World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第3話「クラスの仲立ちと学園の防衛指揮官」

 委員会を済ませて真っ直ぐに家へ帰る。

 刹那のベッドで無防備に眠っている世界がいた。

 そのまま起こさないように荷物を下ろして着替える。

 

「んんっ……」

 

 時折、寝返りを打ちながら寝息を漏らしている。

 それを近くで静かに見守るだけ。

 何度見ても世界の寝顔に嬉しくなる。

 ずっと見ていたくなるほどに。

 やがて世界の瞼が開き、目の焦点合わず、刹那をボーと眺める。

 

「世界、起きた?」

「んー」

「今から夕飯作るけど食べて行く?」

「うーんー」

 

 世界が手を伸ばして彷徨っている。

 その手を刹那が握り、それを支えに無意識に体を起こそうとする。

 急で反応できず、刹那から押し倒す体勢になった。

 お互いに何も語らずに至近距離で見つめ合う。

 先に目が覚めたのは世界からだ。

 

「おはよう刹那」

「おはよう」

「……ちょっと息がくすぐったいよ」

「うん……世界」

「ん?」

「寝ぼけて急に引っ張らないで。危ないから」

「ごめん」

「反省した?」

「した」

「それならいい。ご飯作るからゆっくり休んでて」

 

 刹那がベッドから離れていく。

 赤いリボンの後ろ髪に向けて声を掛ける。

 それは独り言を漏らすかのように。

 

「何となく悪い夢を見そうな気がして、刹那のベッドなら大丈夫かなって。甘えちゃってるね私。体弱いことを言い訳にしちゃってさ」

「それは違う。辛い時はちゃんと言って。無理に頑張ろうとして体を壊すほうがダメ」

「わかってる。だから大丈夫って訊かれたとき、嘘つかなかったの」

「本当の事も言ってない」

「手厳しい。でも刹那はそれでいい。私にない強さがあっていい」

 

 これ以上引き留めると夕飯が遅れてしまう。

 スタミナ丼をリクエストしてベッドで大人しくする。

 そんな世界を元気にするため、刹那は料理の腕を振るってみせた。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 休戦協定に1年3組も加入する。

 1組と2組の委員と歩み寄りをするための話し合い。

 口下手な田中は戦力外。

 刹那は強気になりがちで話が円滑に進みにくい。

 先生と生徒会の承諾を得て、臨時で世界が介入をした。

 

 1組は園児と魔法少女のコラボ。

 2組はゾンビのホラー系スタイル。

 コスチュームが同じになる心配はない。

 

 世界が重視をしたのは中身のメニュー。

 相手のコンセプトを褒めつつ、メニューの相性を考慮した。

 

「1組のコンセプトなら紅茶が合うね。純白なイメージで内装も凝れちゃう。2組は黒か茶の暗めをイメージしてコーヒーと相性がいいかも」

 

 食べ合わせに良いものを提案しての誘導。

 世界の母が作る複雑な独自メニューに比べたら簡単なことだ。

 3組の加入が一番あとになるため、メニューの優先権は1組と2組に譲る。

 その残り物で絞り込みをする形にすれば揉めることがない。

 冗談が言えるほどの余裕で親しくなり、緊迫した空気が和んで談笑するほどだ。

 こうして世界が緩衝材の役割を見事に果たす。

 

「ほら田中、落ち込まないの。人には向き不向きあるんだから。他で刹那を助けてあげてね」

 

 気持ちよく終わったのに、田中は己の不甲斐なさを責めた。

 世界に励まされて気持ちを立て直してもらう。

 

 刹那の表情も暗い。

 自分では揉め事になっていたのは確実。

 ここで世界がくすぐり、わざと怒らせて気持ちを切り替えさせる。

 何も言わなくても世界の真意は伝わった。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 乙女の家で対策会議。

 メンバーは世界・刹那・言葉・七海・乙女だ。

 先に切り出すのは世界である。

 

「七海、乙女。あれから上級生の動きはどうなったの? 1年はどのクラスも隠し休憩所作れない状況になったけど?」

「先輩方のクラスでお化け屋敷に決めて、そこで作ろうと企んでるみたいだよ」

「でも上手くいかないと思う。バレたらヤバいからって乗り気じゃない人が多いから」

 

 敵となる上級生は諦めが悪い。

 この時点で無理だと大人しく引き下がればいいのに。

 世界は不快感を露わにした。

 

「場所を考えてほしいよね。学園の中でするなって普通思わない? それを見せ物に盗撮しようとするなんて犯罪じゃん。そういうの凄く気分悪いからマジでやめてほしい」

「世界の言う通りだよ。だから加藤と一緒にそれとなく調べたし」

「私も。そういうの絶対よくないって思うから」

 

 世界の主張に七海と乙女が同意をする。

 静かに見守る刹那と言葉も相槌を打つように頷く。

 

「刹那、ことちゃん。学園に密告して警戒網を張り巡らせて。徹底的に阻止してほしいから」

「わかった」

「任せてください」

 

 もし強行があるならやむを得ない。

 最悪の場合、警察沙汰になるかもしれないが因果応報である。

 ひたすら水面下で立ち回り、被害者が出ないように用心を怠らない。

 

 学園祭に向けての準備が本格的に始まる。

 休戦協定の取り決めで同じ喫茶で重複をしないことがルールだ。

 しかし抜け道はあるので、実際はそれほど厳しい制約ではない。

 例えば紅茶で、1組がレモンティー・ストレートティー・ミルクティーの三つをドリンクメニューにした場合、3組で紅茶のオレンジティー・ハーブティ・マスカットティーを出すのはOKである。

 食べ物にしても、仮に2組がみたらし団子をメニューに入れた場合、3組であんこの串団子を出すことは可能だ。

 こうして無理なくそれぞれのクラスと共存をはかっていく。

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