世界最強の弟はとってもカワイイサメ人間   作:翁月 多々良

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 ここで改めて、

 ナナキ君のイメージCVは 久野美咲さんのつもりで書いてます。


しゃーくあどべんちゃ〜ず・いんざ・らいせぇん編
第22話∶初めてのぼうけんしゃ!


 

 遠くに木製の塀と柵に覆われた小さな町が見える。町からでも俺たちが見える可能性を考慮して、今は魔力駆動二輪、シュタルフを“宝物庫”にしまい、徒歩に切り替えている。

 見える町は小さいと言っても、関所のような小屋が建てられていることから、門番を配置する程度の規模はあるようだ。それなりに、充実した買い物が出来そうだと

 

 俺、南雲 ハジメは自然と頬が緩るんだ。

 

 「……あの、機嫌がいいのなら、いい加減、この首輪取ってくれませんか?」

 

 街の方を見て微笑む俺たちに、残念ウサギ事シアがさっきからしつこく、首に嵌められたソレに指を差しながら、その要求を繰り返している。

 

 それは、シアの野郎が言うように黒を基調とした首輪で、小さな水晶のようなものも目立たないが嵌め込まれれている。この首輪はシア自身の力で取り外すことができない。

そのため、さっきからグチグチと文句を垂れていやがるのだが、俺だって何も嫌がらせでつけさせているわけではない。

 

 せっかくいい気分だったのを邪魔されたから、俺はシアのアホに向き直りちょっと不機嫌気味に口を開く。

 

 「あんま文句ばっか言ってんじゃねぇよ、何も窮屈な思いをさせてるのはお前だけじゃないだろ(・・・・・・・・・・)

 

 そう言うと俺は視線をナナキの方へと促す。

 

 今、ナナキはその全身、尻尾までをも覆い隠すフードがついた青色のコートで身を包んでいる。フードのところはサメの顔のイラストが描かれている。そして背中には大きなリュックを背負っている。

 

 青色のフードから揺れる黄金(・・)の髪と名前を呼ばれたことでこっちを振り返る真紅(・・)の瞳を潤ませ首を傾げている。

 

 「ナナキぃッ!ナナキかわゆす!」

 

 「うぅ〜ッ」

 

 

 相変わらず俺達の弟はカワイイ。残念なウサギなんてそっちのけで俺とユエの表情は自覚してるレベルでデレッデレである。

 ユエなんて自分とそっくり(・・・・・・・)になったナナキに更にメロメロになり、今でも抱きついて頬ずりしている始末だ。

 

 なぜナナキがこんな格好をしているか? 

 

 まずはじめに、今のナナキの容姿はかなり目立つ。

 

 その優れた容姿も含め、サメの尾ひれと背びれが生えた人間なんて、目立たないほうがおかしい。この間の帝国兵みたいな奴が居る可能性がある。そんな奴らをいちいち潰してたら時間もかかるし面倒だ。

 この世界での天職∶“変質者”を持つものへの扱い。ナナキから聞いたオルクス大迷宮まで来る道中の断片的な記憶の話。これらを総合して、ナナキが人前に出るのはかなりリスクがあると俺たちは考えた。

 

 だからナナキは人目がつく場所では基本、姿を隠す方針で行くことになった。

 

 当然だがこのコートもただのカワイイコートではない。俺お手製のアーティファクトだ。

 

 このコートの材質は“気配遮断”の代名詞。毎度おなじみタールザメさんの皮を材料にして作ってある。だがこのアーティファクトに備わった機能は気配を消すだけではない。それだけならナナキは関所なんぞ簡単に素通りできてしまう。

 

 しかし、俺は思う。

 

 それはあんまりにもナナキが可哀想だと!!

 

 勿論、俺たちの第一目標は何の面倒もなく地球に無事に帰還することだが、その傍ら少しくらい異世界を満喫してみたいと思ってしまうのはオタクの性だろう。異論は認めん。

 

 俺が満喫する中、ナナキだけ細々と隠れて居ないといけないなんて、俺は耐えられない。影に隠れながらナナキがこちらに向けてくる寂しそ〜うな表情を想像するだけでも胸が張り裂ける思いだ。

 

 だから俺は頑張った。ちょーちょーちぅぉおおおおおッ頑張った!

