World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第3話「親からの教育と仲裁」

 多くの習い事をこなすために多忙な言葉。

 父の門限が厳しく、友達と遊ぶ時間がない。

 友達との交流を望んでも、言葉の口から言えるはずがない。

 それは親に向けての反抗であり我儘になるからだ。

 親の言われるがまま従ういい子ちゃんを演じてしまう。

 その根底を木っ端微塵に破壊をしてくれたのが……。

 

「ことちゃんのおうちへゴー!!」

「ゴー」

 

 刹那を連れて世界は大胆な行動に出る。

 言葉の家へ突撃をしてのお泊り作戦だ。

 夜であれば言葉と遊べるという単純明快さ。

 

 西園寺家・清浦家・桂家。

 三者の母は公私ともに付き合いがある。

 友達と過ごす時間の大切さをよく知っていた。

 そのため世界と刹那のお泊りを承諾。

 妻に説得をされて言葉の父も認めた。

 

 しばらくすると引っ込み思案だった言葉に変化が生じる。

 おっとりとして精神的な余裕が生まれた。

 優しい笑顔が増えて、言いたいことを言えるようになった。

 世界と刹那の在り方が、言葉の情操教育としてプラスになっていく。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 ある日の夜。

 母に思いつきの相談をする。

 刹那と言葉に贈り物をして喜ばせたい。

 世界らしいシンプルな考え。

 見栄っ張りの母はプレゼントの支援をしてくれた。

 

 本を読むのが好きな言葉には四つ葉クローバーのしおり。

 低身長の刹那には大きな赤いリボン。

 

 二人は大切にすると言って受け取ってくれた。

 喜んでくれるだけで世界は自己満足を得る。

 良い事をして気持ちがいいという達成感があった。

 

 その後、二人からのお返しをもらう。

 刹那からは筆記具のペン、言葉からはコンパクトな手帳。

 記者の真似事を好む世界にピッタリのアイテムであった。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 世界と刹那に父がいない。

 そのため言葉の父に興味を持つ。

 母との違いを知りたがるのは自然な流れであった。

 

 世界は言葉の父に夢を語る。

 名前に相応しい大きな人間になりたい。

 相手が喜べば自分も嬉しい。

 それを拡大して世界平和を目指したい。

 

 刹那も夢を語る。

 壮大な夢を持つ世界を助けて守りたい。

 そのためならどんな努力も惜しまない。

 

 二人の父親代わりにアドバイスをしてくれる。

 それはお互い様という助け合い精神。

 

 実際に使えるのか?

 

 試してみないと何とも言えない。

 二人は学校生活で実践をしてみた。

 

 課題が解けずに困っている世界。

 刹那に教えられて助けてもらう。

 

 愛想のない刹那がクラスメイトに話しかけられて困っている。

 世界が間に入って上手く会話を繋げてみせた。

 

 あくまで一例であるが確かに適応されている。

 ここで世界からの疑問点が浮かび上がった。

 

 ずっと助けてもらうほうが楽ではないか?

 

 これに対しての回答は簡単。

 自分だけが助けると不公平で嫌な感情になる。

 刹那に訊いても別に気にしていないとの事。

 

 自分だけが変なのか?

 

 そう思って刹那の母に尋ねてみる。

 丁度お休みの日でタイミングが良かった。

 

 その感情自体、誰でも多かれ少なかれあるもの。

 相手の気持ちになって考えることが大切。

 そんな大人のアドバイスを参考とする。

 

 以後、世界はよくよく刹那に確認をする。

 逆に刹那も世界に質問をするようになった。

 

 何をしたら喜び、何をされたら悲しいのか?

 

 嫌な事はしない。嬉しい事をする。

 有り体に言えばそれだけのこと。

 シンプルゆえにお互いをよりわかり合っていく。

 

 体が弱いハンデを背負っている世界。

 世界の母から学んだことがある。

 

 いかに楽をすればいいかという手抜き精神。

 できる人に任せて楽をする大人の考え方。

 チャンスを逃さず一気に突き進む行動力。

 目的のためにあらゆる手段を使う。

 

 他にも色々とあるが、物覚えの悪い世界は上手く消化ができない。

 刹那を連れて言葉の父へ話を求めた。

 

 世界の母のやり方でいい。

 そう思う一方で別の考えもある。

 

 こうすればいいのに?

 逆をすればいいのに?

