World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第13話「七海の破局」

 屋上で寝ている世界の携帯に着信があった。

 相手は言葉。

 刹那が代わりに出て応じる。

 

「ことぴー、どうしたの?」

「あ、世界ちゃ――いえ、その声はせっちゃんですか!?」

「うん。世界の代わりに出た。何かあったの?」

「大変なんです!! 七海さんが!!」

 

 言葉からの事情を聞く。

 七海は学園祭を一緒に回ろうと彼氏である先輩のクラスへ行った。

 しかし不在だったので必死で探し回る。

 その結果、人目のつかない校舎裏で浮気現場を目撃。

 手を出した相手が年下でロリコンであったことが判明。

 当然、修羅場となる。

 

 ――なぜ他に好きな子がいるのに、私と付き合ったんですか?

 

 これに対する彼氏の答えにショックを受ける。

 

 ――世間の目があるから、その隠れ蓑にするためなんだ。

 

 七海が堪り兼ねて殴ろうした。

 その前に割って入り、先輩に平手打ちをした人がいる。

 

 言葉であった。

 心を帰した後、七海が探し回っているのを目撃。

 なぜか胸騒ぎがして尾行をしたのである。

 

 ――貴方は最低な人です。

 

 その一言と共に七海を連れ出す。

 今はとにかく自由に泣かせたほうがいい。

 そう思い屋上を借りようと世界に電話をしたのである。

 

「わかった。屋上の鍵は開いてる。そのまま来て」

「すみません。すぐ行きます」

 

 刹那が携帯を切る頃。

 世界はすっかり目を覚ましていた。

 

「出ようか刹那」

「うん。説明は後でする」

 

 世界と刹那は屋上を去る。

 それと入れ替わるように言葉と七海が来た。

 屋上なら誰も来ないので存分に悲しんでいい。

 

 ベンチに座り、両手で顔を隠して泣き出す。

 そんな七海の隣に寄り添って離れない。

 さり気なくハンカチを差し出して涙を拭わせる。

 

「無様なとこ見られちゃった」

「それは違います。七海さんは何も悪くありません。私のほうこそ、手荒な所を見せてしまいました」

「……私の代わりに叩いてくれたね」

「七海さんの手は、バスケでプレイをするための素敵な手です。あんな人のために使ってほしくありません。それが私の我儘です」

 

 キリッと真面目な顔で言ってくれる。

 七海からすれば口説き文句だ。

 

「その言い方だと、私がバスケしか取り柄がないみたいじゃない?」

「す、すみません。スポーツをするための素敵な手と訂正します」

「どうせ私はスポーツ馬鹿だよ。まったく……言」

「はい?」

「……サンキュー」

「どういたしまして」

 

 七海は泣き疲れて不貞寝がしたい。

 言葉の厚意に甘えて膝枕をしてもらった。

 散々な所を見せているので、今更取り繕う気はない。

 

 スヤスヤと安心して眠る七海。

 それに安堵した言葉がメールを送信する。

 相手は電話に応じてくれた刹那にした。

 

『七海さんが泣き疲れてベンチでお休み中です』

『ことぴーは?』

『七海さんに膝をお貸ししています』

『膝枕だね。そのまま屋上使っていい。世界には既に説明をして了解済み』

『ありがとうございます』

『世界からの伝言。七海を慰めてくれてありがとう』

『七海さんも私の大切なお友達ですから当然の事です。とお伝えください」

『了解』

 

 天気が雨でなかったことに感謝である。

 言葉は空を眺めた。

 七海の傷心が癒えることを祈るために。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 屋上を去った後。

 世界と刹那はグラウンドの隅っこへ移動していた。

 浮気をした七海の彼氏に激しい怒りを覚える。

 両家の母を泣かせた父みたいで許せない。

 

「刹那。私はね、友達を傷つけられて冷静でいられるほど、大人じゃないから」

「暴力はダメ。それは七海が望まない」

「隠れ蓑ってなによ? そんなことに七海を巻き込むな」

「同意」

「学園にやましい事してたんだよね? 証拠があれば退学処分にできそうだよ」

「見ただけでは不十分。やるなら徹底的に」

「今回、ことちゃんも怒ってるから協力してもらうよ。でないと相手が調子に乗って、さらに被害が増えると思うから」

 

 せっかくの楽しい学園祭に水を差されてしまった。

 こうなってはフォークダンスの約束も無効である。

 今は七海のことを最優先だ。

 

 七海の彼氏だった先輩の不埒な行為。

 桂家を頼って探偵に依頼をする。

 浮気調査をしての証拠を集めてもらった。

 予想を遥かに超えて、口に出すのも憚る内容が届いた。

 

 言葉の両親は七海のことを知っている。

 言葉がイジメられないよう守ってくれた大切な友達の一人。

 そんな七海を利用して、世間の目を欺く姑息なやり口。

 今後のためにも見逃すわけにはいかない。

 

 桂家を通じて甘露寺家にも報告が入る。

 七海の親としてはとても許せることではない。

 彼氏側の家族にも知られる事となり、甘露寺家へ本人を連れて謝罪へ出向いた。

 両家の間を桂家が上手く入ってまとめてくれる。

 

 この件で大変なことは、被害を受けているのが七海だけではないこと。

 彼氏のバイトは塾の講師または家庭教師で、教え子にまで手を出している。

 当然、その親の所へも彼氏側の家族は謝罪をしなければならない。

 

 今回の場合、学園祭という校内で浮気をしていたため、学園側の管理責任も問われてしまう。

 もしマスコミやインターネットで公となったら大問題だ。

 榊野学園の評判は瞬く間に地に落ちるだろう。

 該当する先輩の退学処分は避けられない。

 今年の榊野学園は災難といっても過言ではなかった。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 言葉の慰めが効果的だったのか。

 先輩の退学処分で気持ちのケジメになったのか。

 七海は熱心にバスケの部活に取り組む。

 学園祭の盗撮カメラ問題で2年生のやらかしがあったので、部の内部はズタボロである。

 顧問の先生から当面の間、他校との試合を自粛と言い渡された。

 それでも体育館でバスケの練習が出来るだけマシである。

 

「アタシ、もう二度と恋はしない」

 

 屋上で昼食を共にする世界・刹那・言葉に宣言。

 三人揃って、それは無理もないと同情をしてしまう。

 光と乙女は彼氏持ちという立場上、気を遣っての学食である。

 七海が完全に吹っ切れるまでは距離を置くようだ。

 その間、世界たちが七海の慰め役を買って出る。

 

「平手打ちで済ませることちゃんは優しいよ。私がその場にいたら、護身用のペンで滅多刺しだね」

「世界、刺したらダメ」

「なによ。刹那だってその場にいたら蹴り倒してたでしょ?」

「当然、女の敵」

「あの、世界ちゃんもせっちゃんも、あまり危ない事はしないでください」

 

 七海は目の前にいる友達の優しさに救われる。

 これからも大切にしていきたい。

 そんな女の友情に包まれて温かい時間を過ごした。

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