 

 このコートの前を止めるボタン3つ。これは生成魔法で作った阻害石特定亜石そして変質石と言う物でできている。

 

 この3つのボタンは3つ全てがセットで一つのアーティファクトになっている。名付けてシュテルンヘルト

 

 3つの内一番上が変質石、真ん中が特定亜石、最後一番下が阻害石だ。

 まず最初に、一番下の阻害石に魔力を通す。阻害石には“気配遮断”が付与されていて、元々その技能の持ち主であるタールザメさんの皮にその力を浸透させる。元の持ち主なだけあって、魔力がよく行き渡る為、完璧に気配を消すことができる。

しかし これだけでは、某猫型ロボットが持つ透明マントと変わらない効果だ。

 故に、ここで生きてくるのが変質石と特定亜石。

 

 特定亜石は特定石と似ているが、

 付与されているのは“魔力感知[+特定感知]”同じ感知系でも特定石とは違ってこっちは魔力を感知する。

 

 故に特定()石なんだ。

 

 そして、阻害石からタールザメさんの皮を伝って来た魔力を特定亜石が特定の、“気配遮断”の魔力を感知すると、最後の変質石が作動する仕掛けになっている。

 

 最後の変質石には、ナナキの“変質化”(・・・・・・・)が付与されている。変質石に注がれた魔力を、予め吹き込まれた魔力の()に応じて変質させることができる。

 

 これを作るのは本当に大変だった。最初は阻害石だけで、他の鉱石のように注いだ魔力の量で気配を調節してなんとかならないかと試したが、ただ気配遮断の程度が上下するだけ……

 

 このままじゃセルフ遠藤になるだけだった。

 

 そこで諦めかけて単純に変装させるか?と考えが過ったその時だった。

 

 「うぅ〜、ナナキがサメいがいにへんしんできたら、よかったのになぁ〜」

 

 ナナキの何気ない一言で妙案を思いつく。

 

 

 そん時は思わず「それだぁあああ!!」と叫んだほどだ。

 

 そう、ナナキたち(・・)も一応“生成魔法”を習得している。適性がないだけで全く使えないわけじゃない。

 

 そこでナナキにも手伝ってもらい、ナナキの“変質化”の魔力を鉱石に注いでもらう。技量不足は俺がバックアップする形でだ。

 しかしそれだけだと、ただのサメに変質するナナキの魔力でしかないので何の意味もない。

 

 そこで更に、もう一人“生成魔法”を持つものに協力してもらう。

 

 そう、ユエだ

 

 変質石には既に変質化の魔力を注いだので、ユエには技能の付与ではなく、ただ“吸血鬼”由来の魔力を注いでもらうだけでいい。言うなれば最後の仕上げのようなものだ。

 

 これを俺が頑張って纏め、生成して、生み出されたのが“変質石”だ。

 

 これ一個作るだけで3人もの労力を使っている。勿論かなり無理した生成方法な為、失敗は数え切れないほどしたし、なんとか完成した時は、3人で泣きながら抱き合って喜んだのはまだ記憶に新しい。

 

 まぁ、泣いたのは俺とユエだけで、ナナキは疲れて半分おねむだったが、まぁ細かいことは気にしない。

 

 こうして生まれた変質石は特定亜石によって送り込まれた気配遮断の魔力に反応して、ナナキの魔力の性質を“吸血鬼”のものに変質させる事ができる。

 

 よって、このコートをナナキが身につけている間。ナナキの気配だけは(・・・)吸血鬼のものに偽装することが可能で、今も本当の姿はなにも変化していないはずなのに、フードの奥に見えるナナキの灰銀色の髪は、ユエと同じ黄金に見える(・・・)し、藍色の瞳は、ユエと同じ真紅に染まっているように見える(・・・)んだ。

 

 コートの下の尻尾の膨らみは質量が消えたわけじゃないから健在なのだが、荷物かなんかに見えて(・・・)全く気にならないのだ。

 

 

 

 え?大仰な制作過程の割に効果は大した事ない?

 

 星の英雄(シュテルンヘルト)って名前負けしてるって?

 

 あ”っ?

 

 シバかれれてぇのか?この野郎!!めっちゃすげぇじゃねぇか!

 

 高度な“気配感知”を持っている俺が、そう見えている(・・・・・)だけでも強力なアーティファクトなんだぞ?

 

 ……まぁ、その……地味なのはぁ、

 

 その……認めるけど…さぁ。

 

 

 でもやっぱり結構無理して作ったからか欠点はある。それは完全に体を覆い隠さないと効果がないって点にある。

 

 いくら尻尾まで隠せても、フードを取るだけでその効果は切れてしまう。顔はシッカリ見えるようにしてはあるから、身分確認のためにフードを取れとは言われないと思うが……ここは完全に賭けだ。

 

 万が一のときは尻尾の存在さえ、絶対に悟らせないようにすればナナキの見た目は完全に人間な為、誤魔化せる可能性は高い。

 

 手も水掻きを見られても耳が人間のため、海人族でないことが露呈して即効アウトだから、ナナキの武器、キーファとファングのトゲを全て取り外してちょっと大きめのグローブみたいにして装着させてある。

 

 

 あぁ、ナナキ。不甲斐ない兄ちゃんを許してくれ。

 

 本当は異世界の町を自由に満喫したいだろうに、窮屈を強いられて……。

 