 

 刹那も似たような感想を持っている。

 何もかも鵜呑みにする訳ではない。

 自我を持って己の価値観で物事を考える。

 

 父の傍にいる言葉は、そこまでの考えに至っていなかった。

 しかし言われてみると一理ある。

 二人の言う事にも頷けるところはあった。

 言葉の父は優しく教えてくれる。

 世界と刹那を娘同然に可愛がってくれた。

 

「親も一人の人間で完璧ではないのだよ。私だってそうさ。だから世界ちゃんも刹那ちゃんも、そして言葉もよく聞いてほしい。様々な人から学び、自分がこうしたいと思った事を大切にするといい。もちろん悪い事は真似しちゃダメだよ。その場合は逆をするようにしなさい」

 

 言葉がお父さんっ子となる理由はこれである。

 人生を過ごす上で重要なことを教えてくれるから。

 仕事帰りで疲れているのに自分たちを見てくれるから。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 刹那のせっちゃんは特別な愛称。

 普段から人の物を欲しがる世界が初めて譲ってくれた。

 それは刹那にとって非常に大きな意味を持つ。

 せっちゃんと呼ばれたい相手が他にもいる場合。

 刹那は世界に許可を求めた。

 

 譲ったのだから刹那の好きにすればいいのに?

 

 その考えと良しとしない。

 世界に譲ってもらったことへのケジメである。

 世界が認めた相手以外はせっちゃんと呼ばせない。

 そういう決意ならば仕方がない。

 世界は呼んでもいい他の相手を探してみた。

 

 真っ先に思いつくのは言葉の両親だ。

 美味しいケーキやジュースをくれる言葉の母。

 大切なことを教えてくれる物知りな言葉の父。

 だが父は恥ずかしがり屋なため刹那ちゃんである。

 何気に名前のちゃん付けをする人がいないので貴重だ。

 ちなみに言葉に幼い妹はいるが、年下にせっちゃんは変だと思って除外とした。

 

 マンションの年配である管理人と近所のおばちゃん。

 どちらも世界が元気に挨拶をすると優しく接してくれる。

 よって、せっちゃん呼びをOKとした。

 

「おばちゃんにせっちゃんはいいの?」

「うん。おかあさんはせつなでいい」

 

 名付けてくれた刹那も大切な宝物である。

 譲った世界に配慮をしてくれる優しいお母さんが大好きだ。

 小学生ながらに刹那は親の気持ちを察知している。

 

「おばさんはダメ?」

「おかあさんキライ。だからダメ」

「わたしがおねがいしてもダメ」

「ダメダメダーメ!!」

「ううっ……じゃあ、おばさんのかわり、せかいがよんで」

「もっとダメ!! あんなふざけたなまえつけて、ずぇーたいよんでやらない!!」

「ふざけてない。かわいい」

「かわいくない!!」

 

 これに困った刹那はどうしたものかと自分の母へ相談をする。

 すると刹那の母は任せなさいと頼もしく返事をした。

 

 後日、刹那の母が言葉の母へ話し合う。

 

 言葉の母は認めているのに、世界の母は認めない。

 

 これは何を意味しているのか?

 

 世界よりも刹那を取る。

 そんな実の母へ向けての反抗と嫉妬だ。

 刹那のあだ名はそれだけの特別な価値があるから。

 

 二人の母が協力をして世界の母へ注意をする。

 

 娘に嫌われて将来見捨てられてもいいのか?

 

 半ば脅迫となるが、さすがの世界の母もそれは嫌がった。

 世界の父だけでなく、実の娘にまで捨てられてはひとたまりもない。

 

 ではどうすればいいのか?

 

 娘の意思を尊重すること。

 世界からの望みは明確にある。

 

 刹那を喜ばせたい気持ちはある。

 だから世界がいない時なら母がせっちゃんと呼んでも構わない。

 その代わり、自分が聞く時は刹那ちゃんと呼んでほしい。

 

 要するに母の口からせっちゃんを聞きたくない。

 それさえ守れば後は好きにしろ。

 

 小学生にしては随分と大人の妥協案である。

 そうなったのは、刹那や言葉の影響を受けてのことだ。

 

 事実、この妥協に関しては言葉からの助言が含まれている。

 大人の考え方ができて、とても頼りになるお姉さんみたいだ。

 おかげで親子の確執は緩和されて仲直りができた。

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