World Days(新版)   作:完結の陽炎

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中学時代
第1話「避けられないコンプレックス」


 中学生になると授業の科目が増えて難易度も上がった。

 宿題を投げ出そうとすると刹那に怒られる。

 丸写しをお願いしてもキッパリと断られる。

 世界のためにならないというお説教付きで。

 

「刹那、学校の勉強なんてダルいよ。将来なんの役にも立たないじゃん」

「ワガママ言わない。おばさんにもよろしく頼まれている」

「わ、私だって、刹那のお母さんから頼まれてるよ。これからも刹那と仲良くしてあげてって」

「今は関係ない」

 

 世界が苦手なことは座学全般である。

 おとなしく座って勉強をするのが性に合わない。

 実際に見て触って体感をするほうを好む。

 記者の真似事をしての情報収集が最も得意だ。

 

 習い事の居合は中学生になっても続けている。

 精神的に鍛えられて姿勢が良くなった。

 そして稽古の終わった後に言葉と雑談を繰り広げる。

 

「へえー、ことちゃんが七海の勉強を見てるんだ」

「はい。七海さんはバスケの練習に時間を割いてしまって。あ、世界ちゃんはお勉強のほう大丈夫ですか?」

「うん。こっちは刹那がいるから大丈夫だよ」

 

 小学の高学年から言葉の成長期は始まっている。

 身長と胸のサイズが大きくなった。

 こういったことで男子にからかわれたり、女子から妬まれたりしても不思議ではない。

 学校の集団生活で身体的に目立つことのリスクはある。

 イジメの種にされて酷い目に遭うかもしれない。

 

「ことちゃん、学校でイジメられたりしてない?」

「はい。七海さんが守ってくれて助かっています」

 

 仲間に優しく敵に容赦をしない。

 言葉を守る事すなわち友達として認めている証拠だ。

 勉強で助けてもらっている恩義もあるのだろう。

 スポーツが出来て威厳のあるカリスマ性を持っているようで、七海を敵を回す生徒はいない。

 

「光とは上手くやってる?」

「えっと、黒田さんはちょっと……」

 

 一方的にツンツンと素っ気ないので、嫌われていることは一目瞭然。

 原因がわからないので言葉が困っている。

 すると光の気持ちに寄り添うように世界は言った。

 

「光はきっと、ことちゃんに対してコンプレックスがあるんだよ」

「あの、言って頂ければ直します。私に何か嫌な所がありますか?」

「別にことちゃんは悪くないんだよ。ことちゃんは文武両道でスタイル抜群のお金持ちお嬢様。すべて劣っちゃう光はミジメに感じちゃって、それでことちゃんにキツく当たっちゃうんだろうね」

「そんな劣るなんて、黒田さんにもいい所はあります」

「実は私もね、光の気持ちがわかるの。ことちゃんに敵わないと思ってしまうのは、私も光と同じ。運動だったら七海、頭の良さだったら刹那、それでことちゃんに対抗できるけど、私や光はどちらも中途半端だから。それでことちゃんが羨ましくてたまらないってなっちゃうんだよ」

 

 自分より優れている相手に対しての劣等感。

 認めざるを得ないからこその八つ当たりだ。

 世界と光の仲が良いのは、お互いに優劣を意識しなくて済むのが要因かもしれない。

 

「世界ちゃんは、私のこと嫌いですか?」

「……あははっ」

「世界ちゃん?」

「いやー、そうだよね。ことちゃんはそう言いたくなるよね? うんわかるよ。逆だったら私だって不安に思っちゃうもん……ことちゃん、私の中には天使と悪魔がいるんだ」

 

 誰しも善悪は持ち合わせている。

 天使は純粋に言葉が大好きでこれからも仲良くしたい。

 悪魔は嫉妬に満ちて言葉よりも上になって見返してやりたい。

 ここで誤解をしてほしくないのは、世界が言葉を嫌っていないということ。

 本当に嫌いならば、今すぐにでも絶交をして関わらなければいいだけだ。

 

「実は最近、私の中の悪魔は出てこなくなったの。刹那とことちゃんがとっても仲良しで、その尊い関係を見てると、私の中の天使が元気になっちゃう。劣ってるとか優れてるとか、そんなのどうでもよくなってさ。そんなことより、相手が喜んでくれたら私も嬉しい。もっとシンプルに考えたほうがいいじゃん」

 

 あくまで世界の考え方に過ぎない。

 光も言葉に対して思う所はあるだろう。

 単純に馬が合わないだけかもしれない。

 人間関係としてよくあることだ。

 

「とにかく、ことちゃんが喜んでくれると私は嬉しい。それだけわかってくれたら充分だよ」

 

 世界が去るのを見送った後、言葉は携帯を手に取った。

 連絡手段があるので、後日に刹那を部屋に招いて二人だけで話す。

 世界を一番よく分かっているのが刹那だから。

 

「私は世界が幸せならそれでいい。でも世界は違う。皆が幸せなら世界は喜ぶ。求める規模が違う」

「はい。それが世界ちゃんのいい所なんですね」

「世界が望む幸せはとっても大きい。私はそんな世界を守りたい」

「……せっちゃんには敵わないです」

「当然。私は生まれた時からずっと世界と一緒だから」

 

 勝ち誇る刹那に言葉が初めて嫉妬をした。

 同時に疑問も解消されてしまう。

 

「なるほど。これが世界ちゃんや黒田さんが、私に感じている気持ちなんですね」

「妬いた?」

「……少し」

「フッ、少しでも思い知ったのなら上出来」

「せっちゃんは、こういう気持ちになった事ありますか?」

「ことぴーはことぴー、私は私」

 

 この励ましもあり、言葉は光との人間関係で悩まなくなる。

 たとえ憎まれ口を叩かれても、別に無視をされている訳ではない。

 気にせず普通に接すればいい。

 そんな世界と刹那のアドバイスに従う。

 時間が経つにつれて、それが光の個性だと受け入れるようになった。

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