 「ナナキが我慢してんだからお前もくどくど言ってんじゃねぇよ!」

 

 「いやッどこが我慢してんですか!見てくださいよあれ!飛び回ってますよ!テンション爆上げでお尻フリフリして尻尾見えちゃいそうですよ!」

 

 残念シアが怒号を上げながら指をさす場所に目を向ける。

 

 ナナキはこの世界に来てからずっと城に居たからな、ホルアドには来てたが状況的に、満喫なんてする暇はなかっただろう。だから実質、これから行く町がナナキにとって初めての異世界の町。ということになるだろう。

 

 テンションが上って俺たちを置いて走り出し、飛び回り、おかしいくらいに上がったテンションで楽しくなってお尻フリフリダンスの一つもするもんだろう。

 

 頭がおかしくなるほどカワイイってこと意外特におかしなとこは見えない。

 

 「何か問題あんのか?」

 

 「いやいや大ありじゃぁないですかァ!!ブラコン極まりすぎてその目節穴になったんですかァ!?さっきあのコートの欠点を長々と説明してたでしょぉ!あの調子だと正体なんてすぐバレバレでしょぉ!

 それなら、私もこんな首輪してる意味ないじゃないですかぁ〜」

 

 はぁ〜あ、何かと思えば結局そっちに話を持っていくのか。俺は呆れた目で残念シアを一瞥したあと、いちいち説明してやるのも億劫なのでその後発せられた文句は全てスルーして、先の方まで走っていこうとしてたナナキを呼び止めた。

 

 

 ………あのまま放置してたら一人で関所まで行ってたな

 

 ………危なかったぁ~ッ

 

 俺は少し気を引き締めることにした。

 

 そして、俺をブラコン呼ばわりした残念ウサギは後で泣かす。

 

 

 

 

 「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

 俺達が町にたどり着けば、門横の詰所らしき小屋から案の定。どこかやる気なさげに声を出した男が俺達を呼び止める。

 革鎧と長剣で武装した格好は、兵士というよりかは冒険者に見える。

 

 その男に俺はステータスプレートを提示する。

 

 「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」

 

 ふ~んと気のない声で相槌を打ちながら門番の男が俺のステータスプレートをチェックする。そして、目を瞬かせた。ちょっと遠くにかざしてみたり、自分の目を揉みほぐしたりしている。

 何やってんだこいつ?と俺は門番の様子みて、思ったが「あっ、ヤベ、俺の(・・)を隠蔽すんの忘れてた」とポカやらかしたことに内心冷や汗を流す。

 

 ステータスプレートにはステータス数値や技能を隠蔽する機能が備わっている。

 

 ナナキの“変質者”を隠す事に神経を注ぎすぎた結果。自分に対する注意が疎かになっていた。俺は咄嗟に「魔物に襲われた際に故障した」と嘘を並べる。

 

 「こ、故障?い、いやしかし……」

 

 門番は混乱するが無理もない。俺のステータスはレベルの表示がされず、ステータスの数値も技能欄の表示もめちゃくちゃだからだ。ステータスプレートの紛失は時々聞くが、壊れた(表示がバグるという意味で)という話は聞かないことだろう。

 

 なので普通なら一笑に付すところだが、現実的にありえない表示がされているのだから、どう判断すべきかわからない。そういった感じだ。

 

 俺は困った風に肩をすくめて畳み掛ける。

 

 「壊れてなきゃ、そんな表示おかしいだろ? まるで俺が化物みたいじゃないか。門番さん、俺がそんな指先一つで町を滅ぼせるような化物に見えるか?」

 

 両手を広げておどけるような仕草を見せてやると、門番の男は苦笑いをする。まぁ現実的じゃないステータスの表示を信じるよりも、こっちのほうが俄然まともだろう。

 

 例え聞いたことのないステータスプレートの故障事案だとしてもだ。

 

 「はは、いや、見えないよ。表示がバグるなんて聞いたことがないが、まぁ、何事も初めてというのはあるしな……そっちの三人は……」

 

 門番がユエ、ナナキ、残念シアにステータスプレートの提示を勧めようとして、三人に視線を向ける。そして硬直した。みるみると顔を真っ赤に染め上げると、ボーと焦点の合わない目でユエとシア、そしてナナキを交互に見ている。

 ユエは言わずもがな、精巧なビスクドールと見紛う程の美少女だ。

 そして、残念なシアも喋らなければ残念さが露呈することがない神秘性溢れる美少女である。

 更にナナキは性別さえ明らかにしなければ、幼い見た目ながらも紛うことなき美少女だ。

 

 つまり、門番の男は三人に見惚れて正気を失っているらしい。

 

 ゴホンッ とわざとらしく咳払いをしてやれば、ハッ慌てて視線を俺に戻す門番。

 

