World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第7話「言葉の家でお泊り」

 昔を懐かしむようなお泊り会。

 言葉の部屋でホラー映画を鑑賞。

 心は言葉の背中へ、刹那は世界の背中へ。

 それぞれ隠れるほどに苦手なジャンルのようだ。

 

「この映画の脱出ホラーゲーム、可憐が持ってたよ」

「そうなんですね。私、ゲームはしないので知らなかったです」

「私は可憐のプレイを見て楽しんでるよ。ことちゃんも見るだけなら楽しめると思う」

「それでしたら機会のある時に見てみたいです」

 

 モニターからグロテスクな映像が流れる。

 相手を瞬時に真っ二つにしての派手な血しぶき。

 お互いに居合を習っていたからか。

 斬り方・踏み込み・間合いなどで盛り上がる。

 

 一方、絶叫シーンのたびにビクビク怖がるのが心と刹那。

 平然と視聴をする言葉と世界とは真逆の反応だ。

 

「せ、刹那さん!! うちのお姉ちゃん、趣味悪いんですよ!!」

「ひ、人の趣味はそれぞれ。否定はダメ」

「でもでも怖いし痛そうだし!! あんなのが楽しいなんて、お姉ちゃんは変だよ!!」

「失礼ね。だから無理をせずに見なくていいって言ったでしょ」

「こうなるだろうと思って、乙女からコメディ映画のDVD借りてあるよ」

 

 ホラー映画を見終わった後。

 お笑い満載のコメディ映画を見てもらうことで上書きをする。

 これで刹那と心の恐怖を取り除き、一人でトイレに行けない事にならないように対策済みだ。

 

「こころちゃん、ベッドに四人は流石に狭くなるよ。だから一人、こころちゃんが指名してくれる?」

「それなら世界さんがいい」

「了解。ことちゃんは刹那と一緒に寝てね」

「わかりました。心、世界ちゃんに迷惑かけないように」

「もうわかってるってば。こころ、そんな子どもじゃないんだから」

「世界、心ちゃんと一緒に夜更かしはダメ。ちゃんと寝ること」

「はーい。じゃあ二人ともおやすみ、心ちゃん案内よろしく」

「うん。それじゃあお姉ちゃん、刹那さん。おやすみなさい」

 

 心に連れて行かれて世界は退室。

 残された刹那と言葉が一緒にベッドへ入る。

 電気を消して暗闇の中。

 刹那が呟くようにそっと話しかけた。

 

「ことぴー、起きてる?」

「はい。何か気になることでも?」

「……委員会で伊藤がことぴーを見ていた」

「存じています」

「乙女のことがあるのに、伊藤はことぴーを意識した」

 

 委員会のたびに伊藤が言葉を見ていた。

 流石に乙女も気付き、辛くなる気持ちを抑えて俯く。

 そこで乙女の味方である言葉がとった行動。

 あえて厳しく睨みつけること。

 居合の威光をぶつけて伊藤を萎縮させた。

 二度と言葉を見ることがないように。

 

「でもことぴーは、乙女のためにわざと睨んだ。伊藤に避けられることを選んだ」

「せっちゃん、皆さんが思っているほど、私はいい子ではないです」

「ううん、ことぴーは優しい。それは世界も私も、よく知っている」

「ありがとうございます。せっちゃんはとってもお優しいですね」

「優しくない。私は世界を守りたいだけ」

「私も世界ちゃんが大変な時は支えたいです。その時はお手伝いをさせてください」

 

 真っ暗で見えなくても言葉の優しい微笑みがわかる。

 包容力で満ち溢れる人柄で心地良さを感じてしまう。

 刹那の表情が緩んでしまうほどに落ち着く。

 

「うん。ことぴーなら任せてもいい」

「ありがとうございます」

 

 一方、世界と心でもベッドの中で会話がされていた。

 心の学校生活や勉強、習い事、友達などを色々と聞く。

 そして姉の言葉についての話題となった。

 

「お姉ちゃん、世界さんのおかげで明るくなったんだよ。それまでジメジメ暗くてひきこもってばっかりで。あ、今も家で本を読むことが多いから、ひきこもりは変わらないね」

「ことちゃんは虚弱体質だから、外出での体力消耗を避けているのかもしれないよ。ま、たまには出かけたほうがいいけどね」

「世界さんが言ってよ。そしたらお姉ちゃん、お外に出てくれるから」

「妹の立場上、こころちゃんでは厳しい?」

 

 妹に言われて素直に聞けない姉。

 言葉にもプライドがあるのかもしれない。

 

「うん。世界さんじゃないとお姉ちゃん中々動いてくれないもん」

「刹那でも大丈夫だと思うけどね。なにしろ大親友だから」

「お姉ちゃんと刹那さんが一番仲良しなの?」

「その通り。あの二人の相性は最高でナンバーワンだよ」

 

 刹那は世界のことばかりを気に掛けている。

 そのため他の人に気を許すことがない。

 唯一の例外となるのが言葉だ。

 ある意味、特別な存在といっても過言ではない。

 

「こころちゃんが幼稚園ぐらいの頃、刹那に絵本を読んでもらったの覚えてる?」

「覚えてるよ」

「こころちゃんが小学生の夏休みで、工作の宿題を刹那が手伝ってくれたことも覚えてる?」

「うん。刹那さんってとっても器用なんだね」

「ところが不器用なところもあるんだよ。上手く笑えないって気にしている所とか」

「そんなことないよ。刹那さん優しく微笑んでる所、こころ見たことあるもん」

「自分の顔は自分で見れないからね。きっと無意識で笑ってるんだよ」

 

 どういう時に笑っているのか?

 それを尋ねてみるとちゃんと答えてくれた。

 

「刹那さん、世界さんと一緒にいるときにニッコリしてるよ。あと刹那さんが世界さんのお話をしている時とか」

「刹那のお母さんから聞いたけど、刹那がことちゃんと話す内容って私のことばかりみたいだね」

「そうだよ。まるで姉を自慢する妹みたい」

 

 心の部屋も暗闇で見えない状況。

 おかげで世界は動揺を隠すことができた。

 異母姉妹という秘密を教えたのは言葉だけである。

 浮気相手の隠し子だから誰にも言わない約束を守ってくれている。

 そのため心は何も知らない。

 余計な事は知らなくていい。

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