World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第4話「他校生の友達作り」

 親戚縁者の冠婚葬祭。

 浮気の子どもという大人の陰口と軽蔑の眼差し。

 あまりに嫌な雰囲気である。

 世界と刹那はその場を逃げるようにして離れた。

 まだ子どもの二人に大人の事情はわからない。

 それでも母が何かしらに悪いことをしたのはわかった。

 詳細を理解するのはもう少し後になってからである。

 

 逆に良いこともあった。

 新たに同い年の女友達ができたのだ。

 仲良くなれたのは二人。

 

「へえー、せつなっていいなまえじゃん」

「ひかりもいいなまえ」

 

 一人目は洋菓子屋おおはらを家業とする黒田光。

 幼き頃はツインテールで、後にイカリングという独特な髪型をする。

 周りから一歩引いて観察をするクセがあるようだ。

 クールな印象のある刹那とは相性がいい。

 世界を放っておけない刹那の考え方にも共感を示す。

 

「ななみってよんでいい?」

「いいよ。こっちもせかいってよぶから」

 

 二人目はバスケを得意とするボーイリッシュな甘露寺七海。

 言葉と同じ学校の出身。

 しかしクラスが異なるため接点はないらしい。

 

「ことちゃんにあったら、ななみビックリするよゼッタイ」

「へえー、だったらあわせてよ」

「いいよこんど、あわせてあげる、ワクワクしてまっててよ」

 

 世界は帰り道で刹那に頼み事をする。

 面白いものを見せるために必要だから。

 それは……。

 

「せかい、これでいいの?」

「おおー、さすがせつなだね」

 

 いらない新聞紙で作らせた刀と鞘が二本。

 刀身や柄、つば部分など工作が上手く凝っている。

 子どもが遊べる玩具として一切の不足はない。

 

「せかい、これであそぶの?」

「ななうみにみせるんだ。ことちゃんのスゴさにビックリするよ」

「ななみ」

「どっちもおなじ」

「ちがう」

 

 刹那お手製の刀と鞘。

 その内の一本を言葉にプレゼントだ。

 その代わりとして世界とチャンバラをやってもらう。

 

 七海を驚かせるための作戦だ。

 見た目が大人しい言葉を甘く見ている。

 意外な一面があることで度肝を抜かせてやりたい。

 

 居合とは畑違いになるが一向に構わない。

 世界は最後まで我儘を貫き通すつもりだ。

 

 チャンバラができる場所を言葉に頼み込む。

 すると言葉は父に頼み、道場を貸し切ってくれた。

 そこで七海と会うように時間を作らせる。

 

 世界と刹那は家から道場まで距離が遠い。

 言葉の働きかけで送迎の車を用意してもらった。

 裕福なお嬢様ならこれぐらい朝飯前である。

 

 桂言葉と甘露寺七海が顔合わせ。

 男の子みたいなガサツな印象の七海。

 清楚なお嬢様としてイメージする言葉。

 体育系と文化系で正反対の人種。

 どう見ても馬が合わない。

 だが驚かせてやると息巻くのが世界だ。

 

 一旦、道場を離れて更衣室で世界と言葉が着替える。

 お互いに居合の道着を身に付けた。

 髪が長い言葉は邪魔にならないように束ねる。

 

 道場へ戻る両者。

 七海は感心をしたように声を漏らした。

 刹那に至っては物珍しそうに見つめている。

 

「ことちゃーん!! どこからでもかかってこーい!!」

「ほ、ほんとうにいいんでしょうか?」

「だいじょーぶ!! せつなのぶき、あたってもいたくないから!!」

 

 新聞で作られたものだ。

 チャンバラのごっこ遊びに適している。

 スポーツ好きの七海が興味を抱く。

 バスケという球技を基本的に好むが、武術も嫌いではない。

 

「わかりました」

 

 観客の七海と刹那は道場の隅っこへ移動する。

 世界と言葉の道場の中心で対峙。

 やや離れた位置で向き合っていた。

 

「……っ」

 

 世界は身震いをする。

 直感的または本能的にヤバいと感じた。

 目の前の言葉は稽古をする時と同じ。

 ゆっくりと腰に携えた鞘から刀を抜く。

 

 不思議なものである。

 見た目は新聞紙で作った玩具だ。

 それなのに本物のような威圧がヒシヒシと感じる。

 

 本当に小学生の少女か?

