには別の役目がある」
「刹那さん、役目ってなに?」
それは学校の帰りの買い出し。
雑炊の食材、水分補給のドリンク、プリンなどのデザート。
そういった支援を一緒にやろうということで心を説得した。
刹那の場合、授業のノートをとってのサポートも含まれる。
「ことぴー、世界をお願い」
「お任せください。学校には私から連絡します」
刹那の本心では世界の傍で看病をしたいのだろう。
それをしないのは言葉の部屋を使っているため、部屋の主に任せるのが道理だから。
無論、誰でもいい訳ではない。
言葉を信頼しているから世界のことを任せる。
「わかった。行こう心ちゃん」
「うん。終わったら待ち合わせの場所に行くね」
「よろしく」
世界の看病で言葉も学校を休む。
病人である世界を一人で放っておく訳もない。
それから数時間が経過。
目が覚めた世界の調子はまだ悪い。
特に痛い所はないが全身のダルさが酷い。
発熱も続いて、世界のおでこに冷却シートが貼られている。
「世界ちゃん……」
辛そうに吐息を漏らしながら眠る世界。
言葉が手を握ると無意識に弱々しく握り返す。
他人事とは思わない。
無理をすれば誰しも体調を壊すリスクを抱えている。
学園の中で刹那が心配していることだろう。
それを見越して言葉はメールで経過報告をする。
そのたびに刹那から感謝の返信が送られて来た。
午後の時間。
どうにかして世界の熱が引いてきた。
まだボーとしてしまって体調は芳しくない。
それでも朝よりはマシになり話すことができた。
「ごめん、ことちゃんに迷惑かけちゃった」
「気にしないでください。困った時はお互い様です」
「刹那、怒ってるよね?」
「そうですね。我慢をして隠したことに、せっちゃんは怒っているかもしれません」
あるいは自己反省をしているかもしれない。
もっと厳しく、強引でも世界を止めておけばよかったという後悔。
事実、次から鬼になる決意を刹那は密かに固めていた。
「ことちゃん」
「はい?」
「私、張り切り過ぎたかな?」
「そうですね。体が弱い体質を改善しようと、世界ちゃんが頑張っていることは知っています」
「うん」
「ですが、無茶をしてはいけません。今みたいに悪化してしまいます」
「……はい」
言葉に諭されて猛省をする世界。
そして大切なのはここからだ。
同じことを繰り返さないためにはどうすればいいのか?
休むことが必要であり頑張り過ぎないことが基本。
言葉が経験者としてアドバイスをしてくれる。
虚弱体質でも中学までは多数の習い事をこなしてきた。
無茶をすれば今の世界みたいに倒れる可能性があったのに。
いかに体力の消耗を抑えて活動をするかが鍵である。
「そっか。どれだけメンタルで強く保っても、体がついていかなかったらご覧の有様だね」
「はい。体が辛いと感じている時こそ、休んで回復することが求められます」
辛いと感じる前に予防ができれば最良となる。
だが多くを求めない。
一歩間違えると、ただの怠け者になってしまうから。
特に世界の場合、極端に進む傾向があるので要注意となる。
やがて刹那と心が戻ってきた。
その日の部活が自主練の七海と乙女も見舞いに来た。
バイトの日ではない光も一緒である。
「世界、着替え持ってきた。おばさんに伝えて了解を得たから」
「ありがとう刹那」
「世界さん、いっぱい食べ物かってきたから元気出してね」
「こころちゃん、ちゃんと食べて元気出すから」
「まったく、世界は無茶しちゃって。あんまり心配かけさないでよ」
「ごめんね七海。気合いだけではダメだって思い知った」
「まあ、元気出しなよ。見た感じ、大丈夫そうだと思うけどさ」
「うん。乙女の言う通り大丈夫。ことちゃんがいれば安心だよ」
「うちの店のケーキ持ってきたから。これでも食べて元気出しなよ」
「ありがとう。光の店のケーキって、すっごく美味しいから好きなんだ」
それぞれ受け答えができるぐらいには元気だ。
無理をさせないように程々で切り上げる。
仕事から帰ってきた言葉の両親。
娘二人から事情を聞いて了承をする。
世界にゆっくり養生するようにと親切だ。
そして完治をするまで世話を焼いてくれた。
後日には学校へ復帰をする世界。
改まって見舞いに来てくれた事にお礼を言う。
言葉の両親にもお泊りの際に感謝を伝えた。
そして健康面に気を配り、次へと繋げていく。