世界最強の弟はとってもカワイイサメ人間   作:翁月 多々良

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 前回に入れる予定の話だったからやや短いかも……?



第11話∶久しぶりの■■■

 

 

 堅牢な守りの中。ハジメは少し前に交わしたユエとの会話を思い出す。

 

 

 

 『ハジメ……私の魔力も……もうそんなにない。攻撃系の魔法で殲滅するならまだしも、常時魔力を維持するタイプなら……そんなに持たない。』

 

 『因みにあと、どれくらいの時間持ちそうなんだ?』

 

 『………頑張っても……あと……』

 

 

 

 

 

   ♢

 

 

 

 

 

 「あと5分(・・)!!……何としても待たせるッだから……ハジメ!!」

 

 超回復も間に合わないほど枯渇した魔力を振り絞りユエがハジメへ思いを託す。オリジナル防御魔法“聖鎧”その本質は、考案したハジメの迷子になった弟を抱きしめてあげたい(・・・・・・・・・)と願う優しい思い。

 

 ハジメはまるであやす様に、同時に繋ぎ止めるように、優しく、そして強く、肘までしか無くなった左腕も使い、サメの魔物を抱きしめる。

 

 「ナナキぃいいい!!ッ」

 

 『GuRuUUUUUUUッッ!!』

 

 ハジメは必死に呼びかけるも、サメの魔物は知ったことかと、思いの外硬いそれに顎の力を強める。

 

 ガリガリガリッと聖鎧から金切り音が上がる。人外の咬合力でも砕けぬ結界は勿論の事だが、強力な結界に無理矢理押し当てられているのに、砕けないサメの牙、その硬度も尋常じゃない。

 

 するといつまでも進展しない状況にサメの魔物が動く。

 

 「ぐっ!?」

 

 その場で踏ん張り、必死に抱きついていたハジメ。しかし突如自分の体が後方へ押し出されるのを感じる。

 

 そのスピードはどんどん増していき、遂に壁の直ぐ側まで押し出されてしまった。

 

 「おい……おいおいおいおいおいッ!!?」

 

 目と鼻の先に壁が迫っているのに、減速する気配がない、寧ろ加速しだした事に、ハジメは嫌な予感に顔を青く染める。

 

 これは地球の野生動物もやっている事だが、今すぐ食べたい食料が硬い殻に覆われているとき、どのようにして取り出すか?

 

 答えは簡単……。

 

 

 

 ズガーーーンッ

 

 硬いものにぶつけて砕けばいい。

 

 「ガッハッ!!?」

 

 「ハジメッ!!」

 

 背中から壁に思いっきり叩きつけられたハジメはあまりの衝撃に血反吐を吐く。

 

 これがこの魔法の欠点。ハジメが弟とゼロ距離で触れ合いたいと願ったが故の弊害。

 

 結界と皮膚との空間は僅か数ミリ、それ故に衝撃にはめっぽう弱かったのだ。

 

 

 

 あと4分

 

 

 これを何度もやられては溜まったものではない。ハジメは足から“錬成”を発動させ、サメの魔物の動きを封じる。

 

 『GuWAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!』

 

 

 身動きが取れなくなり再び苦悶の叫びをあげるサメの魔物。

 

 あとちょっと、あとちょっとなのに!、いつまでも目的にありつけない事に苛立ち、憤怒の視線をハジメへと向ける。

 

 ギョロリッとこちらへ向く視線をハジメは真っ直ぐ見つめ返す。絶対に諦めないと……!。

 

 

 

 

 

 あと3ぷ━━

 

 パキンッ

 

 

 「ぐあぁああああッ!?」

 

 「そんなッ!?……どうして!?」

 

 

 ふとその時、なんと聖鎧にサメの魔物の牙が中程まで刺さったのだ。それはつまり、数ミリしか間のないハジメの身にも、サメの牙が袈裟型に、中程まで突き刺さったということ。

 

