World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第12話「天文部の活動」

 定期テストという学生にとっては辛い行事。

 言葉と刹那を戦力としての勉強会。

 場所は最も部屋が広い言葉の部屋である。

 

「言、ここわかんない」

「あ、それはこちらの公式に当てはめないと解けません」

「そっかサンキュー」

 

 おっとりしているように見えてしっかりしている。

 陰湿くさい言葉の雰囲気が冷静沈着に感じる。

 改めて接してみれば悪くない。

 慣れ親しむ世界の気持ちが七海には何となくわかった。

 

「なえ加藤、いつもと違うけどケア変えた?」

「まあね。妹の可憐が勧めてきたからお試しで」

「そのブランド、あとで教えてよチェックしたいから」

「いいよ」

 

 乙女のちょっとした変化に目敏い光。

 違うクラスで接点は少なくても特に仲は悪くない。

 一歩引いての落ち着きがある関係。

 お互いに必要に応じての会話をしている。

 

「世界、サボらない」

「ううっ、頭の中グニャグニャだよ」

「ちゃんと解説を見て理解する。丸暗記しようとしても覚えられない」

「それができたら苦労しないってば」

 

 注意をする刹那にギブアップ状態の世界。

 体を寄せ合うほどで誰よりも距離が近い。

 パーソナルスペースをほとんど意識していない。

 

 途中で休憩が入り、話題として天文部が挙げられた。

 夜間観測をするために親の承諾は必要だが。

 

「夜道は危ないからって、ことちゃんのお父さんは反対。でもお母さんは迎えの車を出す条件で許可。早く帰れる日なら天文部の夜間活動はやっていいみたい」

「ねえ世界、それだと活動できる日が少なくなるんじゃない?」

 

 光の指摘通り、天文部の活動日は多くない。

 言葉の両親は帰りが遅くなることが圧倒的だ。

 屋上の使用許可を維持できればいいので頻繁にやれなくていい。

 要はレポートの提出という結果を出せれば結構である。

 

「世界、それについて問題点がひとつ」

「なに刹那?」

「天文部は天候に影響する。曇ったり雨が降ると観測ができない」

「……中止になりやすいってこと? 活動日が少ない中で更なるダメ押しの可能性あり?」

「うん」

「私のお母さんと刹那のお母さん。どっちも帰り遅いことが大半で、お迎えできないよ。たまに早く帰れる日に迎えさせるのも正直気が引けちゃう」

「うん……」

「刹那、どうにかならないの?」

「天候までは無理。ことぴーの両親が都合いい日と晴れの日。この両方が成立することを祈るしかない」

 

 もはや万事休すかと落ち込んでしまう世界と刹那。

 言葉でも流石に天気まではどうにもできない。

 ここで友達として見かねたのだろう。

 

「アタシの親に言っておくから、それで迎えに来てもらう日を増やしなよ」

「それなら私も話してみるよ。桂だけじゃなく、甘露寺と私の親も追加しておけば、いずれかで都合がつきやすくなるでしょ」

「ちょっと世界も刹那も!! 私だって天文部員であること忘れないでよね!!」

 

 七海・乙女・光が自分たちの家族を説得するようだ。

 言葉の親が不都合な場合、他の親で調整をすればいい。

 まさに人海戦術ここに極まり。

 幽霊部員でいいという条件だったのに。

 困った時には手を貸してくれる。

 世界が感動で泣きながら皆に感謝を口にした。

 

 この中でも刹那は冷静だ。

 天気が悪かったら中止になることに変わりはない。

 天運に任せるだけでは不安要素が拭えない。

 言葉も同じことを思ったのだろう。

 お互いにアイコンタクトを送って気持ちを共有した。

 

「世界、他校の見学以外にも活動を増やしたほうがいい」

「世界ちゃん、私もせっちゃんと同じ意見です。天候が悪い場合の活動も考えてみませんか?」

「確かにそうだね」

 

 世界が思いつくのは、天体観測が必ずしも夜ではないとダメなのかという疑問だ。

 昼間でも観測が可能なら、親の迎え役が不要となり、活動日を増大しやすくなる。

 それも含めて他校の天文部に訊いてみればいいだろう。

 

