World Days(新版) 作:完結の陽炎
可憐からの携帯メールで依頼があった。
ストーカーを撃退するために彼氏役になってほしい。
世界は速攻で電話を掛けた。
「依頼する相手間違えてるよ可憐」
「いいえ、世界さんなら男装バッチリ似合いますって」
「私より七海のほうが似合ってるよ」
「頼んでみたんですが断られました」
可憐も七海の男装ならバッチリと思ったようだ。
七海としては素直に喜べないことである。
「そもそも本当にストーカーなの?」
「間違いありません。遠くから眺めてくるので正直キモイです。いつ襲われるかブルブルしちゃいます」
「刹那とことちゃんなら放置だけどね。見られても全然気にしないよあの二人」
「そう言わずにお願いします世界さん。か弱い後輩を助けてください」
実害がない限りは警察に言っても動かないだろう。
可憐の自意識過剰という可能性もゼロではない。
だからといって見捨てるのも問題がある。
被害が起きてからでは手遅れになるのも事実だから。
「ストーカーってどんなヤツ? 同じ中学の男子とか?」
「はい。クラスは違いますけど学年は同じ3年です」
「受験生がなにやってんだか」
「まったくです。女の尻追い回すヒマがあるなら勉強しろって話ですよ」
「彼氏役、私じゃなくて本当は伊藤にしてほしいんじゃない?」
「そりゃそうです!! でも今はお姉の彼氏じゃないですか!!」
「まるで将来別れるみたいな言い方だね」
「先のことなんて誰にもわかりませんよぉー」
「それはそう」
交際はゴールではなくスタートだ。
別れることなく長く付き合っていけるのか?
可憐が虎視眈々と狙っているようで乙女は油断ができない。
「ラディッシュのパフェ7日分」
「長すぎます。せめて3日にしてください」
「まあいいでしょう。要するにイチャイチャ見せつけて諦めさせる作戦だよね?」
「そうです。ストーカーにラブラブデート見せつける作戦でお願いします」
「私、女だから男物の服なんて持ってないけど可憐は持ってる?」
「ある訳ないじゃないですか。私だって女の子ですよ」
面白そうな作戦として協力をするのは構わない。
3日分のパフェという報酬も、小遣い少なめの世界には魅力的だ。
電話を切り、次に言葉へ掛けようと思って手が止まる。
「……」
刹那に一言相談をしたほうがいいのではないか?
もし黙っていたら後で怒られそうな気がする。
特に可憐について刹那は快く思っていない。
よって刹那に本文のみでメールを送ってみる。
『可憐の電話→同じ中学男子ストーカー怖い→私の男装でデート作戦→ストーカー諦める→私はパフェ3日分でニコニコ』
それから間もなくして刹那から電話がかかってくる。
急に着信が来ることを予知していた世界。
お返しにワンコール以内で応答してみせた。
他の人ならビックリしそうだが、刹那も世界の手の内がわかっているようで落ち着いている。
「という訳で、私は可憐に助けを求められて協力することになりました」
「世界がそんなくだらない事をする必要はない」
「えー、でもそれだとストーカーにつきまとわれて可憐が可哀想だよ。危ない目に遭うかもしれないし」
「だからこそ、余計にそんな事したらダメ。世界が巻き込まれて危ないから」
「それなら刹那は他に方法あるの? 可憐をストーカーの魔の手から救う方法は?」
「ある。私に任せて」
どうやら刹那が助けてくれるようだ。
可憐を嫌っているのに意外である。
「別に嫌っていない。あの子は世界の善意を利用する。そんな卑怯なやり方が気に入らないだけ」
「可憐って呼んであげないの?」
「そんな細かいことはどうでもいい。とにかく私に任せて。ちゃんと解決するから」
「パフェ3日分が……シクシクのションボリさんだよぉ」
「今度、甘味処の新作メニュー白玉ぜんざい奢る。それで手を引きなさい」