 「こっちの小っこいのは、後ろの方で庇ってたから無事だったんだが、そっちの子はさっき言ってた魔物の襲撃のせいで無くしちまってな、兎人族の方は……分かるだろ?」

 

 その言葉だけで門番は納得したのか、なるほどと頷いてステータスプレートを俺に返す。

 そして改めてナナキにステータスプレートのの提示を促してくる。

 

 「……よし、何の問題もないようだ。確かにこんなにちっちゃな子を連れていればステータスプレートに気を配る余裕も無くなるな。」

 

 「あぁ実はそうなんだよ。まぁ俺が不甲斐ないのがそもそもの原因だしこの事態も甘んじて受け入れるさ」

 

 ナナキのステータスは子供であれば妥当な数値にしてある。こうやって一人まともなステータスプレートを所持していれば、さっきまで俺が言っていた嘘にも説得力が出る訳だ。

 

 「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか? あんたって意外に金持ちか?奴隷だけじゃなくそんな美少女を二人も連れて……」

 

 門番の男が羨望と嫉妬、そしてほんの僅かな忌避の入り交じった表情で俺達に視線を向けてくる。この忌避は門番がナナキを見た後俺に視線が移ったときに感じたものだ。

 羨望と嫉妬は兎も角、忌避の目はちょっと納得いかん。

(おい、それは俺がロリコンだといいたいのか?)と言及してやりたいところだったが、その気持ちをグッと抑えて何も言わずに俺達は町へ入ろうとした……

 

 

 

 

  だが……

 

 

 

 

 

 

 「うぅ?ナナキ。おんなじゃないよ?

 

 「えッ?」

 

 

 「「「あ……」」」

 

 ナナキが門番に向けて爆弾級の発言を投下した。

 

 俺達は、万が一ナナキが指名手配でもされていようもんならナナキの事を女で通してカモフラージュしようと話していたのだ。だが、正直者な俺の弟はものの数秒で見事にばらしちまいやがった。

 

 

 いや、まだ挽回はできるか?門番の男が「女じゃ……ない……?その見た目で……え?」などと先程以上に混乱しているところにすかさず割り込む。

 

 「あ~違う違う!そうじゃなくて、こいつは俺の女(・・・)じゃ無いってことだ。なっ?ユエ」

 

 「ん……そう、この子は私たちのむす「きょうだいだ!」むぅ〜ッ」

 

 ユエに話を振ったらアホみたいな事を言いそうだったので未然に阻止する。コラッむくれてもダメッ!

 

 俺の話を聞き門番の男が、ナナキの首を抱くようにして抱きしめるふくれっ面のユエとナナキの顔を交互に見つめる。

 

 「あ、あ~ぁなるほど、姉妹(しまい)か!」

 

 「そうだ。姉妹(きょうだい)だ!」

 

 ここで俺から『しまい』と音に出せばナナキがまた余計な口を挟む。だから俺からは頑なに『きょうだい』としか口に出さない。

 ナナキはユエの事も姉認定している為、姉弟(きょうだい)であることには変わりないから嘘ではない。

 

  

 「確かに、よく見たら似てる気がするなぁ……。悪かったよ勘違いして……」

 

 「いやいや、勘違いは誰にでもあることさぁ〜俺達も気にしてない」

 

 「そうか」

 

 「そうだ」

 

 「「アハハハ〜ッ」」

 

 どうやら納得したらしい。確かにシュテルンヘルトのおかげで今のナナキは、ユエと色だけだが似た容姿になっているからなんとか誤魔化すことができた。

 

 その後その門番とは何のわだかまりもなく別れることができた。去り際に素材の換金場所を聞けば、冒険者ギルドの場所とその場で簡単な町の地図が貰えることまで親切に教えて貰えた。

 

 

 門番から得た情報でこの町の名はブルックと言うことが分かった。町中はそれなりに活気があり、かつて見たオルクス近郊の町ホルアドほどではないが露店も結構出ており、呼び込みの声や、白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。

 

 こういう騒がしさは訳もなく気分を高揚させるものだ。俺だけでなく、ユエも楽しげに目元を和らげている。ナナキなんて手をしっかり繋いでいなければあっちこっち走り回っていたことだろう。「おぉ〜ッ」と感嘆の声を上げて忙しなくキラキラした視線を右往左往させている。

 しかし、残念シアだけは先程からぷるぷると震えて、涙目で俺の方を睨んでいた。

 

 チッ 何だったんだ?楽しい気分に水差しやがって。

 

 「どうしたんだ? せっかくの町なのに、そんな上から超重量の岩盤を落とされて必死に支えるゴリラ型の魔物みたいな顔して」

 

 「誰がゴリラですかっ! ていうかどんな倒し方しているんですか! ハジメさんなら一撃でしょうに! 何か想像するだけで可哀想じゃないですか!」

 

 「……脇とかツンツンしてやったら涙目になってた」

 

