World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第11話「学園祭」

 時が過ぎて学園祭の当日を迎える。

 上級生のお化け屋敷で、学園に提出された図面とは異なる隠し休憩所が発見。

 さらに監視カメラも見つかり、そのクラスのお化け屋敷は即座に中止。

 保護者の呼び出しもあって瞬く間に噂となった。

 まだ実害が出てないため停学処分止まり。

 しかし学園にいられなくなって転校することに。

 いずれにしても世界たちには関係のないことである。

 

「ねえ接客足りないの!! 誰かこっち来て!!」

 

 1年3組の教室で開かれる模擬の喫茶店。

 接客エリアと厨房エリアに分けての作業。

 ウエイトレス姿の光が助けを求めてきた。

 現在、厨房には刹那・世界・伊藤の三人がいる。

 

「伊藤ゴー」

「いってらっしゃい」

「マジかよめんどくさいな」

「伊藤さっさと行く」

「ほら、今すぐ行かないと光に叩かれちゃうよ」

「わ、わかったよ」

 

 残った二人でケーキ作りを続行。

 阿吽の呼吸で連携に申し分なし。

 言われずとも互いにどう動けばいいかを理解している。

 やがて……。

 

「これでケーキ完売っと。お疲れ刹那」

「世界もお疲れ」

 

 材料を使い切って販売終了となる。

 残りの時間は自由になるのでクラスはその場で解散。

 テンションが上がって学園祭を楽しむようだ。

 

 光は澤永を連れて学園祭を回る。

 伊藤は乙女の答えを出すために店番をしている4組の展示会へ。

 七海は彼氏のクラスへ行ってしまう。

 そして……。

 

「行くよ世界」

「了解」

 

 水分補給を済ませて刹那が世界の右手を握る。

 そのままエスコートをして、演劇が開幕する体育館へ移動。

 空いているパイプ椅子の席で鑑賞をした。

 

 出演者の全員がファントムマスクに全身マント。

 舞いの演出を加えての台詞。

 スポットライトの絶妙なタイミング。

 テーマは略奪する花、そこに込められた葛藤や罪悪感。

 悩み抜いた先の答えは如何に?

 そんな意味深をラストで締めくくっての閉幕となった。

 

「……世界」

「ん?」

「どうだった?」

「花を恋に置き換えたらわかりやすかったよ」

「……」

「奪うつもりはなかった。誰も知らないなら何をしてもいいのか。起きた事実に変わりはないのに」

「うん」

「……刹那」

「なに?」

「私はお母さんとは違うよ。私は私、西園寺世界という一人の女の子」

 

 どんな事情であろうと浮気の子どもという事実に変わりはない。

 親子であっても似ている所があれば違う所もある。

 親に支配される操り人形ではなく、個性をもった一人の人間だ。

 

「世界はそれでいい」

「刹那もね。おばちゃんとは違う、清浦刹那という一人の女の子だよ」

「うん」

「それじゃあ、エスコートの続きをお願いできる?」

 

 これ見よがしに右手を差し出す。

 刹那が頷いて繋ぎ、世界をリードして進む。

 1組と2組の喫茶で、目的の白玉あんみつとパフェを味わう。

 その後は適当に出店を見回っていく。

 

「刹那、あそこに伊藤の妹のいたるちゃんがいるよ。ほら、輪投げをして遊んでる」

「うん。小さくてかわいい。やっぱり伊藤とよく似ている」

「そりゃ実の妹だから似てるでしょ。可憐が傍で見てくれて安心だね」

「声、掛けないの?」

「うん、あえて声掛けはしない。学園のお祭りを存分に楽しんでほしいから」

 

 体力の都合上、可憐のほうが長く遊ばせることができる。

 そのため、止のことは可憐に任せた。

 一を知って十を知る刹那。

 世界の言いたいことがわかり、それ以上は何も言わない。

 

 鉢合わせをしないように行き先のルートを変える。

 校内の廊下で心と言葉の姉妹と鉢合わせをした。

 

「世界さん刹那さん、こんにちは」

「こんにちはこころちゃん。そしてことちゃんはお疲れ様」

「はい、世界ちゃんもお疲れ様です。せっちゃんはエスコート中ですね」

「うん。ことぴーと同じ」

「はい同じです」

 

 保護者の言葉が心の案内役をしている。

 姉として務めだと言わんばかりに。

 せっかくなので少しだけ世界から話題を出す。

 

「そういえば、ことちゃんの家でペット飼ってないね」

「お父さんとお母さんが仕事でいない事が多く、生き物のお世話は大変なので安易には飼えません」

「こころは賛成だよ。ちゃんとお世話するもん」

「そう言って、心がお世話しなかったら私がすることになるんだから」

「ふーんだ。ひきこもりのおねえちゃんなんかアテにしないもーん」

 

 犬の散歩をする言葉や心のイメージがよく似合う。

 豪華な一軒家によりペットの飼育は可能だ。

 面白そうだと感じた世界はもう少し話を膨らませる。

 

「こころちゃん、もし仮にペットを飼うなら名前どうするの?」

「うーん、世界さん何かいい名前ない?」

「真っ直ぐで汚れのない純粋な子を願っての真白ちゃん、ことちゃんとこころちゃんの頭文字とってここちゃん、スケールが大きく自由に育ってほしい思いでソラちゃん」

「世界さんすごぉい!! すぐに3つも名前出すなんてこころ出来ないよ!!」

 

 言葉と刹那も相槌を打って頷く。

 理由を添えて3つも素早く出せる発想力に驚かされる。

 天文部のアイデア担当は伊達ではない。

 

「こころちゃんなら今のを参考にして、素敵な男の子の名前を思い付けるよ」

「えー、そうかな?」

「うん。こころちゃんの可能性を、こころちゃん自身が信じて頑張れば、きっと素晴らしい人になれる。私はそう思ってるよ。ファイトこころちゃん」

 

 やや強引な励ましだが世界の言うことに偽りはない。

 真っ向からストレートに伝えてくれる。

 心のような純粋な子どもには効果的だ。

 こうして姉妹と別れた後、手を繋いで歩く刹那に問う。

 

「刹那、こころちゃんぐらいの歳の私ってあんな感じだった?」

「もっとうるさかった。もっとヤンチャだった。もっと――」

「わかった。それ以上はお腹一杯だからいいよ」

 

 校内の一角にあるコーナーで伊藤と乙女を発見。

 学祭を一緒に回っている乙女はとても楽しそうだ。

 伊藤も満更でもないようで良い雰囲気である。

 

「世界行こう」

「そうだね」

 

 空気を読んで静かに立ち去る。

 あとは当人同士で決めること。

 これ以上の介入は不要である。

 

「世界、そろそろ休憩を入れたほうがいい」

「そっか。少し早いけど屋上行く?」

「行こう」

  

 幸いにも学園祭当日はそれほど暑くない。

 秋の実感を得るほどの快適さ。

 榊野学園のミステリーである屋上のベンチを使う。

 世界はそこで横になり、刹那が膝枕をしてくれた。

 

「世界、疲れた?」

「ちゃんと余力は残してるよ。でも無意識に気を張り詰めてるかもしれない。だから自己判断じゃなく、私をよく見ている刹那の指示に従うよ」

「それなら今は大人しく休んで」

「了解。もし寝てしまったら途中で起こしてね」

「うんわかった」

 

 そこから居眠りを始めてしまう。

 あどけない世界の寝顔。

 刹那が幸せそうに目を細める。

 

 ずっとこうしていたい。

 このまま時が止まってくれたらいいのに。

 

 そう願いながら幸せの時間が流れていく。

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