World Days(新版) 作:完結の陽炎
別の日の放課後。
言葉の部屋で対策会議を開く。
世界が不穏な情報を仕入れたからだ。
そして刹那と言葉の二人に相談をする。
「世界、不穏な情報って?」
刹那が先を促してくれる。
人前で言えないことであることは明らか。
言葉の部屋なら遠慮なく話すことができる。
「榊野学園3つの隠し伝統」
世界の口から語られるカップル限定となる言い伝え。
その1、学園祭を一緒に回る。
その2、後夜祭のフォークダンスをする。
その3、隠し休憩所でエッチをする。
それら3つを全て成し遂げたカップルは、永遠に結ばれるという曰くつきだ。なお順不同である。
「……狂ってる。退学になっても文句言えない」
「私も最後の休憩所はやり過ぎです。一つ目と二つ目はまだ健全だと思いますが」
「女子バスケの上級生が怪しくてね。七海と乙女がこっそりと聞いたの。隠し休憩所が設置できたら、映像カメラで撮影するという密談があったみたい」
厄介な所として、今のところは未遂のため証拠が出ない。
言った言わないの水掛け論になるだけだ。
ここで重要なことは、事前に根回しをして隠し休憩所を作らせないこと。
その危険性を説いて生徒会や先生を味方につける。
出し物の図面で実際のものと違っていれば、それが隠し休憩所である可能性が高い。
そこを厳しく取り締まり、もしカメラという証拠が出たら言い逃れはできない。
学園は評判を落とさないために処断をするだろう。
「クラス委員の刹那とことちゃんが上手く説明して、生徒会や先生を味方につけて動かしてほしいの。隠しカメラで見世物にされて、トラウマになる被害者を出さないためにもね。同じ学園の生徒として、ハッキリ言って気分が悪いから」
「わかった。私とことぴーに任せて」
「はい、任せてください」
敵となる相手に何もさせない事態へ持って行く。
そのために敵に気付かれないまま動くことが肝要だ。
1年4組の出し物は作品の展示会で決定。
お化け屋敷の案も挙がったが不採用である。
手間が掛かり過ぎて面倒というクラス多数の考えがあり、これ幸いと委員長の乙女が主導をして却下とした。
展示会なら隠し休憩所が作られることはない。
明らかに目立って速攻でバレるからだ。
1組は妹系のコスプレ喫茶、2組はゾンビスタイルの喫茶。
どちらも色物扱いとなる印象だが、隠し休憩所が作られるほどの隙はない。
喫茶という被りで揉め事を起こさないように不戦協定が結ばれていた。
トラブルを起こされないための予防策である。
1年3組の教室で出し物を決める。
副委員の田中が黒板を書き、委員長の刹那がその場を仕切った。
クラスメイトから意見を集めて投票をする。
タコタコライス8票
駄菓子屋4票
喫茶店15票
的当て1票
合唱会1票
恋占いのお悩み相談室1票
「せつ――じゃなくて委員長、ちょっといい?」
「なにせか――西園寺さん」
先生が見張る公の場で呼び方を変える。
刹那は表情にこそ出さないが激しい違和感を覚えた。
世界に至っては明らかに嫌そうな顔を浮かべる。
お互いに次から省略をしようとアイコンタクトで合意をした。
「他のクラスでも喫茶店があったらどうするの? メニュー、大体似たようなものになりそうだし、パクリ扱いされて揉めたりしない?」
「メニューの意見を出してもらい、それを踏まえて、別のクラスで喫茶をする委員と話し合う」
「わかった。まず私から飲み物でひとつ出すね。定番の紅茶」
世界を始めとしてクラスメイトからドリンクメニューが列挙される。
それは以下の通り。
紅茶
コーヒー
コーラー
オレンジジュース
麦茶
ウーロン茶
「次に食べ物を挙げてください」
「食べ物について質問してもいい?」
「どうぞ」
今度は挙手をして省略する形とした。
刹那も呼び名を省いて促してくれる。
「食べ物をデザートに絞っても、洋風か和風かで意見が変わるよ。両方出してもいいの?」
「絞り込みは後でするから、今は自由に意見を出していい」
「了解。じゃあ一つずつ出すね。洋風でアップルパイ、和風であんみつ」
世界を先陣にクラスメイトから食べ物メニューを出す。
和洋問わずに提示されたのは以下の通り。
アップルパイ
あんみつ
シュークリーム
だいふく
ブルーベリーパイ
だんご
スコーン
ようかん
ポップコーン
おしるこ
カップケーキ
ぜんざい
追加として光の洋菓子屋にあるパイも黒板に書かれた。
また単品メニューだけでなく各セットメニューも添えておく。
「喫茶店のコスチュームについて、意見のある人は?」
刹那が真っ直ぐに世界を見つめた。
クラスメイトも世界に注目をしている。
暗黙的に一番槍となってしまったようだ。
「洋風ならウエイトレス、和風なら着物。それ以外なら調理実習の制服エプロン」
当たり障りのない3つの意見を出す。
黒板にしっかりと書き込まれていく。
クラスメイトからも意見が入る。
靴は各自で持参という補足が加わった。
「他に意見は?」
ここで澤永がバカな意見を連発で出してくる。
刹那が即時に却下を繰り返して撃沈。
教室内で爆笑され、先生に怒られて大人しくなる。
他のクラスと協議をする必要があるため、絞り込みは後日に持ち越しだ。
「お疲れ刹那。いやー、慣れないことはするものじゃないね」
「世界、少し顔色悪い。大丈夫?」
「……委員会、遅くなりそう?」
「長くても30分」
「先に刹那の部屋に行ってていい?」
「いいよ。合鍵もってる?」
「うん。じゃあ委員会、頑張ってね」
世界の後ろ姿を不安そうに見つめる。
大丈夫と返事せずに間が開いて眠そうであった。
不慣れなことをして人一倍に疲れたようだ。