 「……じゅるり」( ̄﹁ ̄*)

 

「まさかの追い討ち!? 酷すぎる!ナナちゃんは思い出したように涎垂らさないで下さい!その魔物の最期を思うと背筋が凍りますぅ〜ッ ってぇ!そうじゃないですぅ!」

 

 怒って、ツッコミを入れてと大忙しの様は正に残念なウサギ。手をばたつかせて体全体で「私、不満ですぅ!」と訴えてきている。

 因みに俺が話したエピソードの魔物とナナキが思い出してるのはおそらく別個体だろう。まだ俺達が合流する前の話だったからな。

 

 「これです! この首輪! これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか! ハジメさん、わかっていて付けたんですね! うぅ、酷いですよぉ~、私達、仲間じゃなかったんですかぁ~」

 

 どうやらコイツは意図した奴隷扱いにショックで怒っているらしい。同然だが、俺がが付けさせた首輪は本来の奴隷用の首輪ではなく、残念シアを拘束するような力はない。それは、コイツもわかっている筈なんだが……はぁ~めんどくせぇ

 

 俺は頭を掻きながら残念シアに目線を合わせる。

 

 「あのなぁ、奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないだろう? まして、お前は白髪の兎人族で物珍しい上、容姿もスタイルも抜群。断言するが、誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って十分も経たず目をつけられるぞ。後は、絶え間無い人攫いの嵐だろうよ。面倒……ってなにクネクネしてるんだ?」

 

 文句の無いように俺が説明してやるとなんかウザウサギが頬を赤らめイヤンイヤンし始めた。ユエが冷めた表情をナナキが不思議そうな顔でウザシアを見ている。

 

 なんか勘違いしたのか「世界一カワイイなんてぇ♡」と言ってもいない言葉で悶えていた。

 

 「フンッ!」

 

 「ぶげらっ!?」

 

 その後無事ユエの黄金のストレートによって制裁を受け、可愛げの欠片もない悲鳴をあげていた。

 

 「……調子に乗っちゃだめ」

 

 「……ずびばぜん、ユエざん」

 

 

 別の意味で赤くなった顔を擦る残念シアを見てナナキが俺から手を離して側に寄ると擦る手の上から更にその手を添える。

 

 すると

 

 「ウサギさん……いたいのいたいの、とんでけぇ〜!」

 

 と間の抜けた声とともに天に手を振り上げた。 かわいい。

 

 「ウサギさん、だいじょうぶ?」

 

 「はうぅッ!ナナちゃんの優しさが染みますぅ。

 そして私の名前はシアですぅ……」

 

 「ユエあねぇも、あんまりつよくしちゃダメッもっとやさしく!」

 

 「うぅ……ごめんなさい」

 

 

 そこは、「叩くな」と言わないのかと言う思考が一瞬よぎったが、ナナキがかわいいからどうでもよくなった。

 

 その後は、奴隷と言う身分が逆に残念シアを守っている事、それによって齎されるトラブルを回避してることを懇切丁寧に教えてやるも、理解はしているが納得はできないと言った具合にまた顔を曇らせる残念シア。

 そこに今度はユエが声をかける。

 

 「……有象無象の評価なんてどうでもいい」

 

 「ユエさん?」

 

 「……大切な事は、大切な人が知っていてくれれば十分。……違う?」

 

 「………………そう、そうですね。そうですよね」

 

 「……ん、不本意だけど……シアは私が認めた相手……小さい事気にしちゃダメ」

 

 「……ユエさん……えへへ。ありがとうございますぅ」

 

 

 ユエの言葉に気分を持ち直し俺の方に視線を向ける。何かの言葉を期待するように。

 

 仕方ねぇから俺も言葉を紡ぐ。

 

 「まぁ、奴隷じゃないとバレて襲われても見捨てたりはしないさ」

 

 「街中の人が敵になってもですか?」

 

 「あのなぁ、既に帝国兵とだって殺りあっただろう?」

 

 「じゃあ、国が相手でもですね! ふふ」

 

 「何言ってんだ。世界だろうと神だろうと変わらねぇよ。敵対するなら何とだって戦うさ」

 

 「くふふ、聞きました? ユエさん。ハジメさんったらこんなこと言ってますよ? よっぽど私達が大事なんですねぇ~」

 

 「……ハジメが大事なのは私とナナキだけ」

 

 「ちょっ!、空気読んで下さいよ! そこは、何時も通り『…ん』て素直に返事するところですよ!ほらっ、ナナちゃんからもさっきみたいに何か言ってあげて下さい!」

 

 「うぅ?なにか?」

 

 「何を言っても無駄……ナナキは私たちの味方」

 

 「あー!ちゃっかりたち(・・)って私を省きましたね!」

 

 「何のこと?」

 

 「もぉーユエさん!」

 

