World Days(新版) 作:完結の陽炎
昔を懐かしむようなお泊り会。
言葉の部屋でホラー映画を鑑賞。
心は言葉の背中へ、刹那は世界の背中へ。
それぞれ隠れるほどに苦手なジャンルのようだ。
「この映画の脱出ホラーゲーム、可憐が持ってたよ」
「そうなんですね。私、ゲームはしないので知らなかったです」
「私は可憐のプレイを見て楽しんでるよ。ことちゃんも見るだけなら楽しめると思う」
「それでしたら機会のある時に見てみたいです」
モニターからグロテスクな映像が流れる。
相手を瞬時に真っ二つにしての派手な血しぶき。
お互いに居合を習っていたからか。
斬り方・踏み込み・間合いなどで盛り上がる。
一方、絶叫シーンのたびにビクビク怖がるのが心と刹那。
平然と視聴をする言葉と世界とは真逆の反応だ。
「せ、刹那さん!! うちのお姉ちゃん、趣味悪いんですよ!!」
「ひ、人の趣味はそれぞれ。否定はダメ」
「でもでも怖いし痛そうだし!! あんなのが楽しいなんて、お姉ちゃんは変だよ!!」
「失礼ね。だから無理をせずに見なくていいって言ったでしょ」
「こうなるだろうと思って、乙女からコメディ映画のDVD借りてあるよ」
ホラー映画を見終わった後。
お笑い満載のコメディ映画を見てもらうことで上書きをする。
これで刹那と心の恐怖を取り除き、一人でトイレに行けない事にならないように対策済みだ。
「こころちゃん、ベッドに四人は流石に狭くなるよ。だから一人、こころちゃんが指名してくれる?」
「それなら世界さんがいい」
「了解。ことちゃんは刹那と一緒に寝てね」
「わかりました。心、世界ちゃんに迷惑かけないように」
「もうわかってるってば。こころ、そんな子どもじゃないんだから」
「世界、心ちゃんと一緒に夜更かしはダメ。ちゃんと寝ること」
「はーい。じゃあ二人ともおやすみ、心ちゃん案内よろしく」
「うん。それじゃあお姉ちゃん、刹那さん。おやすみなさい」
心に連れて行かれて世界は退室。
残された刹那と言葉が一緒にベッドへ入る。
電気を消して暗闇の中。
刹那が呟くようにそっと話しかけた。
「ことぴー、起きてる?」
「はい。何か気になることでも?」
「……委員会で伊藤がことぴーを見ていた」
「存じています」
「乙女のことがあるのに、伊藤はことぴーを意識した」
委員会のたびに伊藤が言葉を見ていた。
流石に乙女も気付き、辛くなる気持ちを抑えて俯く。
そこで乙女の味方である言葉がとった行動。
あえて厳しく睨みつけること。
居合の威光をぶつけて伊藤を萎縮させた。
二度と言葉を見ることがないように。
「でもことぴーは、乙女のためにわざと睨んだ。伊藤に避けられることを選んだ」
「せっちゃん、皆さんが思っているほど、私はいい子ではないです」
「ううん、ことぴーは優しい。それは世界も私も、よく知っている」
「ありがとうございます。せっちゃんはとってもお優しいですね」
「優しくない。私は世界を守りたいだけ」
「私も世界ちゃんが大変な時は支えたいです。その時はお手伝いをさせてください」
真っ暗で見えなくても言葉の優しい微笑みがわかる。
包容力で満ち溢れる人柄で心地良さを感じてしまう。
刹那の表情が緩んでしまうほどに落ち着く。
「うん。ことぴーなら任せてもいい」
「ありがとうございます」
一方、世界と心でもベッドの中で会話がされていた。
心の学校生活や勉強、習い事、友達などを色々と聞く。
そして姉の言葉についての話題となった。
「お姉ちゃん、世界さんのおかげで明るくなったんだよ。それまでジメジメ暗くてひきこもってばっかりで。あ、今も家で本を読むことが多いから、ひきこもりは変わらないね」
「ことちゃんは虚弱体質だから、外出での体力消耗を避けているのかもしれないよ。ま、たまには出かけたほうがいいけどね」
「世界さんが言ってよ。そしたらお姉ちゃん、お外に出てくれるから」
「妹の立場上、こころちゃんでは厳しい?」
妹に言われて素直に聞けない姉。
言葉にもプライドがあるのかもしれない。
「うん。世界さんじゃないとお姉ちゃん中々動いてくれないもん」
「刹那でも大丈夫だと思うけどね。なにしろ大親友だから」
「お姉ちゃんと刹那さんが一番仲良しなの?」
「その通り。あの二人の相性は最高でナンバーワンだよ」
刹那は世界のことばかりを気に掛けている。
そのため他の人に気を許すことがない。
唯一の例外となるのが言葉だ。
ある意味、特別な存在といっても過言ではない。
「こころちゃんが幼稚園ぐらいの頃、刹那に絵本を読んでもらったの覚えてる?」
「覚えてるよ」
「こころちゃんが小学生の夏休みで、工作の宿題を刹那が手伝ってくれたことも覚えてる?」
「うん。刹那さんってとっても器用なんだね」
「ところが不器用なところもあるんだよ。上手く笑えないって気にしている所とか」
「そんなことないよ。刹那さん優しく微笑んでる所、こころ見たことあるもん」
「自分の顔は自分で見れないからね。きっと無意識で笑ってるんだよ」
どういう時に笑っているのか?
それを尋ねてみるとちゃんと答えてくれた。
「刹那さん、世界さんと一緒にいるときにニッコリしてるよ。あと刹那さんが世界さんのお話をしている時とか」
「刹那のお母さんから聞いたけど、刹那がことちゃんと話す内容って私のことばかりみたいだね」
「そうだよ。まるで姉を自慢する妹みたい」
心の部屋も暗闇で見えない状況。
おかげで世界は動揺を隠すことができた。
異母姉妹という秘密を教えたのは言葉だけである。
浮気相手の隠し子だから誰にも言わない約束を守ってくれている。
そのため心は何も知らない。
余計な事は知らなくていい。