 日中の天気が悪くなることも想定をしたほうがいい。

 その場合は屋内で何かしらの活動をするか。

 あるいは費用こそ掛かるが文化施設のプラネタリウムを見に行くのも一手だ。

 

「あ、私ちょっとお茶をいれてきます」

「ことぴー、私も手伝う。遠慮は無用」

「すみません」

「こういう時はありがとう」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 お喋りをして喉が渇くのでティータイムの用意をする。

 キッチンの戸棚から言葉がティーカップを取り出した。

 刹那はカップを温めてから温度に注意を払いつつ紅茶をいれる。

 その手際の良さに言葉が感心を寄せた。

 

「本格的ですね」

「これは世界直伝。今回は私がいれるけど、次回があれば世界にいれてもらうといい。味わいが全然違うってわかるから」

 

 格の違いを知れと刹那はどこか誇らしげだ。

 姉を自慢する妹のようで微笑ましい。

 そして言葉は当時を振り返ってそっと語る。

 

「実は以前、世界ちゃんにコーヒーをいれてもらったことがあります」

「紅茶じゃなくて?」

「はい。そのときに世界ちゃんが私に言いました」

「なにを?」

「今回は私が刹那直伝のコーヒーをいれてあげる。次回があったら刹那にいれてもらって。刹那がいれるほうが圧倒的に美味しいってわかるから、だそうです」

「大げさすぎる。普通にいれかたを教えただけ」

「その時の世界ちゃん、今のせっちゃんとよく似ていました」

「……紅茶いれたから持って行く。ことぴー、落とさないように気を付けて運ぶ」

 

 刹那の照れ隠しなのか?

 トレーに載せた紅茶を突き出している。

 それを笑顔で受け取り皆の所へ運ぶ言葉であった。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 天文部を維持するための夜間活動。

 世界・刹那・言葉の三名は参加するメンバーとして不可欠。

 残りは任意の幽霊部員で不参加。

 

 他校の天文部見学というお題目での交流会。

 レポートを担当する刹那と言葉に知識の吸収を任せる。

 自分たちで天文部の活動ができるようにするためだ。

 二人が真面目に学んでいる間、世界は何をしているのかと言うと……。

 

「へえー、光の店知ってるんだ。あ、最近の限定メニューはチェックしてる?」

 

 部活とは関係ない雑談を楽しんでいた。

 他校の部員は光の洋菓子屋おおはらに行った事がある。

 ほかにもラディッシュのメニューが多すぎることに同意をして盛り上がる。

 榊野学園の屋上ベンチがあるミステリーを話せば、他校の七不思議を聞かせてくれる。

 こうしていると、刹那からはサボっているように見えて真面目にやれと怒られた。

 

「いやいや、これも立派な部活だよ」

「じゃあ世界が観測して記録する」

「ボーと夜空を眺めるだけならいいけど、観測とか記録とか、そういう小難しいのは無しで」

「世界ちゃん、空を眺めて気分転換をするのがお好きですね」

「まあね。あ、それはそれとして月見団子。天文部といえば月見団子だよね」

 

 他校生の分まで月見団子を用意している。

 夜空の月を眺めるのも天文部の活動だと理屈をこねた。

 実に面白い人だと評価を受ける。

 こうして一部の他校生に、西園寺世界の顔と名前が覚えられた。

 

「これで天文部のレポートはバッチリだよね。刹那、ことちゃん」

「私とことぴーに全部押し付けて、世界は遊んでいただけ」

「そんなことないよ。ちゃんと天文部の部長として立派な活動したもん。ねぇことちゃん?」

「そうですね。世界ちゃんらしい他校生との交流会だったと思います」

「ものは言いよう」

 

 次の交流会がやりやすくなったことは間違いない。

 そういった意味で世界の働きも決して無駄ではない。

 まさに適材適所。

 

 後日にまとめたレポートを顧問の先生へ提出する。

 これで当面は廃部に追い込まれることがない。

 学園祭で何かしらの展示ができれば尚良しだが、それは別に強制ではない。

 クラスの出し物で頑張るということで免除してもらった。

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