 文句を言いながらもナナキを挟んでじゃれ合ってるようにしか見えない二人を尻目に俺は首輪について説明する。

 

 シアの首輪にはナナキのと同じ特定石(・・・)、そしてもう一つ念話石(・・・)というのもが取り付けられている。これには文字通り“念話”を鉱石に付与しており特定石や他の石同様、込めた魔力量に比例してその効果の程度は上下する。多く魔力を込めればそれほど遠方と念話が可能になる。

 もっとも、現段階では特定の念話石のみと通話ということはできないので、範囲内にいる所持者全員が受信してしまい内緒話には向かない。

 

 「必要なら使え。魔力を通せば使えるから」

 

 「ほえ〜」

 

 「おぉ〜 ぉ?」

 

 俺の説明にシアとナナキが感心の声を上げる。ナナキはよくわかっておらず「なんかすげ~」ぐらいの理解度だろう。 多分。

 

 その後も、シアが残念な感じに俺にちょっかいをかけるのをユエが諌め、シアがこれまた残念な感じにナナキ泣きつくも、思考を誘導されたナナキを味方につけたユエがシアをいびる。というなんとも騒が……

 

 ゴホンッ 仲が良い感じにメインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さく見える。

 

 俺は看板を確認後、その重厚そうな扉に手を掛ける。

 

 

 中に入ってみれば意外にも内観は清潔にされていた。

俺はてっきり、荒くれ者な冒険者のイメージから勝手に薄汚れた場所をイメージしていたんだが……。

 

 そんな入口正面にはカウンターがあり、左手は飲食店になっているようだ。

 何人かの冒険者らしい者達が食事を取ったり雑談したりしている。誰ひとり酒を注文していないことからすると、元々、酒は置いていないのかもしれない。酔っ払いたいなら酒場に行けというこったろう。

 

 俺達がギルドに入ると、まぁ当然だがかなりの視線が集まった。最初こそ、見慣れない四人組ということでささやかな注意を引いたに過ぎなかったが、奴らの視線がユエとシア、そしてナナキに向くと途端に瞳の奥の好奇心が増す。中には「ほぅ」と感心の声を上げる者や、門番同様、ボーと見惚れている者、恋人なのか女冒険者に殴られている者もいる。平手打ちでないところがなんとも冒険者らしい。

 

 テンプレの如くちょっかいでもかけられると思ったが意外に理性的で様子を見るだけに留っている。

 

 「面倒事にならず好都合だな」

 

 俺はそのままカウンターに向かうと、

 

 大変魅力的な……笑顔の恰幅の良いオバチャンがいた。

 

 横幅はユエ2人分はあるだろう。ギルドの美人受付嬢は幻想なのかと俺が人知れず落胆していると、逆にナナキはそのオバチャンの優しそうな雰囲気に気を許し一人先走ってカウンターに駆け寄っていった。

 

 「こんにちはぁ!」

 

 「はぁいこんにちは、

  ちゃんと挨拶ができて偉いねぇ()や」

 

 オバチャンも、カウンターに両手を掛け顔をちょこんと覗かせ眩しい笑顔を向けるナナキに快く対応していた。

 

 

 ━━ん?ちょっと待て……坊や?

 

 「アンタ、コイツが男ってわかんのか!?」

 

 「「「「「えッ!!?」」」」」

 

 

 俺の発言にユエとシアを含め、その場が一切にどよめく。中には「男!?」「そんなバカなぁ!!」「なんてレベルの高い男の娘なの!?」などと言う声も聞こえてくる。

 

 「人の性別間違えるほど耄碌した覚えはないよぉ全くッ。

 こっちの子と違ってアンタは随分と失礼な奴だねぇ。さっきアタシを見てだいぶ失礼なことを考えていたようじゃないかい?悪かったねぇ美人受付嬢じゃなくて。」

 

 間違い無いように言っておくが、別に俺は美人受付嬢を期待していたわけじゃない。していないったらしていないんだ!

だから、ユエと残念シアは、冷たい視線を向けるのは止めて欲しいです。いやマジで……。

 

 そのままそのオバチャンは目の前にちょこんと出たナナキの頭を豪快に撫で回しながら人好きするニコニコな笑顔で、

「両手に花を持ってるのにまだ足りないのかい?」などとそんな事を口走る。

 

 ……このオバチャンは読心術の固有魔法何かを持ってるのかもしれないと、俺は頬を引き攣らせながら何とか返答する。

 

 「いや、そんなこと考えてないから」

 

 「あはははは、女の勘を舐めちゃいけないよ? 男の単純な中身なんて簡単にわかっちまうんだからね。嬢ちゃんたち、この息子(・・)ちゃんが真似しないように旦那の教育はシッカリしておくんだよ」

 

 「ん!任せ━━「そいつは息子じゃなくて弟だが……まぁ忠告はしっかり胸に刻むよ」━━むぅ〜ッ」

 