 

 そう疑ってしまうほどに末恐ろしい。

 だが……。

 

「くっ……」

 

 歯を食いしばって意地を張る。

 ビビって逃げたら負けだ。

 

 世界は居合構えで応じる。

 無意識に腰が引けた。

 でも逃げない。

 絶対に引き下がってやるものか。

 

 そもそも勝ち負けを気にしない。

 これは七海を驚かせるための作戦だから。

 目的を間違えてはいけない。

 

「いきます」

 

 右手に握った抜き身のまま言葉が踏み込む。

 急接近する言葉の素早さに世界の目は見開く。

 すぐに刀を抜こうとしたが。

 

「っ!?」

 

 世界の右手首を言葉の左手が押さえ込む。

 これでは抜けない。

 すぐに後ろへ下がろうとしたが手遅れ。

 世界の首筋に新聞紙の刀身。

 寸止めをされてしまっている。

 

「ちょ、ちょっとタンマ!! いまのナシナシ!!」

 

 世界からの物言い。

 急に近付いてビックリしたから反応が遅れた。

 だから次は接近した状態でのスタートを要求する。

 

「わかりました」

 

 今度は接近戦となる近くの位置で対峙。

 言葉がゆっくりと納刀をしてからの居合構え。

 世界も対抗して同じ構えをする。

 

 次こそは反応してやろう。

 言葉の動きをじっくりと観察。

 いつでも来いと世界は応戦する気満々だ。

 だが……。

 

「……へ?」

 

 世界の間の抜けた声。

 そろそろ来るかと思った時には遅かった。

 世界の首筋に寸止め二回目。

 いつ言葉が抜刀をしたのかよくわからなかった。

 

 二回やったことでわかった。

 言葉に先手を取らせてはいけない。

 何もさせてもらえず不完全燃焼となってしまう。

 

「つぎはわたしがやる!!」

「あ、はい。どうぞ」

 

 やられたらやり返す。

 世界はムキになった。

 居合構えから手加減なしで抜刀を仕掛ける。

 言葉の首を狙って振り抜いてみせた。

 タイミングを狙ったように言葉も抜刀。

 互いの刀身が交差して、気が付けば世界の手元から刀が弾け飛んだ。

 

「だあーもうぉー!!」

 

 三回も惨敗を喫する世界。

 やられ役になったみたいにうつ伏せでダウン。

 そんな世界を心配して刹那が駆け寄ってくれた。

 

「ことちゃんつよすぎ!! ずぇーたいにムリムリ!!」

「せかい、がんばった。よしよし」

 

 畳に顔を埋めてふてくされる世界。

 その頭を刹那が撫でで慰めてくれる。

 どうしたらいいかで戸惑う言葉。

 七海が興奮した様子で近寄ってきた。

 

「すげぇーな!! すっかりだまされたよ!!」

 

 カッコいい言葉が見れた。

 それで惚れ惚れとしたようである。

 実に楽しげに笑い、瞬く間に言葉と仲良くなった。

 それが世界の狙い。

 でも連敗をしたことは純粋に悔しかった。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 同じ小学校で刹那以外に仲の良い友達はいないのか?

 会話を楽しむクラスメイトが多い。

 授業の班分けで協力をする程度には親しんでいる。

 ただしプライベートまで仲良くはしていない。

 どうせ同じ学校で会えるので、せっかく遊ぶのであれば他校生がいいという世界の価値観だ。

 

 金持ちお嬢様の言葉・スポーツ万能の七海・家業の洋菓子屋が魅力的な光。

 

 最も関わりが深いのは言葉で間違いない。

 七海はバスケの試合があれば応援に行き、言葉に頼んで差し入れのスポーツドリンクを持って行く。

 七海が試合で勝利をすれば、お祝いを理由に光に頼み、美味しいケーキを頂く。

 小遣いが少ない世界はそのおこぼれを貰った。

 

 光は呆れてしまうが世界のことを憎めない。

 光が困った時に世界が率先して助けてくれるから。

 

 大切な髪飾りをなくして一緒に探してくれた。

 宿題でわからない時は、賢い刹那を連れて来て教えてもらった。

 突進する自転車にぶつかりそうになった時、咄嗟に光の腕を引っ張り助けてくれた。

 居合を習っている影響か、この時は自転車との間合いが近いから危ないと思ったらしい。

 こうして他校生との交流を広げていった。

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