 既に限界なハジメの体に血飛沫が舞う。

 

 「ハハ……ま…マジか……」

 

 ハジメは驚愕する。前にも話した通り、この“聖鎧”は“聖絶”を圧縮したもの。強度もそれだけ集約されている。だというのに、弟の牙はそれを完全ではないとしても貫いてみせたのだ。呆れたチートぶりにもはや笑みさえこぼれ始める。

 

 

 

 

 あと2分

 

 

 

 一気に体から力が抜け、“錬成”も維持できなくなる。ハジメは出血により霞む視界で弟を捉える。

 

 自分を睨みつけるその瞳は、奈落の始まりのとき、爪熊が向けてきた物と同質の獲物を見る目。

 

 

 

 それを見てハジメは思う。

 

  ナナキ……やっぱり……怒っているのか?

 

  約束を守らなかった俺を……恨んでいるのか?

 

  

  そりゃ……

 

 

  そうだ……

 

 

 

  弟を……こんなに泣かせて……俺は……

 

 

  最低な兄貴だ……。

 

 

 

 あと……1分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「だからこそ!!」

 

 

 そうハジメが叫ぶ。先程までの今にも死にそうだった表情は消え失せ、貪欲に生を追い求める修羅の表情に変わる。

 

 突如変わったハジメの雰囲気を感じ取り、サメの魔物が一瞬怯む。同時にハジメが一歩前へと足を踏み出す。

 

 

 「だからこそッぐぅッ……生きてッ……償わせてくれ!」

 

 

 ハジメは動いてしまったことで“金剛”が解かれ、更に牙が食い込むが構わない。

 

 

 「生きて……そばにいさせてくれ!!」

 

 

 また一歩、ハジメがサメの魔物を押し返す。

 

 

 「俺は……兄ちゃんは…、生きたいッ……」

 

 

 ピクリッと、サメの魔物から噛む力が抜ける。

 

 

 「ユエと……お前と一緒に……地球に……帰りたいんだ!!」

 

 

 今度はハジメは動いていないはずなのに、困惑か?恐れか?そう言った表情を浮かべ、サメの魔物が一歩、後ずさる。

 

 

 「だから……だからッ……」

 

 

 それを追うように、一歩前へ出たハジメは手に持つそれ(・・)を上に掲げて……

 

 

 

 

 「だからッ!さっさと目ぇ覚ませッ馬鹿ナナキぃいいい!!」

 

 

 それ(・・)を……

 

 オーバーオールから剥ぎ取った。サメのアップリケ(・・・・・・・・)をサメの魔物の鼻先へと叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スンッスンッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  なんだろう……とってもいいにおい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「……キ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  それに……とってもあったかい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「…ナキ」

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  ずっと……これをさがしていたような……

 

 

 

 

 

 

 

  「…ナキ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ずっと……ここに……かえりたかったような……

 

 

 

 

 

 

  「…ナキ」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  あぁ、もう……おなかいっぱいで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  たべられないよ……

 

 

  「ナナキ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  だれ?だれが……ナナキをよんでるの?

 

 

 

 

 

 「ナナキッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『アニィ(・・・)?』

 

 

 「あぁ、そうだ…。お前の (あにぃ) の、南雲ハジメさんだ……。」

 

 

 その時、サメの魔物………南雲ナナキ(・・・・・)の瞳から、狂気が消え失せ、血走った赤から、意志のある藍色へと変わる。

 

 

 『アにぃ……ッ」

 

 だが、変化はそれだけではない。

 

 

 「あにぃッ!!」

 

 ナナキの体は次第に縮んでいき、異形の姿から、元の年の割には幼く、少女と見まごう美貌を持つ、少年の姿へと戻っていく。

  

 

 「あにぃッ!!!」

 

 