 またユエがナナキを勝手に自分の子供にしようとしたのでしっかりと注釈を入れておく。 だからユエ、むくれてもダメだって。

 そんな俺達の様子を見て「おっと、そいつは悪かったねぇ」と楽しげな笑顔を見せるオバチャン。

 わかっててやってんなぁ?この人……。何とも憎めないオバチャンだ。

 

 「さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何だい?」

 

 その後、素材の買取を頼んだ俺達にオバチャンはステータスプレートの提示を促してきた。

 

 「ん? 買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」

 

 俺の疑問に「おや?」という表情をするオバチャン。

 

 「あんた冒険者じゃなかったのかい? 確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

 

 「そうだったのか」

 

 オバチャンの言う通り、冒険者になれば様々な特典も付いてくる。生活に必要な魔石や回復薬を始めとした薬関係の素材は冒険者が取ってくるものがほとんどだ。町の外はいつ魔物に襲われるかわからない以上、素人が自分で採取しに行くことはほとんどない。危険に見合った特典がついてくるのは当然だった。

 

 「ぼうけんしゃ!!」

 

 すると突然ナナキからはしゃいだような声が上がる。

 

 「あにぃ!ナナキ、ぼうけんしゃッやりたい!」

 

 そう言うとナナキは俺の方に振り向いて瞳をキラキラさせて“シュテルンヘルト”のお陰で気にならないが、コート下の尻尾もブンブン振り回している。

 

 前も話したが、ナナキは俺の英才教育によって浅くはあるがオタクの端くれ。『冒険者』という響きが、琴線に触れたのだろう。テンションMAXである。

 

 「ハッハッハ良いんじゃないかい?他にも、ギルドと提携している宿や店は一~二割程度は割り引いてくれるし、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするから良い事づくめさ。どうする? 登録しておくかい? 登録には千ルタ必要だよ」

 

 「う~ん、そうだな。ナナキもこう言ってるし、せっかくだから登録しておくかな。悪いんだが、持ち合わせが全くないんだ。買取金額から差っ引くってことにしてくれないか? もちろん、最初の買取額はそのままでいい」

 

 「可愛い子二人もいて、おまけにこんな小さい子を連れてるのに文無しなんて何やってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ?」

 

 おいおいこのオバチャンかっこ良すぎだろう。おれは、その厚意を有り難く受け取っておくことにして、ナナキの分と一緒にステータスプレートを差し出す。今回は俺もしっかり隠蔽済みだ。ユエとシアも登録を勧められたが丁重に断った。2人の場合、ステータスプレートの発行からするので隠蔽が間に合わず化け物じみたステータスや技能欄が顕わになって目立ってしまうからである。

 

 少ししておばちゃんからステータスプレートが返されると、天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに冒険者と表記され、更にその横に青色の点が付いている。

 

 青色の点は、冒険者ランクで、上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。

 

 ちなみに、この世界の貨幣、ルタだが、冒険者ランクと同じ青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、左から一、五、十、五十、百、五百、千、五千、一万ルタとなっている。

 

 つまり、青とはお前は一ルタ程度の価値しかねえよ。と言われているのを同じだ。これを考えた人間は性格がねじ曲がっているとしか思えない。

 

 まぁ、そんな事お構い無しにうちの弟は、

 

 「ぼうけんしゃ♪ぼうけんしゃ♪これでナナキもぼうけんしゃ〜♪」

 

と俺達の周りを飛び跳ねながらはしゃいでいる。何時間でも見てられるが、公共の場で騒いでたら迷惑なので丁度俺の目の前に来た時にひっ捕まえていおいた。

 

 「男なら頑張って黒を目指しなよ? お嬢さん達にカッコ悪いところ見せないようにね」

 

 「ああ、そうするよ。」

 

 「アンタもだよ坊や、将来大きくなっていい子ができたとき、その子が楽できるようにがんばんな!」

 

 「うぅ?いいこ?」

 

 オバチャンは俺だけでなくナナキにも激励の言葉をくれるが、ナナキは『いいこ』の意味がわからず首を傾げる。

 

 「坊やにはまだ早かったか、まぁ簡単に言うと大好きで大事な人なことだよ」

 

 

 オバチャンはきれいなウインクをしてナナキそう説明する。するとナナキは納得いったように笑顔で口を開く。

 

 「それならだいじょうぶだよ!ナナキね、もっとつよくなってね、ちちとははと、あにぃとユエあねぇと、そしてウサギさんたちおともだちをまもってあげるの!!」

 

 そのナナキの言葉にその場は一瞬静寂に包まれる。俺と、ユエ、ついでに残念シアは感無量といった具合に天を仰ぎ眩しすぎる弟に3人揃って手で目を押さえひとしきり感動していた。相変わらずシアの野郎だけは小声で「シアですぅ」と呟いていたが。

