World Days(新版) 作:完結の陽炎
学生として厄介な夏休みの宿題。
やらない訳にはいかない。
世界が泣きつく先は言葉。
わざわざ言葉の家に出向いて助けを求める。
そこには七海も来ており、考えている事は同じであった。
「いやー、私はバスケの練習で忙しかったから」
「私はおたふく風邪でダウンしてたから」
「という訳で言」
「そんな訳でことちゃん」
宿題手伝ってと同時にハモらせる。
言葉は笑って了承。
だが世界に対しては別の一言を添える。
「世界ちゃん、せっちゃんに頼まないのはどうしてですか?」
七海もそこは気になる所。
電車で乗り換えるほどに言葉の家は遠い。
それなら近所にいる刹那の所へ行けばいい。
もっともな疑問である。
「ほら、刹那には看病で迷惑かけたし。さすがに宿題まで甘えるのは気が引けちゃって」
「せっちゃんが好きでやっている事です。きっと気にしないと思います」
「そうだとしても、刹那には刹那の時間ってあるじゃん。私だけでなく、もっとこう視野を広げるとか、自分を大事にとか、何かそういうのあると思わない?」
世界なりに思う所がある。
いつも一緒だからこそ刹那を気に掛ける。
親しき仲にも礼儀ありというべきか。
「刹那っていつも世界の事ばかり見てるし。何となく世界の言いたい事わかるよ」
「わかってくれて何よりだよ。あ、そういえば七海の女バス合宿はもうすぐだよね? 日数は一週間だっけ?」
「まあね。他校と合同になる都合もあって、合宿の開始日がズレちゃって」
「そっか。頑張ってね合宿、ファイトオーだよ」
「ありがとう。でも世界が期待しているのはお土産でしょ?」
「もちろんだよ。合宿といえばお土産だよお土産。そういうの選ぶ楽しさってあっていいでしょ?」
「気持ちのいいぐらいに正直だね。ホント世界らしいよ」
話を聞いている言葉も理解を示す。
家族旅行でお土産を楽しみにしてくれる世界を思い出す。
まるでプレゼントをされた子どもみたいに無邪気に喜んでくれる。
「とにかく刹那には、私以外にも目を向けたほうがいいんだよ。ことちゃんみたいに」
「え? 私ですか?」
「たまに刹那、そっちへ遊びに行くでしょ?」
「はい、そうですね」
「七海と乙女は部活、光はバイト、可憐は受験生。私を除けば後はことちゃんだけだよ」
「せっちゃんとお話するのは楽しいです。世界ちゃんの事で盛り上がりますから」
「本人のいない所で話をする面白さはわかる。ま、私は本人がいようといまいと関係なく話しちゃうけどね」
それは性格の違いである。
オープン型の世界とクローズ型の刹那というべきか。
つくづく正反対な二人を印象付けている。
「宿題の件、私は別に構いませんが、あとでせっちゃんは拗ねるかもしれませんよ」
「その時は七海を囮にして逃げる」
「ちょっと待ちな世界、なんでアタシが囮になるんだよ?」
「バスケでリーダーみたいな活躍してるし、その偉大なる七海の力を頼りたいから」
「調子のいいこと言ってんじゃないよ。しかも囮って言い方ってもんがあるからね」
「バスケで直球好きでしょ。言い方もストレートがいいかなって」
「バスケ関係ないし。まあ、回りくどい言い方を好まないのは認めるけどね」
言葉のおかげで二人の宿題は開始となる。
しかし勉強嫌いの世界としては地獄の時間。
どうしてもサボりがちで言葉を困らせてしまう。
それを見かねて七海から注意を食らうほどであった。
「やれやれ、刹那の苦労がわかるね。言もそう思わないか?」
「それが世界ちゃんですから」
身体的にも精神的にも弱い世界。
ストレスを抱えると体調を崩しやすい。
そのため甘ったれてしまうのが欠点だ。
上手く見極めて叱ることで導く。
それは刹那だけが出来る芸当といえる。
「役に立つ勉強だったら受け付けるもん。可憐みたいに上手く立ち回るコツとか」
「なんだいそりゃ?」
「乙女を守るための処世術っぽいヤツ。お姉さん思いの優しい妹が可憐だよ」
恨みを買わないようにして敵を作らない。
後々の障害となって被害を拡大させないためだ。
言葉のイジメ予防を徹底する世界。
可憐のやり方を上手く応用をしている。
「七海は体育系だから、勉強でも気合いで頑張れるのがいいよね」
「ま、バスケの練習に比べたら、大人しく座って勉強するぐらいは普通に耐えるよ」
「ことちゃんは昔から習い事こなして、今も余裕で夏休みの宿題できるからいいよね」
「今の世界ちゃん、天使よりも悪魔寄りなっているのはわかります。もう少し頑張れば、美味しいケーキとお茶が待っていますよ」
「おー!! どっからでもかかってこーい!!」
臨戦態勢完了。
いつでも宿題の続きをやれる状態。
世界のやる気スイッチが切り替わった。
「変わり身はや!! ってか言、もので釣るってどうなの?」
「他に方法はありません。私にせっちゃんのマネはできませんので」
言葉にできる別のやり方で世界の宿題を手伝う。
貧乏という家庭環境もあって物に釣られやすい。
あらゆる意味で飢えており、気の毒な立ち位置。
刹那と言葉が上手く補い、バランスを保てているようだ。