「新作!? むむむ、それは必ずチェックせねば!!」
世界は新しいもの好きである。
古いものを大切にするのも悪くないが、新しいもので己のセンスを磨くのもいい。
流行の最先端を追ってみるのも純粋に楽しいからだ。
「もし今後も可憐に相談事を持ち掛けられたら、今みたいに連絡したほうがいい?」
「無論、必ず私を通して。あとであの子にも言っておくけど」
「わかった。可憐のためにストーカーの対策よろしく」
それから3日後。
刹那は言葉・七海・乙女を連れて、一人のストーカー男子を捕まえての厳重注意。
乙女は可憐の姉だ。
相手の家族に知られていることで、ストーカーの男子はより萎縮をする。
迂闊なことをすれば、親も出てきて大騒ぎとなるからだ。
可憐が嫌がっているということで諦めてもらう。
「ごめんなさい清浦さん、妹が迷惑かけて」
「私はいい。でも世界を巻き込むのはやめて」
「ほら可憐、アンタも謝りなさい」
「す、すみません刹那さん」
「わかればいい。困った時は私に言って。今みたいに助けるから」
「私、てっきり刹那さんに嫌われてるかと思ってました」
「それは誤解。嫌いなら助けたりしない。見捨てている」
もっともな理屈である。
結果を出したので文句は言わせない。
面白味のない解決だが、合理的な刹那らしいやり方だ。
「ことぴー、七海。付き添いありがとう」
「いいですよ。可憐さんの不安が解消されて何よりです」
「ま、アタシらは見ているだけだったけどね。でも無事に終わって良かったよ」
その日の夜。
世界に電話をして、可憐のストーカー問題の解決を知らせる。
たった3日で終わらせるとは早い。
実は1日で終わらせる方法もあった。
刹那の護身術である蹴り技を駆使して、力押しで脅すという下策だ。
それは普通に危ないので、集団による警告という上策を取ったのである。
「なるほど。刹那が全部やってくれるなら、私は不要って訳だね」
「それは違う。あの子、世界じゃないと相談しないと思う」
「なんで?」
「苦手に思われているから」
「刹那は自分の意思で汚れ役やってるからね」
「世界のためだから」
「相談の受付は私がやって、その後に私が刹那に依頼をして実行してもらう。これならいいんじゃない?」
「うん。それならいい」
お互いの役割分担を定めて合意を得た。
この事を可憐に連絡をして伝える。
これまで通り、困った時は世界が受付をする。
ただし、相談の内容を刹那へ伝え、実行は刹那の担当となる。
「了解しました。正直助かります。刹那さんに相談はちょっとやりにくくて」
「まあ、根は優しいんだけど表向きキツイからね刹那は。気持ちはわかるよ」
「世界さんが間に入ってくれたら全然OKなんですよ。世界さんは絶対に必要です」
「へえー、刹那がいれば私なんて全然いらないかと思ったよ」
「マジでいります。二人一緒だと息がピッタリで最強って感じしますよ」
「最強って、可憐が持ってるゲームじゃないんだから」
後日の放課後。
甘味処の新作メニューを刹那と一緒に堪能する。
奢ってもらっている世界は無邪気に喜んで食べた。
その様子を生温かい目で見守るのが刹那である。
読了ありがとうございます。
刹那に相談をすることで、可憐のストーカー対策は恋人のフリ以外で対策が取れます。
むしろ世界を守るために積極的に刹那が動いてくれました。
文字通り、お話にならないほどに解決が早いです。
世界が受付、刹那が実行。
まさに適材適所でどちらも必要な存在でしょう。
刹那は接客が苦手のようで、コミュニケーションの系統が弱点といえるでしょう。クラス委員とは勝手が違うようです。
逆に世界はその方面に長けていて、刹那の弱点をカバーできます。
お互いに違う個性だからこそ、助け合って円滑に事が進む良い関係だと思いました。