World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第14話「世界の一番は刹那」

 ある日、世界の思いつき企画が実行される。

 場所は昼休みの屋上。

 天文部メンバーが集まってお弁当を食べる会だ。

 

 曇り空のある晴れ模様。

 三人座れるベンチが二つあるので丁度いい。

 左側のベンチに乙女・七海・光。

 右側のベンチに世界・刹那・言葉。

 そして雑談の中心となるのは世界であった。

 

「国語の読書感想文って面倒だったけど、ことちゃんが貸してくれた本のおかげで助かったよ」

「お役に立って何よりです」

「世界、漫画以外で本を読めた?」

「なによ刹那。私だって普通の本ぐらい読めるってば」

 

 心外だと言わんばかりに世界は拗ねる。

 それを無視して刹那は言葉へ問いかけた。

 

「ことぴー、世界に何の本を貸したの?」

「パラレルワールドの本です。漫画やイラストの解説入りで、世界ちゃんが読みやすいものをお勧めしました」

「結構わかりやすかったよ。例えば、今の私たちってこうしているけどさ。本当は別の可能性もあったんだ」

 

 世界の話に興味を持ち耳を傾ける一同。

 その空気に当てられて話を続けていく。

 

「もしも、私が刹那やことちゃんと出会っていなかったら?」

 

 幼い頃からひきこもりになった可能性が高い。

 体が弱く、精神も脆いので、まともに学校生活が送れなかった。

 親戚の冠婚葬祭も出席できず、七海や光とも会えなかった。

 お祭りに行くこともないから、乙女や可憐とも知り合えない。

 そんな孤独で何もできないパラレルワールドの世界がいたのかもしれない。

 

「世界ちゃんはせっちゃんとの出会いがあれば、きっと大丈夫だったと思います」

 

 確かに刹那がいればひきこもりは回避できる。

 その代わり刹那への依存度が高い。

 今よりも刹那の負担が増大となることは間違いない。

 言葉と出会わない事は居合をやってない事とイコールだ。

 メンタルの鍛錬がなく、健康面でも不安定になったことだろう。

 

「この場合、光や七海と出会うのはもう少し後だったかもしれないんだ。刹那とばっかり遊んで甘えて、積極的に誰かと仲良くしない。そうなるとお祭りで乙女と出会えなかったと思う。榊野学園で同じクラスになって、そこでようやく友達になったと想像できるんだ」

 

 ここは後になるか先になるかの違いだ。

 光や七海と仲良くなることに変わりはない。

 乙女は隣のクラスで、七海を通じて知り合い程度にはなれたかもしれない。

 ただし今のように妹の可憐まで交流となる可能性は低い。

 

「そのパラレルワールドだと、ことちゃんだけは私と関わる可能性が全然見えてこない。イジメられっ子としてのことちゃんを想像したくないけど、どうしても避けられない運命に思えちゃうね」

「はい。きっと世界ちゃんがいなかったら、私は皆さんに嫌われていたと思います」

「同じ委員の刹那は例外と思ってほしいけど、別のクラスではそんなに関わらないよね」

 

 光や七海、乙女から毛嫌いをされた可能性が高い。

 世界も積極的に関わる理由がなければ近寄らない。

 刹那は世界以外に無関心で言葉と干渉しない。

 よって言葉に対しては明るい未来が考えられなかった。

 

「それってさ、世界いなかったら桂がマジでヤバいじゃん」

「光はそう言うけど、同じ中学なら七海がことちゃんと仲良くしてたんじゃない?」

「悪いけどそれはないね。同じ中学でもクラスが違うし、部活やってる私じゃあ接点ないから。世界が紹介してくれなかったら今の関係はなかったよ」

「同じ4組になってる乙女がことちゃんと仲良くは……」

「私も世界繋がりで今の関係があるから。きっと桂とソリが合わないって決め込んで無理だったと思う」

 

 ここで世界は伊藤の携帯を思い出した。

 待ち受け画面に言葉の盗撮があった日を。

 その時点で乙女と言葉が仲良くなる可能性はゼロだ。

 恋敵の相手として排除の対象となったはずである。

 

「まあ、私と関わらないパラレルワールドで、ことちゃんにいい事があるとしたら、私が広めた噂がないから、男子にモテモテで告白された可能性が高いってことだね。その点はごめんなさい」

「とんでもないです!! 男の人が苦手なのに、それで告白をされても正直困ります!!」

「ことぴーの人生、世界が大きく変えた。世界なくて今のことぴーはない」

「刹那、なんで誇らしげなの?」

「世界の気のせい」

「そう?」

「うん」

 

 世界の影響力は大きい。

 小さい頃に夢として語った世界平和。

 それが目の前で証明されている。

 今も世界を支えて守っている刹那。

 誇らしくなるのも当然といえる。

 

「まあ、今のことちゃんとの関係は最高だって思ってるから。仮に他のパラレルワールドがあっても選ばないよ。桂さん、西園寺さんで呼び合う関係なんて考えられないし」

「それはそれで見てみたい」

「なによ刹那。その場合、刹那だって呼び方変わるからね。桂さん、清浦さんって」

「……微妙」

「そうでしょ。二人は大親友だからあだ名で呼び合ってないと変だよ」

「世界は強調しすぎ。大は余計」

「ふーんだ。二人の相性が誰よりも一番だってこと、私はよく知ってるもんね」

 

 感情的に悔しくても事実として世界は認める。

 刹那と気が合う一番の相手は言葉で間違いない。

 まるで天使と女神という神聖なイメージがある。

 

「そんなことない。今のことぴーがあるのは世界のおかげ」

「それはそれ、これはこれだよ」

 

 相性について言葉はどう考えているのか?

 世界と刹那から探りを入れられる。

 そこでの言葉の答えは決まっていた。

 

「世界ちゃんとせっちゃんの関係が一番です。お互いを理解し合い、大切に思い合う素敵な二人だと思います」

「それ言われちゃうと話が終わっちゃうね」

「世界はことぴーじゃなく私を選ぶの?」

「刹那を選ぶけど何か?」

 

 即答をして微塵の迷いもない。

 その堂々とした態度は刹那にとって反則だったようだ。

 不意打ちを受けたようで落ち着きがない。

 どうにも照れているようだが、本人に言えば否定をするだろう。

 

「ことちゃんには悪いけど、どっちか選べって言われたら私は刹那一筋だよ」

「いいえ、世界ちゃんらしい素晴らしい答えです」

「なに世界ってば、そんじょそこらの男子よりカッコいいじゃない」

「光、そこで茶化さないでよ」

「可憐がよく世界が男だったら付き合う、なんて馬鹿言ってるけど、確かにこれは惚れるかも」

「乙女まで変なこと言わない。私は女だから惚れられても困るって」

「良かったじゃん刹那。世界は刹那が一番だってさ」

「七海、からかってる」

 

 表情が固いのに刹那の頬は赤い。

 世界の一途さがダイレクトに伝わってしまう。

 これで世界が男ならば、刹那が恋愛的に惚れてもおかしくはない。

 もっとも人としてならば、今まさに惚れたと言えるかもしれない。

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