 しかし、それも完全ではなく、明るい茶色だった毛髪は、サメの肌と同じ灰色へ、明るい日の色だった瞳は藍色へ、

 口内に生え揃う歯は一列だが、全てが鋭く尖っていて、首横左右には3本のエラ筋、手足には水かき、背中からは三角の背ビレ、腰からは身長の半分はあるだろう長さの、サメの尾ヒレが揺れている。

 

 元の姿よりだいぶ変質化(・・・)してしまったが、それはハジメも言えた義理ではない。

 

 「あにぃッ……あにぃ!!!」

 

 それに、あの穢れを知らない真っ直ぐなきれいな瞳も、小鳥の囀りのような可愛らしい声も、全て、全て、記憶のままに元通りになっている。

 

 あにぃ、あにぃと何度も、まるで確かめるように自分を呼ぶ弟を、ハジメは優しく抱きしめた。

 

 そして、いつかの朝のように、こう呟くのだ。

 

 

 「おはよう、ねぼすけさん(・・・・・・・・・・)ッ今回は大遅刻だったな?」

 

 

 

 「あっ……あぁ……う、うぅ……」

 

 それを聞いたナナキは溢れんばかりに見開かれた大きな瞳に限界まで涙を貯め、そして……

 

 

 「うわああああああああああああああああああああああああああああんッ!!」

 

 大きな声を上げて泣き叫んだのだった。

 

 

 「あにぃいいいいッ!!ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 

 抱きしめてくる兄を、更に強い力で抱きしめる。今回、ハジメもステータスが上がったことで情けなく怯んだりはしない。

 

 「ごめんなさい」何のことに対してか?

 そんなことは言うまでもないだろう。恐らく、ナナキはこれまでのことを全て覚えているのだ。自分が今まで何をしてきたのかを。

 ここでそれをいちいち追求するのは野暮というものだろう。

 

 故にハジメは残った右腕で弟の頭を撫でつけながら、

 

 「なぁに、気にすんな!弟の涙を止めるのに、腕の一本、眼球の一つぐらい……安いもんだ。」

 

 

 こう言ってのけた。

 

 端から見ても、主観から見ても。決してそれらは安い犠牲ではないはずだが、当のハジメは自分の大切(・・)の為ならと本当にそう思っていた。

 

 

 そうして、あらかた泣いたナナキはスンスンと鼻を鳴らしたかと思えば、ぐでっと力が抜けるように倒れる。

 慌てて抱き寄せたハジメが確かめてみれば、それは、ただ泥のように眠っているだけだった。

 

 まるで遊園地で遊び疲れた子供が、帰りの車で眠りにつくように、スーッスーッと体を丸めて規則正しい寝息を立てる。

 

 その様子に安堵したハジメが、ナナキの目の端に溜まった涙を拭うと同時、

 

 

 「ぬおっ!?」

 

 思い出したようにその身に疲労が現れ、視界がぐらつく。

そこへ、

 

 「ハジメぇ!!」

 

 

 

 今にも倒れそうだったハジメを、空気を読んで傍に控えていたユエが満を持して駆けつける。

 

 何とか地面に倒れる前に抱きとめることに成功したユエがハジメとその腕に抱えられたナナキをゆっくりと壁際へ寄せる。

 

 壁に全ての体重を預けるように脱力したハジメが一言、

 

 

 

 「流石に……もうムリ……」

 

 そんなハジメの様子に、クスリッと微笑んだユエは、ハジメとナナキをいっぺんに抱きしめて、 

 

 

 「お疲れ様でした。」

 

 労いの言葉を贈ったのだった。

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           

 

 

 

 

 

 

            〜久しぶりのあにぃ(■■■)〜 完

 

 

 

 





 道に迷った少年は、奈落の底で止まり木を見つけた〜



 なぁんつってぇ!

 というわけで、ちょっとした予告と言うか謝罪。

 今週末は三連休ですが、投稿をお休みさせてください!

 明日、FGO奏章3の中編が公開されるんです!!

 三連休ですぐ終わらせるんで!終わり次第執筆再開するんで!

 許してください!!

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