World Days(新版)   作:完結の陽炎

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第3話「桂心との交流」

 言葉には心という歳の離れた妹がいる。

 もうすぐ小学校高学年になる心は、変わらず元気いっぱいで――

 性格が人懐っこくて明朗快活。

 お泊りに来る世界と刹那によく遊んでもらった。

 

 世界からは運動系の遊び。

 心が園児の頃に肩車をしてもらった。

 世界の背中に乗ってのお馬さんごっこもした。

 家の中に隠しての宝探しごっこも楽しかった。

 

 刹那からは頭脳系の遊び。

 心が園児の頃に絵本の読み上げをしてもらった。

 トランプを使ったカードゲーム。

 オセロやすごろくのようなボードゲーム。

 そういったゲームの類をメインに楽しんだ。

 

 お互いに正反対なタイプ。

 それでも仲が良い世界と刹那。

 心から見ても不思議な関係である。

 

 ある日に世界と刹那が来てくれた。

 心がはしゃぎ回って世界に抱き着く。

 しばらく見ない内に大きくなった。

 お互いに時の流れを実感する。

 

「こころちゃん、何かリクエストある?」

「うーんとね、世界さんとお姉ちゃんのチャンバラが見たい」

「ダメよ心。危ないでしょ」

「危なくないよ。玩具なら平気だもん」

 

 姉に注意されても平気な顔で玩具の剣を持って来る。

 それを世界が受け取って状態を確かめた。

 

「へえー、スポンジみたいに柔らかい。さすがに鞘はないけど、イメージでやればいいかな?」

「世界ちゃん、心の言うことは聞かなくていいです。甘やかすとつけ上がってしまいますから」

 

 言葉がアイコンタクトで刹那に助けを求める。

 

 首を横に振られた。

 こうなった世界は止まらない。

 それを暗に示している。

 

 一回だけという条件で渋々と引き受けるしかない。

 言葉の部屋は広々としており、居合の踏み込みをするのに特に支障はなかった。

 

「ことちゃん、先手は私に譲って」

 

 絶対に先手でなければいけない。

 そうでなければ速すぎて何もさせてもらえないから。

 実力の差があっても世界は見栄っ張りである。

 

「はい。いつでもどうぞ」

 

 両者は居合腰で玩具の剣を構える。

 その表情は引き締まって真剣そのものだ。

 世界が忍び足のごとくジリジリと間合いを詰める。

 

 ゆっくりと焦らずに。

 

 言葉の呼吸に乱れはない。

 いつでも対応ができるようだ。

 

 見守る刹那が固く手を包むように握る。

 心はキラキラと目を輝かせていた。

 

「……」

 

 世界は見栄を張ったことを少し後悔する。

 言葉の隙が一向に見つからない。

 どこから打てばいいのか全く見当がつかない。

 正面から勝てる気が一切しないのだ。

 

 これは負ける。

 返り討ちになる未来しか想像ができない。

 小学生の頃の惨敗が蘇ってくる。

 それでも覚悟を決めてやるしかない。

 

 鞘を抜くイメージで大きく踏み込んでの一太刀。

 ここぞのタイミングに言葉が振り抜く。

 

 一瞬、交差した剣が空気を切り裂く音を残し――

 次の瞬間、世界の手から剣が宙を舞った。

 小学時代のチャンバラ再来である。

 刹那と心が当たらない方向へ飛ばしている。

 言葉が狙ってやったことは明らかだ。

 

「くっ……」

 

 鳥肌を立たせて一瞬だけ世界の身が震える。

 だが観客の前で無様を曝け出せない。

 気を引き締めて残心を貫く。

 そして定位置に戻り両者ともに一礼を済ませた。

 

「世界ちゃん、お怪我はありませんか?」

 

 言葉が駆け寄って世界の手を優しく包み込む。

 先ほどの鋭い刃物のような脅威がない。

 いつものおっとりとしたお嬢様の優しい雰囲気だ。

 

「うん大丈夫。でもあんなの凄すぎて、絶対私はマネできないよ」

「世界、ことぴーに勝てると思った?」

「全然。こころちゃんが喜んでくれるなら、負けても悔いなしだよ」

 

 刹那の問いに本心で答える。

 そうでも思わないとやってられない。

 言葉の底知れぬ実力を改めて痛感する。

 

 七海が気に入るのも納得だ。

 こういうギャップの魅力が言葉にあるから。

 

「ほら心、世界ちゃんにお礼は?」

「ありがとうございます世界さん」

「うん。こころちゃんが楽しんでくれたのなら何より」

 

 いずれにしても心が喜ぶならそれでいい。

 世界はやり遂げたという自己満足に浸る。

 

 呆れてため息をつくのが刹那。

 そういうところが世界らしい。

 だからこそ放っておけないし守っていきたい。

 

「……」

 

 言葉の視点では素直に感動をしている。

 世界の太刀筋は真っ直ぐで偽りがない。

 柔軟なフォームで美しかった。

 

 言葉の居合は相手を威圧して恐れさせる。

 世界の居合は相手を楽しませて喜ばせてくれる。

 同じ居合でも個性があるので実に奥が深い。

 

「刹那、私って弱いと思う?」

「そんなことない。立ち向かう世界の勇気、カッコ良かった」

「私よりも守ってくれる刹那のほうがカッコいいけどな」

「おだてても何も出ない」

「事実だもん」

 

 世界を守るため蹴り技を独学で覚えた刹那。

 今でも秘密の鍛錬を怠っていない。

 見世物にするつもりは毛頭なく、世界でも目にすることがない。

 

「せっちゃん、世界ちゃんのためにお強くなられて立派です」

「いいなぁー。こころも守ってくれる素敵な人がほしい」

 

 教わり与えられて覚える言葉。

 自ら進んで学び覚える刹那。

 どちらも賢いが、そこに至る過程は異なる。

 世界を守るため一貫して努力を続けていく。

 そんな刹那の在り方に言葉は憧れを抱くのであった。

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