 

 ギルド内でたむろしていた冒険者連中も温かい目でナナキを見つめている。厳つい見た目の野郎共がニンマリ微笑んでいるのは非常にキモかったが。

 

 目の前の受付のオバチャンも一瞬きょとんとしていたが直ぐその顔が破顔すると大きな声で気持ちよく笑っていた。

 

 「ハッハハハハハ!!そいつは良いねぇ!それなら兄貴を反面教師にして頑張るんだよ!」

 

 「おいッ最後の余計だろ!!」

 

 理不尽になじられた俺が声を上げるもオバチャンは全く動じない。周りもユエはともかく、残念シアを含めた他の冒険者連中からもちょこちょこと微笑ましげな笑いが聞こえてくる。

 しかし、こんな事でいちいちイライラしててもしょうがないと俺は一息ついて気を静めた。

 

 

 「はぁ~、……それで、買取はここで良いのか?」

 

 「ハッハッ構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

 オバチャンは受付だけでなく買取品の査定もできるらしい。俺は、あらかじめ宝物庫から出してナナキが背負っている大きめなリュックに入れ替えておいた樹海の魔物の毛皮や爪、牙、そして魔石をナナキと一緒に取り出す。肉はそもそも一般では使い所が無いのと、ナナキの食事用に別で保管してある。カウンターに取り出されていく素材を見て、オバチャンが驚愕の表情をしながら素材を手に取る。

 

 

 「こ、これは……!とんでもないものを持ってきたね…………樹海の魔物の奴だね?」

 

 「あぁ、そうだ。」

 

 「もりでね、いっぱいね、たおしたんだよ!」

 

 「そ、そうなのかい……樹海の素材は良質なものが多いからね、売ってもらえるのは助かるよ……でも、いいのかい?中央ならもっと高く売れるよ?」

 

 「いや、中央に行くのも手間だし、さっきも言ったが路銀がないからな、ここで大丈夫だ。」

 

 そうかい、と一言つぶやいたオバチャンはチラリとシアを見る。おそらく、シアの協力を得て樹海を探索したのだと推測したのだろう。樹海の素材を出しても、シアのおかげで不審にまでは思われなかったようだ。

 

 それからオバチャンは、全ての素材を査定し金額を提示した。買取額は六十九万三千ルタ。ナナキの食事用に多めに狩っていたとは言え結構な額だ。

 

 かなりの量の硬貨が入ったズタ袋を受け取り再びナナキのリュックに入れる。後で“宝物庫”に収納するつもりだが、ここでそれをやっては目立つためひとまずはそうする。

 

 「ところで、門番の彼に、この町の簡易な地図を貰えると聞いたんだが……」

 

 「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

 思い出したように俺がそう言うとオバチャンはカウンターの机からすんなりとその羊皮紙を手渡す。手渡された羊皮紙に描かれた地図は、地球の地図帳と見紛うほど中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。マジでこれが無料とは、ちょっと信じられんくらいの代物だ。

 

 「おぉ〜!オバチャン!えがじょうず!」

 

 「おいおい、いいのか? こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」

 

 「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

 

 オバチャンの優秀さがやばかった。この人何でこんな辺境のギルドで受付とかやってんの? とツッコミを入れたくなるレベルである。きっと壮絶なドラマがあるに違いない。

 

 「そうか。まぁ、助かるよ」

 

 「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、そこの嬢ちゃん二人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね。坊やの方も、かわいい顔してるから男女問わずどんな変態が目をつけるか分かったもんじゃないからね」

 

 「そうするよ、色々とありがとうな」

 

 そう言うと俺は出入り口に向かって踵を返す。ユエ達もどこまでもいい人で気配り上手だったオバチャンにお辞儀をしたあと追従する。そして最後にナナキは

 

 「ばいば〜い!!」

 

 と、ユエに手を引かれながらもギルドから出るまでオバチャンの方に顔を向け、手をブンブンと振り続けた。どうやら相当オバチャンに懐いたらしい。それに応えるようにオバチャンもナナキに優しい笑みを返しながら手を振り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 ブルックの冒険者ギルド支部受付嬢、“キャサリン”は、新しくやって来た四人組が見えなくなった後、振り続けた自分の手を徐ろに見つめる。その手は、さっきまでナナキの頭を撫で回した手でもあった。

 

 〜あんな幼い見た目で、只者じゃぁ無いねあの坊や。それに他の三人も相当だよ。〜

 

 

 「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね……」

 

 

 脳内で完結しようとした好奇心は、無意識につい後の呟きとして溢れ出てしまった。

 

 




 
 最初のオリジナル鉱石や、シュテルンヘルトの下りは無理やり感が否めない!

 必死に考えたけど……ガバガバなの自覚してます。

 今後の明確な登場描写は少ないから許して!
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