World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第15話「パリ行きの選択肢」

 アパートのこじんまりとした食卓。

 珍しく早く帰ってきて母の機嫌がいい。

 世界は母と一緒に夕食を共にした。

 

「聞いて聞いて世界」

「はいはい。ちゃんと聞くから、いい歳してはしゃがない」

 

 正面で座っている母に本題を促す。

 

「実はね、パリ支店の転勤が決まったの」

「ずっとお母さんの野望だったパリで店を持つ夢の第一歩ってこと?」

「そう。私の仕事が評価されてね。チャンスを手にしたの」

「よかったねお母さん。おめでとう」

 

 これは長年追いかけた夢の実現。

 パリで成功してみせるという踊子の道のり。

 ようやく海外で可能性を広げられると大喜びだ。

 

 

「ありがとう。だから世界もすぐ準備してね」

「もうお母さんってば、そんな急かさなくても、後でお祝いの準備するから」

 

 せっかちな母である。

 よほどパリの転勤が嬉しくてたまらない。

 ちゃんと娘として祝福するつもりであるのだが――。

 

「そうじゃなくて、世界もパリに行く準備をしてね」

「え? 私もパリへ行くの?」

「そうよ、だって転勤なんだから」

 

 世界の表情が瞬く間に曇る。

 胸の内がざわざわとして落ち着かない。

 唐突な言いつけに、さすがに困ってしまう。

 

「ちょっとお母さん、それはあまりに急すぎるよ。前に言った時は、例の短期出張だったでしょ?」

「まあ、その時は本決まりじゃなかったからね」

「以前とは違うってこと?」

「そう。あの時とは状況が変わったの。もう決まったことだから」

 

 なんとも強引な母である。

 娘が難色を示しているのにお構いなしだ。

 他の選択肢がないのかで探ってみる。

 

「ねえお母さん、私がここに残るという事はできないの?」

「無茶言わないで。家は頼れる親戚がいないし、世界をここに一人残す訳にもいかないのよ」

 

 浮気の子どもだから、親戚が世話をしてくれるはずもない。

 世界を一人残すだけの経済的な余裕もない。

 無理だと頭の中でわかっても、あえて世界は確認を取る。

 

「数日のお泊りじゃないから、刹那に頼ることはできないんだね?」

「そうよ。ずっと迷惑はかけられないでしょ」

 

 急激な環境の変化は、体が弱い世界にとっては猛毒だ。

 自律神経が大幅に乱れ、体調の悪化が深刻化する恐れがある。

 そうなってしまったら本末転倒。

 母の夢を邪魔することになる。

 その事に母は気付いていないのか?

 娘の身を案じるよりも自分の夢を優先する。

 自分のことしか考えていない。

 まったく見えていない。

 

「部屋に戻る」

「お母さん、明日はパリで色々手続きしないといけないから。早めに荷造りしておいてね」

 

 これ以上話せば、気分の悪さで吐いてしまうかもしれない。

 ストレス耐性が低い世界としては危険な兆候である。

 その場で行かないと駄々をこねても無駄だ。

 

 ここから先、どうしたらいいのか?

 

 部屋のベッドで膝を抱えて考え込む。

 これまでの思い出を振り返りながら。

 苦しい、辛い、哀しい。

 こころの中がぐるぐると回っていく。

 悩みに悩み抜いた末、取った世界の行動は……。

 

 

【パリ行きの準備をする→バッドエンド】

 

 

【刹那に電話をする→ノーマルエンド】

 

 

【言葉に電話をする→ハッピーエンド】

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