World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第11話「噂で牽制をする世界」

 休み時間に乙女を階段踊り場へ連れて行く。

 刹那がついて来たので、言葉にも来てもらう。

 3組の2人と4組の2人でバランスが取れた。

 

「いたるちゃんが私に会いたいって伊藤から聞いたんだ」

「それなら会ってあげなよ」

「乙女の見てない所で会うのってどうなの?」

「いいよ別に。世界なら気にしないから」

「えー、そこは疑って警戒しない? 伊藤を奪われるかもって不安にならないの?」

 

 わざと挑発をするように言ってみた。

 傍で聞いている刹那は呆れ顔だ。

 言葉も世界が横恋慕をするとは微塵も思っていない。

 

「世界が誠を何とも思ってないってよくわかったから」

 

 乙女の発言に刹那がうんうんと相槌を打つ。

 同意をするように言葉は微笑みを浮かべた。

 ここで思ったことを正直に話すのが世界である。

 

「伊藤個人に興味はないけど、いたるちゃんの優しいお兄ちゃんとか、乙女の彼氏になるかもしれない人とかは思ってるよ」

「そういう所、世界は他の女子と違うんだよね」

「いずれにしても、なるべく乙女か可憐のいる時に会いたいね。私一人だけだと、いたるちゃんの相手ばっかして、伊藤が放ったらかしになるよ」

「それは言えてる。わかった。私か可憐で都合を合わせるから」

「了解。いたるちゃんが次に遊びに来る日、あとで伊藤に確認をしておくね」

 

 そうは言っても頻繁に止が来ることはない。

 1か月にすれば多くても3回ぐらいである。

 当時は家を飛び出して大変だったらしい。

 

 今はそんなことがない。

 それは画家になることを夢見て絵描きに励むから。

 次に会えた時、兄である伊藤に絵を見せて褒めてもらいたいから。

 

「乙女が同じクラスだったら、伊藤の隣になれるよう取り計らうのに残念」

「誠の隣、世界なんだよね?」

「うん。刹那に丸投げしようとしたら、ちゃんと責任果たせって怒られちゃって」

「乙女の恋を応援する。そう言ったのは世界だよ」

「ま、隣の席だからこそ情報集めやすいね。実際、こうして乙女に報告をしているのがその証拠だよ」

 

 現状、同じクラスで伊藤に女の影はない。

 伊藤が話すのは今のところ二人だけ。

 男友達の澤永と隣の席にいる世界だ。

 よって乙女は安心して夜が眠れる日々を過ごせる。

 

「……」

 

 世界は言葉を気にかける。

 乙女だけに任せるのは少々厳しいかもしれない。

 イジメの被害を受けないための予防線を張っておきたい。

 そのために水面下で噂を広げることにした。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 言葉の部屋に遊びに行く世界と刹那。

 心は習い事に出かけて家にいるのは言葉だけだ。

 そして世界から話題を切り出す。

 

「ことちゃんにどんな噂が流れてるか知ってる?」

「いいえ」

「とある財閥家のご令嬢、そんな人にイジメをしたら、その権力で家族ごと潰されるって」

「あ、あの世界ちゃん、私の家庭はそんな大げさなものではありません」

「あくまで噂だから。もし同じ4組の男子がことちゃんを高嶺の花扱いしてるなら、そういう噂を真に受けているからだと思って」

「誰がそんな噂を……あ……世界ちゃん」

 

 言葉がジーと見つめる。

 刹那からも犯人扱いをするように視線を注ぐ。

 それを少し気まずそうに目を逸らす世界がいる。

 

「世界ちゃんがそのような噂を流したのですね。私を守るために」

 

 牽制をするための噂を広げたのは事実。

 世界はこの場で言い訳を放つ。

 

「裕福な家庭という話はしたけど、さすがに財閥家のご令嬢はないよ。権力はことちゃんのお父さんによるコネ話で尾ひれがついちゃったかも」

「もう、世界ちゃんは私を心配しすぎです」

 

 別のクラスで普段の干渉ができない。

 そのため、どうしても心配が増してしまう。

 言葉という存在はコンプレックスを刺激して相手に妬まれやすい。

 弱そうだと思って舐めてかかる事も想定ができる。

 実際は武器を持たせることで、相手を瞬殺できる実力者。

 それは散々にボロ負けをした世界が誰よりも知っている。

 

「ごめんね。ことちゃんに彼氏できなかったら私のせいにしていいから」

「そ、そういうつもりは……」

 

 高嶺の花となって恋愛のハードルが上がってしまった。

 身の丈に合わないとして諦める男子は多くいるだろう。

 もし無謀な特攻をすれば桂家の権力に潰されかねない。

 

「世界、ことぴーの話をする時は相手を選ばないとダメ」

「そうだね。誰でも話すと変な方向に噂が広がっちゃう」

「ことぴー、世界が迷惑をかけちゃった。ごめんなさい」

「迷惑だなんて思っていません。世界ちゃんのお心遣いは嬉しいです」

「世界、なぜそんなことしたの?」

「乙女だけにことちゃんを任せるのは大変かなって。ほら、伊藤のこともあるから」

 

 やり方を間違えてしまうとおかしな方向へ進む。

 どこかで詰めが甘くなる。

 だから刹那や言葉のような頭のいい人が必要だ。

 

「世界は自重する。これ以上はダメ」

「はい」

「せっちゃん、別に私は怒っていませんから」

「ダメ。甘やかすと世界はすぐ調子に乗る」

 

 刹那の厳しいお叱りタイム。

 説教を受けてしょんぼりとする世界。

 それをなだめる言葉という三者の反応があった。  

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